第33話目次第35話
「楓子ちゃんが家に帰ってへん!どこにいるかまったくわからへんって!」
 
時計は8時をすぎていた。
そとは台風の影響で雨がつよく、風もつよかった。
 
「楓子ちゃんが!どうして?」
「実は今日私の家に来たんや。うちに本当のことを言いに……それを聞いてうちは家を飛び出したの……」
「そうだったんだ……」
「それからは楓子ちゃんのことはまったく知らへんのや……」
「俺たちが公園にいたときはまだいいけど、今は夜遅いし、台風もあって早く探さないと危ないぞ!」
「そうだけど……どこにいるのか……」

放っておく訳にはいかない。
しかし、手がかりが全くない。
なすすべがなくおろおろする二人。

そんな二人を見て花桜梨が二人に告げた。

「主人君、陽ノ下さん……ここは私にまかせてくれないかしら……」

太陽の恵み、光の恵

第8部 倦怠期編 その5

Written by B
花桜梨の申し出に驚く二人。

「えっ……」
「私……なんとなく、彼女の場所……わかる」

「じゃあ、うちらも一緒に……」
「だめ……私一人で行かなくてはいけないの……」
「八重さん……」

花桜梨の言葉に自分たちも一緒に行こうとしたが花桜梨はそれを拒んだ。

「そもそも、皆に迷惑を掛けた原因は私……最後は私自身で解決させなくてはいけないの」
「八重さん……」
「だからお願い、一人で行かせて」

花桜梨の表情は真剣だった。
ここまで真剣な花桜梨を見たのは二人とも初めてだった。 

「わかった、八重さんに任せるよ……」
「お願い、八重さん……」
「楓子ちゃんを見つけたら、戻ってくるから……2人に言わなくてはいけないことがあるから……」
 
そういって、花桜梨はすぐに光の家から出ていった
 


その楓子は野球部部室にいた。
隅でひざを抱え、震えながら泣いていた。
 
「どうしよう……公ちゃんと光ちゃんを引き裂いた。友達の2人の仲を引き裂いちゃった……」

「自分が何も知らなかったばっかりに……自分のことしか考えていなかったばっかりに……」

「もう、ふたりに合わす顔がない……」

「もう、私達は終わってしまった……」

「うわぁぁぁぁん!」

楓子は一人、暗い部室で大声で泣いていた。



がちゃ



「楓子ちゃん……」
「花桜梨……先輩……」
 
部室の扉には花桜梨がいた。
楓子は涙でぐしゃぐしゃの顔で花桜梨を見上げている。
その楓子は「なんでここに?」という驚きの表情が混じっている。
 


「やっぱりここにいたのね。楓子ちゃんは悲しいときにはいつも屋上か部室にいたからね……」
「……」
「話は主人君と陽ノ下さんから聞いたわよ」

花桜梨は腰に手をあて、やっぱりという表情をしている。

「先輩……せんぱい!」
「楓子ちゃん!」

楓子は花桜梨に飛びつき抱きついた。
花桜梨は驚きながらも楓子を受け止める。



「うわぁぁぁぁん!」
 


そして楓子はおもいっきり泣いた。
 
「先輩……私、取り返しのつかない事をしてしまったの!」
「楓子ちゃん……」
「友達のことをなにも知らないで……自分の事しか考えてなかったばかりに……」
「……」
「どうしよう!……わたし、どうしたらいいの!先輩……」

楓子は震えていた。
よほど思い詰めていたのだろう。
楓子は必死に花桜梨に助けを求めている。
そんな楓子を花桜梨は優しく抱きしめる。
 


花桜梨か楓子の背中を優しくなでなでる。

「大丈夫よ……」
「えっ……」

楓子の震えが止まった。

「主人君と陽ノ下さんはもう大丈夫よ……」
「本当?」

楓子は顔を上げる。
そこには穏やかな顔をした花桜梨がいた。

「本当よ……私が見たから間違いないわ……」
「そう……よかった」

楓子は泣きやんでいた、少しだけだが明るいようにも見える。
そんな楓子をみて安心した花桜梨。

「悪いのは楓子ちゃんだけじゃないのよ……主人君も、陽ノ下さんも……なにより私が……」
「えっ、どういうことですか?」
 


「私、高校でも一生懸命、バレーをやってたの」
「やっぱり……」

花桜梨は自分の昔話を語り出した。
花桜梨のこれまでに楓子もじっくりと耳を傾ける。


「だけど……」
「だけど?」

花桜梨の話が一旦止まる。
花桜梨は軽い深呼吸をする。
それは、これからの話は自分が前に進むための一歩だから。

「ある日、部室から部費が消えて……みんな知ってた、ある先輩がやったって。でも、それで部がなくなるのは嫌だったの」
「先輩、もしかして……」
「そう。私がやったって言った……」
「!!!」

花桜梨の告白に楓子は驚いた。
あまりに驚いて声も出ない。

「それでうまく行くって思った」
「そんな……」

「停学なんか平気だと思ってた」
「……」

「あの時私を救ってくれたバレーさえできればよかった!けど、けど……」
「けど?」

「停学がとけた後、私とバレーをしてくれる人は誰もいなくなってた……」
「ひどい……」

楓子が想像もつかなかった花桜梨の過去。
花桜梨が受けたひどい仕打ちに楓子も声がでない。

「もう私は誰も信じられなくなった……学校にも行きたくなかった……」
「そうだったの……」
「私は学校をやめて、ひびきのに入学し直した……なにか変わるかもしれないと思って」

花桜梨は寂しい表情で首を振る。
心配そうに楓子は花桜梨を見る。

「でもなにも変わらなかった……楓子ちゃんが転校するまではね」
「えっ!」

しかし花桜梨の表情は穏やかな表情に戻る。

「それからは……知ってるよね。全部私のことを心配してくれたからでしょ?」
「ごめんなさい……迷惑掛けて」

「そんなことないわ……おかげで本当の私を取り戻せそうだから……」
「先輩、それって……」
 
花桜梨は楓子に向かって大きくうなずく。
楓子の考えと同じといわんばかりに。

「私……バレー部に入る。もう一回やりなおしてみる」
「先輩!私、嬉しい!」
「楓子ちゃん!」

楓子は花桜梨をぎゅっと抱きしめる。
あまりの強さに花桜梨もおもわず驚いてしまう。

「よかった、よかった、よかった……」
「ありがとう、楓子ちゃん……」

楓子はまた泣いていた。
こんどはうれし涙。
表情も明るかった。
 


「楓子ちゃん、陽ノ下さんの家に行きましょ?」
「でも、でも……」

楓子の表情がまた暗くなった。
いやなにかに怯えているようだ。
何に怯えているのか、それは花桜梨にもわかる。

「大丈夫、二人とも許してくれるわ……駄目なら私が説得してあげる」
「ありがとう、先輩……」

安心した表情の楓子。
花桜梨はちょっと困った顔をしながら楓子に告げる。
 
「楓子ちゃん……『先輩』って言うのやめて欲しいな……『花桜梨』でいいのよ」
「でも……やっぱり、先輩は先輩です!」

楓子の強い口調に思わず苦笑してしまう。
たしかに1年年上だが、今は同級生、それに恩人でもある。
先輩と言われる立場ではないと花桜梨は思っていた。

「楓子ちゃん、先輩でも、『先輩』ってつける必要はないのよ……」
「でも……」

困った様子の花桜梨。
それでも説得してみる。

「先輩の命令……って言えば聞いてくれるかな?」
「はい!わかりました、花桜梨さん……って、やっぱり、照れくさいな」
「大丈夫、すぐに慣れるわ……それに私達は先輩、後輩じゃなくて友達でしょ?」
 
花桜梨の言葉に楓子の表情がぱっと明るくなる。
 
「嬉しいです……ずっとずっとあこがれだった花桜梨先輩と友達になれるなんて……」
「こらっ!もう『先輩』がついてるぞ」
「あっ!ごめんなさ〜い」

仲の良い二人。
先輩後輩から本当の友達になるには時間はかからないだろう。
 


午後10時半
光の家。
 


ぴんぽーん



チャイムに光が玄関に出てきた。
 
「は〜い、どちらさまで……あっ、八重さん!」
「こんばんわ、陽ノ下さん」
「あっ、楓子ちゃん!」

そこには花桜梨とうつむいたまま立ちすくんでいる楓子がいた。

「光ちゃん……ごめんなさい……」
「いいのよ、うちも公二もわるかったんやから……」

楓子は小さな声で謝る。
光には楓子に対してもう恨みも憎しみもない。
光は楓子に優しく対処する。

「私達……友達でいいよね、こんな私でも友達になってくれるよね?」
「大丈夫、うちと楓子ちゃんはずっと友達や!」
「ありがとう……光ちゃん」

楓子が落ち着いたところで、光は花桜梨と楓子を部屋に案内した。
 


部屋には公二と光、それに花桜梨と楓子がいる。
恵は別の場所で晩御飯を食べているのでいない。

集まったのは他でもない、花桜梨が話があると言うからだ。

「ところで八重さん。話って?」
「私の過去の話、私がこうなった訳を……」
「花桜梨さん!」
「いいの、二人ならわかってくれるから……」

花桜梨は停学・留年の事実を公二と光に全て話した。
公二と光は黙って聞いていた。
そして、このことは誰にも言わないことを約束した。

楓子も3人に迷惑を掛けたことをあらためて謝罪した。
公二も光も自分の過ちを謝罪した。
 
こうして、公二、光、楓子はお互いに仲直りした。
 


それからして公二は光にこっそりと話しかける。

「なあ、光」
「なに、あなた」
「楓子ちゃんと八重さんだったら……俺たちの悩み、聞いてくれるかも」
「そうだね、相談してみようか……」

花桜梨はこそこそ話している公二と光に気が付いた。 

「どうしたの?」
「なあ、楓子ちゃん、八重さん、俺たちの悩み聞いてくれないか」
「なに、公ちゃん?」

今度は公二と光が自分たちの悩みを打ち明け始めた。

「俺たち……結婚していること、みんなに打ち明けようと思っているんだ……」
「えっ?」

「私達、もし学校にばれたら大騒ぎになって、学校にも恵にも迷惑を掛けると思って隠してたの……」
「そうだったの……」

光の表情がみるみる暗くなる。
どうやら思い出したくない昔のことを思い出してしまったらしい。

「それにな、うちもうあんな思いしとうないねん」
「光……」

「友達に裏切られ、避けられ……もう嫌やねん」
「………」

「今の友達は大好きや、でもそれが離れるなんて……考えとうないねん」
「………」

光が辛い思いを打ち明ける。
今にも泣きそうな顔をみれば、昔何かあったのか花桜梨も楓子も想像がつく。

「でもな、友達に隠しているのがだんだんつらくなって……」
「どうして?」
「大切なことをこそこそ隠しているんだ、それで友達だなんて言えないよ……」
「うちら本当の友達になりたいんや、隠し事をしない本当の友達に……」

これはずっと二人が悩んでいたこと。
二人が険悪になった遠因でもあった。

「でも、周りの影響、友達のこと、いろいろ考えると……俺たち夏休みからずっと悩んでいたんだ」
「うちらが喧嘩したのも……それで二人ともイライラしていたせいかもしれないんや……」
「そんなに悩んでいたんだ……」

ここで花桜梨と楓子が軽く話し合いをする。
どうやらお互いの考えを確認し合っているようだ。
それから二人は公二達に向き合いなおす。

「いいんじゃない?別に急いで打ち明けなくても」
「八重さん……」

「いつかは話さなくてはいけないと思う。でも急に打ち明ける必要はないと思うな」
「えっ……」

「本当の友達なら、わかってくれると思う……こうしなければいけないわけを」
「私もそう思うよ、光ちゃん、公ちゃん」

「ありがとう、八重さん、楓子ちゃん」
「それを聞いて安心したよ……ありがとう」
 


玄関。
花桜梨達が帰るというので家の外まで見送りに出た。

「今日は本当にありがとう……」
「そんなことないよ、お礼を言うのは私達のほうだから……」
「そうだよ。花桜梨さんがいなかったら俺たちどうなっていたか……」
「ありがとう……」


「それじゃあ、また明日ね!」
「うん!夜遅いから気をつけてね!」
「じゃあ、またあした〜」

楓子と花桜梨は手を振りながら帰っていった。
公二達は二人が小さくなるまで手を振り返していた。
 


帰りの夜道。
花桜梨と楓子は一緒に歩いていた。

「花桜梨……さん?」
「何?楓子ちゃん」

「もう夜遅いから……私の家に……泊まっていきませんか?」
「いいわよ。だって友達だもの」
「う、嬉しい……」
 
その日、花桜梨は楓子の家に泊まっていった。
その晩は、お互いの昔話に花を咲かせた。

そして、花桜梨は次の日から花を咲かせたように明るく優しい本当の花桜梨に生まれかわることになる。
 


公二と光は、楓子と花桜梨を見送ったまま玄関で立ちすくんでいた。
 
「いっちゃったね……」
「ああ……」

「………」
「………」

二人に少しだけ寂しい気持ちになる。
そんな雰囲気を小さな声が遮る。
 

「ママ〜!パパ〜!おふろ〜!」

「!!!」
「!!!」

振り向くと恵が二人の下に立っていた。
どうやら外に出たっきり帰ってこない親たちを迎えに来たのだろう。

「ママ?パパ?どうしたの?」

「恵……!」
「恵……!」

恵の姿をみたとたん、公二と光の心に大きくグサリとくるものがあった。
 
「……あれ?どうしたんだろ?」
「……俺も?どうしたんだろ?」

なぜだらわからないが二人の心になにか湧きあがってくる。

「どうして?どうして涙がでるの?」
「俺もだよ。どうして涙が溢れるんだ?」

自分自身でもどうしたらいいのかわからない。

「え〜ん、とまらへんよ〜!」
「何故?なぜこんなに泣きたいんだ?」

「?」
 
無邪気な恵の笑顔を見た公二と光の目には自然と涙が溢れていた。
 


泣きながら公二は何か気が付いたらしい。
光に泣きながら話す。

「光。俺たち今までとんでもないことをしていたかもしれない」
「えっ?」
「どうしたの?」

公二は両手を光の両肩に置き光の体を細かく揺すった。
光にも気が付いて欲しいという感情を込めて。

「俺たち、一番大切なものを放っておいたんだよ」
「あっ!」


「なぜ……なぜ俺たちは恵を放っていたんだ!」
「!!!」

公二の叫びに光もようやく気が付いた。

「めぐみがどうしたの?」

恵は両親に問いかけるが返事はない。
二人は気が付いたものの大きさに衝撃を受けていたから。

「恵は俺たちの愛の結晶だよ。それをなぜ……厄介者にしてしまったんだ!」
「うちもや……何度も邪魔者だと思っちゃった!」

公二と光はやっと気がついた。
自分達には大切なものがあると。子供という最高の宝物を。

「恵がいたから俺たちここまで暮らしてきたのに……」
「そうや、恵がいたからどんな辛いことも耐えられたのに……」

その大切さにきづかず、放っておいた自分達の愚かさにやっと気がついた。

「なんてことをしてしまったんだ……ああっ……」
「あなたとうちの事ばかり考えて……うあっ……」
 
自分のショックはあまりに大きかった。
二人ともガックリと膝をつき、手を地面に押しつける。
そして自分の愚かさに泣いていた。



「パパ。ママ。めぐみはここだよ」

二人がゆっくりと顔を上げるとそこには恵がいた。
恵は満面の笑みを浮かべている。

「恵!」
「恵!」

公二と光は感極まって恵に抱きついた。
溢れる涙は拭こうとしなかった。

「パパ!ママ!いたいよ〜!」
 
恵はあまりの強さに嫌がるが公二達はそれでも恵に抱きつく。
 
「恵、ごめんよ……」
「ごめんね、恵……」

「うん」

公二と光は、ただひたすらに恵に謝っていた。

「許してくれ、恵……」
「もう、恵を放っておかないから……」

もう自分だけの問題はない。愛する人と愛する娘の問題でもあるということを痛感させられた。

「うん……」

一方大人の事情のわからない恵はなにがなんだかわからず、きょとんと立ちすくんでいた。
 


翌朝。
 
「う、う〜ん……」
「ふぁ〜あ……」

二人は同時に目を覚ました。

「おはよう、光」
「おはよう、あなた」
 
公二と光は同じベッドで目が覚めた。
 
「そういえば……」
「そういえば?」
「そういえば、2カ月ぶりだよな?」
「あ、そ、そうだね……」
 
公二と光が同じベッドで寝たのは2カ月ぶりだった。
そして2ヶ月ぶりの一緒の朝だった。
 
「激しかったなぁ、昨日の光は」

「ば、ばか!あなただって!」

「ま、そ、そうだけど」

「もう……いじわる」

すこしだけ拗ねた光だが、すぐに元に戻って公二の腕枕に顔を埋める。
公二もそんな光を優しく抱きしめる。

「なあ……俺たちっていわゆる倦怠期って奴だったかもしれないな?」
「そうかもしれないね……」

「親たちも心配だったのかなぁ?」
「そうだね、迷惑かけたかもしれないね」
 


「あっ!おおきな声だしちゃ駄目!」
「えっ?」

「う〜ん……」

二人の耳に恵の声が微かに聞こえてきた。
 
「恵がまだ寝ているから」
「あっ、そうだ」

二人はゆっくりと起きあがり、二人一緒にシーツに包まれながら恵のベッドに近づく。
自分たちのベッドの近くには恵がすやすやとまだ寝ていた。
 
「恵の寝顔ってかわいいね」
「ほんとうだな……」
「恵、うちらが喧嘩をしているとき、本当に寂しかったかもしれないね」
「そうだと思う……もう、恵を寂しくしてはいけないな」
「うん」

恵の寝顔はとても安からだ。
それだけに自分たちがしてしまったことの大きさを実感する。

「俺たちがこの安らかな寝顔を守っていかなくちゃな」
「うん、うちらが命がけでね……」

親としてもう恵は泣かせない。
二人の新たな決意だ。

「あっ、そろそろ時間だし、起こそうか?」
「うん、了解了解!」
 
こうして、公二と光と恵の新たな生活が始まった。
 


その日、光と公二は久しぶりに一緒に登校した。
 
「琴子〜!おはよ〜!」
「水無月さん、おはよう!」
「あっ!おふたりさん、どうしたの?」

昨日までとは違い、とても仲の良い二人に琴子は驚いていた。

「へへっ、仲直りしたんだもんね〜!」
「そういうこと!それじゃあ……」
 
元気いっぱいの声で返事をすると二人は先に学校に行ってしまう。

「あらあら、仲良く手をつないで……」

「なんか、仲直りしたようだな……」
「なんか、前より仲が良くなったような気がしますね」

後から来た匠と美帆も二人の姿に驚きながらもほっとしていた。

「なんかほっとするわね……」
「あいつらの事、気になるけど、仲良くしているのを見ているとほっとするんだよなぁ」
「そうですね……」

長い二人の仲違いも元に戻って安心した3人だった。
 
「そういえば、2人とも目が真っ赤だったわね……なぜかしら?」
「さあ?」

「まあ、いいじゃないですか。2人が幸せなら」
「それもそうね」
 
3人には公二と光の赤い目に隠された深い深い事情を知る由もなかった。
 


公二と光は花桜梨の言葉を信じることにした。
いつかは秘密を話さなくてはいけない時がくるだろう。
そのときは正直に話そう、本当の友達だったらわかってくれると。
とりあえず今は秘密の夫婦のままでいよう。
 
しかし、二人は全く予期していなかった。
そのときがもうすぐ訪れることを……
To be continued
後書き 兼 言い訳
公二と光。最後に一番大切なものを取り戻しましたね。
2人には恵という、一番大切な人がいるということを忘れていたようですね。
親として夫婦として色々学んだことが多かった第7部だったのではないでしょうか?
 
後半にある、ベッドの中での甘い話。
あれは、公二と光が、自分たちが倦怠期であったことを気づかせるため、
そして、完全に倦怠期から抜けたことを表現したかったのであえて入れました。
 
第8部は本当に難産でした。
自分自身では結構重いテーマだったので、なかなかストーリーが進まなかったのですが。
みなさんの感想を読んで、いろいろな見方を知ることができて、とても参考になりました。
ここまで、書けたのもみなさんのおかげです。おかげで最初に第7部の下書きに比べて遥かにいい話になりました。
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