第67話目次第69話

Fieldの紅い伝説

Written by B
土曜日の午後。
とうとう、きらめきとひびきのの交流戦の日がやってきた。

今回はきらめき高校で開かれる。
きらめき高校のあちこちでテニスやバスケ等交流戦が行われている。
しかし、注目はグラウンドで行われる女子サッカーの試合。
予定では秋過ぎの予定だったが、両方の監督の依頼により急遽今回行われることになった。

グラウンドの横にあるスタンドには試合を見ようと生徒達が集まってきている。
実力は全国クラス、しかも部員は美女揃いとの評判もあり、校内でも注目度は抜群だから当然だろう。

スタンドよくみると、学校の関係者とは思えない人が何人かいる。
どうやら他の学校からの偵察、またはサッカー専門誌の記者らしい。
お目当てはもちろんきらめき女子サッカー部の出来上がり具合を見るため。
戦術や弱点等をじっくり見極めるつもりらしい。

そんな人たちも混じって、盛り上がりはかなりのものになっている。



そうとは知らないひびきの女子サッカー部。
学校がレンタルしてくれたバスに乗り込んできらめき高校へと向かっている。
部員一同緊張半分楽しみ半分と言ったところ。

「ちょっとした遠征気分だね、お姉様♪」
「そうね……でも緊張しちゃうな……」
「美幸がいるから大丈夫ですよ♪」
「わかったから、私の膝の上で寝ないで欲しいな……」
「うわぁ……お姉様の膝枕だ……」

座席が隣になった美幸と花桜梨は終始こんな感じ。
花桜梨はともかく美幸はとてもリラックスしている。



一方、逆に光は緊張しっぱなし。
座席も(誰が仕組んだのか見当はつくが)公二の隣になったのもあるが、

「アウェー……なんだよね……」

この光の一言に集約されている。

「どうした?そんなに緊張するほどのことはないぞ?」
「だって……望の知り合いがたくさんだから……」
「それが?」
「たぶん、私のこと……目の敵にしてる……」
「!!」

光の心配事は望との件で、自分への風当たりが強いのでは?と恐れているのだ。
公二もそのことに気がつき、すぐにフォローする。

「大丈夫だって。いくら何でも襲うことはないよ」
「そもそもアウェーの洗礼なんて当たり前だよ」
「そのぐらいの風当たりを跳ね返すぐらいでないと、今後やっていけないよ?」

公二は『試合では当たり前だ』と言うように話をすり替えながらフォローする。

「そうだよね。そんなのに負けちゃいけないんだよね……」

効果があったのかよくわからないが、光は気を取り直したようだ。
公二もそれをみてほっと一息つく。



そしてバスはきらめき高校の前に到着した。
全員荷物を持ってバスから降りる。
そして自分たちの控え室代わりの教室に足を運ぶ。
きらめき高校の生徒会らしき人の先導についていく。

「うわぁ……綺麗な学校だねぇ〜」
「やっぱり、金持ちの学校は違うなぁ〜、うちと大違いだ」
「全然違う……」

かなりの人はきらめき高校に行くのは初めてらしく、設備の良さに感嘆の声をあげる。

「廊下も綺麗だねぇ〜」
「顔がなんか上品でなんか気にくわないなぁ」
「やっぱり違う……」

部員達は生徒達の注目を浴びながら控え室でもある家庭科室に到着した。



全員適当に椅子に座ったのを確認すると公二が教壇から指示を出す。
今日のスケジュールや事前に学校から言われた注意事項などを説明する。

「……それじゃあ、俺はきら高の監督に挨拶に行くから。その間に準備しておけ」
「えっ?主人は準備しなくていいのか?」
「えっ……ま、まぁ……俺もしなきゃだけど先に挨拶だな……」
「???」

ほむらの質問に公二の返事がどうも歯切れが悪い。
みんな不思議そうな顔で公二を見ている。


「あのなぁ……みんなが着替えているところにいられるわけないだろ!……それじゃ俺は行く!」


公二は顔を真っ赤にして教室から出て行ってしまった。

「納得……」
「なるほどな……そりゃ無理だな」
「当たり前だよぉ〜、ぬしりんはそこまでエッチじゃないよぉ〜」



「まあまあ……とにかくさっさと着替えておこうよ」

光の一言で選手はユニフォームに着替え始める。
もちろんカーテンは閉めておき、扉の鍵も掛けておいてから着替える。

着替えている間はおしゃべりが絶えない。
ほむらも光に話しかける。

「でも陽ノ下」
「なに?ほむら」
「主人だったら、着替え見られてもいいと思ってないか?」
「な、なっ……なに言ってるのよ!」

光の顔が一瞬に真っ赤になってしまう。
しかもかなり焦っている。

「あれ?もしかして想像しちゃったのか?」
「……ほむらのバカ!」

さらに光の顔が赤くなったことから図星だったらしい。



「まったく……入っていきなり着替えようとしてたから止めるのに必死だったよ」

一方の公二は職員室へ向かう。
目的は相手の監督に挨拶に行くため。
公二は事前にもらったプリントから職員室を目指す。

公二は一人。しかもひびきの高校女子サッカー部のジャージ姿。
かなり目立っている。
生徒達の視線を集中的に浴びている。

(しかし、さすがの俺も恥ずかしいなぁ……早く行かないと……)

その視線がたまらない公二は早足で職員室へ向かう。

(しかし、変だなぁ……俺への視線が鋭いんだけど……)

そうしているうちに職員室へ到着する。



「……それでは、今日はよろしくお願いします」
「ああ、こちらこそよろしく」

職員室に入った公二は先生達にひととおり挨拶したあとに相手の監督へ挨拶。
そして、ルールの確認とメンバー表の交換を行った。

「しかし、ひびきのさんは最近実力がついているってもっぱらの評判ですよ」
「ありがとうございます。でも、それは部員達の努力の成果です」
「あははは。謙虚だね、それだから部員達もついていってくれるかもね」
「そんな、とんでもないですよ」

そのあと、少し時間があるのでしばしの歓談となる。
公二の周りには監督だけでなく、サッカー部と関係ない職員も何人か集まっている。
現役高校生で監督をやっているのだから、先生と言えでも興味があるのは当然だろう。

「でも、同級生達に気をつかわない?」
「同然ありますよ……でも、監督として厳しくしなきゃいけないときはしますけどね」
「君も大変だね」
「監督って本当に大変ですよね。でもそれだけやりがいはありますよ」

先生達からの質問にも丁寧に対応する公二。



そしてそろそろ公二も時間がなくなろうとしたとき。
先生の一人がふと公二に質問した。

「そういえば主人君。失礼かと思うけど質問をいいかね?」
「はい、なんでしょうか?」



「うちの清川と何かあったのかい?」



「へっ?」

まったく予想外の質問に公二は間抜けな返事をしてしまう。

「いや、私は清川の担任なんだけど、どうも清川が夏休みで変わったという噂で持ちきりなんだ」
「は、はぁ……」
「『海で襲われた』とか『毎日猿のようにヤってる』とか……まあちょっと下品な噂ばかりだけどな」
「………」
「それと『清川の彼はひびきのの女子サッカー部の監督だ』って噂も広まってるから、もしかしてと思って」

公二の顔は一瞬で冷や汗だらけになっていた。

「い、いや……望とは中学で一緒で仲もよかったのですが……」
「なるほどな……それでか……」
「はい……」
「ま、まあ、所詮噂だから気にするな。いやいや変なこと聞いてすまなかった」
「いえ、そんなことないですよ」

質問した先生は公二の肩をポンと軽く叩く。
叩かれた公二はそのことに気づいているかわからないぐらい動揺していた。



公二は早歩きで控え室にもどる。
先程のこともあり、公二は通り過ぎる生徒達の視線が鋭く感じた。

(あ、アウェーの洗礼を受けるのは……光より俺だったのか……)

男子からの痛いほどの冷たい視線。
なぜか下級生と思われる女の子からの視線も鋭い。
どうやら望のファンらしい。

(もし、望相手にガツガツやったら……いやいや、そこまでしないと勝てないから……)

公二はこれからの展開に不安を隠しきれなかった。
Go to Next Game.
後書き 兼 言い訳
いよいよ久々にサッカーの試合が始まります。
光と望の直接対決の第2弾です。

まずはきら高にやってきた部員達の様子を書いてみました。
まぁ、内容はたいしたことはないのですが、こんな感じかな?と思います。

次はきら高の試合前の様子。
ちょっと違った視点からになりそうかな?