第63話目次第65話
「お待たせしました」

すみれが普段着に着替えて楽屋に戻ってきた。
サーカスの衣装と違って、普段着のすみれはやっぱり普通の女の子だというのを感じる。

「じゃあ、さっそくいこ〜」
「はい!」

すみれはとても嬉しそうに美幸には見えた。
さっきはあんなことを言っていながらもやっぱり遊びに行くのは嬉しいようだ。

「すみれ、おもいっきり楽しんできなさい」
「はい、パパ」
「キキッー!」

こうして美幸とすみれは遊園地に出かけた。
ちなみにすみれはデイジーも一緒に連れて来た。

太陽の恵み、光の恵

第13部 サーカス少女編 その3

Written by B
しかし今はちょうどお昼。
お昼御飯にしなくてはいけない。

「遊園地に行く前にお昼にしよ〜」
「そうですね」

「そうだ!美幸がおいしいお店知ってるから、一緒に行こう!」
「じゃあ、お願いします」
(すみれちゃん、全国を旅してるんだよね、だったらここでしか食べられないものを……)

そう美幸が思って連れてきたのは、ラーメン屋「響野亭」
典型的な東京ラーメンのお店である。

「ラーメン屋ですか?」
「そう。ここって雑誌には載ってないけど、本当においしいんだよ〜」
「へぇ〜、そうなんですか」
「うん!すみれちゃんって、全国回ってるから、ここの名物でもとおもって……」

(美幸さん、そこまで気を遣ってくれて……うれしいです……)

今の時代は別に東京ラーメンは東京以外でも食べられるので名物でもなんでもないが、
すみれは美幸の気遣いを嬉しく思っていた。



二人ともラーメンを注文した。
ラーメンが来る間は二人はお互いの事を聞きあう。

「そういえば、すみれちゃんって幾つなの〜?」
「ついこの前、15歳になりました」

「ええっ、美幸よりも年下なんだぁ〜」
「美幸さんは?」
「美幸は16なんだけど、なんかすみれちゃんのほうが大人だよね〜」

「えっ……」
「うん、美幸よりもしっかりしていると思うな〜」

丁寧ににこやかに話すすみれは子供っぽい顔だけども、自分以上に大人っぽく感じてしまう美幸。
自分もすみれみたいにしっかりしていればと、ついすみれを尊敬してしまう。



「そういえば、美幸さんはいま高校生なんですか?」
「うん、美幸はこの近くのひびきの高校ってところの1年生なんだぁ〜」

なりげない美幸の一言だったが、すみれにとっては明るい表情の美幸になにか感じていた。

「……高校って楽しいですか?」

すみれは少し小さい声になっている。
表情もわずかながら寂しそうだ。

「う〜ん、勉強は大変だけど全体を見ると楽しいかなぁ〜」
「やっぱりそうですか……」

すみれはそのまま口を閉ざしてしまう。

(あれ?すみれちゃん元気がなさそう……ああっ!しまった!)
(すみれちゃんは今15歳だから、来年は高1の年なんだ。でもすみれちゃんは旅生活だから……)
(あちゃ〜!美幸はとんでもないことを言っちゃったのかなぁ〜)

美幸はすみれの異変の訳に気が付いたがすこし遅かった。
思いがけない話題から、二人の間に気まずい雰囲気が漂う。



そんな雰囲気が完全に充満する前にラーメンが運ばれてきた。

「おまちどうさま。ラーメン2つですね……ああっ!美幸ちゃん!」
「ああっ、あかねちゃん!どうしてここに?」

ラーメンを持ってきたのは茜だった。
茜はいつも例の食堂で働いているものと思っていた美幸は驚いている。

「日曜のお昼はここでバイトしてるんだ。ここだと料理の勉強になるしね」
「へぇ〜そうなんだ〜」

(この人、美幸さんの友達なんだ……いいなぁ……)

美幸と茜の楽しそうな会話の側ですみれは何とも言えない気持ちになっていた。



そんな中、茜が美幸の前に座っているすみれの姿を目にした。

「美幸ちゃん。この子は親戚の子なの?」
「えっ?」

「ボク、見たことないからそう思ったんだけど」
「違うよ〜、この子はすみれちゃんって言うんだけど、美幸の友達だよ〜」
「えっ……」

美幸は別になにか考えた訳ではない。
それは美幸の口から自然に出てきた言葉。

(友達……私のこと、友達だって……)

しかし、すみれの心には大きく響いたようだ。

「ふ〜ん、そうなんだ……あっ、ボクは次の料理運ばなきゃだから」
「じゃあ、頑張ってね〜」
「うん、頑張るよ!」

茜は厨房の中に戻ってしまった。



茜の姿が見えなくなるのを確認すると、すみれはおそるおそる美幸に尋ねる。

「あの〜、美幸さん……」
「ん?どうしたの〜?」

「さっき、私の事友達だって……」
「そうだよ、それがどうしたの?」

「だって、私たち会うのが2度目……」
「そんなこと関係ないよ〜」

「えっ?」

美幸の言葉におどろくすみれ。
美幸はなおも話し続ける。

「友達の定義なんてないよ〜、この前仲良くなったから美幸とすみれちゃんは友達!」

「でも……」
「細かいことは気にしないの〜。美幸ももっとすみれちゃんと仲良くなりたいから」

「本当ですか?」
「本当だよ〜、だって友達でしょ?」

「そうですね!友達ですもんね!」
「そういうこと!」

(友達だって……友達だって……嬉しい……)

すみれの中に何か暖かい物を感じ取っていた。



「ほら、ラーメンが冷めないうちに食べよう!」
「はい!いただきます!」
「いただきま〜す!」

さっそくラーメンを食べる二人。

「すみれちゃん、おいしい?」
「はい、とってもおいしいです!」
「そっか〜、よかった〜」

とても美味しそうにラーメンを食べるすみれを見て、美幸はとても嬉しくなってしまう。

「キキッー!」
「あっ、デイジーもおいしいっていってます」
「えへへ、嬉しいな〜」

すみれが喜ぶのも無理はない。
この店は近所のラーメン通なら誰でも知っている隠れた名店だったのだ。
だから日曜のお昼時は行列ができる。

実は美幸もこの店に来たのは1度だけ。
夏休みの平日の昼間に美帆と一緒に来ただけだったのだ。
それ以降は何度か行こうと思っていたが、必ず長い行列が出来ていて諦めていたのだ。
ところが今日に限ってはすんなり入れた。

実はこれは朝から続いている「不幸のない生活」が続いているからなのだが、
当の美幸はそんなことはすっかり頭から消えていた。



あまりのおいしさにラーメンを食べているのに夢中になっていた二人。
結局スープまで飲み干してしまった。

「あ〜あ、美味しかった〜」
「こんなラーメン久しぶりです」

二人は立ち上がってレジに向かう。

「じゃあ、代金は美幸が払っておくね」

そのとき美幸は請求書をもって先にレジに向かう。

「そんな、自分の分は自分で……」

それに気づいたすみれはすぐに美幸に追いつく。

「すみれちゃんはいいの!サーカスで感動したお礼だから」
「お礼だなんて……」

「ここは美幸お姉さんにまかせなさい!」

自分の胸をどんと叩く美幸。

(うわぁ、お姉さんなんて、恥ずかしいこと言っちゃった……)
(お姉さんか……)

美幸の言葉に言う方も言われた方も照れてしまっていた。

「じゃあ、お言葉に甘えちゃいます……すいませんね」
「いいのいいの、気にしなくていいから、すみれちゃん」
「はい、お姉さん!」

「……あははは!」
「……あははは!」

結局、美幸がすみれのラーメン代も払って店を出た。



そして二人は遊園地の入場門前までやってきた。
すみれは目を輝かせて入場門を見上げるすみれ。

「うわー、夢みたい……一度来たかったんです」
「そうか、すみれちゃん初めてなんだよね〜」

「良く来るんですよね、やっぱり……」
「あ、うん、まあね……」

すこしトーンが落ちたすみれに合わせて美幸もトーンを落とした返事をしてしまう。

「……そうですか。じゃ、詳しいんですね!?私を案内してください!」

(すみれちゃん、さっき何で寂しい表情してたんだろ?……)

美幸は一瞬だけ見せたすみれの寂しそうな表情を感じ取っていた。



しかし、今日はすみれを楽しませるためにやってきた。
すみれを喜ばそうと美幸は積極的に声をかける。

「じゃあ、すみれちゃんの行きたい所に行こ〜」
「う〜ん、美幸さんのお勧めは?」

ひびきのの遊園地はオーソドックスな普通の遊園地。
とくに売りにしている物はない。
でも定番のものは全て揃っている。

「そうだね〜、ジェットコースターなんてどう?」
「そうですね、行きましょう!」
「キキーッ!」

そういうわけで、遊園地では定番のジェットコースターに乗ることにした。

「あっ?デイジーがいるけど、どうしよう……」
「そうだ!美幸のバックにでも入ってもらうよ」

「仕方ないですね。デイジー、ちょっと我慢しててね」
「キーッ?」

ジェットコースターで振り飛ばされないようにデイジーをバックの中にしまった。



そしていよいよジェットコースターが動き出す。

「すみれちゃん、いよいよだね」
「はい、とても楽しみです」



ガタンゴトンガタンゴトン……



「うわぁぁ、緊張する……」
「結構ゆっくりなんですね……」



ガタンゴトンガタン……ゴトッ



「止まりましたね」
「いよいよだよ……」
「はい……」



ゴゴゴゴゴゴゴーーーーーッ!



「うわぁぁぁぁぁ!」
「きゃぁぁぁぁぁ!」

ここの遊園地のジェットコースターはそんなに速くはないが、初心者にとっては十分に早い速度で突っ走る。



ゴゴゴゴゴゴゴーーーーーッ!



「こ、こわいぃぃぃ!」
「はやいですねぇぇ!」



ゴゴゴーー……ガタンゴトン……ガタン



縦の回転横の回転を何度か繰り返し、やっとコースターはとまる。



コースターから降りた二人は興奮さめやらぬ様子だった。

「こわかったねぇ〜!」
「早くてドキドキしました!」

キャーキャー言いながらも、二人はとても楽しかったようだ。
二人の嬉しそうな顔をみれば誰にでもわかる。

「すみれちゃんでも、ああいうのはドキドキするんだ〜」
「空中は大丈夫ですが、あんなに早くないですから」
「そうだよね、人間はあんなに早く飛べないよね〜」
「そうですね」

ここで美幸はバックに入れたままのデイジーのことを思い出した。

「あっ、そうだ!デイジーを出してあげないと!」
「そうですね。デイジー……あれ?」
「………」

美幸のバックを開けると、そこには目を回してふらふらのデイジーの姿があった。

「さっきのジェットコースターで目が回ったんですね」
「美幸のバックの中だから暗くて大変だったんだよ、悪いことしちゃったな〜」

しばらくは目がぐるぐる状態のデイジーだった。



そのあとも、美幸とすみれはあちこちのアトラクションを回った。

メリーゴーランド、コーヒーカップ、お化け屋敷。

遊園地といえば思い浮かぶスタンダードな施設をすみれは選ぶ。
こういう施設は、小さな子供が喜び、大人はあまり楽しめないものが多いが。
すみれはそんな施設でも純粋に楽しんでいた。

これだけ純粋に楽しんでるのは、やっぱり初めてだからだろう。
美幸はそう思っていた。



そうしているうちに、あたりは赤く染まってきた。
もう夕方である。

「もうそろそろ時間かな?」
「本当ですか?じゃあ最後に観覧車に乗りませんか?」
「観覧車?」
「はい、一度乗ってみたかったんです!」
「うん、じゃ、早速行こ〜!」

というわけで、すみれは最後の乗り物に観覧車を選んだ。



美幸とすみれが観覧車に乗る。
だんだんゴンドラがあがっていく。
それにつれ、下の人間が小さくなっていく。
ゴンドラからは夕日に照らされたひびきのの町並み。
絵に描いたような景色だ。

すみれは初めて見る壮大な景色に驚いていた。

「うわー、凄い景色……」
「人なんか、ほら、アリみたいでしょ?」

「……ここは、ずいぶんたくさん人がくるんですね……」
「うん、休日はいつもこうだよ〜」



「……うらやましいな……」
「えっ?」



とたんにすみれの表情が暗くなる。
その表情に美幸は驚く。



そして、すみれはぽつりぽつりと語り出す。

「今日、サーカス見たでしょ。結構席空いてましたよね?あれでも、いい方なんです」
「えっ!そうなの?」

ふと美幸は思い出してみる。

(確かに席が結構空いていたな……)

確かに美幸の隣の席は空いていたし、まわりも混んでいる感じはそんなにしていなかった。

「ええ、外に出れば遊園地とか、楽しい所、一杯あるし、家にいたって……」
「家にいたって?」
「テレビゲームとか、楽しくて刺激的なこといっぱい……」

すみれの表情はさらに暗くなる。


「時代遅れなんです、サーカスなんて……」


すみれは今にも涙ぐみそうだった。

「すみれちゃん……」
「………」

美幸には、すみれの辛さが痛いほど伝わってきた。

(ダメ!すみれちゃんを泣かせちゃいけない!)

自分が不幸な分、他人の不幸も敏感に感じ取る美幸。
自分が不幸な分、他人が不幸になるのを放っておけない美幸。

「すみれちゃん、そんなことない!」

美幸は思わず立ち上がり、素直な想いをぶつけ始めた。



「美幸、今日、感動したよ、すみれちゃんの空中ブランコ見て」
「えっ……」

突然美幸は立ち上がる。

「美幸、新しい物が大好きだけど、サーカスも大好きだよ!」
「美幸さん……」

必死にすみれに語りかける美幸。

「すみれちゃんのブランコだけじゃない!サーカスの全部が楽しかったよ!」
「………」

身振り手振りで自分の気持ちを表現しようとする美幸。
その美幸を見つめるすみれ。
美幸はなおも語りかける。

「みんなサーカスの楽しさを知らないんだよ」
「そんなことは……」

「誰だって実際見たら、サーカスのファンになるよ、絶対に!美幸が保証する!」
「えっ……」
「サーカスは他とは比べられない楽しさがあるよ!」

「……それ、本当ですか?」
「もちろんだよ、本当だって!自信持ってよ、すみれちゃん!」

美幸の素直な気持ちを、すみれは素直に受け止めた。
すみれは美幸の言葉がとても嬉しかった。

自分のブランコに喜んでくれる人が目の前にいる。
すみれは自分のブランコにさらに自信が持てるようになった。

「……ありがとう。私、もっともっと練習して、お客さんに喜んでもらえるよう頑張ります」
「そうだよ、その意気だよ!頑張ってね!」
「はい、ありがとう、美幸さん……」

すみれの表情が元の明るさにもどった。
美幸もそれがとても嬉しかった。



ところが、その瞬間。



ガタン!



「きゃっ!」
「はにゃ〜!」

突然ゴンドラが大きく揺れた。
どうやらゴンドラが急に止まったかららしい。
美幸達も体のバランスを崩してしまう。

「……だ、大丈夫ですか?美幸さん」

すみれが起きあがって美幸を捜す。

「……えへへ、だいじょうび、だいじょうび〜、まだちょっとぐらぐらするけど〜」

美幸は逆さまの体勢で、さらに床に頭をぶつけたのか、頭がぐらぐらしている。
美幸の今日最初の不幸だった。



しばらくして美幸は起きあがると、ひとつため息をついた。

「あ〜あ、やっぱりなぁ〜」
「どうしたんですか?美幸さん」

「あのね、美幸はねぇ……ううん、なんでもない」
「えっ?」

「いいの、なんでもないから、今の忘れて〜」
「はい?」

(言えないよ、美幸が不幸だなんて……)

美幸は自分が不幸の固まりであることを告白しようとしたが、直前で思いとどまった。

(だって、すみれちゃんは美幸よりも大変なんだよ……美幸の不幸なんて……)

すみれはサーカスの厳しい状況のなかで、笑顔を絶やさずに頑張っている。
それに比べれば美幸の不幸なんて小さいもの。
すみれは辛いのを表に出さないのに、美幸が出すわけにはいかない。
美幸は言わなくて正解だったと思った。

(美幸もすみれちゃんに負けないようにしないとね……)



観覧車も乗り終わり。
美幸とすみれは遊園地の入り口に戻ってきた。

「今日は本当にありがとうございました」
「楽しんだ〜?」
「はい!こんなに楽しいの初めてです」

二人は歩きながら今日の出来事について振り返っていた。

「キキーッ」
「デイジーも楽しんでくれたんだ。よかった〜」
「よかったね、デイジー」
「キキーッ」

もう東の空は暗くなってきた。
さすがに帰らなければいけない。

「じゃあ、暗くなる前に帰ろう。美幸が送っていくよ〜」
「はい……あの……」
「どうしたの?すみれちゃん?」

「今度は来年になっちゃいますけど、私と、また会ってくれますか?」

(そっかぁ、すみれちゃんは一年に一度しかこの街にこないんだよね……)

美幸も同じ気持ちだった。
また絶対に会いたい。そんな気持ちでいっぱいだった。

「うん、もちろんだよ〜!約束する!」
「本当ですか!?ああ、良かった……」
「じゃ、行こ〜?」
「はい!」

(本当に健気でいい子だよね、すみれちゃん。美幸もちゃんと約束守らなくっちゃ!)

美幸はすみれをサーカスのテントまで送り届けた後、再会を約束して別れた。



すみれを送り届けた帰り道。
美幸は一人、家路についていた。

「あ〜あ、やっぱり美帆ぴょん、真帆ぴょんを誘えばよかったかなぁ〜?」

サーカスが終わった後、
美幸は真帆から昼食に誘われた、
このときに、美帆と真帆を連れてすみれちゃんに会ってもよかったはず。

「でもなぁ〜、やっぱりなぁ〜……1回だけからなぁ……」

しかし、さすがの美幸でもそれは無理だった。
確かに跳ねられたところを親切にしてもらったし、サーカスの招待券もくれた。
名前も教えてもらった。なにかとても仲良しになれた気がした。

しかし、出会ったのはそれ1回だけ。
美幸はすみれの事は友達だと思うのだけど、すみれはどう思っているのかわからない。
不幸で車にはねられても平気な変な子だと思われてはいないか?

もしそうだったら会いに行っても迷惑がられるのではないか?
そんな不安が一瞬よぎっていた。
だから美幸は一人で会いに行ったのだ。

「あ〜あ、すみれちゃんを信じればよかったなぁ〜」

当のすみれはそんなことは思っていなかった。
すみれは美幸のことを友達だと思ってくれたみたいだった。
それに、すみれは他人を悪く見るような子ではないと美幸は感じた。

「すみれちゃん、友達がいなくて寂しかったんだよね〜。あ〜あ……」

今更ながら、一人で会いに行ったことを後悔している美幸だった。

「来年は絶対に友達と一緒に……すみれちゃんにた〜くさん友達をつくってあげるんだぁ!」



その夜。
美幸は今日一日のことを思い出して、日記を付けていた。

「なんか今日はと〜っても楽しい一日だったなぁ……」
「すみれちゃんとも友達になったし、今日の美幸は本当にハッピーだったなぁ〜」
「よし!気分もいいし、ゲームでもしよ〜っと!」

そう言うと美幸はTVの前に座り込み、テレビゲームの電源を入れる。

美幸はコントローラを持つ。
すると美幸の頭には友達の言葉が思い浮かんできた。

『ええ、外に出れば遊園地とか、楽しい所、一杯あるし、家にいたって……』
『テレビゲームとか、楽しくて刺激的なこといっぱい……』
『時代遅れなんです、サーカスなんて……』


ブチッ


美幸はいきなりゲームの電源を切った。


「……やっぱりやめ〜た」


夕方あんなことを言われて、夜すぐにゲームをするのは、すみれに対する裏切り行為のような気がした。


「別に新しいだけが、楽しいんじゃないよね……」

「新しくなくても、と〜っても楽しいことはあるんだよね、すみれちゃん!」


今日は美幸にとってとても大切な一日になるのだろうか?
それは何年もたって、振り返ってみなくてはわからないだろう。
しかし、美幸の中の何かが変わったことには間違いがない。
そして、美幸にとって素晴らしい出会いであったことには間違いはないだろう。
To be continued
後書き 兼 言い訳
もう第13部終わっちゃいました(汗
短いんじゃありません。
第11部が長すぎるだけなんです(汗

美幸とすみれの遊園地への旅。
お約束ですね。

簡単なようで難しかった第13部
二人が友達になる過程を書いたのですが、わかっていただけたでしょうか?

すみれちゃんですが、今後どうするかは現在思案中です。
2年生編では何度か出そうと思ってます。
どう登場するかは登場させるまで言いません。

次回から1年生編最後の第14部
再び公二と光がメインになります。
内容はまだいいません。
まあ1年の総括になる気がします。
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