「好きです。
 今まで嘘をついていてごめんなさい。
 でも、私と付き合ってください」

大財閥の御曹司。
美男子で女の子にモテモテだった伊集院レイは実は女の子だった。

卒業式。
伝説の樹の下。
そのレイが俺に告白してきた。


実は俺がきらめき高校に入学したときから、好きだったという。
でも、それだけが理由じゃないと思う。
俺自身も勉強も運動も頑張ったのもあるだろう。


彼女の告白を俺は受け入れた。


だってそうだろ?
なんといっても、レイはかなりの美人だ。
それに、あんな熱烈な告白を受けない男なんて男じゃない。

確かに、俺はレイのことはよくわからない。

でもいいじゃないか。

俺たちはこれからもっと知り合っていけばいい。
これからもっと相手の事を知るようにすればいい。


でもなぁ……


もしレイが……だったら……



こんな伊集院レイは嫌だ
 
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俺は一流大学に通うために一人暮らしを始めた。
レイはというと、予定していた海外留学を取り消して、俺と一緒の一流大学に通うことになった。
さすがに、一人暮らしというのは無理だったが、通学するときには俺のすむアパートに来てくれる。

順風満帆な大学生活……と思う。
俺はレイのことをよく知らないのが唯一の不安だ。


もしレイが……だったらどうしよう……


例えば……





もしも、伊集院レイスポーツ大好きだったら

「公。おはよう!」


レイは早朝いきなりやってきた。
扉を開けるとジャージ姿のレイが立っていた。
初めて見るジャージ姿。
う、結構そそられる……。
って関心してる暇はない!


「レ、レイ!まだ朝の5時だぞ!」
「ちょうど、ランニングでアパートの前を通ったから」
「ちょ、ちょっと待て。レイの家からかなり離れてるぞ!」
「そうよ。毎日20キロは走ってるかな?」


に、にじゅっキロ!
レイって見た目はそんなに筋肉があるとは思えない。
その身体で毎日……信じられない……


「ねぇ、一緒に走らない?」
「えっ?これから?」
「ちょうど帰り道だから、10キロで大丈夫よ」


じゅ、じゅっキロ走るって簡単に大丈夫って言うなよ!


「で、でもそれから俺は家に……」
「その心配はないわ。屋敷についたら2時間ぐらいトレーニングするから」


と、とれーにんぐ?


「屋敷の地下に体育館ぐらいの大きさのトレーニングルームがあるの。そこで私と一緒にトレーニングよ」
「えっ?」
「私の旦那様になってくれる人はスポーツができてタフな人でなくっちゃね!」


ま、まて。俺もスポーツは得意だが、10キロ走ったあとに2時間トレーニングは疲れてできないよ。


「じゃあ、さっそく行こう!」
「う、うわぁ!」


レイは俺の手を引っ張って屋敷へと走り出した。
ああ、俺は体力勝負の毎日を過ごさなくてはいけないのか……



もしも、伊集院レイ本気で世界征服をねらっていた

レイが俺を屋敷に招待してくれた。
クリスマスパーティーで来たことはあるが、それ以外では初めてだ。
ちょっと緊張する。
俺は屋敷のメイドさんの案内で屋敷の地下に案内される。

地下?
なんで?

俺は疑問を抱えたまま、レイのいる場所へと向かう。
厳重な扉の向こうにレイは待っていた。


「あっ、公!待ってたわよ!」


な、なんですか?
この不気味なコンピュータやモニターの山は?


「レイ。このモニターの山はなんなの?」
「うん。これらのモニターで日本の主要な都市の様子が観察できるの」


た、たしかに。
時計台とか、富士山とか、大阪城とか、原爆ドームとか桜島とかがいっぺんに見える。
でも……なんで?


「な、何のために?」
「来るべき計画に備えてね」


け、計画?


「計画って?」
「当然でしょ?世界征服よ」


はぁ?
今、何て言ったんだ?
空耳?


「世界征服の前に、まずは日本を征服しなくちゃね」
「ど、どうやって?」
「それを言ったら計画が台無しよ、だから今はヒミツ♪」


レイ……
そんな笑顔で言われても……


「でも、征服って、あの私設軍隊で?」
「あれだけじゃあ無理よ。いま、地下5階の秘密工場で秘密兵器を作成中よ」

この屋敷の地下にはそんなのがあるのか!
伊集院家の財力と科学力で本気で世界征服を狙ったら……
しゃれにならない……


「ああっ、この地球が私のものになるなんて……今から楽しみだわ……」


とりあえず、友達に日本脱出を勧めよう……



もしも、伊集院レイ動物好きの恥ずかしがり屋だったら

レイが俺を屋敷に招待してくれた。
クリスマスパーティーで来たことはあるが、それ以外では初めてだ。
ちょっと緊張する。
屋敷のメイドさんの案内で中庭に連れて行ってもらう。


「ガルルルルルルル………」


な、なんだこの獣の声は?


「グワァァァァァ!」
「う、うわぁぁぁぁぁ!痛い!痛い!か、噛むな!」


な、なんだこの犬達は!
いきなり俺に噛みついてきた!
犬の目がヤバイ!
こ、殺される……


「ムクやめなさい!」


あっ、レイだ。
あっ、犬達が俺から離れた。
助かった……。


「あっ、この犬はムクって言うんですが、人見知りで……」
「む、ムクって言うんだ……」


シェパードにその名前?


もしかして、さっきのブルドックや土佐犬にも似たような名前?
まあ、名前はどうでもいいんだけど。


「あ、あの……」


しかし、レイの格好はすごいなぁ。
フリフリのドレス姿でいかにも大金持ちの御嬢様って感じの衣装だ。

しかし、レイはなんでそんなに恥ずかしがってるんだ?


「どうしたんだい?レイ」
「は、恥ずかしい……」
「なに言ってるんだよ?今更恥ずかしがることなんてないじゃないか」


そういって俺はレイの肩をポンと叩く。


「きゃっ!」


お、おい!
なんでそんなに顔を真っ赤にするんだ?


「あ、あの……女の子の格好だと恥ずかしくて……何も言えないんです……」


顔を真っ赤にしながら話すレイ。
確かに、女の子の格好は慣れていないかもしれないが……


「じゃあ、男の格好だとあんなに話せるのはなぜだ?」
「な、なんか男の子の格好だと……別人になったような気がして……恥ずかしい……」


はぁ……

レイとまともに会話するには、レイに男の格好をさせないといけないようだ。
この調子だと、いつになったら女の子の格好のレイと話ができるようになるんだろう……




もしも、伊集院レイ妙な和風趣味だったら

レイが俺を屋敷に招待してくれた。
クリスマスパーティーで来たことはあるが、それ以外では初めてだ。
ちょっと緊張する。
屋敷のメイドさんの案内されたのだが……

案内されたのは典型的な日本風のお屋敷。
他の屋敷は西洋風のお屋敷なのに……なんでだ?


「公さん。お待ちしてました」


玄関で三つ指をたてて迎えてくれたレイ。
さらに、びっくりしたのはレイの衣装。
高そうな着物を着ていたのだ。
髪の毛も日本髪ということではないがアップにまとめている。

レイの金髪だとかなり不似合いかと思ったが、なかなか似合っている。


「どうしました?」
「い、いや、びっくりしたよ。まさかこんな日本風の屋敷があるなんて」
「御父様に頼んで作っていただきました……私の家です」


えっ?レイの?


「どうして?」
「だって、あの紅毛の国のお屋敷に住むなんて私には耐えられません!」


こ、紅毛?
なんか、すごい言葉使ってなかったか?


「日本なら日本家屋に住むべきです!」
「れ、レイ。玄関で熱くならずに、家の中を見せてよ」
「あっ、ごめんなさい……」


ようやく家の中に案内される俺。

いやいや、びっくりした。
とにかく、ほぼ日本風の作り。
椅子やテーブルなんてものはなく、畳に座布団にちゃぶ台といった感じだ。
さすがにテレビとか家電とかあるけど、日本メーカーのそれも国内工場生産のものばかり。
とにかくこだわっている。


「どうですか?我が国のものはすばらしいでしょ?」
「そうだね、さすが日本製って感じだね」
「そうでしょ?鬼畜米英のものなんて使うべきではありません!」


へっ?
ねぇ。レイって、いつの時代の人?


「あそこのお屋敷って、外国の言葉が頻繁に使われてて、いるだけで鳥肌が立っちゃうの」
「は、はぁ……」
「でも、ここは安心ね……」


あの〜。

俺は今後外来語は使えなくなるのでしょうか?
服も和服しか着られなくなるのでしょうか?

レイ。教えてくれない?



もしも、伊集院レイ妖精さんとお友達だったら

レイと公園で初めてのデート。

いまはベンチで楽しくお話。
ちょっと前の高校時代の話で盛り上がる。


「あいつも、大学で頑張ってるって電話が来たよ」
「そうなんですか……あら?」
「レイ?」
「ちょっとまってくださいね……えっ?……へえ……そうなんですか」


レイ?
お空と会話して何をしてるんですか?


「レイ?何してるんだい?」
「あっ、ごめんなさい。今妖精さんが話しかけてきたんですよ」
「よ、妖精さん?」


ちょっと待て。
妖精さんって、あの羽の生えた小さなアレ?


「えっ、見えませんか?」
「あ、ああ……」
「私たちの周りにたくさんいますよ」


だから全然見えないって!


「そ、それで何の話を……」
「あのね……『お似合いのカップルですね』って……きゃっ!恥ずかしい……」


真っ赤になった頬を両手で隠すレイ。
その仕草すごく可愛いんだけど……
妖精さんの話だから、全然実感がわかない……


「ねぇ、今度妖精さんとお話しませんか?」
「えっ?」
「私が通訳してあげるから!ねっ?」


そ、そんな視線で言われても……
私は妖精さんと何を話せばいいんですか?



もしも、伊集院レイ超不幸だったら

おそいなぁ……
もうすぐレイが迎えに来る時間だって聞いたけど……

レイってそんなに時間にルーズなのかなぁ?



ドカン!


バカン!


ボカン!



な、なんだ?
いま、アパートの前ですごい音がしたけど……
それも何かがぶつかった音だぞ。
事故じゃなければいいけど……


ピンポーン


「どちらさまで……あっ……レイ!」
「ごめんなさい。遅れちゃって……」
「大丈夫か!とにかく家に入れよ!」
「は、はい……」


とにかく驚いた。
レイの服がボロボロだったからだ。
転んだとかいうレベルではない。
なにかにぶつかったというぐらいひどい。


ん?

ぶつかった?

まさか?


「ねぇ、さっきなにかあったの?」
「うん、車にぶつかっちゃった……」
「ええっ!」
「あっ、心配しないで。いつものことだから」


ええっ!
車にぶつかったって……
それって一大事だろ!

しかも、いつもって……


「いつもって?」
「うん、子供の頃からよく車にぶつかったり、空から何か降ってきたり、とにかく昔から運が悪いの」
「そ、そうなんだ……」
「だから、今日もここに来るまでに3回も車に……きゃぁぁぁぁっ!」
「レイ!どうしたんだ!」
「とにかく部屋から出て!」
「わ、わかった!」


俺とレイは急いで玄関から外に飛び出した。


ドッカ〜ン!


飛び出すと同時にものすごい音が響いてきた。


「いったい何が……あああああっ!」


お、俺の部屋に戦闘機が!
ああ、部屋がめちゃめちゃじゃないか!


「ごめんなさい……私のせいで……」
「そんなことないよ」
「よくあるんです、戦闘機とか、飛行船とか、ハングライダーとか……」
「レイのせいじゃないよ。ただ偶然で、運が悪かった……あっ」
「やっぱり私のせいなんですね……そうなんです、私のせいなんです……」


がっくり気落ちしてしまうレイ。
俺はとにかく慰める。


「そんなことないって、このぐらいたいしたことないよ」
「そんなことありません!責任とらせてください!」
「えっ?」


俺はそれから、伊集院家の屋敷にすむことになった。
レイとずっと一緒にいられるのはとても嬉しい。

でも、心配だ。

レイがずっと側にいるから、いつ飛行機やミサイルが俺に襲ってくるかわからない。
毎日暗殺者に狙われる気分になるのか……はぁ



もしも、伊集院レイ死んだ元彼?がいて(以下省略)だったら

突然レイが深刻な顔をして俺の部屋にやってきた。


「あのね、私、来週から入院するの……」
「えっ?」
「入院して……手術うけるの……」
「なんだって……」


知らなかった。
レイが入院するなんて。
今までそんな様子を見せなかったぞ。


「昔手術した傷がまだ完治してなくて……」


あれ?
この話、昔メールで聞いたことがあるぞ。

たしか、『ニャントロ星人』って名乗っていた人が言ってたな。
中学の頃、幼馴染みとスキー旅行に行ったときにバスで事故にあって、彼が死んだとか……
そしてその人は身体の中に事故で入った破片がまだ残ってるって言ってた……
しかも、日本最高峰の医療技術をしても難しいと言ってた。

その人は手術を受けるか迷ってたけど、俺が『受けてみたら』って返事したんだよな。
1週間後、お礼のメールが来て、俺も嬉しかったのを覚えている。

その人とは頻繁にメールしていたが、高校を卒業してからはさっぱりだったよな。


まさか……

レイが……


あっ!


俺が手術を受けたらってメールを出した翌週、レイは1週間ほど学校を休んでた!

レイから昔の話を色々聞いたが、中学の頃の話は一度も聞いたことがない!


間違いない……

レイがそうだったなんて……

当然レイには治って欲しい、まして、あの傷なら……


「成功するかはわからないけど……きっと生きて帰ってくるから」
「わかった。絶対にかえってこいよ。俺はレイが帰ってくるのをずっと待ってるからな」
「ありがとう……」


レイは両手で俺の手を握りしめる。
レイは泣いているように見える。
俺はレイの手を握り帰す。



「レイ。約束してくれるかい?」
「なに?」


「生きて帰ってきたら彼のお墓参りに行かないか?」
「!!!」


「彼に挨拶したい。『これからはレイは俺が守るから安心して眠ってくれ』ってな」
「公……」


「約束できるな?」
「はい……」


俺とレイは指切りの代わりにキスを交わした。
それが俺たちの初めてのキスだった。




それから1ヶ月。

レイはまだ俺の前に現れない。
準備、手術それにリハビリで1ヶ月以上はかかると言っていた。
完全に回復するまでレイは俺に連絡しないと言った。
『完全に治った私を見て欲しいから』という理由でだ。

手術は成功したのだろうか?
伊集院家の技術でも成功率が低い手術だ。
失敗した可能性は高い。

成功したのか?
失敗したのを隠しているのか?

俺にはわからない。

でも、俺は確信がある。
レイはきっと帰ってくる。

そうだろ?レイ。


ピンポーン!


あっ、来た!
きっとそうだ!
俺は急いでドアを開ける。

「あっ……」


Happy End?





































うわぁぁぁ!

どれもこれも嫌だぁ!

やっぱりレイは普通の女の子でいいんだぁ!

はぁ、




そう思いながら、俺はレイが家に来るのを待つ。


ピンポーン!


あっ、来た!


「レイ、よく来た………えっ?」


えええええええええっ!


Fin?


後書き 兼 言い訳

馬鹿SSにどうしてシリアスがまじってるんだぁぁぁぁ(爆)
 
というわけで、ときメモ1SSです。 
 
今回の話の女の子は結構います(ぉ
ところがそれが「伊集院レイ」となると、かなりの違和感が生じるのでは?と思って書いてみました。

「女の子レイ」って普通の女の子だと思うんですよ。
それも他のキャラに比べても女の子っぽい女の子だというイメージがあります。
(女の子っぽいってなんだ?と言われると困るのですが)

確かにこんなレイちゃんは私は嫌です(笑)
皆さんはどうでしょうか?

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