発端:
「あ? 間違いメールみてえだなこりゃ。一瞬ウイルスメールかと思っちまったい。
英語ぉ〜? オレっち英語は大の苦手なんでい! なんでいなんでい、
こんなメール、日本語で返してやる、っとくらぁ」
ーーそしてその人物は間違いメールへ丁寧な日本語で返事を
返すーーー
ーーー拝啓ーーー
オレっちあてに間違えてメールを寄越すたぁ、いい度胸だ。
正しい日本語できっちり返してやっから、目ん玉ほじくってよっく見とけ。
こちとらはばたき市ははばたき学園に通う高校1年よ!
日本に住んでんなら、日本語でメールするってのがスジだと思うわけよ、オレッちはよ。
ってなわけで、きちんと落とし前つけやがれ。



MAIL to MAIL



そして、初めての出会い:
「あー、クソかったりい。なんでオレっちがなっちんに付き合って買い物なんざ」
駅前広場のベンチに腰掛けて、ジーパンを履いた足をぶらぶらさせながら、その人物は
ぶつくさ言っていた。
「そろそろ来てっかな」
そう言って立ち上がりかけた瞬間。
「うが、いててて!」
顔面を誰かの胸に思いきりぶつけ、その人物は鼻を抑えて悲鳴を上げた。
「あ…あ…」
とまどったような声に顔を上げると、その視線の先には気弱そうな目をした少年が
心配そうにこちらを見ていた。
そして視線が合うと、その少年は慌ててどこかへ去っていく。
「こらぁ、待ったりんか〜。人にぶつかっといて謝りもなしかあ!」
「恥ずかしいから大声で叫ばないでよ」
その肩に、友人がぽんと手を置いて引き止める。



そして、二回目のメール:
「ああ? また来てやがんの。えー、何々? 『丁寧なメールありがとう。
私、日本の友達がいない。日本語も良く分からない。もしよかったら、日本のことについて
色々教えてくれませんか。…ちはるより』…女の子からかよ。よしよし、分かった分かった。
このオレっちが、手取り足取り、日本の文化っつーやつを教えてやろうじゃないのさ。
まず最初はー、えー」
ーーーー日本の文化っていやぁ、やっぱり寿司よ!
職人に目の前で握ってもらって、それをさびをちょいと溶かした醤油で一気に食う!
っか〜、堪えられねえぜ! これが日本の粋ってもんだ! ってなわけで、
寿司でも食いに行ったらどうだ?−−−−



そして大分はしょって最後のメール;
ーーー良かったら一度会いませんか。明日、森林公園に十二時でいかがでしょう。
「うーん、ヤローと会うってのは中々ゾッとしねえもんがあるが、
しゃあねえなあ。行ってやるか。しっかしこの名前で男とは恐れ入ったね。
さーて、明日、何着て行くべ」



そして当日:
「あ…もしかして、待ち合わせですか?」
「あんだてめえ。おう、オレっちは確かに人を待ってんぜ。それがどうかしたかよ」
「あ…あなたが…? 良かったらお名前を聞かせてもらえませんか」
「人に名前聞くときゃ、てめえから名乗るのが礼儀ってもんだぜ。
それがはばたきッ子のスジってもんだ」

「ご。ごめんなさい…」
「…? 変なヤツ。逃げて行っちまったい。…どうやらオレっちもすっぽかされた
みてえだな。ウチに帰って一杯やるか!



…そして花柄ワンピースの裾を翻しながら、その少女は家路に着いた。



FIN〜



著者後書き:B様からのリクエスト「ちーちゃんからのメールに
何故か男としてメールを返したという設定で書いてください」とのご要望に伴い、
書いてみました。男として、というよりは、言葉遣いがほとんど男な主人公ちゃんです。
リクエスト下さったのとは少し趣が違いますが、B様、差し上げます。
どうぞお持ち帰りください。






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