第23話目次第25話

Fieldの紅い伝説

Written by B
ひびきの高校女子サッカー部

アットホームな雰囲気ながらも真剣な部活動は、他の部活からも注目されている。
きらめきと同様に45分練習+15分休憩の2セットで練習を行う。
ひびきのは組織プレーと個人技のバランスを考えながら練習を行っている。

ひびきのの特徴としては全体練習の後の個人練習は行わない。
その代わりに各個人で自主トレメニューが渡され、それぞれの個人にあった自主トレを行うことになる。
自主トレだからやるやらないは自由。
しかし、ちゃんとやった人は確実に成果が出ているので、一部を除いてちゃんとやっている。

そして今日もDF寿 美幸は練習に励もうとしている。




わ〜い!部活だ!練習だ!
花桜梨おねぇさまだぁ〜!

ああ、美幸は花桜梨おねぇさまのお側にいられる部活の時間をずっと待ってました……

それは去年の秋でした。
自暴自棄になっていた美幸を救ってくれたのは、そう、花桜梨おねえさま。

「テニス部のみんなは、そのせいで美幸ちゃんのこと嫌いになった?」
「部活のみんなは、不幸なところも含めて美幸ちゃんが好きなんじゃないの?」
「うん。自分は不幸だなんて思っちゃだめ。美幸ちゃんはみんなに幸せをあたえているのよ」

おねぇさまの優しいお言葉に美幸、感激して泣いちゃった。
そんな美幸に御姉様はやさしく見つめてくれたの。

あの綺麗な瞳。
あの美しいお顔。
あの人を惹きつける大人の魅力。

あぁ……

あの瞬間から美幸は花桜梨おねぇさまに夢中になったのでした……





美幸はすぐにサッカー部に入って、なんとか花桜梨おねぇさまに近づこうと努力したの。
でもおねぇさまは美幸に近寄ってくれなかった。

あのときは、美幸のおねぇさまに対するラブが足りなかったのよ!
だから、いつもおねぇさまに美幸のラブを伝えてるの。

だからかなぁ?
だんだんとお姉様も美幸にかまってくれるの。
きっと美幸のラブがとどいたんだぁ〜!

これからも美幸のラブをもっともっと届けるぞ〜!

え〜っ?女同士なんて関係ないよ〜!
ラブがあればへいきだよ〜!





これから、いよいよ練習の時間。
今日はセットプレーの練習。

攻撃の人がコーチからセットプレーの指示を受けてそれを実行するの。
で、美幸や花桜梨お姉さまの守備の人はなにも知らずに守るの。
だからどっちも練習になるんだよね♪

だから、ここで活躍すれば御姉様に褒めてもらえるんだ〜!

よ〜し頑張るぞ〜!





まずは右サイドからのコーナーキックだね!

蹴るのはもちろんひかりん。
ひかりんのキックって早いから注意しないとね〜。

美幸はボールと反対側のポスト付近にいる攻撃の選手をマークしてと……
もう、みんなちょこちょこ動かないでよ〜!
でも美幸も負けないぞ〜!
絶対に入れさせないんだから!

あっ、ひかりんが蹴った!

あれ?

え〜っ!

ショートコーナーだって〜!

あっ、そういえば近くに向ぽん(FW向井のこと)がいた!
ああっ、ゴールラインから角度のあるところからのセンタリングだぁ!

や、やばい!ビックリしてマークを外しちゃった!

ほむりん(ほむらのこと)がフリーになっちゃったぁ!

あっ……

ほむりんの前に花桜梨お姉さまが飛び出してキャッチした。
ああ、よかった……
しかし、ほむりん悔しそうだな。

でもお姉さますご〜い!すごい判断力!


「おねぇさま〜、すご〜い!」
「こらっ!美幸ちゃん!」

ぼかっ!

「いった〜い!、お姉さまひどいよ〜!」
「痛いもこうも、美幸ちゃんがマークを外したから危なかったのよ!」
「そうそう。美幸ちゃんがぼ〜っとしてるから会長がフリーになったんだから」
「ごめんなさ〜い……」
「そもそも、ショートコーナーだってあるんだから注意しないと」
「は〜い……」

ああ、花桜梨お姉さまに怒られちゃった……
花桜梨お姉さまに殴られちゃった……

でも……お姉さまに殴られるなんてカ・ン・ゲ・キ♪
きっとこれはお姉さまからの愛の鞭なんだ〜!
花桜梨お姉さまだったら、いくらでも愛の鞭を……
だめだめ!これじゃあ美幸ってヘンタイみたいだよ〜。

このあとは美幸の守備は完璧だったよ♪
へへ〜んだ。美幸だってやるときはやるんだ〜。





休憩を挟んで今度はサイド攻撃の練習。

サイドからドリブルで駆け上がってセンタリング、
中央の選手がそのボールをダイレクトでシュートするんだけど……

う〜ん、美幸、このセンタリングがちょっと苦手なんだよね。

ドリブルの早さは自信あるんだけどなぁ、そこからがイマイチなんだよね……

でもセンタリングをマスターしないとレギュラーが危ないんだよ〜。

コーチから
「美幸ちゃんは守備は並の上ぐらいだ。美幸ちゃんに期待してるのはドリブルからの攻撃なんだよ」
って言われてるからね。





さて、今度は美幸の出番だね。
中央にはひかりんが待ってる。
うまくボールを渡さなきゃ!

じゃあしゅっぱ〜つ!

ボンッ!

ドリブルは快調快調!ってドリブルの練習じゃないよね。
これからが本番。

ライン際まで詰めて……

えいっ!



あれっ?



また失敗しちゃった……

ボールはひかりんのはるか後ろ。
ひかりん慌てて後ろに下がったから形になったけど……

どうしてなんだろ……
最初はうまくいってたんだけどな……

この後も何回かチャレンジしたけど、とうとう1回も成功しなかった。

美幸、もうダメなのかなぁ……





そしてとうとう最後の1回。

もう美幸自信ないよぉ……

あっ、コーチ……


「美幸ちゃん、どうもうまくいかないなぁ」
「はい……」
「本当は自分で気づいて欲しかったけど、仕方ない。特別に教えてあげるね」
「?」

「美幸ちゃん、余計なこと考えていない?」
「えっ?」

「最初の頃は基本に忠実にやってたからうまくいってたんだよ、今は余計な事を考えすぎてる」
「?」
「早くあげよう。正確にあげよう。そんな事を考えすぎてたんじゃないのか?」
「あっ……」

そうだ、最初うまくいってたから、早いセンタリングをあげようとして蹴る速度を早くしたんだ……
それからだ、うまくいかなくなったのは。


「その証拠に、センタリングを挙げるときの蹴る足でない方の足の向きが変な方に向いてる」
「!!!」
「足の向きが大切なのはテニスでもそうだったろ?たぶん美幸ちゃん慌ててると思うよ」

さっきのセンタリングを思い出してみる。
本当だ!
確かに足が後ろを向いていたような気がする!


「美幸ちゃんの工夫は認めるけど、基本に忠実でないとダメなんだよ」
「そうだよね……」

「最後の1回。急がなくてもいいからゆっくりとセンタリングをあげてごらん?」
「はい、コーチ!」

なんか胸のもやもやがなくなったような気がするなぁ。
さすがコーチ!
なんでもそうだよね、基本が大事だよね。




「美幸ちゃん」
「はい?」
「1回失敗してもくよくよしちゃ駄目。そんな事でくじけないのが美幸ちゃんでしょ?」
「……うん!」

そうだよね!
こんな事でめそめそしちゃあ美幸らしくないモンね。

次が駄目でも、その次頑張る。
その次が駄目なら、その次頑張る。
頑張ればきっとうまくいくんだよね!

最後の1回はナイスタイミングでボールの位置もバッチリ!
久しぶりの会心の出来!

それもこれもコーチのおかげ!




あ〜あ、もう練習も終わりかぁ。
今日は久しぶりに楽しい練習だったなぁ。
楽しい練習のあとのシャワーって気分最高なんだよね〜。

そういえば、練習のあとにコーチから一言言われたんだよね。

「急いでいろいろマスターしなくても大丈夫だよ。一つ一つ確実にマスターしようね」

そうだよね、なんでも一歩一歩が大切だよね。

部活でも勉強でも恋愛でも。


恋愛?


あっ!花桜梨おねぇさまは?


「ひかりん、花桜梨おねぇさまは?」
「あっ、花桜梨さんなら、たった今部室から帰ったみたいだけど」

えっ〜!

折角今日は花桜梨おねぇさまと買物しようと思ったのにぃ〜!

急いで追いかけなきゃ〜!


そうだよね、恋も一歩一歩だよね。
いつか、花桜梨おねぇさまへの想い……届くといいなぁ……


あっ、あそこにいるのは花桜梨おねぇさま!

花桜梨おねぇさま〜!待ってぇ〜!

Go to Next Game.
後書き 兼 言い訳
え〜と、久しぶりの第24話です。
今回は美幸嬢にスポットをあててみたのですが……

なんだこりゃ(汗

書き始めたのが7月なのでもう2ヶ月以上書きかけだったのですが。
いや、書きかけをほったらかしにするのはよくないですな(汗

文体が前後で微妙に違ってるし、なんかまとまってないし。
そういうわけで少し物足りないかもしれませんが勘弁して下さいm(_ _)m

今回は本編と全く関係無い話でしたがいかがでしょうか?

次回はきらめきサイドですが、やっぱり本編と関係ありません(汗
あっ、でも新キャラが登場するのでおたのしみに。