太陽の恵み、光の恵 外伝
第5集 もし高校野球の女子マネージャーがドッカの国の「マドウショ」を読んだら
〜大倉都子の周りの愉快な先輩達〜
その9 ウサギさん、暴走
Written by B
日曜日、とある閑静な住宅街。
奈津江と詩織が都子の家にやってきた。
家の前に到着し、さて入りましょう、というところでどうも躊躇している二人。
「ここだよね、奈津江ちゃん」
「ええ、彼女から聞いた住所はここなんだけど」
「なんか、おかしくない?」
「詩織もそう思う?」
「ええ、なんか変な感覚がして……」
どうも都子の家に変な違和感を感じている様子。
そんなところでいきなり。
「キャー!!」
「ちょっと、今の大倉さんじゃない?!」
「間違いないわ。行きましょう!」
いきなりの都子の悲鳴。
状況を理解しようとする前にとりあえず家へと突入する二人。
ガチャ!
「大倉さ!……!?!」
「!?!」
ガチャ!
「ちょっと!詩織、なんで出ちゃうのよ!」
「奈津江ちゃんこそ!」
二人とも勢いよく入り込んだはいいものの、目の前の状況に思わずまた家を出てしまった。
玄関の前でしゃがみ、顔を寄せ合う二人。
二人とも息が荒く、顔も少し紅潮している。
声は小さいものの語りは早口になっている。
「詩織、ちょっと状況を整理しない?なんかちょっと頭が混乱しているんだけど」
「え〜と、頭から血流して倒れてるのたぶん彼だよね」
「そう、その近くに……なにあれ?」
「なんかピンクで耳がぴょーんと、えっ、うさぎ?」
「そうだそうだ、うさぎよ!うさぎみたいな化け物が彼を何かで殴ってた!」
「で、大倉さんが隅でおびえてたと」
状況を理解した二人。
「あれ、化け物よね」
「まちがいないわ」
「ちょっと、あれどうするのよ!?」
「奈津江ちゃんなんとかならないの?月に代わってお仕置きとか言って」
「なんで、私がそんなこと言うのよ!」
「あれ、月じゃなかったっけ?金星とか水星とか?」
「そういう問題じゃない!だいたい、なんでそんな古いのを」
「だって、新しいほうの決めぜりふ知らないから」
「余計訳わからないわよ!しかし困った。私たちじゃ何とかならない雰囲気だったし」
「誰かいないの?」
「こうなったら、聞いてみましょう」
詩織は自分の携帯を取り出して、メモリに入っている番号を呼び出した。
電話の相手はすぐにでた。
『もしもし、藤崎さん?』
「あっ、白雪さん?今大丈夫?」
『うん、ちょうどバイトの休憩時間だけど」
「ねぇ、化け物退治の知り合いっている?」
『……は?化け物?』
「化け物、妖怪、モンスター、そういった人いない?急いでるの!」
『……あのねぇ、いくら私が顔が広いって、そんな人知ってる……』
ここで電話の向こうの声が止まった。詩織はそれの意味に気づいた。
「いるのね?!」
『一人、心当たりはいる……』
「ちょっと連絡してくれない?」
『わかった、なんかよくわからないけど連絡してみる」
「お願いね!」
直ぐに詩織は電話を切った。
その詩織にぽんぽんと肩をたたく奈津江。
「詩織、ありがたいんだけど……」
「何?」
「場所言ってないでしょ?」
「あっ……」
「まったく……意味ないじゃん」
「私も動転していて……あっ、もう来た!」
すぐに携帯に電話が来たようですぐに出る詩織。
「もしもし、白雪さん」
『あっ、藤崎さん?さっきの人と連絡ついた』
「どうだって?」
『うん、ちょうど専門家の人と近くにいるから直ぐに向かうって」
「えっ?場所何も言ってないよね?」
『きらめきでしょ?なんか妖気がすごくてすぐにわかるって』
「そうなの?とにかく待てばいいのね?」
『そうみたい。じゃあ、私はもうバイトの時間だから』
「ありがとう、じゃあ切るわね」
すぐに携帯を切った詩織
そして大きく安堵のため息。
「ふぅ……」
「どうだって?」
「なんか専門家の人がすぐに来るって」
「専門家?」
「そう言ってた……あれ?あのバイクがそう?」
すぐに家の前に止まったバイク2台。
そのうち一人は降りてヘルメットをバイクにしまうやいなや、ライダースーツのまま玄関に向かって一直線、
「邪魔するよ!」
「きゃっ!」
と2人に見向きもせずに押しのけて玄関の中に飛び込んだ。
そしてもう一人がゆっくりとやってきた。
「あなたたちが白雪さんに電話した人?」
「ええ、そうですけど……あれ?あなた、ひび高にいなかった?」
そのもう一人の顔に覚えがあったのは奈津江。
「ええ、あなた、たしかきら高のバスケの」
「そう、そうするとひび高のバレーの」
「ええ」
奈津江が話している横で詩織が奈津江の服を引っ張る。
「詩織、なにしてんのよ?!」
「ねぇ、この人誰?」
「ひび高でバレーのキャプテンの八重花桜梨よ。80に花に桜って書いて」
「八重……えっ、あの噂の?」
「そう、どうもそっちの噂も広まってるようだけど」
白雪から連絡を受けた花桜梨は苦笑い。
それに対して詩織が普通の表情で聞き始める。
「あなた、今度の大河の人でしょ?」
「いや、違うんだけど……」
「ほら、八重で桜で」
「ただ似てるだけなんだけど……」
「火縄銃とかでバシバシ撃ちまくってるんでしょ?」
「さすがに私もあんな古い銃は撃ったことが……それに火縄銃じゃなくてスペンサー銃という騎兵用の銃で……」
「詩織!そんなボケ質問やめなさいよ。それにあんたも何でそんなに詳しいのよ?!」
どうも奈津江が止めない限りとまらない質問だったようだ。
こんどは奈津江がまともな質問をする。
「ところで、白雪から専門家って聞いたんだけど、さっきの人がそうなの?」
「ええ、専門家」
「専門家ってどういうこと?化け物の?」
「う〜ん、私も少しは話せるんだけど国家機密とかアンダーグラウンドとかそんな話であまりに危ないから……」
「それならば是非「いえ、結構です!」」
「うん、知らない方がいいことがある。じゃあ、私も手伝ってくるから、状況は後で教えるわね」
そういうと花桜梨は玄関の中に入っていった。
残されたのは不満そうな顔の詩織と詩織の尻をおもいっきりつねったまま怒っている奈津江。
(なによ、ケチンボ)
(そんなとこまで足を突っ込まなくていいの!)
2人は顔でそんな会話をしていた。
To be continued
後書き 兼 言い訳
さて、さんざん暴れたウサギさんには引っ込んでもらわないといけません。
書いてみたら意外と長かったのでここで区切りました。
(長かったのはボケ会話を二ついれたからではありません、念のため)
さて、名前は出してませんが、「専門家」とはもちろん「いくら都子がヤンデレ・ウサギさんと言っても、この人以上にぶっ飛んではないでしょ?」こと神条芹華です。
ときメモSSは十何年間星の数ほどありますけど、都子から芹華までつなげられるSSってないでしょ?
「恵」だからできる、以下のホットラインがなければ、こんなSSは書けません(だって収拾つかなくなる)。
都子→(マネージャー)→恵→(友人)→奈津江→(悪友)→詩織→(知り合い)→白雪真→(知り合い)→花桜梨→(バイク仲間+お互いの裏を知っている)→芹華
そういうわけで次回はこの専門家さんに真相を語ってもらいます。