クラブで頑張った、勉強に打ち込んだ、恋愛に燃えた、
いろんな高校生活を送った人がいる
これはある高校生活を送った人の高校卒業の1年後
とある居酒屋でのお話である。
 


愚痴る男・愚痴る女
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がらがらっ
 
「うぃ〜……ひっく」
「おい、公、もうやめないか?もう3軒目だぞ」
「うるせぇ〜……飲ませてくれよぉ!」
「はいはい……しょうがないなぁ」

がらがらっ
 
「う〜……ひっく」
「ねぇ、詩織ちゃん。飲み過ぎよ!」
「いいの!飲みたいから飲むの!」
「わかったわよ……まったく……」

「かんぱ〜い!」
「かんぱ〜い」
「ごくごくごく……ぷは〜!」
「お前飲み過ぎだぞ……」
「いいんだよ……今日は徹底的に飲みたい気分なんだよぉ」
「……またか……」
「そうだよ……高校生活を思い出すと飲みたい気分なんだよ!」

「すいませ〜ん、大ジョッキもうひとつ〜」
「ちょっと!もう3杯目よ!」
「だ〜か〜ら〜。今日は飲みたいの〜!」
「まったく……どうしたの」
「昔を思い出しちゃったのよ……だから飲みたいの!」
「はいはい……またね」

「好雄、聞いてくれよ……」
「俺はいつでも聞いてやるぞ」
「なあ、俺の高校生活って何だったんだろうな?」
「そんなこと俺に聞いてもしょうがないだろ。おまえ自身はどう思っているんだ?」
「悔しいんだよ!あんなに頑張ったのによぉ!」


「ねぇ、夕子ちゃん、聞いてよ〜」

「はいはい、こうなったらとことん聞いてやるわよ」
「ねぇ、夕子ちゃんの高校生活って悔いはない?」
「私は全然ないわよ。と〜っても楽しかったわよ」
「私は、悔いだらけなの!」

「俺って、勉強がんばったよなぁ?」
「そうだな、最初は赤点ぎりぎりが最後には学年5位だからな、頑張ったよ」
「そうだろ!おかげで一流大学に現役で入った」
「そうだよ、俺と違ってな、すごいよ」

「私、勉強頑張ったのよ」
「詩織ちゃんは入学時からずっと学年一桁順位だったもんね」
「自慢するわけじゃないけど、努力した成果だと思うのよ」
「そうだね、一流大学現役だもんね」

「部活も頑張ったよなぁ、俺」
「ああ、甲子園優勝メンバーだもんなぁ」
「そうだよ!毎日毎日部活に汗をかいたよ!一生懸命、一生懸命甲子園目指して!」
「確かにあの時のおまえは凄かったよ」
「あれだけ、努力をまたできるか?っていわれたら無理かもしれないよ……」

「バスケも頑張ったのよ、私」
「インターハイで優勝したんだもんね」
「とにかく、頑張ったのよ、休日も部活で、自主トレもやったわ」
「そこまでしないと、あれだけ強くならないわよ」
「そうよ、頑張ったのよ」

「友達も沢山つくったよ」
「そうだな、男女問わず人気があったな」
「友達もいた、何人かデートみたいなのもしたよ!」
「確か、お前に惚れていたのがひい、ふう、みい……」
「好雄の情報なんてどうでもいいよ……いまさら……」

「自慢じゃないけど、ラブレターも沢山もらったわよ」
「そりゃ、詩織ちゃん、可愛いし頭いいし人気もあったね」
「夕子ちゃんほどじゃないけど、男子の友達もたくさんできたわ」
「男女問わず、人気があって、きらめきのアイドルって呼ばれていたわねぇ」
「アイドルなんて称号いらないわ!」

「勉強も部活も遊びも頑張った」
「勉強も部活も遊びも楽しかった」
「そうだろ?」
「そうでしょ?」
「それなのに……」
「それなのに……」
「それなのに?」
「それなのに?」
「なんで彼女ができなかったんだ!」
「なんで彼氏ができなかったの!」

「……」
「みんな、俺の高校生活『彼女ができなかった』の一言ですますんだぞ!」
「……」
「悔しいよ……あれだけ頑張ったのに、たった一言で済まされた……」

「……」
「みんな、私の高校生活『彼氏ができなかった』の一言ですますのよ!」
「……」
「悔しいよ……私の高校生活、一言で片づけられたのよ……」

「お前はいいよなぁ」
「なんで?」
「可愛い彼女ができただけで、学年のヒーロー扱いだろ……悔しいよ……」

「夕子ちゃんはいいわよ」
「どうして?」
「お似合いの彼氏ができただけで、羨望の的だもんね……悔しいよ……」

「公、詩織ちゃんとはどうなったんだ?」
「ああ、なんにもないよ……」
「あれだけ仲がよかっただろ?」
「確かに大切な幼馴染みだよ……」
 
「詩織ちゃん、公くんとはどうなの?」
「なんにもないわよ!」
「あんなに仲が良かったのに?」
「確かに大切な幼馴染みよ……」

「詩織とは何度もデートしたよ」
「そうだな」
「プレゼントもしたよ、試合の応援にも行ったよ」
「クリスマスパーティーも一緒に行っていたな」

「公とは何度もデートしたわ」
「というより、公としかデートしなかったでしょ?」
「うん、プレゼントもした、一緒に誕生パーティーもしたわ」
「修学旅行も一緒に行動していたよね」

「俺には詩織しかいなかった……でも告白されなかった」
「意外だったな……てっきり卒業式に告白されると……」
「そうだろ?……きっと、俺に足りないものがあったんだよ……」
「何が?」
「わからないよ……」

「私には公しかいなかった……でも告白できなかった」
「意外だったわ……卒業式に告白すると思っていたのに……」
「そのつもりだった……でもできなかった……」
「なんで?」
「私に告白する勇気が少し足りなかったのよ……」



「確かに詩織以外の女子とデートしたよ」
「確かに最初は公に冷たくしていたわよ」
「デートで詩織を怒らせたこともあったよ」
「デートで公の気持ちを考えずに怒ったときもあったわよ」
「勉強は一度も詩織に勝てなかったよ」
「公に勉強教えてっていわれて断ったこともあるわよ」
「部活に熱心で詩織を放っていたこともあったよ」
「部活に夢中で公のこと考えてなかった時もあったわよ」
「ああ、確かに俺は女に冷たいよ」
「ええ、私は告白する勇気がなかった意気地なしよ」
「でも、でも……」
「でも、でも……」
 
 
「俺は詩織が好きだ!」
「私は公が好きなの!」
 
 
「えっ……」
「えっ……」
 
 
「詩織……」
「公……」
 
 
「おめでとう!公!詩織ちゃん!」
「これで念願の両想いだね!」
 
 
「好雄……おまえ……」
「そっ!お前の気持ちを詩織ちゃんに聞かせたくてな……」
 
「夕子ちゃん……まさか……」
「うん!詩織ちゃんの気持ちを公くんに知ってほしくてね……」

 
「公、詩織ちゃんを目の前にして告白しろ!」
「詩織ちゃん、卒業式のリベンジよ!」


「詩織……俺、ずっと前から詩織が好きだった、今でも詩織が好きだ……付き合ってくれないか」
「公……藤崎詩織は世界中の誰よりも公が好きです……付き合ってください」


「詩織!好きだ!」
「公!大好き!」
 
 
 
「おい!公!居酒屋で抱き合うのはやめろ!」
「詩織ちゃん!こっちまで恥ずかしいじゃないの!」
「あっ……ごめん」
「ごめん……」
「公、今日は俺がおごるからこれから二人で過ごしたら?」
「詩織ちゃん。両想い記念におごってあげるから二人で楽しんだら?」
「ありがとう……好雄、お礼は必ずするから」
「ありがとう……夕子ちゃん、この恩は一生忘れないから」
 
 
がらがらっ
 
 
「詩織……俺、嬉しいよ」
「公……私も嬉しい」
「卒業式からだいぶたったけど……やっと高校生活から卒業した気がする」
「私も……これで高校生活で思い残したことはもうない」
 
「ごめんな……詩織の気持ちに気付かなくて」
「ごめんね……卒業式に告白しなくて」
「これからは……二人で楽しもうな……」
「うん……公と一緒ならどこでも楽しくなりそう……」
 
 
「毎日あの愚痴を聞かされてたまんなかったよ」
「私もうんざりだった……それも今日でおしまいね」
「明日からおのろけ話になるんだろうな」
「愚痴よりもましよ」
「あいつら見ていると、本当に素直が一番だよ」
「私も」
 
「なあ、夕子」
「何、ヨッシー?」
「今日だったら……俺も素直になれる気がする」
「私も素直になれそう」
「夕子……俺が大学卒業したら……結婚してくれないか?」
「ヨッシー……」
「……受けてくれるか?……」
「はい、喜んで……」





HAPPY END


後書き 兼 言い訳
 
テーマがあります
「勉強では学年上位、部活は全国制覇、女性も何人か付き合っているけど誰にも告白されなかった男」
「とあるパラメータがたった1足りなかったために告白しなかった女」のその後です。
 
ときメモ1&2では、誰にも告白されなかった場合。
勉強でどんなに頑張っても、部活でどんなに頑張ってもそのことには何も触れてくれません。
つまり「彼女ができなかった」の一言で高校生活を表わされるのです。
 
女性の場合も、主人公は誰にも告白されなかった場合。
進路等については何も触れられません。
要は「主人公に告白しなかった」の一言で高校生活を表わされるのです。
 
これほど惨めなバッドエンドはありません(笑)
 
そんな、なにも触れられない二人のその後を想像したのがこれです。
もちろんハッピーエンドにしました。
これでバッドエンドだったら救いようがありませんから(/-_-)/
 
なぜ、ヒロインが詩織かって?
だって、ひかりんだとパラメータが1どころか10や20足りなくても、それを愛の力で補って告白しそうだから(^_^;)
 
HTMLの性質を使った作品です。
自分ではいい感じが出せたかとおもっていますが。

(再公開にあたって、台詞を少し変えています)

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