第12話目次
「ぷにぷにぷに」


「ぷに・ぷに・ぷに」


「起きて」


「起きないとぉ〜」


「……ん?あれ?」


「お・は・よ」


チュッ!



「「なぁ〜に、このバカップル!!」」

太陽の恵み、光の恵 外伝

第5集 もし高校野球の女子マネージャーがドッカの国の「マドウショ」を読んだら
〜大倉都子の周りの愉快な先輩達〜

Written by B
「ちょっと、なによこのバカっぷり!あたしでもここまでしたことないわよ!なによ『ぷに・ぷに・ぷに』って!」
「わたしだってしたことないわよ!」
「ま、まぁ、お目覚めのキスぐらいしたことあるけどさ……」
「いくらなんでもねぇ……」


ここは詩織の家の彼女の部屋。
奈津江が詩織に呼ばれて見せられた映像に二人がそろって文句を垂れている。
映像に写っているのは、都子の彼の部屋。どうやら都子が朝、彼を起しに来たときの映像と思われる。
ちなみに、「なんでこんな映像を詩織が持っているのか」と言うツッコミは奈津江はしない。
聞いたところで、詩織は紐緒結奈に協力を依頼するところから普通に淡々と話してしまい、最後には聞いたことがばかばかしくなってしまうことがわかっているからである。


「まったく、あんたに部屋に呼ばれるときはいつもこんなんだからいやになっちゃうわよ」
「でも、こんなの一緒に見てくれるのは、奈津江ちゃんしかいないわ」


前に詩織が奈津江を家に呼んだときは、「私に似た名前のAV女優がいるって聞いたからDVD入手したの」ということだったし、その前は「私に容姿が似てて名前がまったく同じ子がヒロインで、タイトルがそのままの同人誌の最新刊が手に入ったの」ということだった。


「で、今回のは楽しめそうなの?」
「う〜ん、この調子じゃたぶん無理ね」


前の時は夜の生活の参考にとてもなったし、その前は同人誌の内容は趣味ではないが、詩織の「なによ、不幸なヒロインぶって、自分に酔っちゃて。そんなに嫌なら刺し殺せばいいのよ」というぶっそうな感想からこのヒロインをぼろくそに言い合ってストレス解消しているから、奈津江も文句は言うものの、実際はそれほど不満ではない。
今は都子の背中越しにお熱いキスシーンを文句言いながらじっくり鑑賞している。





二人のアドバイスというか説教というか脅迫というか余計なお節介というかが効いたのか、あれからしばらくして都子はようやく彼に告白した。
放課後に彼女の希望通り伝説の樹で告白したから、そのニュースはすぐに学校中に広まった。
当然ながら彼女を狙っていた上級生を中心とした男子は大いに落胆したのはいうまでもなく、それと同時に「また幼馴染みか」「まあよくあるケースだこと」という声もたくさん聞かれた。


「奈津江ちゃん、ところで虹野さんの反応はどうだったの?」
「もちろん大激怒」
「やっぱり?」
「『マネージャーが特定の部員と恋愛関係なんて!マネージャーは部員全員に平等に……』とか言ってたけどさ」
「ねぇ〜」
「試しに『あんたは?』って聞いたらとたんにしどろもどろ。あれで自分はバレてないと思ってるんだからね」
「ほんと」
「部員たちも気を遣って知らないふりをしているから、彼も恐縮しっぱなしみたい」


ようやく大手を振るってラブラブできる関係になっているのだが二人は相変わらず。
都子は野球部のマネージャーとして部員たちを上手にとりまとめているだけでなく、他の運動部の女子とも交流を深めている様子。一方の彼は相変わらずのほほんのほほんとしながらも野球部の期待の星として活躍している。

結局、心配だけ心配して結局よくわからないものに振り回されて、よくわからずに解決してしまい、奈津江と詩織にとってはかなり消化不良ではあるが、一応希望する結末になったことは確かだ。


「まあ、あれだけ迷惑掛けたんだから、このぐらい見せてくれて当然よね」
「そうそう」





「しかしあれからずっとキスばっかりしている気がするんだけど」
「そういえばそうね」


見始めてから3分ぐらい経過しているが画面の二人の状況は変わっていない。とにかく彼は起きようとしないし、都子も起こそうともしない。


「詩織、どうもなんか激しくなってる気がするんだけど……あっ、布団の中に潜った」
「これは目覚めの一発は確実ね」
「目覚めの一発ってあんた」
「あら?したことないなんて言わせないわよ」
「……はいはい、何度もしたことあるわよ!悪い?」
「全然♪」


起こしに来たはずの都子が彼の布団の中に潜り込んでしまった。


「詩織、これどうせ自動録画でしょ?あと何分ぐらいあるの?」
「え〜っと、少なくとも30分ぐらいはあるわね」
「間違いなくヤってるわね。もう、こうなったらじっくり見させてもらおうじゃないの!」


足を伸ばして床に座っていた奈津江がどっかりとあぐらをかいて座り直した。


「なんか食べ物と飲み物ある?」
「もちろん準備してあるわよ」
「ナイス!」
「私も最初から見てなかったんだけど、これは掘り出し物ね」
「しかし、こう高校生の性が乱れているのはなんとかならないのかしら」


周りから言わせれば「あんたらが一番乱れている!」と突っ込まれかれない。
親しい人には「私、ドMの変態なの」と平然と言う詩織と、同じく親しい人に「女にだって普通に性欲はあるわよ」と豪快に言い放つ奈津江なのだから、その指摘はまったくもって^事実だがこの二人はまったく気にしていない。





「ねぇ……もぐもぐ……もしかして、最後までこの体位?」
「う〜ん……ごくごく……なんとなくそんな気がする」


5分後、布団の中に潜り込んだ都子が彼の上にまたがっている。服は着たままだが下着が布団の横に落ちている。
つまり、そういうことである。
すでに裏ビデオ状態になっている画面の前で奈津江と詩織はせんべいをバリバリ、お茶をごくごく、普通のTVドラマを見てるかのごとく平然とみている。


「詩織、どう思う?」
「わかってないわね」
「やっぱり」
「そうよ、彼女はご奉仕だと思ってるけどこれじゃ攻めよ、攻め。やっぱり男は男のほうからガシカシ攻めるのが好きなのよ。征服欲ってあるじゃない」
「彼が受け好きってことは?」
「それよりも彼女の好きにさせてるって感じがするけど」


ちなみに、都子が告白した次の週末には『済ませた』らしい。
詩織曰く「だって、顔真っ赤にして二人べったりの状態で登校してるんだから、バレバレよ」とのこと。





画面の前は相変わらず都子が上にいて動いている状態。


「ところで……バリバリ……服着たまま最後までいくのかしら。汗かかない?」
「そういうのもあるけど……もぐもぐ……どう見てもお出かけ着のようなんだけど」
「どうせ詩織はそういうのもあるとは思うけどさ」
「当然よ……あっ、脱ぎ始めた」
「うわぁ、しながら脱ぐなんて、いやらしい……途中で脱ぐのもいいわね、今度やってみようかしら」


ようやく、都子が脱いで彼女の体があらわになったところで、二人が固まった。


「!!!」


二人の視線は都子の胸。


「ちょっと……何、この子。こんなにおっきかった?」
「もうぷるぷる揺れてるじゃない」
「なんか柔らかそうで、このおっぱいこそ『ぷに・ぷに・ぷに』すべきじゃないの?」
「片桐さんの予測通りね」
「詩織、3サイズ知ってる?」
「知らない」
「早乙女に電話」
「わかったわ、じゃあ、一時停止しといて」


さっそく詩織が女子の3サイズをすべて知っている男に携帯から電話する。


「もしもし、早乙女君?さっそくで悪いんだけど、1年の大倉都子さんの3サイズ知ってる?」

「……ええっ!」

「ちょ、ちょっとそれ本当なの?!」

「はぁ……自信なくす……」

「ありがとう、それじゃあ……はぁ……」


詩織が携帯を切ると大きなため息。


「詩織、どうしたの?驚いたと思ったらえらい気落ちしちゃって」
「奈津江ちゃん、86、55、84だって」
「……ちょっと待て、それって……」
「私よりウエスト細いのよ!おっぱいも大きいし!」
「ええっ!詩織ってウエスト細いって思ったけど」
「ちょっと聞いてくれる?!今年の1年生って私よりウエスト細い子ばっかりなんだって!」
「ええっ!」
「早乙女君も驚いて何度も調べなおしたけど間違いないって。それ知った夕子ちゃんなんか、かなり気落ちして慰めるのが大変だったって」
「うわぁ……」
「学年がちょっと違うだけでなんでこんなに違うの?信じられない!」
「まあ、女の魅力はウエストだけじゃないわよ!」
「そうよ、必要なのはエロよ、エロ!」
「詩織、それは間違ってる」





「詩織……もぐもぐ……しっかし、この子の腰遣い、すごくない?」
「そうね……はむはむ……上下とか回転とか縦横無尽ね、私でもここまでできないわよ」


気を落ち着かせたところで、また裏ビデオ鑑賞を平然としている二人。
平然と評論しているところでこの二人はやっぱり普通じゃない。


「ところで早乙女で思い出したけど」
「早乙女君がどうしたの?」
「いや、あいつが言うには彼女は変だって」
「それは言うまでもないんじゃないの?」
「まあ、そうだけど、そういう意味じゃなくて」
「どういう意味?」
「いや、彼女とつきあいだしてから、やっかみで彼について嘘の情報を流す野郎がいるんだってさ」
「へぇ〜」
「そんな噂が流れれば、嘘だとわかってても少しは疑うとか一応確かめるとかするでしょ?ところが彼女はまったくしないって」
「そんなに彼を信じてるの?」
「というより、彼女が完璧に無視してるみたい」
「へぇ、すごいじゃない。それが変なの?」
「いや、早乙女が情報収集でそのことを直接聞いた感想では『あれは異常だ』だって。朝日奈も『あたしも一緒について話を聞いたんだけど、聞いてて怖くなった』だって。なんか感じるものがあったんじゃないの?」
「一時期怨念の塊みたいだったからね。でも、もし浮気現場なんかみちゃったら、ブスって刺しちゃうんじゃないかしら」
「おいおい、そんなぶっそうな……でも、ありそうで怖い」
「『あなたを殺して私も死ぬ!』っていいそうでしょ?」
「納得……でも、この彼に浮気なんてできる?」
「う〜ん、最初から恋愛に興味がなさそうだったし、大丈夫じゃないの?美人だし気立ても良さそうだし、なによりもおっぱいおっきくて、こんなに腰振ってくれる人なんてそうそういないわよ」
「まあね……あっ、終わった」


画面の都子は彼の胸に倒れ込んでいる。どうやら終わったらしい。


「詩織、どうだった?」
「30点」
「キビシー」
「メリハリがないわよ。もっと変化をつけたり、休みを入れたりしないと。単純に腰振ってればいいってものじゃないわ」
「う〜ん、それは納得」
「見てておもしろくないわ」
「別にこれ、見せるためのものじゃないし。でもこれではお説教が必要ね」
「そうね。お説教ついでにあの腰遣いを教わりたいわね」
「あっ、それはあたしも」


しばらくは都子「が」この余計なお節介二人に振り回されることは間違いない。
End?
後書き 兼 言い訳
ネットで見る都子のエロ画像って大抵都子が上なんですよね(ぉ
今回は別にそれが書きたいわけではなく、都子のバカップルぶりを書きたかっただけです。
一応その後の都子についてちゃんと説明しておく必要があるので、書いておきました。

あと、ゲーム上のいわゆる「悪い噂無視」というところについて触れてなかったのでそれも書いておきました。
これで都子のストーリーは一応網羅できたかな?と思っています。
とにかく完結できてよかった(ぉ
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