第13話目次第15話

Fieldの紅い伝説

Written by B
きらめき高校のキックオフで試合が始まる。

センターサークルの望が右サイドにボールを回す。

ぼんっ!

そこにひびきののMF木場がボールを取りに来る。
するときらめきの右サイド中津はすぐに左に大きくボールを回す。
そこには予定通りと言わんばかりにきらめきのMF早乙女が待っていた。

もちろんそこにMF葛西とDF竹橋がマークに向かう。

「先輩、お願い!」
「えっ!」

ところが早乙女はそれを予測していたかのようにあっさりと後ろにパス。
そこには望が待っていた。
そして大きく右サイドにボールを回した。



きらめきMF鞠川がボールを受け取る。
すぐさまドリブル突破をはかる。

「まずいわ!パスコースを消して!」
「OK!」

花桜梨のかけ声でセンターDF中野がボールを奪いに走り出す。
中野が鞠川に追いつこうとしたとき、

ぼんっ!

鞠川は前を見たまま、左サイドにボールをパスしたのだ。
フェイントに近いパスに誰も対処できない。
そのままボールは再びきらめきの早乙女に渡る。
そしてドリブルで一気にひびきののゴールラインにまで進む。



必死で奪いに行くDF竹橋が追いつく前に早乙女が低めのボールでセンタリングをあげる。
そのボールはそのままきらめきFW久遠寺に一直線に向かう。

「絶対にゴールは入れさせないわよ!」

センターバックの二人がシュートを打たせまいと久遠寺の前に遮る。

「シオ!」
「なにぃ!」

ところが、久遠寺はボールを止めず右に流してしまった。
絶妙なスルーパスである。
センターバックはもうボールには追いつけない。
そしてそのボールはもう一人のFW藤崎へ。

「いそいで!」
「まかせて〜!」

今度は戻ってきた美幸が止めに入る。
そして花桜梨がシュートコースを消す。

「……うふふ……」
「!!!」

ところが、藤崎は顔はまっすぐ前に向いているにもかかわらず、
そのまま右にパスしてしまった。
顔の向きに気を取られた二人はボールを見失う。

そしてそのボールを前にあがってきた鞠川がシュート!

ピピーッ!

開始3分

きらめきはひびきのに1回もボールを触らせずにゴールを決めてしまった。


ひびきの 0−1 きらめき



会心の攻撃にきらめきの選手は喜び出す。

「奈津江、やったね!」
「詩織と京ちゃんのおかげよ!」
「あ〜あ、あたしはアシストもなしか……」
「京ちゃんそんなにいじけなくても……」
「またシオがおいしいところを……」



(すげぇ、パスが速すぎる……)
(組織のまとまりがすごい……)
(右へ左へボールが動き回ってる……)
(どこからでもゴールが奪えそう……)

前線で待っていた光とほむらはただ呆然と見ているしかなかった。



一方ずたずたにやられてしまったひびきのディフェンス陣
GKの花桜梨とDF4人が話し合っていた。

「やられたわね……」
「おねぇさま、ごめんなさい……」
「別に美幸ちゃんだけが悪くないわよ」
「しかし、完全に振り回されたね」
「下手に近づくとパスでかわされるのがオチね」
「とにかく……私たちはラインディフェンスを徹底しましょう」



ボールは中央に戻って試合再開。

一旦後ろに回して光とFW陣は前に向かう。

そんなに時間はかからずにボールは光のもとに帰ってくる。
光はゴールに向かって一直線にドリブル突破をはかる。

(向こうが横ならこっちは縦よ!)

きらめき攻撃陣の武器はグラウンドを無駄なく使う、ダイナミックなパス回しである。
これに対してひびきの攻撃陣の武器は強力な縦の突破力なのである。



そして光は目の前で守っている望のところに一直線。

(やっと、望さんと勝負できる……)
(そう来たか……ならば負けないよ)
(絶対に抜いてみせる!)
(絶対に抜かせない!)

光は望に真っ向勝負を挑んできたのだ。

光が望の横を抜こうとする、
望は光の前に回りボールを奪おうとする、
光は体を回しボールをキープする、
望は足を出しながらボールを奪おうとする。

そんな膠着状態がしばらく続いていたが、

「いただき!」
「しまった!」

ボールは望が奪った。
そして望は大きく前線の選手にパスを送る。



そのボールは結局シュートまで持ち込むが、花桜梨が楽々キャッチする。
それを見たひびきのの選手は前に走り出す。
花桜梨はロングキックで前に送ろうとする。
ところがが……

「そう簡単には」
「前にはださせないわよ」
「うそっ!」

ゆっくりボールを蹴ろうとした花桜梨に、
きらめきのFWの二人が花桜梨の近くまで走ってきたのだ。
しかも完全に前線へのパスコースを消している。

これでは強引にボールを蹴るとFWに当たってゴールという危険性が高い。
花桜梨はボールの送り先を探していたが、

「こっち〜!」
「はっ!お願い!」

戻ってきた美幸にボールを投げるしかなかった。



そして美幸がゆっくりとドリブルで前に行こうとしたが、

「えっ!」

美幸の前にはきらめきMFの鞠川が前に立ちはだかっていたのだ。
よくみると、あと2人ばかり美幸のところにやってくるのが見える。
これではドリブル突破はできない。

仕方なしにロングパスで前に送る。

(なんかこっちが守ってるみたい……)



再びボールは光の元へ
またもやドリブルで中央突破を計る。
そこには当然望が待っている。

(今度こそ!)
(何度でも止めてみせる!)

またもや激しいボールの奪い合いが始まる。

前に進もうとする光、
それを遮る望、
フェイントで交わそうとする光、
その動きになんとかついていく望。

しかし、またもや望に奪われてしまう。

(まただめか……)
(何度でも止めてみせるよ……)



試合開始から30分
スコアは1−0。
しかし試合はきらめきの一方的なペースになっている。

ひびきのディフェンス陣に疲労の色が見え始める。

「つかれた……」
「いったい、なんなの……攻めてる気がしない……」
「ボール持っても気が楽になれない……」
「いつも攻められている気がするのはなぜ……」

実はボールを持っていた比率はそんなに差はなかったのだ。
なぜか?



「これが……ゾーンディフェンスの恐ろしさなの……」

きらめきのもう一つの武器。
それは強力な組織力によるゾーンディフェンスだ。
前線から積極的にボールを奪いに行く。
相手のボールには2,3人が囲って奪う。
その後ろにはバランス良く選手がフォローできるポジションにいる。

ゾーンディフェンスは大人がやってもうまくいかない。
豊富な運動量と高度な戦術理解力がなければ、逆に守備はボロボロになってしまう。
きらめき高校にそれができるのは、
有名校だからできる体力強化トレーニングの成果と、きらめきが有名な進学校でもあり頭脳も優秀だからだ。

ちなみにひびきのはそんなに高度なゾーンディフェンスはしてない。
いや、できないのが正しい言い方かもしれない。



「攻撃は最大の守備」ということだろうか、
きらめきは常に攻めの姿勢だったためにひびきの守備陣は自然に守りになってしまう。
攻撃と守備では守備の方が精神的な疲労が大きい。

そして前半のロスタイム
その疲労がピークに達する。

この試合10本目のシュートをキャッチした花桜梨がパスを送ろうとする。
もちろん、敵のFW2人が詰めてくる。

(どこに……どこかに渡さないと……)

一瞬の迷いと疲労がとんでもない事態を引き起こす。

花桜梨の手に力が抜けてボールを落としてしまったのだ。

「もらったぁ!」
「!!!」

気がついた時にはきらめきFW久遠寺がボールを奪っていた。
そしてそのままシュート。

ピピーッ!

前半45分

なんと花桜梨のミスで2点目を献上してしまった。

ひびきの 0−2 きらめき



そのまま前半終了。
ひびきのはまったくいいところがなかった。

ひびきののシュートはなんと0本。
FWまでボールがなかなかパスされなかった。
もらった時は2人のDFがぴったりと付いていて、さすがのほむら達も動けなかった。

光は望にドリブル勝負を挑むこと7回
いずれも望の勝ち。
これがFWまでボールが渡らなかった一因にもなっている。

ディフェンスは1点を取られてからは、頑張った。
きらめきのパス回しも冷静に対処した。
しかし、最後の花桜梨のミスが痛かった。

このままいくと最後には大差がつくと誰もが思っていた。
そしてハーフタイム。
公二が遂に動き出す。
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後書き 兼 言い訳
試合開始直前の話から試合開始の話がえらくながくなってしましました。

これを書くときに一番悩んだのは試合の描写です。
どう書いたらわかりやすいか。
どう書いたらイメージが浮かびやすいか。
書く人それぞれの書き方があっていろいろ悩みましたが、
結局あっさりとした感じになりました。

次に悩んだのは相手の名前と台詞の書き方です。
相手の名前は試合限りなのでそんなに出してもしょうがない、
でも書かないとどこのポジションかわからない。
結局、重要なところだけ名前にしました。

あとは台詞の書き方です。
いままでの台本形式だとリアルタイム性がない。
でも書かないと味方か敵かわからない。
結局ひびきのは全員緑、きらめきは全員青で統一してみました。


次回はハーフタイムから後半ひびきのの逆襲があるのでしょうか?。