第17話目次第19話

Fieldの紅い伝説

Written by B
ひびきの高校。
今日も光のボールとの共存生活がはじまる。

校門前、坂の下で光が立ち止まっていた。

光「今日こそ止められないようにしないと……」

深呼吸をするとドリブルしながら坂道を駆け上がる。

その光の様子を見つけた学生が一斉に光に集まってくる。
それを光はドリブルで避けていく。

先生、生徒、上級生、下級生、男子、女子問わず、ボールを奪おうとする。
しかし光はボールを取らせない。

そうしていくうちに校門にたどり着く。

「今日は誰にも取られないぞ……」

しかし……


「とりゃぁぁぁぁぁぁ!」
「きゃっ!」


いきなり校門の裏から飛び出した影がボールを奪ってしまう。
ほむらだった。

「へへぇ〜〜んだ!まだまだ甘いな……」
「くやしぃ〜〜!」
「ほれ。はやくよこせ」

ほむらが光に向けて手を差し出す。

「……はい……」
「いやぁ、今日もジュース代が浮くなぁ!」
「………」

ほむらの手には120円が握られていた。



実は、光の背中には張り紙が貼ってある。

『校門前の坂道でボールを奪ったら彼女から120円もらえます。主人 公二』

もちろん公二の直筆。ただし光が無理矢理書かせたものだ。
光は自ら罰金制をもうけたのだ。
それも公二の反対を振り切って。

「無理だって!いくらなんでも無茶だよ!」
「ううん。これぐらい抜けないと絶対に勝てない。それに公二に迷惑かけない!」
「わかったよ……」

頑固な光にこれ以上説得しても無駄だと判断した公二は渋々認めることにした。

最初は光も一日で千円以上取られることもあった。
結局「お金がないから貸して!」と公二に迷惑をかけることになってしまった。

これではいけないと猛練習。
今では、一日一人か二人しか取られなくなった。
それだけ上達しているということだ。
確かにお金の力はすごかった。

しかし、校門で待ち伏せしているほむらは強敵だった。
3日に1回は取られてしまう。
しかしこれも修行のうちと耐える光だった。



そしてお昼休み。
光は友人とお昼を食べる。

「光、あなたも大変ねぇ」
「なにが?琴子」
「毎日毎日犬みたいにボールにじゃれ合っていて」
「じゃれあってないもん!練習なんだから!」
「はいはい、わかってるわよ。蹴球御馬鹿さん」
「変に漢字にしないでよ!」
「冗談よ。しかし、あなた学校中からサッカー馬鹿って呼ばれて嫌じゃないの?」
「ちょっとはね。でもそれでも得られる物は大きいから」
「そう……なら仕方ないわね」
「ごめんね……迷惑かけて」
「いいのよ……光がそれでいいなら」
「ありがと……」



「ところで光」
「何?」


「あなた、彼氏とうまくいってるの?」
「えっ、えっ、えっ、彼氏だってぇ〜〜〜!」


「ええ、そうよ」
「か、か、か、彼氏って……」
「当然主人君のことよ」
「公二は幼馴染みで友達で……」
「学校中で話題よ『女子サッカー部のコーチとエースはデキてる』って」
「うそぉ〜〜〜!」
「本当よ、現に夜公園で二人っきりのところを見た人が何人もいるのよ」
「それは、公二と練習を……」
「そんなのはわかってるわよ」
「じゃあ……」
「噂に尾ひれが付いてるのよ『練習後コーチがエースに夜のゴールを決めてる』って」
「な、なんだその親父ギャグ以下の尾ひれは……」
「知らないわ。でも彼氏なのは間違いないでしょ?」
「それは……」

自分の知らないところで、自分と公二が恋人関係だということ事になっていたとは知らなかった。
素直に喜びたいのだが、実際はそうではないので素直に喜べない。



「ふうっ、まあいいわ、そうそう、その彼氏の噂が最近持ち上がってるのよ」
「なに?」

「光の彼氏……浮気してるんだって」
「う、うわきぃ〜〜〜!」

「う、浮気って……」
「あら、知らないの?この前の対抗試合で公二が女の子と抱き合っていたって!」
「だ、だ、だ、抱き合ってた……」
「私はサッカー知らないからよくわからないけど、きらめきの選手だって、かなり有名みたいだったけど」
(望さんだ……ふうっ、よかった)

「浮気」と聞いてびっくりした光だったが、その相手が望だと確信できたので少し安心した。



「あら?えらく落ち着いてるわね?」
「そう?」
「もしかして、その人知ってるの?」

「うん……友達でライバルで恋敵なの」
「そ、それって……」
「実はね……私たち三角関係なの」

「何!あの男二股かけてたの!」
「違うよ!二人が公二を好きになって、公二が迷ってるだけなの!」
「ふ〜ん、光がそこまでいうなら信じるわ」
「確かに恋人にはなりたいけどね……」

「光はこのままでいいの?」
「えっ……」
「サッカーも恋も勝ちたいんでしょ?」
「うん……」
「だったら努力あるのみよ。サッカーも恋も」
「琴子……」
「がんばりなさい、光。何もできないけど応援してるわ」
「ありがとう……」



そして放課後
光は公二と一緒にグラウンドに向かう。
二人で一緒に歩くところをすれ違う人全てが振り返る。

「本当にじろじろ見られてるな……」
「だって、私たち『噂のふたり』なんだもん♪」
「そうなんだけどな……」
「公二がいけないのよ。美少女二人を虜にするんだから♪」
「自分で美少女言うか……」
「いいじゃない、さ、とにかく練習練習!」
「そうだな頑張ろうな」
「了解了解!」

恋人同士とは言えないのが悔しいけど、それでも公二と一緒にいられるのが幸せ。
それに一生懸命に教えてくれる公二のためにも頑張らないと。
結局最後は自分のためになるのだから。
光はそう思っていた。



「光、今晩教えたいことがある……」
「……わかった」
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後書き 兼 言い訳
今回は対抗試合から1、2週間ぐらい後の光のお話です。

まあ、簡単に言うと、
「あの二人なら噂ぐらいなるだろう」
ということで思いついたお話です。

光の話し相手の琴子さんですが、たぶん今回限りでしょう(こら
だって、チームのメンバーでこういう話ができそうな人がいなかったから。

お話前半の光の特訓。
はっきり言ってあんな無茶をする人はそういません。
でも何とかして上達しようとする光の意気込みはわかってくれれば幸いです。

光の次の展開はおわかりだと思いますが、次回は望サイドのお話です。
まあ内容は今回とあまり変わりませんが(汗