第69話目次第71話
男子グループが旅館に戻ってきた。

「いやあ、温泉はよかったなぁ」
「本当だ、疲れが完全になくなったよ」

匠と純一郎は温泉を満喫しきったようだ。

「まだ、夕ご飯まで時間があるから、自由時間にするか」

まだ時間があるので、自由行動にすることにした。

「そうだな、じゃあ、俺はお土産でも買っておくかな」
「じゃあ、俺も一緒に行くよ」
「部屋は空いてあるみたいだから、荷物を移してから出かけなよ」
「じゃあそうするよ」

部屋は、公二と光の部屋の他に男子用と女子用の2部屋を予約した。
公二達の部屋の両隣の部屋である。

朝は、それまで泊まっていた客がいたので荷物は公二達の部屋に置いてあったが、
もうすでにチェックアウトも終わり、掃除も終わっているので部屋に入ることができる。

「じゃあ、6時に部屋で待ち合わせな」
「ああ、わかった」
「それじゃあねぇ〜」

純と匠は荷物を持って自分たちの部屋に入っていった。

「さてと……」

公二が自分の部屋に戻る。

「………」

そこには男子より先に戻っていた光が暗い表情で座っていた。

太陽の恵み、光の恵

第14部 春休み温泉編 その6

Written by B
公二と光は浴衣に着替えている。
大きなテーブルの片側に二人が並んで座っている。

「やっぱりダメだったか……」
「うん……」
「光だって女の子だもんな……」
「うん……」



昨日の晩、公二と光が話し合っていた事があったのだ。

『明日は匠達がくるんだな』
『そうそう、琴子達と一緒に温泉なんて楽しみだなぁ』
『男の裸なんて見たくないが、やっぱり友達と温泉は楽しみだ』


『あのね、あなた……明日ね、自分の痣が見せられたらなって』
『光……正気か?だって……』
『わかってる、女の子にとって醜い傷だってこと』
『………』
『でも、そんなに目立つわけじゃないし……それに』
『それに?』
『この傷にいつまでもしがみついてるわけにはいかないからね……』


『これに関しては、最後は光の力でしか対処できないからな……』
『頑張ってみるね……』
『無理するなよ……』

結局無理だった。
事件は過去の話にできるが、その傷や痣は簡単に過去にはできない。
母親といっても光はまだ16歳。体の傷で心まで傷ついてる。
そう簡単な話ではなかった。



「まあ無理することはないよ」
「そうだね……」
「大体、女の肌なんて簡単に見せるものじゃないし」
「そうだけどね……まあ今朝はその可能性があったけど」
「あっ……」

確かに今朝は琴子達に寝ているところを入り込まれた。
昨晩はなにもしてなかったからよかったが、もし何かしていたら……

「みんなに見られていたんだよね……」
「まあな……」

「もしあのときそうだったら……体はともかく、傷は見せたくない……」
「………」

「心の準備ができてないのに……見られるなんて嫌だ……絶対に嫌だ……」
「………」

光の声は微かに震えていた。
部屋に重い空気が漂う。

「………」
「………」

光はただ黙っている。
公二は、何か考えている。
そして少しずつ表情が険しくなってくる。



公二が不意に立ち上がる。

「だめだ、どうしても許せなくなってきた!」
「えっ?」

「ごめん、光ちょっと待ってろ」
「ちょ、ちょっと!」

公二が部屋から飛び出してしまった。



そして2分後。
公二が部屋に戻ってきた。
公二と一緒に琴子を連れてきて。

公二はなにか殺気を放っている。
琴子はそれに怯えているようだ。

「は、話って……」
「とにかく座って」
「はい……」

公二は琴子を光のすぐ前に座らせる。
正座で向かい合っている状態になっている。



公二が光の側に座る。

「水無月さん、話をする前に質問に正直に答えて欲しい」
「え、ええ……」

琴子と光は不安そうな顔をしている。
そして公二が質問をする。

「水無月さん、昨晩俺と光がセックスして、そのまま寝ているなんて思っていただろ?」

「!!!」
「!!!」

「裸で抱き合いながら寝ているだろうと思っていたんだろ?」

口調は明らかに怒っている口調。
公二は直接的な言葉をこの怒りを表すためにあえて使った。

思わぬ質問に琴子と光は声も出ない。

「どうなんだい、水無月さん」
「………」

琴子は答えようがない。



答えないとわかった公二は話を続ける。

「俺と光がどういう関係かわかってるから、朝こうなる可能性があるってことはわかってるだろ?」
「………」

「それなのに、あえて朝早く来たって事はそれを期待していたとしか考えられない」
「………」

公二の口調は刺々しい。
琴子はうつむいて、体を小さくしてしまっている。
光は不安な表情で公二が話しているのをただ見つめているだけ。

「もしそうなってたら……俺と光の裸がみんなに見られてるわけだよな」
「………」

「俺は別にいいよ……でも、光は違う」
「………」

「光は母親だよ……でもそれ以前に光は女の子なんだよ」
「………」

「一瞬だって……好きでもない男性に裸は見せたくないってことわかるだろ?」
「………」

「俺だって、光の裸は誰にも見せたくない……光は俺のものだから……」



公二の追求はまだ続く。

「それに光は……本当は女の子にだって裸を見せたくなかったんだよ」
「えっ……」

「今日をよく考えてみろ……光が自分の体を水無月さんたちに見せたか?」
「それは……!!!」

公二の言うとおりだった。
女子グループで温泉に入っていたときも、自分の体は極力見せようとはしなかった。

最初に温泉に入り、最後に温泉から出る。
体を隠すバスタオルは大きめのを使い。なるべく体を隠そうとしていた。
途中でお湯から出ることはせず、なるべくお湯の中にいようとしていた。

「どうしてだかわかるか?」
「………」


「光の……光の体は傷ついたままなんだよ」
「!」


「光の体には、誘拐事件の痣がまだ残っている、目で少しみえるぐらいにな」
「!!!」

公二の言葉に琴子が少し青ざめた表情になっている。



「女の子の体に消えない痣……それがどれだけ辛いものかわかるだろ?」

琴子は小さく頷いた。

「そんな痣、たとえ親友にでも簡単に見せられるもんじゃないだろ?」

琴子はまた小さく頷く。

「光の痣はすぐに見つけられない程度のものだ……でもな」
「………」

「一瞬でも体を見られたら、痣も見られたことになるんだよ」
「………」



「光は痣があること自体は気にしてない、でも痣を俺以外に見せられるほど光は強くない」
「………」

「そんな光を……水無月さん、あんたは思いっきり傷つけようとしたんだぞ」
「!!!」

もう琴子の首は完全に垂れてしまっている。
公二と光からは表情が隠れて見えなくなっている。

「光の裸を不意に見ようとすることは、光の傷を無理矢理見ようとしているのと同じことなんだぞ!」
「………」

「光の裸は百歩譲って許すとしても、これだけは絶対に許せない」
「………」

「水無月さん、納得のいく理由を聞かせてくれ、そうでないと俺の気が済まない……」

公二の語りが終わった。
公二はじっと琴子の返事を待つ。



「言い訳させて……」

琴子がゆっくりと口を開いた。

「正直に言うわ……昨晩やってるの期待してた、いやそうであって欲しいと思ってたわ……」
「やっぱり……」

「でも見たかったのは、裸じゃない、光の寝顔なの……これだけは信じて……」
「どうして?」

「終業式直前に光と話をしたのよ……」



『光、今光が一番幸せだって思う時ってどんなとき?』
『え〜とねぇ……公二の腕の中で寝ているときかな♪』
『あのねぇ……』

『特に、夜じっくりと愛し合って、そのまま腕の中で眠ると、ああ幸せだなぁ〜、って思うんだ〜』
『………』

『公二の腕の中が一番心が安らぐんだよね……』
『まあ、お幸せなこと……』



「光、本当なのか?」
「うん、間違いないよ……」

光は素直に認める。
その表情はいまだ不安そうだ。

「話を聞いて、そんな幸せな光の顔がみたくなって……」
「………」

「だから、この旅行の話を聞いて、『光の幸せな寝顔が見られるチャンス!』って思ったのよ」
「ふ〜ん」

「だから、無理矢理朝早く宿に着くようにして、寝顔を覗こうと思って……」

琴子にいつもの自信のある口調ではない。
あまりに弱々しい口調だった。

「じゃあ、どうして今朝はあんな事をしたんだ?」
「実際光の寝姿をみたら、布団が別々だったから、『いい寝顔は見られない』って思ったの」

「それで?」
「でも実際の寝顔は自分の想像以上に幸せそうで……」
「で?」
「嫉妬しちゃったの……」
「………」

「幸せなのはいいんだけど……なにか悔しくて……自分が情けなくて……あとはなにがなんだか……」
「………」

「私が言える事はこれだけ……これ以上は弁解しない……」

あの気丈な態度を取っている琴子がしゅんとしている



公二は琴子の言葉に応える。

「光、どうする?」
「えっ?」

突然話を振られて光はすこし驚く。

「水無月さんを許すかどうか、俺には決められない。光が決めることだ」
「………」

「光の考えには俺は文句は言わない……」
「………」

公二は判断を全て光に託した。
この問題は光の問題だ、最後は光が決めるべき問題だからだ。

「……わかった」

長い沈黙の中、光はなにか決意したようだ。



光は真剣な表情ですっと立ち上がる。
そして琴子の前に歩み寄り、座っている琴子に話し出す。
光が琴子を見下ろし、琴子は光を見上げる格好になる。

「琴子、私と琴子は友達だよね?」
「え、ええ……」

「だったら……見てくれるよね……」
「えっ……」


「私に刻まれた傷と痣……琴子に全部見せてあげる……」


「!!!」
「!!!」

光は黙って浴衣の帯をほどく。
そして、浴衣を脱ぎ、畳にそっと落とす。
さらに何の躊躇もなく下着も上下とも脱いでしまう。

「私の傷と痣……全部見てくれたら、許してあげる……」
「光……」

琴子は驚いたまま何も言えない。
公二も驚きながらも光の行動をただじっと見つめていた。



琴子の目の前には裸の光が立っていた。
自分では綺麗じゃないと言っていたがそんなことはないと思った。

「光のどこにそんなに痣が……!!!……うそ……」

しかし、そんな琴子の予測は間違っていたことに愕然とした。


たしかに一瞬ではなにもないように見える。
しかし、光の体はたくさんの傷と痣が残っていた。

「こんなに……こんなに……たくさん……」

一つ一つの傷は小さい傷、小さい痣。
しかしじっと見ていると見つかってしまう。

「信じられない……光が……こんなに……」

腕、肩、首、胸、腋、腹、股、腿、脚
あらゆる場所に小さな痣が残っていた。
最初は目立たないからわからないが、一度見つけると例え小さくても痣がはっきりと目に映る。

「そんな……そんな……」

琴子は次々に見つかる痣にショックを隠しきれないようだ。
まさかここまでひどいとは琴子も想像してなかったのだろう。



ショックで呆然としている琴子に公二がそっとささやく。

「水無月さん。光はありったけの勇気を振り絞って自分の醜い部分をみせているんだ」
「………」

「だから、その勇気に応えて欲しい……お願いだから……」
「うん……」

琴子は前から横から後ろから上から下から、光の傷をじっと探して見つめていた。
琴子の顔はショックの影響が残っている。
琴子の手は震えていた。

見られいる光は、複雑な表情を浮かべていた。
裸を見られる恥ずかしさ、傷を見られる辛さ、それに耐える苦しさ。

公二はそんな光をただじっと見つめているしかなかった。



「光……終わったわ……」

そして、10分後、琴子は全ての傷を探し終えた。

「ありがとう……琴子……」
「光……あなた、強すぎるわ……」
「琴子……」

琴子はまだショックが抜け切れてない。
先程のショックがあまりに大きかったのか息も荒い。

「これだけの傷……私だったら耐えられない……」
「……」
「どうして?どうして光は耐えられるの?」

琴子はすわったまま、光は立ったまま。
琴子は追いすがるような目で光を見つめていた。


「愛……かな……」
「愛……」



光は自分の心のなかを正直に話しだす。

「この傷は恵を守るためについた傷……さらに言うと公二と一緒にいるためについた傷……」
「………」

「恵のため、公二のためなら……今の私はもっと傷つくことができる……」
「光……」

「愛があるから、自分を傷つけられる……愛があるから、傷に耐えられる……」
「………」


「だからこの傷は……愛の証なの……恵への愛、公二への愛の……」


今の光の表情はとても穏やかだった。
そして何か吹っ切れた様子だ。

「………」
「………」



光の言葉に満足した琴子はふらふらと立ち上がる。

「ごめんなさい、光……私、あまりに子供だったわね……」
「もういいよ、琴子……もう怒ってないから……」
「ありがとう……」

そういうと、ふらふらと部屋から出て行ってしまった。



部屋には公二と光の二人きり。

琴子が部屋を出て行っても、二人はしばらくは動けなかった。

そしてふと我に返る。

「光!」
「あなた!」

二人はお互いのところに走り抱きしめ合った。

「光……頑張ったな……」
「うん……頑張ったよ……」

「無理しなくていいのに……」
「でも今を逃したら一生傷を隠し続けるような気がしたから……」

「光の傷は俺の物だ……決して見せ物じゃない……」
「わかってる……でもこんな体を本当に誇れる体にしたかったから……」

「そんなことしなくてもよかったのに……」
「でも、どうしても普通の女の子になりたかったから……」

光の本心。
それはこの傷のことを普通の時では忘れたかったのだ。

完全には消えない傷、公二はその傷を愛してくれた。
できればこの傷は公二だけのものにして欲しい。
他人には見せても気にならない、公二だけの傷にしたい。
そして人前では普通の女の子でいたい。

傷を見せることで、傷のことにこだわらないようにしたい。
それが光の心の中だった。

「さっき、この傷のこと『愛の証』っていったでしょ……」
「ああ……」

「あれで振っ切れちゃった……」
「光……」

「これは公二のキスマークと同じ……そんな気がしてきて……」

光の表情がいつもの光の表情に戻っていく。
そんな光をみて公二の表情もだんだんといつもの表情に戻っていく。

「じゃあ……」
「もう大丈夫……これで人前でも堂々と裸になれるよ♪」
「な、な、何だって!」
「冗談だよ♪でも、本当にそのぐらい傷は気にならなくなったから……」
「よかったな……」



「これで夏は水着も大丈夫だよ」
「そうか、それはよかったな……」
「あ〜っ、今想像したでしょ?」
「想像なんてするか、それよりも今の状況がいいな……」
「えっ?今……!!」

今の状況とは、浴衣姿の公二が裸の光を抱きしめている状況である。

「……きゃぁぁぁぁっ!」

ドンッ!

思わず光は公二を突き飛ばして、浴衣で自分の体を隠す。
公二は尻餅をつき、その勢いで頭を床にぶつけてしまう。

「いたたたた……」
「ご、ごめん……つい恥ずかしくなっちゃって……」
「俺も無神経だった……後ろ向くから早く着ろ」
「ごめんね……」

公二が頭をさすりながら後ろを向く。
その間に光は急いで下着と浴衣を着る



光が浴衣を着たところで、二人もやっと落ち着いたようだ。

「しかし琴子、私の傷見てショックだったようだね……」
「ああ、さすがにあそこまでとは想像してなかったみたいだな……」

さっきの琴子の状況は尋常じゃなかった。
ショックの色がありありと見えていた。

「刺激強かったかなぁ……」
「そうかもしれないな……」

公二も光もさすがに心配になってしまう。

「しょうがないか……水無月さんのためにな……」
「どうするの……」

「つまり……ごにょごにょ……」
「ええっ!」

「まあいいじゃないか、『旅の恥はかき捨て』って言うし」
「……まっ、いいか!」

さっそく公二はフロントに電話を掛ける。
光は部屋を出て隣の部屋に行く。



女子用の部屋。
部屋には琴子が一人いた。
美帆と真帆はお土産を買いに出かけているみたいだ。

琴子は一人寂しそうに外の景色を眺めていた。

「琴子」
「あっ、光……」

琴子はまだ呆然としているようだった。

「さっきはごめんね……醜い物みせちゃって」
「いいの……それにあれは醜くないわ……」
「えっ……」

「あれは『愛の証』でしょ?」
「うん……」

「全身いっぱいの愛の証……たっぷり見させてもらっただけよ」
「……」

光は琴子の言葉に恥ずかしくなって顔を紅くしてしまう。



「正直言って、あなたの傷をみてショックだった……」
「……」
「でも、部屋に戻って一人で考えてみたら……光ってすごいなって……」
「そんなことないよ……」
「ううん、光があそこまで言えるぐらい、あなたたちの絆って深いんだなって……」

そういう琴子の表情にはいつの間にかショックの色は消えていた。
むしろ、すっきりしたような表情を浮かべていた。

「光、もうあなた達のこと、からかうのやめにしたわ」
「えっ?」

「今日の二人を見ていたら……からかう私が恥ずかしくなってきたの……」
「……」

「なんか子供が大人をからかうみたいで……みっともなくて……」
「そんなことは……」

「光、今までさんざんからかってごめんなさい……」

琴子が光に対して頭を下げた。

「気にしなくていいよ、本当に……」
「いいの、私のけじめだから……」



このままでは暗い雰囲気が続いてしまう。
光は本題に入ることにする。

「琴子、そんな事は気にしなくていいから」
「でも……」

「今日の夕御飯にいいもの用意したから楽しみにしててよ」
「えっ?」

「それで、さっきのことは忘れて……楽しくしよ♪」
「それって、まさか……」

琴子は光が何が言いたいのかわかったようだ。

「さぁ、なんだろうねぇ〜?」
「光……ありがとう」
「いいっていいって」



そして夕御飯の時間。
全員浴衣に着替えて宴会場に入る。
そこで、今日のお客達は驚くことになる。

「おい、これって……」
「確かにすごいけど……」
「大丈夫?」
「公二、おまえ正気か?」
「わたしも少し不安になってきた……」

匠達が驚くのとは反対に、公二と光は平然としていた。

「まあ、ここだと他の客にじゃまだから座ってよ」
「そうそう、早くしようね♪」

宴会場には7人分の料理。
片方に4人、もう片方に3人分ジグザグに料理が配置されていた。
大きなテーブルに豪華な料理が一人ひとつづつ。

ここまでは全員の予想どおり。むしろ予想以上。

予想外だったのは、一人一人の右端に置いてあったもの。
日本酒の徳利とおちょこである。

「今日は特別サービス!」
「やっぱり宴会だから楽しくやらなきゃ!」

さっき公二がフロントに頼んだもの。
それは酒だったのだ。
ショックを与えてしまった水無月さんに気分良くしてもらいためのものである。
さすがに酔った痴態は問題あるが、今日は目をつぶることにした。

まあ、本当は自分たちもお酒に興味が合ったのも事実なのだが。

自分たちはもちろん高校生なのだが、
電話をとった舞佳に頼んだので、

「そういうのもやっぱり青春なのよねん♪」

という返事であっさりOKされた。



3人のほうに公二、匠、純一郎の順番で
4人のほうには光、琴子、真帆、美帆の順番で座った。

「とりあえず、お酒をつぐか」
「そうね」

さっそく琴子達は「慣れた」手つきで日本酒を注ぐ。

「あなた」
「えっ?」

不意に声を掛けられて公二は声のほうを向く。

「はい、お酒」

光の手には徳利が。
どうやら、公二のおちょこに注ぎたいらしい。

「じゃあお願いな、光」
「はい」

公二がおちょこを差し出す。
光がお酒をゆっくりと注ぐ。
すぐにおちょこにお酒がいっぱいになる。

「次は光だな」
「うん、お願い」

今度は公二が徳利を持つ。
光がおちょこを差し出す。
公二がゆっくりとお酒をそそぐ。
二人の目は酒が注がれるおちょこに集まっていた。


光のおちょこにお酒がいっぱいになる。
公二と光がふと顔を上げると、他の5人が自分たちの姿を凝視しているのに気が付いた。

「しかし、お前達絵になるなぁ……」
「初めてだろ?自然すぎるぞ……」
「見ていてほんわかしてます……」
「お酒と一緒に愛情いっぱいって奴?いいなぁ……」
「本当に素敵な夫婦だこと……」

みんなに褒めちぎられて公二と光は酒も飲んでないのに顔を真っ赤にさせてしまう。



「じ、じゃあ、明日はゆっくりだから今晩は盛大に盛り上がろう」
「そうそう。せっかくの宴会なんだからぱぁ〜っとやろうね♪」

明日は朝ゆっくり起きて昼頃に家路につくだけ。
1年を締めくくる新婚旅行もこれでおしまい。
明日からはまた元の生活に戻る。

いや、元の生活ではない。
新しい生活が始まるのだ。

この旅行で今までの辛い出来事をほとんど精算した。
また人生の新しいステップを踏み出すことになる。

今度は急がず慌てず、恵と3人でゆっくりと。

ほぼ一人前の夫婦として、
まだ半人前の父母として、
そして16年間を一緒に歩んできた幼馴染みとして、
公二と光の新しい1年がもうすぐやってくる。

「みんな、2年生になっても一緒にがんばろうね」
「じゃあ、これから素晴らしい1年間になるように」

「「かんぱ〜い!!」」
To be continued
後書き 兼 言い訳
1年生編これにて完結です。

最後はもうちょっと盛り上げようかな?と思っていましたが、結局しっくりと終わらせました。

最後はどうしようか考えましたが、文字通りこの1年間を完全に精算させました。
これで、公二と光は1年間に起きた出来事を(悪い意味で)引きずることなく2年生になります。

光の傷、痣。
公二はそれを愛してくれます。しかし、他人に対して負い目を感じていてはなにもならない。
でも、普通はおいそれとは見せません。理由はこれを読んでわかっていただけるとありがたいです。
今回は光はこれを克服したことになります。

ちょっと強引な展開だったかな?
公二が怒るのが遅すぎるし(汗
でもこうでもしないと収まらないのかな?という勝手な解釈でこういう話になりました。

えっ?宴会はどうなったかですって?
そういうのを「蛇足」といいます。
みなさんのお好きなように想像していただくということで、1年生編を終わらせたいと思います。

次回は9月になる予定です。
それまでしばらくお待ち下さい。

連載開始から約1年がたちました。
ここまで書くことができたのも、皆様の暖かい声援のおかげだと思っています。
これからもSSを楽しんでいきたいと思いますのでよろしくお願いします。

みなさまありがとうございました!
目次へ
第69話へ戻る  < ページ先頭に戻る  > 第71話へ進む