第22話目次第24話

Fieldの紅い伝説

Written by B
きらめき高校女子サッカー部。
関東でも強豪であるこの部の練習は短時間で集中して行う。

入念な事前ミーティング
丹念なウォーミングアップ

45分の試合時間+ロスタイムと同じ長さの時間だけ集中して練習。
15分というハーフタイムと同じ時間での休憩&ミーティング
練習も目的を持たせ、チーム内の意識統一を図る。

これを2セット。
合計約3時間で全体練習は終了する。

あとは各自個人練習を自由に行うことになっている。
やらなくてもいいのだが、全員ある程度練習をしている。

各自1時間ぐらい練習したあと、各自下校となる。

そして今日も2年生ながらレギュラーのFW久遠寺 京もシャワーを浴びて部室にもどってきた。



ふぅ……やっぱり練習の後のシャワーは気持ちいいねぇ〜
練習は疲れるけどこの爽快感はたまんないねぇ♪

さてと、今日は夕子は放課後デートって言ってたから一人で帰るか……

じゃあ、お疲れ〜……って


……また今日もか……


まったく……シャワーも浴びずに、ため息ばっかりついて……
今日の練習も『気合いが入ってない!』って怒られてたな……

そんな連中が3人も……

詩織に奈津江に望!

それも全員恋の病とは……
まったくこれからチームの中軸になる連中だぞ……大丈夫か……

でも、このままはほっとけないな……
また、今日も天使稼業と行きますか!




まずは、詩織か……

詩織はあたしとは小学校からのライバル。学校は違うけどね。
小学校は剣道、中学ではバスケ、なぜかよく対戦してて、気があったんだよね。

高校は詩織と一緒にしたくて、きらめきに入ったんだけど、
入学したら、詩織がサッカーやるって言うから驚いたよ。

理由はあいつの幼馴染み。そいつは今は男子サッカー部のエースストライカーなんだけどさ。
そいつに近づきたいからって……昔から一緒じゃなかったのかよ!
でも、あいつも昔色々あったらしいからな……

まあとにかく声を掛けるか……


「し〜お〜りちゃん!どうしたのよ!」
「あっ、京……」
「まったく、ため息ばっかりついてどうしたのよ!」
「あのね、公人くんと……」

話を聞いて呆れたよ。
最近、幼馴染みとちっちゃな喧嘩が原因で会話すらしてないって。

こいつら、端から見ていれば両想いだっていうのがミエミエなんだけど、
本人達は超奥手でな〜んにも進展がないのがこいつらの厄介なところなんだよね……


「じゃあ、シオから声を掛けたの?」
「だって、公人くんの邪魔になったら……」

まったく、これがうちのスーパーサブなの?
インターハイではいざって時にゴールを決めまくっているのに、
自分のことは、いざっていう時にはまったくダメなんだから……




しょうがない……いつもの強行手段に出るか……

あたしは詩織の鞄を持ち出すことにする。


「シオ、ちょっとアンタの鞄を借りるよ!」
「ちょ、ちょっと京!」

詩織の言葉は無視して、部室をでる。そして大声で叫ぶの。

「ナオトちゃ〜ん!詩織が呼んでるよぉ〜!」

ほ〜ら、ナオトちゃんはすぐに全速力でやってきた。
詩織がなにやら言いたそうだけど、この際無視!


「はぁ、はぁ……あれ?久遠寺。どうしたんだ?」
「ああ、お宅のお嬢様は今日はお疲れなんだ」
「お嬢様?」
「そう、だから帰りはナオトが鞄をもってやりなよ」

そこでナオトに詩織の鞄を無理矢理渡す。
これで詩織はナオトと一緒に帰らないといけないね♪

「ちょ、ちょっと!」
「シオ、王子様がお待ちかねだぞ、さっさと着替えてきたら?」
「お、王子様って……」
「なんなら王子様の前で着替える?」
「京!」

あ〜あ、顔真っ赤にしちゃって。

「じゃあ、ナオトくん。鞄持ちお願いね……」
「ああ……」
「だから京ったら……あっ、公人、ちょっと待っててね……」
「うん、待ってるよ、詩織」

詩織は顔真っ赤だけど、笑顔でシャワールームにいっちまった

なんだよ、きっかけさえあれば、結構いい雰囲気じゃないか。
これなら、明日からは元通りになるね。



さて、次は奈津江か……

奈津江はあたしと中学が一緒。実はバスケ部で一緒なんだよね。
姉御肌でリーダーシップがあって、来年のキャプテン兼部長に内定してる。

でも、ため息ついて泣いてる姿からは想像が付かないけどな。


「ナツ、いったいどうしたんだよ!」
「ぐすん……あのね……勝馬の馬鹿が……」

やっぱりな……

勝馬とは奈津江の幼馴染み。
こっちも同様に色々あって、今では奈津江が勝馬の家に押しかけ女房の半同棲状態になってる。

こっちも相思相愛なのはミエミエなんだけど全然進展なし。
シオのところと違って喧嘩ばかりなのがまた厄介で……

今日もご多分に漏れず些細な喧嘩をしたとのこと。


「せっかく朝食作っても『おいしいよ』って言ってくれないしさ……」
「………」

呆れた。

そんなの照れてるだけに決まってるだろ!
ナツはチームの司令塔で、試合だと相手の心理を読むのがうまいんだけど、
自分のことになると、幼馴染みの心がまったく読めないのが不思議でしょうがない……




奈津江の場合は強硬手段は逆効果だから説得するしかない。

「大丈夫だって。毎日作ってれば、アイツも奈津江の料理なしでは生きられなくなるよ!」
「……本当?」
「本当だって!」
「だってさ、あたしみたいに背がでかくて、がさつでうるさい女の子の料理なんてさ……」

またいつもの愚痴だよ……
確かに奈津江は170cm以上あるし、少し男勝りなところもあるけど、十分女の子らしいぞ。
サッカーには自信があるけど、自分のことはまったく自信なし。
試合では強気なんだけど、こういうことにはまったく弱気。

奈津江の場合は自信を取り戻すことをしないとな。


「ナツ。ナツの料理をアイツが嫌がったことがある?」
「えっ……」
「ないだろ?」
「うん……」
「ナツの料理が嫌だったら食べないよ。それを食べてるのはそれだけ美味しい証拠だよ」
「本当なの?」
「もっと自信を持つ!そうすればきっと『おいしい』って言ってくれるよ」
「そうか……私もっと頑張る!」
「そうそう、その心意気!」

奈津江は明るい表情になってシャワールームに行ったな……

まったく、これだけで元気になるとは……
ちょっと呆れちゃうね……



さてと……最後は一番の重症者だな……

まさか望がこんなに悩んでるとはな……

望はアタシと同じクラスだからよく話をする。
ボーイッシュで下級生の女子から絶大な人気だけど、
望は人が言うよりずっと女の子なんだよな……

花が好きだし、料理も得意だし、健気だし。
男の一人や二人いたっておかしくないけどな。

それでも「彼氏がいる」って情報が流れたときは学校中大騒ぎだったよなぁ。
下級生なんか「望おねぇさまは私だけの望さまなのにぃ〜!」
とか言って大騒ぎだったし。

でもその彼氏がもう一人の女の子と取り合いの状態とはな……

その相手がそいつの幼馴染みでひびきののエースだと知ったときは驚いた。
対抗戦で見たけど、結構可愛かったな、望といい勝負だ。

望は前のオコチャマ2人と違って告白は一応してるらしい。
一応両想いだってこともわかってる、
でもそいつが想っているのは二人。
言い方は悪いが二股ってやつだな。

はっきり言って、望には残酷すぎる。



でも望は健気にそいつが振り向くのを待ってるんだよなぁ……
状況が不利なことはわかってるのにさぁ……

さて、励ますとしますか。


「ノゾミ、どうしたのよ?」
「あっ、京……」
「また、彼のこと?」
「うん……」
「彼がどうしたのよ?」
「いや、いま公二はなにしてるのかなぁ。いま何を考えてるのかなぁって思ってさぁ……」

あちゃ〜、完全に恋する乙女状態だわ、こりゃ。
サッカーでの勇敢なプレーはどこへやら。
うちのメンバーはサッカーと私生活のギャップが激しすぎ!

あれ?望の表情が暗くなってる?


「でもさぁ、公二の側には光さんがいる。アタシは公二からはるか遠くでただ座ってるだけ……」
「………」
「逢いたくても逢えないって辛いよね……」
「………」
「あ〜あ、なんできらめきに入学したんだろ……」

望の馬鹿!
その言葉だけは言って欲しくない!
思わず声を挙げちゃった。


「ノゾミ!それは言わない約束だろ!」
「ごめん……」
「気持ちはわかるよ、でもそれじゃあ、あたし達が悲し過ぎるよ!」
「………」
「ノゾミは私の大切な友達だよ。だからきらめきに入ったことを後悔して欲しくない!」
「………」

望、なにも言わなくなっちゃった……
言い過ぎたけど、あれはアタシの本心。

でも、望がそこまで思い詰めてるのも事実なんだよね……



仕方ない、これだけはやりたくないけど……
望にはこれが一番効果あるからね……

アタシはゆっくりと望の後ろに回る。
そして望を抱きしめてささやくの。


「寂しかったら……アタシが慰めてア・ゲ・ル」
「!!!」
「アタシ、前からノゾミのこと、友達以上になりたいと思ってたんだ……」
「き、京、い、いったい……」

効果てきめん。
あれだけ悲しい表情の望が怯えだした。
望ってこういう話題には敏感になってるからねぇ……

い、いっとくけどアタシはそんな趣味はないからね!
確かに望に送らなくなった女の子からのラブレターがアタシのほうに回ってくるけどさ……

恥ずかしいけど……望が元気になるためだもんね……
アタシは耳元で色っぽくささやく。


「そうだ、ノゾミってシャワー浴びてないよね?」
「ま、まさか……」
「アタシと一緒に入らない?」
「や、やめろ……」
「女の子同士だもん、恥ずかしくない……それにノゾミとだったら……」

「やめろ〜!」
「きゃっ!」

痛い!
何もアタシを突き飛ばすことはないじゃない!
でも、さっきの望の怯える顔、おかしかった!




今も望は壁にはりついて怯えてる。

「や、やめろ……」
「……きゃはははは!」
「……はぁ?」
「今のノゾミの顔ったら!おかしくって!」
「まさか……」
「当たり前でしょ?冗談よ!」
「こらぁ!」
「怒った?」
「怒るに決まってる!」

これだけ元気があれば大丈夫か。
どうやら作戦成功かな?


「ふ〜ん、じゃあさっきの悩みはなくなったのかな?」
「えっ……」
「望にはそういう生き生きした顔が一番!暗い顔は似合わないよ」
「京……」
「暗い顔じゃあ、あいつも来なくなるよ」
「そうだよな……公二に心配掛けたくないからな」
「ノゾミには笑顔がよく似合うよ」
「京、ありがと……なにか元気がでてきたよ」
「どういたしまして」

望も笑顔でシャワールームに入っていったな。



は〜あ、やっと3人片づいた。

しかし天使稼業も楽じゃないよなぁ、
あいつらは恋が実ればそれでいいけど、アタシはただ見てるだけ。

3人とも辛そうだけど、それでもいい表情してるよな。
恋ってそんなにいいものかなぁ……

アタシも……恋してみようかなぁ……

まっ、そんなことは家に帰って御飯を食べてから考えよう!

さて、帰るとしますか!
お疲れ〜!じゃあまた明日!

Go to Next Game.
後書き 兼 言い訳
今回は本編とは若干、いやかなり離れて、きらめきのお話。
色恋沙汰満載のきらめき女子サッカー部での恋する女の子の話です。

ここで主役を張るのは、このSS唯一のオリキャラ、それも借り物キャラの久遠寺 京ちゃんです。
再度説明しますが、京はここのHPと相互リンクを張っています「AQUA STREET」の中の
安房守さんのときメモ1SS「DANCING QUEEN」でのオリキャラです。
安房守さんに使用許可をいただいて登場させてます。

設定とかは元ネタとリンクしているわけではありませんのでご注意下さい。
一応性格・口調・行動は元ネタと揃えるようにしてますが、こんな感じでいいでしょうかねぇ?安房守さん?

今回で本題に関わっているのは、望の心境でしょうか?
やっぱり離れていると不安になってしまうものだと思うのですが、どうでしょうか?

あ、詩織と奈津江の恋愛については今後深く突っ込まないので期待しないで下さい(汗

次回はひびきのサイド。
やっぱり本編と関係ない話でも書こうかとおもってます。