太陽の恵み、光の恵 外伝
第3集 同棲日記〜奈津江と勝馬〜
その6 相談
Written by B
「それで、私に相談したんでしょ?奈津江ちゃんも相当追いつめられてたみたいね」
「どうして?」
「だって私に相談したこと自体相当。だって、学校中から嫌われ女の私によ?他に相談する人いなかったの?」
「それがさ……一番最初に思いついたのが詩織だったのよ。だって、幼馴染みって感覚を理解してくれそうなの、詩織だけよ。恵はあんな調子で相談できるわけないし、他の人も……」
「なるほどね」
7月※日 晴れ
どうしようもなかった。
放課後、帰ろうとする詩織を無理矢理屋上に連れていって二人っきりで相談。
しょうがないじゃない。あたしの気持ちを理解してくれるの詩織だけだから。
それでも詩織はあたしの言うこと黙って全部聞いてくれた。
詩織は一言だけ「親に正直に言ったら?言わないと後悔するわよ」って言ってくれた。
そうだよね。悲しんでいただけじゃしょうがないよね。
言わないと何も始まらないよね。
詩織、ありがとう。
おかげで勇気が出そう。
7月☆日 晴れ
夜。お父さん、お母さんと話をした。
正直に全部話した。
引越は嫌なこと。
それは勝馬と離れるからだということ。
勝馬がどうしようもなく好きだということ。
恥ずかしいとかそんなことは気にならなかった。
とにかく自分の気持ちを精一杯に伝えた。
二人とも黙って聞いてくれた。
「考えてる」って言ってくれた。
もしかしたら……希望が持てそう。
本当に正直になってよかった。
「本当に詩織の一言がなかったら今頃どうなってたか……」
「そんなに役に立った?」
「もちろんよ!だから、いまもこうしているわけだから。でもよく、あの状態でアドバイスしてくれたわね」
「そうよ。一番荒れてた時よ。正直うざったくて返事もしたくなかったんだけど、奈津江ちゃんを見ているつもりが自分自身を見ているようで」
「詩織の?」
「そう、『正直に言ったら?』って私への言葉でもあったの。私も自分の気持ちに正直になってたらこんなことにならなかったのに……って。だから奈津江ちゃんには後悔してほしくなかった」
7月◎日 くもり
うれしい!
引越しなくていいって!
家は売るから、私も引越しなくちゃいけないけど、きらめきに残っていいって!
生活費もなんとか仕送りしてくれる。
本当に私のわがままを聞いてくれた!
泣きながら何度も何度もありがとうありがとうって言った。
1学期が終わったときに引越しなくちゃだけど……
「どんな生活でも我慢できるな?」ってお父さんから聞かれたけど、
もうなんだって我慢できる!
できるだけお母さんたちに迷惑かけないようにしないと。
なんか嬉しくてしょうがない。
「ほんと、嬉しそうね」
「大喜びだったわよ。もう後で思い出したら恥ずかしくなるぐらい」
「でも、このときは狭いアパートで一人暮らしを想定してたんでしょ?」
「そうよ……冗談でも勝馬の部屋に引っ越すとは思ってもみなかったわよ。っていうか、そんなこと普通頭の中にないわよ」
7月○◆日 晴れ
いよいよ引っ越しの日。
お母さん、お父さんはトラックで行ってしまった。
私には今日から住む場所への地図。
荷物はさっきトラックがでて、今頃荷下ろしでもしているのだろうか。
しかし、なんか知っている道を歩いているなぁ……と思ったら。
なんで勝馬の部屋に荷物があるの!
勝馬もあたしもしばらく呆然としちゃったわよ。
何度も地図を確認したが、たしかに勝馬のアパートで部屋番号も勝馬の部屋。
間違いない、今日から勝馬の部屋で生活しなくちゃいけない。
確かに勝馬が好きとは言ったわよ。
だからって……どうすればいいのよ!
7月○◆日 晴れ
俺、頭が混乱してる。
今朝いきなり引っ越しの人が来たと思ったら、荷物をどんどんと運び入れてきた。
意味がわからず呆然としてたら、玄関に呆然としている奈津江が。
よくみると大昔、奈津江の部屋にあったような家具があるような気がしてきた。
で、俺と同様に混乱して立ちつくしている奈津江を無理矢理部屋に引き込んで、冷静にさせてから話を聞いたが。
奈津江と同居?
ちょっと意味がわからないんだけど。
もっと詳しく聞いてみてなんか事情が見えてきた。
おじさんとおばさんが急に引っ越すことになったけど、
奈津江は残りたくて、それで両親が勝手に俺の家に同居することになったと。
それでも意味がよくわからないがそういうことらしい。
なるほどな、どうも奈津江がおかしいかとおもったら引っ越しかよ。
だからって俺と同居って……俺、男だぞ。
だめだ、考えるとよけいにわけがわからない、もう寝る。
「あらあら、2人ともテンパってるじゃない」
「当然でしょ!2人ともなにも聞いてなかったんだから」
「あれ?普通芹沢くんに話をしているかと思ったんだけど」
「いや、相当後でわかったんだけど、荷物と一緒に勝馬への手紙を添えてあったみたい」
「後で?ってことは見てなかったの?」
「混乱のどさくさでゴミにしちゃったみたい」
「ふ〜ん、で、次の日からドキドキハラハライヤ〜ンな同棲生活が始まるわけね」
「……詩織、3つのうち、本当に期待してるの最後のだけでしょ?」
「当然じゃない♪」
ボカッ
「いたぁ〜い、グーで殴った!」
「いい加減にしなさい!」
To be continued
後書き 兼 言い訳
ようやく前段が終わったよ……(汗
次からいよいよ二人の同居生活が始まり、ストーリーが本題に入ります。