第17話目次第19話
夏休み真っ直中。


「うわぁ〜、涼しい〜!」
「ひさしぶりだなぁ〜」
「キャッキャッ!」


3人は北海道にやってきた。
公二の同窓会に出ることが目的。しかし、公二と光は娘同伴の新婚旅行だと思っている。


「久しぶりの夏休みだし、楽しもうね♪」

「そうだな、去年の分も楽しまないとな!」

「うん……あれからもう1年か……」

「恵も大きくなったな……」

「キャッキャッ!」


去年は光が恵を出産してまだ2カ月足らず。夏休みは公二も光もずっと光の家におり、恵の世話をしていて遊ぶどころではなかったのだ。


「こんなところにいてもしょうがない。早く伯父さんの家に行こう!」

「うん!了解了解!」

太陽の恵み、光の恵

第4部 夏休み北海道編 その2

Written by B
3人は公二の伯父の家に泊まることになっている。公二が昔住んでいたところからはそんなに離れていない場所で、遊びに出かけるにはなにかと都合が良かった。
そして今は公二の伯父の家の前。ふと気が付くと光はいつになく緊張した顔をしていた


「ここが伯父さんの家だ……ん?どうした光?」

「うん、いや、伯父さんと初対面やから……」

「そうだな、そもそも北海道がまだ2度目だな……」

「『あのとき』以来やから……」


『あのとき』中2の光の妊娠が発覚して、両親と一緒に公二の家に行ったあの日以来だ。光にとってはあれ以来の北海道になる。


「大丈夫だよ。伯父さんは光の事は理解してくれているから」

「そう、安心した……」

「では参りましょうか」


こうして3人は伯父の家に入ってきた。






「伯父さ〜ん!こんにちは〜!公二です!」

「おお!公二か!待っていたぞ!」

「久しぶりね、ゆっくりしていってね……で、彼女が光さん?」

「そうだよ、俺の妻の光と娘の恵だ」


すると光は神妙な面持ちで伯父、伯母にあいさつをした


「公二の妻の光です……まだまだ幼く不束者ですが宜しくお願いします……」

「ひ、光。そんなに改まって挨拶しなくても……」

「で、でも……」

「まあまあ、光さん。こちらこそ宜しく」

「はい、伯父さま」

「公二くん。15なのに可愛くてしっかりした奥さんを持って幸せね!」

「お、伯母さん!」

「………」


公二と光は顔が真っ赤だった。






その晩。
公二達は伯父さんと夕食を食べていた。伯父・伯母とは久しぶりなので会話の話題には事欠かない。


「向こうの生活には慣れたかい?」
「はい、学校も楽しいです」
「大丈夫?結婚も子供の事も隠しているんでしょ?」
「今のところ、なんとか大丈夫です」
「ほかの人には迷惑掛けたくないですから」
「それならいいけど……」


「公二達の友達って変わった人ばっかりなんだな」
「ああ、いい奴ですけどね、ちょっと……」
「助平男とか、女に免疫がない男とか、妖精が見える女の子とか、番長の妹とか見ていても飽きないだろう?」
「そ、そうやな……見ているだけなら……」


「恵ちゃんいい子ねぇ、母親の教育の賜物かしら?」
「そんなことないですよぉ、おかん達のおかげです」
「でもこれからはあなたが教育していかないといけないのよ。頑張ってね」
「はい、頑張ります!」
「『おばあちゃん』達に頼ってはいけませんよ」
「あ、そうか、おかんはもうおばあちゃんなんだぁ」
「でも、おばあちゃんっていったら怒られそうだけどな、ははは」


「恵ちゃん、一人で歩けるようになったんだ」
「はい、最初に歩いたときは感激しました」
「私、今思い出しても涙がでそうで……ううっ」
「おい、泣くなよ!」
「だってぇ〜」
「公二くん。母親にとって子供の成長はいつまでも強く心に残るものなのよ」
「そういうものなんですか……」


「公二がいない間にこっちもかなり変わったぞ」
「そうですね、知らない建物が多くありましたね」
「いまに公二が知っている場所が無くなるかもな……」
「そうだったら、寂しいですね……」
「故郷だけは何も変わって欲しくないって思うからかしら」
「うん、全部変わったら、心の拠り所がなくなってしまうから……」
「うちもそう思う。神戸もそうなるのかなぁ……」


「でも、建物は変わっても友達は変わらないぞ。故郷の友人は大切にするんだぞ」
「はい、伯父さま」
「だから同窓会に来たんですけど」
「そうだな、ははは!」


話題はつきることがなかった。






楽しい夕食もすんで、団らんのひととき。


トゥルルルル!トゥルルルル!


どこからか電話が鳴っている。近くにいた光が受話器を取る。


「はい、主人ですが」

「主人さんですか。私、公二さんの同級生だった佐倉と申しますが、公二さんいらっしゃいますか?」


光はいつものように公二を呼んだ。


「はい、少々お待ちください……あなた〜。同級生の佐倉さんから電話……あっ!」


光は慌てて手で口をふさいだが時既に遅し。おもいっきり大声で「あなた」と呼んでしまった、たぶん電話の向こうにも聞こえてしまっただろう。


「や、やばいだろ!は、早く替われ!……も、もしもし、公二です」


血相を変えて走ってきた公二は光から受話器を奪い取るように持った。






「公ちゃん?あ、私です!楓子です!」


受話器の向こうは可愛い声の女の子。約4ヶ月ぶりに聞く声だった。


「楓子ちゃん!元気にしてた?」

「いつも通り元気だよ。ご、ごめんね。急に電話しちゃったりして」

「そんな、全然迷惑じゃないよ」

「私から電話したかったけど、連絡先もわからないから……」

「う、うん。ちょっと急いでいたから、全員に連絡できなくて」

「あ、責めてるわけじゃないよ。今は公ちゃんの声、聞けてるわけだし」

「ごめんな、楓子ちゃん……」

「そ、そんな謝らなくてもいいよ。ところで公ちゃんこそ元気?」

「うん、いつも通り元気だよ。昔とちっとも変わらないよ」

「そうかな〜?なんだか声が男らしくなったみたい」

「えぇっ」


久しぶりの友達の電話に会話も弾んでいる。


(彼女がこの前の手紙に佐倉さんやね。公二本当に楽しそう、ちょっと嫉妬しちゃうな……)


光は公二の隣で公二が受話器越しに話しているのを聞いていた。相手の話していることはわからなかったが。それでも時間がかかりそうだったので一旦その場から離れる事にした。






それからしばらく二人は近況を語り合っていた。


「ずいぶん長電話になっちゃった。ごめんね」

「ううん。そんなことないよ」

「私もあなたがここに泊まっているって聞いたから思わず電話しちゃったけど……」

「けど?」

「さっき公ちゃんを『あなた』って呼んだ人……誰?」


女の子の声が冷たいものになっていた。予想はしていたものの冷や汗が全身から流れる公二。


「お、伯父さんの娘さんだよ。あ、甘えたがりでいつもあんなこと言って困っているんだ」

「ふ〜ん、そうなんだ……」


公二はとにかくごまかしてみる。相手の反応をみるとごまかせたみたいだ。


「じ、じゃあ、同窓会楽しみにしているよ!」

「うん、私も……公ちゃん」

「……なんだい、楓子ちゃん」

「同窓会のあと……私の想い、聞いてくれますね?」

「ああ……」

「私、待ってるから……じゃあ」


そこで、電話は切れた。最後の声は思い詰めたような声だった。 






「ふうっ……」


受話器を置いた公二がひとつため息をついた。電話が終わったのをみた光が戻ってきて状況を聞く。


「どうやった?」

「なんとかごまかせたけど……納得してないみたいだ」

「ごめん、いつもの癖で……」

「しょうがないよ」


失敗をいつまでも引きずってもしょうがない。ここはとにかく乗り切ったからそれでよし、ということにする。


「あなた、佐倉さんといつ知り合ったん?」

「ああ、楓子ちゃんは親の仕事の都合で転校が多いんだ」

「へぇ〜」

「彼女、中2の春に転校してきたんだ。でも学校になかなか慣れないみたいだったから」

「あなたが声を掛けたってわけやね」

「ああ、でもすぐに友達はたくさんできたけどね」

「で、それからずっと一緒だったってわけやね」

「そう。でも俺と付き合っているって噂にもなっちゃって……」

「それで?」

「俺、必死で否定しちゃったんだ……ちょうど光が恵を産んだ時期だったからナーバスになっていたかもしれない」

「どう言って?」

「『俺は佐倉さんに似合う男じゃない』って……」

「あなたらしいね。で、佐倉さんはどうだったん?」

「それが……それからギクシャクした関係になっちゃって……普通の状態に戻った時には卒業式だった」

「なるほど……」

「楓子ちゃん、傷ついていたのかもな、今思えばな……」

「謝るの?」

「謝りたい、たとえ許してくれなくても……」


公二の顔はとても寂しそうな顔をした。






トゥルルルル。トゥルルルル


「はい、主人です……おおっ!久しぶり!元気にしてた?俺は元気だよ、それで……」


またもや同級生からの電話らしい。 楽しそうにくだけて感じで話している様子からして、今度は男の親友だろう。 さっきよりも長電話になりそうだったので、光はその場を離れた。


(楽しい同窓会になればいいけど……心配やなぁ)


そして、同窓会の日はやってきた……
To be continued
後書き 兼 言い訳
公二たちが北海道にやってきました。
そして楓子からの電話。雲行きが怪しい展開です。

え〜、北海道の情景がまったくありませんが、気にしないでください。(こら
私が書けないだけですから、だいたい行ったこともないし。(こらこら

次回は公二の同窓会。
波乱の連続です。
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