第12話目次第14話

Fieldの紅い伝説

Written by B
インターハイ予選の次の日から、女子サッカー部は新チームになった。
主将はほむらに決まった。これについては誰も異論はなかった。

そして練習試合に向けた背番号が発表された。
監督の公二がユニフォームを一人一人に渡す。



「八重さん、まずはこれね」
「はい、絶対に点は入れさせませんから」
「とりあえず、頼むね」

花桜梨は「1」
無論正GKの座は不動のものだ。



「美幸ちゃん。これが欲しかったんだろ?」
「わぁ〜、うれしぃ〜、美幸、カンゲキ〜!」

美幸もレギュラーとなった。
背番号は「2」
彼女に取ってはレギュラーよりも「花桜梨と番号が隣」ということが嬉しかったようだ。



「光………頼むぞ、光がこのチームを動かすんだぞ」
「うん、公二………絶対に全国大会にでようね………」
「お〜い、ラブラブなのはいいけど、次がいるんだ、さっさと渡せよ」
「あっ、ご、ごめん………」

光は念願の「10」を手に入れることができた。
これはすなわち、このチームの司令塔は光であるということを示している。
無論だれも異論はない。



「ほむら、秋は期待してるよ」
「ああ………秋は全試合出るぜ………あの悔しさは絶対に忘れねぇ………」

ほむらは「11」のまま。
押しも押されぬエースストライカーである。



こうして控えまでユニフォームを渡したところで、
ふと、誰かが気がついた。

背番号「9」の人がいないのだ。

「ねぇ、9番の人がいないんだけど」
「あっ、本当だ!おい公二、忘れたのか?」
「いいや、忘れてないが」
「じゃあ、誰か渡したの?」
「いや、誰にも渡してない」
「どういうことだ?」

「背番号9はもう少し考えさせて欲しい………まだはっきりと決められないんだ」
「でも、大会前には決めるんでしょ?」
「もちろんだよ」
「じゃあ、控えはみんなチャンスがあるわけだな!」
「まあ………そういうことに………なるのかな?」
「?」

光以外は、公二の様子が変だったのに気がついていなかった。



その日の放課後。
学校からの帰り道。
公二と光は一緒に帰っていた。

「ねぇ、公二」
「なんだ?」
「もしかして………9番ってもう決まってるんじゃないの?」
「うっ………」
「みんなは騙せても、幼馴染みは騙せないのよ♪」

「光にはごまかせないか………」
「公二、何考えてるの?」
「いいか、これは秘密事項だ、絶対に誰にも言うなよ」
「うん、了解了解!」

確認を取った、公二は光の耳元でささやく



「実は………ごにょごにょ………」
「えっ〜〜〜〜〜!!!」



「ば、ばか!声が大きい!」
「ごめん………でもそれ本気なの?」
「ああ………ずいぶん前から考えていたことだ」
「確かに………でも大丈夫?」
「ああ、それには問題があるんだよな………」
「うん、それって難しいね………」

二人の間で再びこの話題が持ち上がるのは当分さきのことになる。



そして、1ヶ月後。
ひびきの高校ときらめき高校の交流戦の日が再びやってきた。

きらめき高校はインターハイで全国大会に進出したので、3年生はまだ引退してない。
しかし、ひびきのがもう引退したので、きらめきも2年生以下のメンバーで固めてきた。
とは言っても、2年生が強力で約半分がレギュラーという状態なのだが。
それでも今はベンチの選手もいるが、秋ではレギュラースタメンというメンバーを用意するそうだ。

そしてひびきの高校にきらめきの選手がやってきた。
きらめき女子サッカー部は近辺でも有名なので、観衆もまた多い。
とくに望に対する歓声は特に大きい。もちろんほとんどが女子なのだが。



そしてお昼ごはん。
女子サッカーの試合は午後3時なのでまだ時間がある。
他の部活を見学しながらの御飯になる。

グラウンドでは男子サッカー部の試合の準備が進められている。



そんな中、公二の前には二人の美少女。
二人の手にはお弁当箱が二個ずつ。

「………またか………」
「だから、お母さんに味見してもらったから大丈夫だって!」
「私も同じよ。だから安心して♪」
「そうか………じゃあいただくよ」
「♪」
「♪」

公二の言葉を聞くと二人は公二の両隣に座る。
今日の二人のお弁当はなかなかのできだった。

それもそのはず。
二人とも今日のために1週間母親の指導のもと特訓を積んだからである。

公二の様子を見て、二人は喜んでいたのは言うまでもない。



3人で仲良くお弁当を食べながら会話が始まる。

「きらめきの2年生はどうなの?」
「もう半分レギュラーだからね、ここ数年で最強だってコーチが言ってたよ」
「………」
「何自信なくしてるんだ、うちだってここ数年で最強だぞ!」
「それは、いままで弱かったからでしょ………」
「うっ………まあ、大丈夫だ。今日は負けて当然だから」
「ははは、お世辞を言ってもなにも出ないよ………それにあいつは注意しないとな」
「えっ?」



「おお!今日は3段重か!いつも試合のときはすまないなぁ」
「うん、いつもの事だけど、よく食べるね」
「当たり前よ!90分動き回るんだ。これぐらい食べないとな」
「そうか、そんなに喜んでくれるならボク嬉しいよ」
「試合は見てくれるよな?絶対にゴールするからな!」
「うん!期待してるね」



「あれがうちのエースなんだけど……」
「食べ過ぎじゃないか……」
「しかし、あれで強いシュートを打つんだろ?パワーはありそうだから危険かもな」
「ああ、背は小さいけどなめると痛い目に遭うぞ」
「覚えておくね、でもうちのFWは最強なの」
「えっ?」
「ほら、あそこにいる二人」
「あっ……美人が二人……」
「光、そんなところを見るな……」



「あ〜あ、私も早く京ちゃんみたいにスタメンで出たいなぁ」
「よくいうわよ、シオ。後半途中から出ておいしいところを持っていくのは誰よ?」
「そ、そんなことないわよ。でも早くレギュラーになりたいのよ」
「ふ〜ん、『ナオトちゃんと同じ11番が欲しい』って訳?」
「……京ちゃんの馬鹿……」
「図星みたいねぇ、じゃあ、試合でナオトちゃんに活躍するのを見てもらわないとね♪」
「………」



「えらく楽しそうだな……」
「ああ、あの二人は小学校からのライバルだからな」
「小学校から?」
「小学校では剣道、中学ではバスケ。違う学校だったけど仲が良かったそうだ」
「へぇ〜、ライバルで仲良しか……」
「『一緒のチームでやりたい』ということで、この部に入ってもうレギュラー、本当にすごいよ」
「望さんだって、レギュラーじゃない」

「あの二人は光と同じで、高校からだ。1年でレギュラーになるのは相当努力が必要だよ」
「ライバルがいるからかなぁ?」
「あたしもそう思う。だからあの二人がすごく羨ましいんだ……」
「そうだね、羨ましいね……」

「でもあたしには光さんがいるからな」
「私だって、望さんというすごいライバルがいるからね♪」
「おっ、じゃあ試合ではライバルということを見せてもらおうかな♪」
「うん、負けないわよ!」



「……光の言うとおりだ、あの二人もなかなか……」
「ちょっとまだ見ていたの!」
「ご、ごめん!一瞬の気の迷いで……」
「確かにあの二人は、学校で一二を争う美人だからな……」
「もてるんだろうね……」
「そうなんだよね……」

(でも私は……)
(公二君一人がいてくれればいい……)

「でも、望さんだってもててるでしょ?」
「えっ?」
「あんなふうに」



「おねぇさま〜!一緒にストレッチしよ〜」
「でもストレッチとかいって、体を触らない?」
「大丈夫だって〜……やさしくするから……」
「そういう問題じゃないって……」
「美幸、おねぇさまとスキンシップがやりたいんだな〜」
「………」



「ど、どういうことかな?光さん?」
「あはははは……」
「試合ではただじゃすまないわよ……」
「あはははは……」



そうしているうちに、男子サッカーの試合が終わった。
結果は2−2引き分けだった。
こうなると女子サッカーの試合に注目が集まる。

下馬評ではきらめきがやや有利。
いよいよ試合が始まる。
このスタメンで試合が始る。

 
Go to Next Game.
後書き 兼 言い訳
半月ぶりの第13話です。
光と望の初対決といきたかったのですが、もったいないので2,3話ぐらいに分けることにしました。

まずは試合前の様子です。
ただの主な人物の顔見せになってしまいました(汗

一番下にスタメン表を自作しました。
わかりやすいでしょうか?

ここでいきなり登場、ヘアバンドのヒロイン藤崎詩織(爆
彼女はまだレギュラーではありません。チームの「スーパーサブ」です。

そして、もう一人のFW。
ご存じの方はもうおわかりだと思います。
安房守さんが「AQUA STREET」にて連載中の「DANCING,QUEEN」に登場している久遠寺 京がモデルです。
彼女のキャラクターが気に入っていて、安房守さんに「京ちゃん貸してくれ」と頼んだところOKして頂きました。
彼女は(たぶん)試合にしか登場しないのですが、それでも貸していただいた安房守さんにはここでお礼を申しあげたいと思います。

あっ、きらめきのスタメンに聞いたことがある名字があと2名ほどいますが、気にしないでください(汗
まったく話に登場しませんから。
それぞれの頭の中で勝手に動かしてください(こら

次回は光と望の本当に初対決をします。
1話でおわるか、2話に分けるか、これから考えます。