目次第1話

太陽の恵み、光の恵 外伝

第3集 同棲日記〜奈津江と勝馬〜

Written by B
夏真っ盛りのある日。

「こんばんは〜」
「いらっしゃい。入って入って」
「おじゃましま〜す」

とある、安アパートの一室。
6畳の部屋とキッチンの1Kの小さな部屋。

そこを訪れたのはあの藤崎詩織。
詩織はピンクのワンピースという見た目はおしとやかな格好。
そして出迎えたのは詩織の親友で同じきらめき高校の同級生の鞠川奈津江。
奈津江は黒のスパッツに男物の青の縦縞の半袖ワイシャツという格好でお出迎え。

2人はいま高校2年生。
今日は初めて、詩織が奈津江の家にやってきたのだ。



「へぇ〜、綺麗な部屋だね」
「まあね、これでも頑張って掃除してるから」

部屋はテレビとテーブルとタンスがあるっきり。
残りは押入に詰め込んであるようだ。
必要最小限の物しか揃えていないような感じだ。

「でも、これだけで生活できるの?」
「まあ……最小限にしないとスペースが足りなくてね……」



「それで旦那さんは?」
「え、えっ?だ、だ、旦那さまって……」
「芹沢くんよ。どうしたの?」
「い、いや、か、戎谷くんのところに遊びに行くって……あははは」
「な〜に赤くなってるのよ。もうそんな赤くなってもしょうがないじゃない?」
「で、でも旦那様っって……」

詩織が奈津江の旦那と呼んでいるのは同じきらめき高校の芹沢勝馬のこと。
奈津江とは幼なじみでもある。


そして、2人は今、ここのアパートで一緒に暮らしている。



奈津江と勝馬。
実は高1の夏から同棲しているのだ。
しかも、当時は恋人ではなかったのに。
実際に恋人になったのは冬になりはじめの頃。


まあ、同棲と言っても、同棲どころか中学のときに子供作って婚約までしている高校生夫婦がひびきのに住んでいるのだが、あれは特殊のなかの特殊な例。

普通は高校生で同棲といったら学校で大騒ぎになること。
下手をしたら不純異性交友として問題になりかねない。
しかし、今では学校にも認められて今の生活に至っている。



「しかし、同棲なんてなぁ……うらやましいなぁ」
「な、なによ、詩織だってすぐに高見くんの部屋に行けるんだったら、同棲のようなもんじゃない」
「え〜、違うよ?だって、一緒に晩御飯食べないし、一緒にお風呂に入らないし、朝は一緒のお布団で……」
「うわぁ〜、もう言わないでぇ〜」

奈津江は顔を真っ赤にして詩織を止めさせる。

「でも、大変だったんじゃない?同棲って」
「まあね、最初は恋人でもない……好きだったけど……男と一緒だったからね……」
「ふ〜ん」
「生活は今でも大変よ。でもそれが楽しいから、大変とは思ってないな」
「そうなんだ……」

詩織はそういうとフラフラと立ち上がる。



「あら?」

詩織がタンスのところに何かを見つけたようだ。
タンスの前に立ち、開いたままの引き出しから見えたものを取り出す。

「これは……日記?」
「うわぁぁ!詩織だめぇ!」

奈津江が顔を青くして詩織に飛びついた。

「ふ〜ん、奈津江ちゃんの日記なんだぁ」
「しおり〜、お願いだから〜」
「芹沢くんとのあ〜んなことやこ〜んなことを書いてあるんだぁ〜」
「そんなこと書いてないよぉ!」

詩織は日記を胸にきつく抱きしめて、奈津江に捕らえないようにする。
奈津江は日記を詩織から奪おうとするがうまくいかない。

「ふ〜ん、恥ずかしくない内容だったら、私がみても大丈夫だよね♪」
「ま、まあ……」
「じゃあ、決まり。この日記読もうっと!」
「……もう降参。好きにしていいわよ」

奈津江は両手をあげて降参のポーズを取る。
これ以上詩織に抵抗しても無駄だと判断したのだろう。



「ところで、芹沢くんの日記は?」
「え〜と、ここにあるはずだけど……」
「けどって知らないの?」
「中身なんか見たことないし、この引き出しは勝馬用で鍵が掛かっているから……」
「ふ〜ん、それなら開ければいいのね」
「え゛っ……」
「あっ、あった!これで……」
「あ、あの……」

詩織は部屋中を探して、針金を見つけた。
それをすこし折り曲げると、奈津江が唖然としているのを横目に引き出しの鍵に針金を入れる。



がちゃっ



「あっ、開いた♪え〜と……これだね」
「……すごいね……」

詩織は引き出しを開けると勝馬の日記らしきものを見つけた。
それを嬉しそうにテーブルに持っていき奈津江の日記と並べる。

「奈津江も知りたいでしょ?芹沢くんがどう思っているのか」
「そ、そりゃそうだけど……」
「大丈夫。芹沢くんには秘密にしてあげるから」
「……わかったわよ……」

奈津江はあまりのことに文句をいくつか言いたいのだが、
勝馬の日記を見たいという欲望に負けてしまった。



「わ〜い♪愛の同棲日記がザッピングで読める〜♪」
「………」

抵抗する気力を失った奈津江の横で詩織は二つの日記を開いた。
To be continued
後書き 兼 言い訳
第3集は奈津江と勝馬のCDカップルのお話です。
本来は夕子&好雄が筋なのですが、このカップルの話は詩織と公人の話に大いに絡んでいるので、そっちが進まないと変えないのです。

というわけでこっちが先になりました。

こちらは2人の日記をみて、詩織が言いたいことを言い放つ形式になると思われます(笑)

そういうわけで最初は高校入学の頃になると思われます。
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