第79話目次第81話
「ラ○ダーキーック!」
「ハ○ーフラーシュ!」

公二と光は一本の桜の樹を蹴り飛ばしている。
蹴ったり叩いたり揺すったり。

「ねぇねぇ、おちないね〜」
「もうすこしだから、がんばろうね♪」
「うん!がんばろう♪」

二人は樹を揺すっている。

「す〜……す〜……」

二人のターゲットは樹の上で眠っているネコ……の格好で寝ている花桜梨。

態度は子供だが本当は高校生。
力を入れれば簡単に樹は大きく揺れる。


「ふみゃ?」

やがて花桜梨猫はバランスを崩してしまう。

「ふにゃぁぁぁぁぁぁぁ!」

そして見事に地面に落下。
しかし花桜梨か体を地面にぶつけることなく、四つんばいの体勢で着地した。

「すご〜い!やっぱりネコってちゃんとしたかっこうでおちるんだぁ〜!」
「ネコってすごいねぇ〜!」

感心する二人。
しかし状況は危険な状況へと進む。

「ううぅ〜〜〜〜〜〜〜!」

「あれ?ネコがおこってる?」
「ほんとうだぁ」

花桜梨猫はしっぽを逆立てて威嚇している。
しっぽはないので尻を高くあげているだけなのだがとにかく威嚇している。
表情も怒りの表情が見えている。

「こわいよ〜!」
「だいじょうぶ、ぼくがひかりちゃんをまもってあげるよ!」
「ありがとう、こうじちゃん!」

公二は光の前に立ちはだかり花桜梨猫から守ろうとする。

「ううぅぅぅぅぅぅぅぅ〜!」
「さあこい!ぼくがまもってやる!」

「ふぎゃぁぁぁぁぁぁ!」

花桜梨猫はとうとう公二に襲いかかった。
いや、光にもセットで襲いかかってきた。

「うわぁぁぁぁぁ!」
「きゃぁぁぁぁぁ!」
「ふぎゃふぎゃふぎゃぁ!」

公二と光の叫びは他の宴会客の馬鹿騒ぎでかき消されてしまっていた。

太陽の恵み、光の恵

第16部 お花見大騒動編 その3

Written by B
「う〜ん、この呪縛美がたまんないねぇ〜」
「いいのだ、もっと叱って欲しいのだ……」
「縛られて喜ぶとはイケナイ子だねぇ」
「あぁ……メイは叱られて嬉しいのだ……」

桜の樹にまだ縛られているメイに美幸が口説き始めていた。

「もっとイケナイことをしてみないかい?」
「そうすればメイは叱られるのか?」
「ああ、とっても叱られるかもしれないねぇ……」
「じゃあ、頼むのだ」

美幸はメイの紐をほどく。
ほどいている美幸からはよだれがジュルジュル垂れていた。

「さあ、イケナイことをしようか……」

美幸はメイの肩に両手をのせた。
美幸としてはそのまま顔をメイの顔に近づけようとしたのだが、

「じゃあ、さっそくやるのだ」
「えっ?」



ボカッ!ドカッ!ボカッ!ドカッ!



いきなりメイは美幸を叩いたり蹴ったりし始めた。
どうやら「イケナイこと」の意味が違っていたらしい。

「き、君!何をするんだ!」
「こうすればメイは叱られるのだ」
「痛いからやめろ!」
「ああ、やっぱり叱られたのだ……」

とりあえず叱られてメイは満足らしい。



「人生ってなんだろうね……」

匠はちびちびと酒を飲みながらまだ一人で桜の樹に語りかけていた。

「ねぇねぇ〜何やってるの?」

そこに茜が通りかかった。

「広大な大地に比べれば人間はちっぽけな……」

しかし匠は全然聞いていない。
一人の世界に入ってしまっているらしい。

「ねぇ、だいちってつおい?」
「男はその中ででっかく生きていく必要が……」
「どうしたのかな〜?」

話を聞いてもらえない茜は近くの樹から小さな枝を折った。

「つんつくつん♪つんつくつん♪」

そして匠の背中をつつき始めた。

「つんつくつん♪」
「げぼっ!」

「つんつくつん♪」
「あべし!」

「つんつくつん♪」
「うごげ!」

茜の枝は北斗四千年の秘孔をピンポイントで直撃していく。
匠はつっつかれるたびに断末魔の叫び声をあげる。

「げぼっ!」
「わ〜い、おもしろ〜い!」
「ひでぶ!」

茜は大喜びだ。
結局、匠が気絶するまで茜のつっつきは続くことになる。



「ごくごくごく……ぷはぁ〜!」
「うわぁ、お姉様素敵です!」

美帆は日本酒をコップに注いで一気のみをしていた。
真帆はそれをウットリと見つめている。

「そうでしょ〜?ささっ、真帆もぐぐ〜っといきなさいよ!」
「じゃあ、飲ませていただきます」

真帆もコップ一杯の日本酒を一気に飲み干す。

「日本酒って、おいしいですね」
「そうでしょそうでしょ?」
「でも私たちだけ飲むのももったいないですね」
「じゃあどうするの?」
「そうですね〜、あっ、あの方達に飲ませましょう!」

真帆が指差す先には、公二と光の姿があった。

「いたいよ〜」
「ごめんね〜、ひかりちゃん……」
「ううん、こうじちゃんはまもってくれたから……」
「ごめん、ぼくもすごくいたい……」

花桜梨猫にさんざん引っかかられて、顔が痛くてしょうがない様子だ。
そんな二人に美帆と真帆が近づいてくる。

「ねぇねぇ、みんなでお酒飲まない?」
「おさけ?」
「そうですよ、飲むとたのしいですよ」
「う〜ん?」

もう既に飲んでいるのだがそんなところまで思考が回っていない4人。

「じゃあ、試しにのんでみてよ、そ〜れ!」
「ひやぁぁぁぁ!」
「ぎゃぁぁぁぁ!」

いきなり美帆は公二と光の顔に日本酒をかけ始めた。
ひっかき傷に酒がかかった公二と光はあまりの痛みに叫んでしまう。



「御姉様、そんな飲ませ方はいけませんよ」
「ちょっとやりすぎた?いっけな〜い!」

「御姉様、こういうふうに飲ませるんですよ」
「えっ、うぐっ……ごくごくごく……」

そういうと、真帆は光の口に一升瓶をつっこみ無理矢理酒をのませた。

「で、こうすればいいのですよ♪」

そして光と公二の頭を掴んでくっつけ、無理矢理キスさせる。

「うぐっ……んんっ……」
「んんっ……」

要は強制的に口移しをやらせていたのだ。

「うわぁ〜、真帆ってすっご〜い!」
「嬉しいですわ、御姉様」

その様子に美帆はなぜか感激していた。
真帆は美帆に褒められて嬉しそうだ。
公二と光は強制ながらもいつもの口移しにいつのまにか没頭していた。



別の場所では純一郎と琴子が口論している。

「おらぁ!女はもっと色気をださんかい!」
「私のどこが足りないのよ!」
「女は目で漢を誘惑するのじゃ!」

座っている琴子を立っている純一郎が上から怒鳴りつける。

「うわぁ!ご主人様とその愛人みたいでかわいい!」

端からは楓子がデジカメで写真を撮っている。

「ねぇ君、自分が実践するのはどうだい?」
「ああ、鞭とかあればもっと雰囲気がでるのに……」
「だから……」

後ろから美幸が楓子を口説こうとするのだが楓子は聞く耳を持たない。

「貴様、俺に色気のある視線を送ってみろ!」
「そんなの簡単よ……こうでしょ?」

琴子は純一郎に色気のある視線を送る。

「おお、それだぁ!おお……うぉぉぉぉぉぉ!」



バタン!



純一郎はその色気に耐えきれず、すぐに鼻血をだして倒れてしまった。

「ああ、つまんないのぉ……」

楓子は残念そうに写真を撮る。



そんな楓子に美幸がアタックを始める。

「だったら、ボクと楽しまないかい?」
「私は忙しいの!」



ドン!

「うわぁ……ぐふぅ……」

楓子は美幸を突き飛ばす。
飛ばされた美幸は桜の樹に後頭部をぶつけてしまいそのまま気絶してしまった。

「きゃぁ!死んだゴキブリみたいでかわいい!」

楓子は自分がやったことは棚に上げて気絶した美幸の写真を撮っている。



「みんないけないわ!他の人に迷惑なんかかけちゃダメ!」

最初の場所ではほむらが周りの暴走を優しく止めようとするが、そんなことで止まる訳がない。

「ひどいひどい!生徒会長の言うことを聞かないなんてひどすぎるわ!」

ほむらは一人で嘆いている。

「みんな悪い子よ……」

ほむらは自分の周りを見てみる。
そこにはまだ空いていないビールが何本も置いてある。

「もういや!ほむらも悪い子になってやる!」

そういうと、ビールの栓を開けてビール瓶を持って直接飲み始めた。

「もういいわよ!ほむらも悪い子になってやるんだから!」

やけになってしまったほむら。
しかし今日初めてお酒を飲んだほむらにそんな飲み方ができるわけもなく、全部飲みきる前にギブアップしてしまう。

「ぐすん……ほむらは悪い子にもなれないのね……」

ほむらは一人で悲しんでいた。




こうして大騒ぎのうちに時間が過ぎていく。



それからしばらく後。

すでに太陽は地平線の下に沈み、辺りは暗くなっている。
花見客もだいぶ減って、お昼の5分の1ぐらいにはなっているだろうか。

いつの間にか全員最初の宴会場で眠っていた。
たぶん暴れ疲れてしまったのであろう。

「う、う〜ん……寝ちゃったんだ……」
「あれ?……いつの間に……」

そしてしばらくして、みんなが起き始めた。

「あら?みんな起きたの?」

琴子は一足早く起きているようだった。



「ねぇみんな」
「「「???」」」

全員が目が覚めたばかりの琴子に視線が集まる。

「上を見てくれないかしら?」

全員が上を見る。


「「「うわぁ!」」」


そこにはライトアップされた桜が視界いっぱいに広がっていた。
空いっぱいにピンク色の桜の花が映える。
夜空の黒をバックに桜が鮮やかにライトに照らし出される。

「綺麗……」
「いい景色だ……」
「すごい……」
「花が輝いてるようだ……」
「夢の世界のよう……」
「素敵……」
「最高だよぉ……」
「癒される……」
「桜ってこんなに綺麗だったんだぁ……」
「こりゃ最高の景色だなぁ……」
「メイもこんなのは初めてなのだ……」

全員が感嘆の声をあげる。
そのまま絶景に釘付けになってしまう。



「そう、それはよかったわ……」

琴子はなぜかとても嬉しそうだ。
光が理由を聞いてみる。

「どうしたの?」
「いやね、苦労して花見の場所を探してよかったなって……」
「えっ……」
「おとといから夜ここに来て、夜桜が一番綺麗な場所を探し歩いた甲斐があったなって……」
「そうだったんだ……」
「ここの夜桜は綺麗なことで有名だから、折角なら一番綺麗な場所でやりたかったのよ」

琴子達が宴会をしていた場所は本当に公園内で夜桜が綺麗に見られる有数のスポットだったのだ。

光達には言わなかったが、実は琴子は朝5時からここの席取りをしていたのだ。
自分たちの宴会が午後にもかかわらず。
それだけ琴子はこの夜桜を見せたかったのだ。



「じゃあ、さっそく『花見』をしましょうか」

琴子に全員の視線が集中する。
全員が怯えたような目をしている。

「ば、馬鹿ねぇ、お酒なんてもうないわよ」
「じゃあ、どうやって花見を?」
「夜用にとっておいたのよ」

そういうと琴子は端にこっそり隠しておいたジュースとお菓子をたくさん並べ始める。
用意周到の琴子に全員が驚く。

「琴子、いつの間に……」
「気が付かなかった……」

「琴子さんがお酒以外を用意してるなんて……」
「姉さん、驚くところが違う……」

「しかし、なんでお前がここにいるんだ?」
「そんなのどうでもいいではないか!」
「まあまあ、ここで喧嘩しなくても……」

「しかし、綺麗ねぇ……」
「本当だねぇ……」

「どうやら、本当の花見ができそうだな」
「じゃあ、俺たちも手伝うか?」
「美幸も手伝う〜!」

こうして宴会場では改めて花見が始まった。
夜の花見は笑い声のみが響き渡る普通の高校生らしいお花見だった。
To be continued
後書き 兼 言い訳
酔いどれ花見の続きです。

まあ何度も言いますがひどいですな(汗
こいつら絶対に普通じゃない(汗

今回は特に言うことはありません。
まあ最後がきれいにまとまったかと。

次回が16部最終話です。
えっ?酔いどれは終わったのにまだあるの?
でも、どうなりそうか大体わかるでしょ?これまでの3話を読めば。
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