第31話目次第33話

Fieldの紅い伝説

Written by B
きらめき女子サッカー部は学校で夏合宿を行う。
学校といっても侮るなかれ。

大財閥伊集院家直営の学校だけあって、学校内の合宿所は一流の設備が揃っている。
こういう豊富な設備が、強豪チームをつくる土台になっている。

女子サッカー部はちょうどひびきの女子サッカー部と同じ日程で合宿を行う。

ちなみに男子は、練習試合の相手が豊富な隣の隣の県の合宿センターで合宿を行っている。



そんなきらめき女子サッカー部は初日から事件が起こる。
新戦力の加入である。



「え〜、今月から選手登録が可能になったため、正式入部となった生徒を紹介する」



ざわざわざわ



当然ながらざわめきが起こる。


「奈津江!そんなこと聞いてないわよ」
「私も昨日知ったのよ」
「別に何だっていいんじゃないか?FWでなければアタシは大歓迎だよ」
「そんなことでいいのか?」
「しかし、今月から選手登録ってどういうことだろう?」


どうやら全員初耳の話らしい。
そうしているウチに、その正式入部の生徒がやってきた。
全員その人をみて驚く。


「みのり、あの金髪のおねぇちゃんの事?」
「私も知らないわよ。虹野先輩。知ってますか?………先輩?」



「パ、パ、パット!何でここにいるのぉ〜!」



一番驚いていたのは沙希だった。
沙希はがっくり膝をつき、嘆いているご様子。

「し、知ってるんですか?」
「知ってるも何も隣のクラスなのよ!」
「へぇ〜」
「何度もサッカー部に誘ったんだけど、断られて………どうしてぇ〜?」
「………」

獲物を取り損ねたような顔をしている沙希の隣で、
みのりは「何度もスカウトするなんて先輩らしいな」と「先輩をそこまでさせるあの人って誰?」
という2つの思いが混じっていた。



ジャージ姿の金髪の美少女は部員の前で挨拶を始めた。



「ミナサン、始めまして。パトリシア・マクグラスです。パットと呼んでください」



「私がキャプテンの鞠川奈津江、よろしくね」
「はい、ヨロシクおねがいします」

キャプテンの奈津江が代表してパットを歓迎する。

「ねぇ、いきなりで悪いけど。どうしてサッカー部に?」
「ワタシの国でもサッカーやってました。でも、試合に出られないので」
「試合に出られなくても、サッカーはできるわよ?」
「コーチにとめられて………」

パットの言葉の意味がよくわからない奈津江。
監督がフォローを入れる。


「転校生はすぐに決まりで出られないだろ?」
「それはわかってますけど、なんで部活に入れなかったのですか」

「実は、うちの秘密兵器にしようと思って、ずっと隠してたんだ」
「えっ?」

「実力は君たちレギュラークラスと同じだ、どうせ使えないなら秘密兵器にしようと思って」
「練習は?」

「理事長に頼んで、伊集院家のスポーツジムで個人技に磨きをかけてもらった。戦術の指導はそこでしている」
「………」

奈津江は監督の考えに少々不満があるが我慢した。
奈津江はそれを隠してパットに尋ねる。


「ところでポジションは?」
「MFデス。ボランチがスキです」
「ボランチ?」
「ハイ」
「………わかったわ………じゃあこれから紅白戦だけど参加できる?」
「準備体操はしました。いつでもOKです」

パットはさっそく練習に合流することとなった。



奈津江の後で会話を聞いていた望達は、紅白戦の準備の間ひそひそ話をしていた。

「京!あいつの国ってどこだ?」
「アタシは知らない。シオ、あんた知ってる?」


「え〜と、たしかアルゼンチンって言ってたような………」
「「アルゼンチン?」」


「ええ、アルゼンチンって南米では組織的なサッカーをするでしょ?」
「確かそうだったような………」


「だから私たちのサッカーに合うんじゃないかしら?」
「そうだといいけど………とにかくアイツの実力をみないと何も言えないな」

そう言うわけで、パットはとりあえずサブのチームで紅白戦に参加することになった。



そして紅白戦。

「詩織、あいつ凄いわよ………」
「確かに………驚いたわ………」
「確かに秘密兵器にしたくなるのもわかるな………」

パットのプレーはレギュラーチームを驚かせるものだった。
紅白戦の途中の休憩時間で攻撃陣が話し合っていた。

「あの人、パワーがあって、優美なんか吹き飛ばされそうでしたよ」
「そうね、スピードがあるし、力強いよね」

とにかく、パットはパワーがあった。
少々のフィジカルコンタクトでは負けることはなかった。

「しかしいつも全速力で走るよね」
「スピード狂って噂だぜ」
「スピード狂?」
「よく自転車で暴走してるらしいぞ、あたしも一度ちらっと見たけど、あれはアタシでも勝てないな」
「へぇ〜」

京の話をじっと耳を傾ける奈津江。


「まあ、どちらにせよレギュラー確定だな………でも………」
「でも?」
「問題は………望だな」
「えっ?望ちゃん………あっ!」
「攻撃力は間違いなく望より上だ、そうなると望のポジションがどうなるか………」

「望が今より守備的なポジションになるのが自然ね」
「それを望が受けるか………望は攻撃が好きだからな………」
「このままだと守備専門になりそうね………」
「先輩どうするんだろう………」

攻撃陣がちらりと望の方を見る。



「………」

望は呆然と立ちつくしていた。



その反対側ではサブの組でみのりと沙希が話し合っていた。

「先輩!パットさんすごいですよ!あの攻撃陣が戸惑ってますよ!」
「そうでしょ?やっぱり私の目は正しかったのよ!」
「しかも、ロングシュートがすごいですね。遠目からのフリーキックでも得点が狙えますね」
「そうよ!あの体つきからパワーはありそうだと思ってたのよ!」
「先輩がスカウトしたくなるのもわかります」
「そうよ!そうよ!どうしてスカウト受けてくれなかったのよぉ!」

沙希はいまだにスカウトできなかったのを根に持っているようだ。

「それにあのスピードは清川先輩も止められなかったですからねぇ」
「そうね、望ちゃんもビックリしてたみたいだったわね」
「清川先輩、いまだにビックリしてるみたいですよ、ほら」
「今も?えっ?………あっ………」

みのりが指差す方向には立ちつくしている望がいた。



紅白戦はこれで終わりだ。これから戦術指導するから会議室にあつまるように」

休憩の後、40分の紅白戦を終えた部員達はシャワールームに向かう。
奈津江は望と一緒にシャワールームの順番待ちをしていた。

「望。大丈夫?」
「ああ、大丈夫だよ!」
「さっきの紅白戦、なんか負けてばっかりだったけど?」

先程の紅白戦で望は散々だった。
特にパットとの対決は圧倒的だった。

パットのドリブルはなんとか止めてはいるものの、逆に自分のドリブルはあっさりと止められてしまう。
望はパスも送ってはいるが、パットは望以上に積極的にパスを送っていた。
奈津江から見ても、攻撃力では差は明らかだった。

「………な〜に、ちょっと早くて戸惑っただけさ。事実、ちゃんと止めてるだろ?」
「まあそうだけどね」
「あれぐらいのこと、私でもできるさ!」
「………そうね。そうだよね」
「じゃあ、空きができたみたいだから、先に入るね」
「わかったわ」

望は先にシャワールームに入っていった。

(望………無理してる………顔が笑ってないよ………)

奈津江は望のことで不安がいっぱいになっていた。
Go to Next Game.
後書き 兼 言い訳
きらめきも夏合宿です。

しかもいきなり新メンバー。
GB3人娘の一人、パットのご登場です。
いや、リクエストがありまして、私もこれは面白いと思い、さっそく登場させてしまいました(汗
ちなみに彼女の出身国ですが、本編では単に「南の国」としか言ってません。
従って、アルゼンチンとはここオリジナルの設定になっています。

あと、転校生はどのぐらい経たないと出場できないのかはわかりません。
1年だったような気がしますが、そこは真剣に考えないでください(笑)

しかし、きらめきのメンバーは豪華ですなぁ(汗
まるでR・マドリードのようですな(笑)

さて、パットの登場で戦力UPしたはいいけど、ポジションがダブる望の様子が………
なんかいろいろありそうです(汗

次回はう〜ん、まだ考えてない(汗