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第3話目次第5話

太陽の恵み、光の恵 外伝

第5集 もし高校野球の女子マネージャーがドッカの国の「マドウショ」を読んだら
~大倉都子の周りの愉快な先輩達~

Written by B
5月も半ばになり、もう春の気配も全くなくなったとある日の放課後。
詩織が奈津江を誘ってどこかへ向かうところ。

「詩織、ちょっとどこ連れて行くのよ」
「生徒会室よ」
「生徒会室?はぁ?私はあんたの仕事の手伝いをするつもりはないわよ?」
「何言ってるのよ。そんなことで呼ぶわけないでしょ」
「じゃあなによ?」
「大倉さんのこと」
「大倉さん?」
「そっ、今日、新聞部が大倉さんにインタビューするってメグが言ってたから、こっそり話を聞こうと思って」
「新聞部が?なんで?」
「久しぶりの野球部の女子マネージャーでしょ?だから、インタビューしたいって館林さんが」
「館林?あのコアラ女が?」
「新聞部の部長なんだって、一応」
「なんであいつが?」
「メグが言うには『部長にしないと編集サボって逃げるから』だって」
「ふ~ん」
「それはともかく、私、大倉さんと面識がないのよね。だからご挨拶がしたくて、それが一番の目的」
「まあ、詩織にもちゃんと会わせたほうが今後のためかぁ……まぁ、仕方ないか」

こんなくだらない会話をしているうちに生徒会室に到着。
扉を開けると、ちょうど都子へのインタビューが始まろうとしていた。





会議用テーブルの前で緊張気味に固まっている都子を挟んで、新聞部のお二人。

「あっ、あのぉ~」
「大丈夫だよ。別に変なことは聞かないし、答えられないことは答えなくていいから」
「あの……隣が珍獣みたいな頭だけど、別に襲わないし噛まないんで安心していいから」
「メグちゃん!」

新聞部の館林と美樹原の二人がインタビューを始めるところに詩織と奈津江が入ってきた。
詩織達は3人の邪魔にならないように生徒会室の隅の椅子に座って話を聞くことにした。





インタビューは館林が行うようだ。

「では、さっそくだけどマネージャーになったきっかけは?」
「はい、一生懸命頑張る人を応援したくてマネージャーになりました」

(一生懸命頑張る『幼馴染み』だよね、きっと)
(間違いないわ)

真面目なインタビューを遠くで見つつ詩織と奈津江はこそこそ話。


「マネージャーが必要な運動部はいっぱいあるけど、どうして野球部に?」
「う~ん、野球部って花形ですし、それに女子マネージャーがいないからやりがいがあるかと思いました」

(幼馴染みが入ったからでしょ?)
(奈津江ちゃん、知ってる?早乙女君の話だと永井君が入った翌日に入部したらしいわよ)
(それ聞いた。明らかに追っかけ入部だよね)


「女子がいないってことで、不安はない?私だったら不安だなぁ」
「いや、頑張っている人をみればやりがいがありますよ」

(愛しい幼馴染みがいれば不安はないわよ)
(っていうか、彼しか見てないよね。詩織みたいにじぃ~~~~っとね)
(だから私はそんなに)
(見てた!)


「野球部にとっては久しぶりの女子マネだから、部員達とかからちやほやとかされてない?」
「そんなことないですよ!むしろ気をつかってもらったりしてこっちが恐縮してしまうぐらいで」

(一人除いてジャガイモと同じだからちやほやも何もないわよ)
(詩織、それは言い過ぎじゃない?)
(でも彼以外男とすら見ていなさそうじゃない?)
(それは確かに言える)


「そういえば、バスケ部の十一夜さんに教わっているんだって?」
「ええ、とても親切な先輩で、自分のところも忙しいのにいろいろと教えていただいて感謝してます」

(えっ?虹野さんじゃないの?)
(恵が言うには、虹野だと死ぬって、後輩の猛反対があったらしい)
(なんか想像できちゃうのが……)


「よく女子マネと選手との恋愛なんか漫画とかであるけど、好きな人とかはいるの?」
「そ、そんなのいませんよ!そんな余裕なんてないですよ」
「う~ん、残念」

(大嘘つきね)
(同感)
(館林さんも聞いても無駄な質問しなきゃいいのに)
(メグが言うには『見晴ちゃんって、いくら止めても聞くんです。紐緒さん以外には』だって)
(さすがにあいつも紐緒には聞けないか)
(メグが言うには『現場も見ちゃってるし、聞いても否定はしないだろうけど、怖くて改めて聞けない』だって)


「じゃあ、1年生で注目の選手はいますか?」
「う~ん、みんないい選手だと思います。誰がいいとかはそこまで詳しくないので」

(そりゃ一人以外ロクに見ていないから)
(いや、それマネージャーとしてまずいでしょ?)
(確かにそうね。そういえば、1年生では彼が一番注目株でしょ?)
(まあ、確かにそうみたいだけど)


「見晴ちゃん。部活の事はいいから、他の話題にしない?」
「そうだね。じゃあ、プライベートのことちょっと聞いていい?」
「え、えぇ、答えられる範囲で」
「じゃあ、きら高に来て勉強は大変じゃない?」
「確かに大変ですね。入試もかなり勉強しました」

(そういえば、あの子、勉強はどうなの?)
(早乙女君情報だと学年真ん中ぐらいだって)
(ふ~ん、そんなもんか。ちなみにお相手は?)
(上の中だって)
(すごくない?もしかして入試でも彼に教わったりとか)
(間違いなくしているわね)


「お友達とはたくさんいそうですけど、実際はどうですか?」
「中学からの友達もいますし、きら高に来ての友達もできました」

(あれだけ女子に声かけまくればそうなるわよ)
(でも性格はよさそうだから、そんなことしなくても彼女は友達できるわ)
(詩織とは正反対)
(そんな私につき合ってる奈津江ちゃんはどうなのよ)
(私は寛大なレディーだから)
(よく言うわよ、夜にはレディーなんて似合わないほど布団の上)
(それ以上言うな!それは詩織もでしょ!)


「部活で忙しいとおしゃれとかの余裕なんてあるの?」
「う~ん、そんなにおしゃれとか気を遣うほうではないんですけど、日曜で部活がないときは買い物に行ったりしますよ」

(たしかに、そんなに着飾るようなタイプじゃないわね)
(スタイルはかなりいいみたいよ)
(そう?見た目スレンダーな感じにしか見えなかったけど)
(早乙女君から数字は聞いてないけど、『あの子、間違いなく着やせしてるわ!』って片桐さんが言ってたのは教えてくれた)
(うわぁ、彩に目を付けられたか。ならば確かかもしれないけど……)
(白雪さんも大変みたいだしね)





「ねぇ、ちょっと聞いていいですか?」

ここまで館林の質問を横で黙って聞いて記録していた美樹原が初めて質問を始めた。

「はい、なんでしょう?」
「その鞄についている人形は?」
「えっ?」

美樹原が指さした先にはテーブルの上に置いてあった都子の鞄。
そこについているひとつの人形。
うさぎの人形なのだが、手には鉄パイプを持っており、どことなく怖い。


「それ、昔のホラー映画にでてきたキャラクターの人形なんだけど、何で付けてるのかなって」
「これですか?これは昔お父さんからもらったので、気に入っているものなんですけど、ホラーだったんですか?」
「そうなんです。怖さとしては初心者向きのアメリカ映画で結構シリーズ化されているんです。このシリーズって終始暗闇のシーンが多くて、お話も不気味な宗教団体がいつも絡んで、それがまた恐ろしさを増しているんです。爆発的なヒット作はないんですけど、常に安定した評価を得ているシリーズですね。最近も新しいシリーズが公開されててそこそこに好評みたいで……」
「メグちゃん、そういう話は別にいいから!」
「あっ、ごめんなさい……」

(美樹原、暴走してない?)
(メグったら、ホラーには目がないんだから……)
(ところで、美樹原のホラー好きは相変わらずなのか?)
(最近、ホラーマニア向けのブログ始めたとか言ってたわよ。私は怖くて見てないけど)





「せ、先輩、ところでこのうさぎさんが……」
「確かあの映画って結構古くて、その人形も結構古いはずなんだけど、かなり物持ちがいいからびっくりしちゃって、つい……目とかも直してるでしょ?」
「えっ?」
「ほら、右目がボタンになってる。これ大倉さんが直したんでしょ?」
「え、ええ……」

美樹原が指摘したうさぎの人形の右目は確かに左目と違っている。
目の大きさよりもすこし大きいボタンで縫いつけてあった。

(ねぇ詩織、これは私の勝手な想像だけど……)
(彼と関係があるんじゃないかってことでしょ?)
(そうそう!彼女がボタン指摘されてちょっと戸惑ってるでしょ?)
(なんか不自然よね)

美樹原がどうでもいい話に持ってきたところでインタビューは終了となった。





しばらくして新聞部の2人が先に退出したところで、生徒会室の隅にいた2人が少し疲れた様子で座っている都子に近づく。
都子とお知り合いの奈津江が声を掛ける。

「大倉さん、お疲れ」
「あっ、先輩こんにちは」
「大変だったね。あれやこれや聞かれちゃって」
「いや、そんなことはないですよ」
「まあ、野球部のPRだと思えば楽なもんよね」
「そうですね」

ようやく緊張がほぐれた様子の都子の前に詩織が立つ。

「大倉さん、お疲れ様」
「あっ、あのぉ、先輩は……」
「あれ?この人知らないの?生徒会長のバーター」
「バーターとは失礼ね。あらごめんなさい。私は藤崎詩織、鞠川さんのお友達」
「あっ、藤崎先輩でしたね、失礼しました」
「ううん、謝らなくていいわ。大倉さんのことは奈津江から色々聞いてて、ちょっとご挨拶したいな、って思って」
「私はそんな人間じゃないですよ」
「そんなことないわ。インタビュー聞かせてもらったけど、しっかりしていて関心するわ」
「そ、そんな大げさな……」

すこし照れ気味な都子に対して、詩織が本題に入る。

「ところで大倉さん。好きな人いるでしょ?」
「えっ?私はそんな人……」
「隠さなくてもわかっているわ。奈津江も私もお見通し」
「………」
「安心して、誰にも言わないし、これ以上聞かないわ。でも、もしそういう事で困ったことがあったらいつでも私たちに相談して?何でも助けてあげるから。私たちは大倉さんの味方よ」
「は、はい……ありがとうございます……」

顔を真っ赤にして恥ずかしそうにしながら頭を下げる都子。
こうして都子と詩織の顔合わせは終わった。





「ちょっと!ストレートに聞いてどういうつもりよ!」
「どういうつもりってああいうつもりよ」

都子が部屋から出たところで、奈津江が詩織に詰め寄った。

「だから!」
「もし、彼女が恋愛で困ったときに私たちに助けをもとめてくれれば嬉しいじゃない?私たちも彼女に親身になって相談に応えられるし」
「確かにそうだけど……」
「本当に相談してくるか、ってことでしょ?私だって見込みは薄いと思うわ。でも、そういう手も作ってあげておくだけでも彼女は安心すると思うのよ」
「まぁねぇ、万が一聞いてくれればラッキーってところ?」
「そういうところね。恋愛って結構ナイーブだから、他人に聞きにくいところもあるし。私は誰にも相談できなかったし、奈津江ちゃんも相談したの私だけでしょ?」
「そうね、私も詩織に藁をもつかむ思いで助けを求めたから……」
「それに、ああ言っておけば、いざってときにこっちからも介入できるでしょ。まあ、そういう状況にならないのが理想だけど」
「そうね。うまくいけばいいんだけど……進捗ないんだよねぇ」


結局、彼女の動きを待つしかない2人だった。
To be continued
後書き 兼 言い訳
都子のうさぎさんについてです。
これを出さないと話が始まりませんからね。

しかし、都子みたいな美人マネージャーが入れば学校でも評判になると思うんですがどうなんでしょうかねぇ?
主人公以外へのマネージャーぶりは本編ではほとんどみられませんがしっかりやっていると思いますがね。
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