第49話目次第51話
相変わらず公二と光の片方は授業を追い出させる。
それに何一つ不平をいわず、恵を連れて教室をでていく。

そして毎日1回はほむらが現れて、恵を連れて行く。
公二と光は何か言いだそうだったが、その前に連れてしまった。
クラスメイトは半分やりすぎ、半分偉いと思っているが誰も口にはしない。

恵は学校にも慣れたようだ。今ではすっかりクラスのアイドルだ。

そんな毎日が続いて、もう1月も下旬になろうとしていた。
ようやく公二と光の松葉杖生活も終わり、ようやく普通に生活できる体をとりもどした。

今度は公二も光の周りが本人以上に大きく変化しようとしていた。

太陽の恵み、光の恵

第11部 決戦編 その3

Written by B
ある日のこと。
光は朝早く学校に向かっていた。それも一人で。
理由は光が学級当番だったからである。

そして近くの公園を通り過ぎようとしたとき、
事件が起きた。

光は不意に柄の悪そうな女子学生3人に前を遮られたのだ。

「おい、いつも子連れで学校行ってるのはお前か?」
「そ、そうやけど……」

「おい、ツラ借せや」
「な、なにするんや……」

光は無理矢理公園内に連れて行かれた。



そこにはさらに4人ほど、さらに柄の悪い女子学生らしき人がいた。
間違いなくひびきの高校の制服ではない。
光にもあきらかに憎悪の感情で見ているのがわかった。
そのなかのリーダーらしき女性が脅すような口調で話しかけた。

「な、な、なんの用や……」
「てめえ、最近いい気になってんじゃねぇのか?」

「そ、そんなこと……」
「毎日毎日にやけた顔して登校しやがって」

「そ、そんなの関係ないじゃない」
「こっちはむかつくんだよ!」

「な、なんで……」
「理由なんて関係ねぇ!とにかくむかつくんだよ!」

「そ、そんな……」
「おい、こいつに世間の厳しさをたたき込んでやりな!」

「た、た、助けて……」

光は恐怖のあまりに足が動けなくなっていた。



まわりの不良が光に襲いかかろうとしたとき。

「やめなさい!」
「えっ……」

光のところに向かってくる一人の女性。
そして周りをはねのけ、光の側に寄る。

「か、花桜梨さん……どうして……」
「朝練があるから、早めに登校しようとしたら、偶然見かけたの」
「よ、よかった……」

思わぬ助けが入って光は安心した表情を浮かべる。

「光さん、ここは私にまかせて早く学校へ……」
「えっ……」

「今のうちに逃げて、早く……」
「でも、花桜梨さんが……」

「私は大丈夫だから……心配しないで」
「うん……わかった……」

納得がいかないが、とにかく急いで逃げたほうがいいと、光が立ち上がった。

「光さん」
「何?」

「このことは……誰にもいわないで……二人だけの秘密にして……」
「わかった……気をつけてね……」

突然の乱入でとまどっている不良達を横目に光は全速力で逃げ出した。



そして、残された花桜梨は7人の不良に囲まれた状態になっている。
どの不良も木刀やチェーンやら物騒な武器をもって花桜梨をにらみつけている。

「てめぇ、余計な事をしやがって……」
「……」
「せっかくストレス解消ができると思ったのに……」
「……」
「しょうがない……代わりにお前を犯ってやる……」

沈黙していた不意に花桜梨が語り出す。


「あなたたち……それで本当にいいの?」
「!!!」


「今は2度と取り返せないのよ……」
「……」


花桜梨の静かな迫力に、不良達は一瞬固まってしまう。
しかし、それでもいまにも襲いかかろうとしている。

「そう……わからないみたいね……」
「そ、そうだ!てめえに言われる筋合いはねぇ!」

「だったら……私がわからせてあげる……」
「なにぃ……」

花桜梨の表情が寂しくなった。
そして、花桜梨の目から光が消えた……



それからして、1時間目の授業の前。
光は花桜梨の姿を見つける。

「花桜梨さん!」
「あ、光さん……」

「大丈夫?」
「ええ……大丈夫よ……」

光から見た花桜梨はどことなくフラフラしていた。
なにか元気がないようだった。

「どうしたの?花桜梨さん、元気がないよ」
「いいの、大丈夫だから……信じられるものがあるから……守るものがあるから」
「えっ……」
「私は光さんを信じてる……だから大丈夫……」
「花桜梨さん……」

そうつぶやいて花桜梨は教室へと行ってしまった。

それから、光が捕まった公園で、周辺では最大のスケバングループの幹部7人が何者かに襲われて、
全治1ヶ月以上の怪我を負ったというニュースを知ったのはそれから数日後のことだった。



3学期になってから学校中で話題になっていることがある。
最近怪奇現象が多発しているということらしい。

一部の人、匠や琴子たちは原因を知っている。
もちろん美帆の妖精さんが原因である。

いや原因は妖精さんに命令している美帆なのである。
公二と光の悪口を言う人を妖精さんに探し出させて、
その人たちをひどい目にあわせているのだ。



ある日の放課後。
教室には匠、琴子、純一郎、美幸、美帆、そしてなぜかほむらもいた。
「暇だから様子を見にきただけ」らしい

「なあ、美帆ちゃん、いい加減に辞めたら?」
「私も最近の妖精さんは度が過ぎると思うの」
「そうだよ〜、美幸だってあんなの大変だよ〜」

確かに度が過ぎている。
階段から突き落とすのなんて序の口。
上から金ダライをぶつけたり。
2階の窓から落としたり。
ヘンテコな格好で校庭のど真ん中に飛ばしたり。
座っている椅子を壊したり。
人間がやっていたら間違いなくイジメ以外の何者でもなかった。

「話は聞いたけど、いくらなんでもひどすぎるとおもうぞ」
「うん、あたしもそう思う」
「俺は辞めた方がいいとおもうけど」

しかし美帆は黙って首を横に振った。



「美帆ぴょん、なんで〜、」
「……」

「どうしてなの?」
「……」

「理由を聞かないと俺たち納得できないよ」
「……」

「なんかいったらどうだ?」
「……」
「そんなに大事なことなのか?」

美帆はずっと沈黙していた。
しかし周りの言葉にようやく話し始める。

「どうしても……許せないんです……」
「美帆ちゃん……」

「わかってます……やりすぎだということぐらい……でも」
「でも?」

「私にはこれしかできないんです……公二さんと光さんのためには」
「美帆さん……」

「あの二人の今までの苦労を思うと……どうしても……」
「美帆ぴょん……」

許せない。
それは確かにここにいる全員が思っていることだ。
わかってはいる。しかし手を出してはいけないこともわかってる。



「じゃあ、なんでそこまで二人に手出しするんだ?」

「……羨ましいんです……公二さんと光さんが」
「羨ましい?」

「私、去年まで他人に合わせるような行動しかしてませんでした……それしかできませんでした」
「美帆さん……」

「それでいいと思ってました……」
「まあ、人と合わせるのは楽だからな……」


「でも公二さんと光さんは違ってました……」
「確かにな……」

「世間とは違う道、困難な道を歩いてきた……」
「ええ、そうね……」

「でも二人はそれを誇りにしてる。自信に満ちあふれてる……」
「確かにな、俺もそう思う」

確かに公二と光はあまりに独自の道を歩いている。
しかし、辛そうな顔を見たことがない。
それは本当の事を知る前も確かにそうだった。
二人は今の自分の道を信じて歩いているように見えた。



「私、あの二人に教えられたんです……」
「何がなんだ?」

「他人と違ってもいい、それを誇りを持てばいい。自分は自分だから自信を持てばいい……」
「そうだな、あたしもそう思う」

「学校での3人を見ていて、私も自信が持てそうなんです……」
「美帆さん……」

「私は他の誰でもない。私は白雪美帆。今は自信を持って言えるようになったんです」
「美帆ちゃん……」
「美帆ぴょん……」

美帆は清々しい笑顔を見せていた。
それは今まで見たことがない程のすがすがしさだった。



「だから、これに関しては自分の考えを貫かせてください……」
「わかったよ、俺たちは何も言わない……」
「匠!」
「美帆ちゃんがこれだけ変わったんだ。やりたいようにさせてあげようよ」
「……そうね……」
「あいつらの恩もあるんだろ?好きなように恩を返しなよ」
「ありがとうございます!じゃあ私は部活があるので……」

美帆は教室から立ち去ろうとする。

「美帆ちゃん!」
「えっ?匠さん?」

美帆の背中越しに匠が呼び止める。
美帆は思わず振り向く。

「程度はほどほどにしたほうがいいよ」
「はい!」

そのとき美帆が見せた笑顔は今までで最高の笑顔だったのかもしれない。



教室から出ようとした美帆だったが、何か考え事をしたあとみんなに提案する。

「あっ、そうそう。明日は天気が良くて暖かそうですから、お昼は皆さんで食べませんか?」
「おっ!いいねぇ!」
「みんなでお昼か……」
「そういえば、みんなでお昼を食べたことは無かったわね」
「そうだな。じゃあ、中庭でみんなで食べるか?」
「うん!それがいい〜!」

満場一致で美帆の提案に乗った。

「じゃあ、残りのみんなは俺が連絡するよ」
「お願いしますね」
「まかせときな!」
「明日が楽しみですね……」

このとき、美帆の表情がある決意を秘めたものであることには誰も気がつかなかった。
To be continued
後書き 兼 言い訳
いきなり1月後半です。

途中の様子は前説ですませてしまいました。
この件については一旦離れる形になります。

今回は前半後半と別れてます。

まず前半。
はっきり言ってネタ振り以外の何者でもないですな(汗
ただ花桜梨自身、徐々に変わってます。
それだけは言っておきます。

そして後半。
美帆の行動の真意を書きました。
美帆は鬼だとか裏番とは言ってますが、悩める少女なんです
そんなところを書いてみました。

ああ、会長が目立ってない(汗
もうすこし活躍させたいなぁ……

さて次回は……わかりますよね?最後の文を読めば。
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