GWも後半に入って土曜日。
天気も良く行楽日和だ。
「ねぇあなた、早く早くぅ〜」
「そんなに急がなくてもまだ早いだろ?」
「だって〜」
ゆっくりと歩いている公二をせかす光。
「パパおそ〜い!」
「ほらぁ、恵も言ってるでしょ?」
「光が言わせたんだろ?」
「あら?そんなことはないよ〜♪」
なんだかんだいいながらも二人の表情は明るい。
今日は3人での初めて遊園地。
恵にとっては人生初めての遊園地。
公二と光にとってはあの日以来2年半ぶりの遊園地。
3人ともウキウキして当然だろう。
太陽の恵み、光の恵
第18部 GW編 その3
第90話〜特別出演〜
Written by B
「久しぶりだね……」
「そうだな……」
遊園地の入場門を見上げる二人。
あれから2年半。
周りも自分たちも変わった。
しかしこの入場門はあのころと変わらずに自分たちを迎えてくれた。
「ねぇ〜、はやくいこう〜」
「はいはい、早く行こうね♪」
恵の声に我に返った3人は入場門をくぐった。
「さて、どこに行こうか?」
「う〜ん、恵がいるからねぇ」
「結構行けないものもあるなぁ」
どこの遊園地には小さい子供が乗れない乗り物が結構ある。
ジェットコースターなどの絶叫マシンをはじめとする動きの激しいのは危険である。
こういうアトラクションは大抵身長制限がある。
しかしまだ2歳にもなっていないの恵がそれを越えているわけがない。
「あっ、あれのりた〜い!」
そんな親たちを無視して恵があるアトラクションを指差す。
「あっ……」
「あれかぁ……」
恵の指の先にあったのはメリーゴーランド。
子供だけが好きそうなアトラクションの典型である。
「う〜ん、ちょっと恥ずかしいけど……」
「恵が乗りたがっているみたいだし……」
さすがに恥ずかしかったが、恵のお願いならば仕方がない。
最初にメリーゴーランドに乗ることにした。
さっそく3人は近くの馬にまたがる。
「わ〜い、わ〜い、おうまさんだぁ〜」
「あはは、恵ったら喜んじゃってぇ〜」
「おうまさん、おうまさ〜ん!」
公二と恵が一緒に一つの馬にまたがり、その隣で光が一人で馬に乗っている。
外側の馬が公二と恵の馬だ。
「しかし、俺たちの同年代がいない……」
「仕方ないよ……」
周りには親子連ればかり。
高校生のカップルなどは乗っていない。
さすがにちょっと恥ずかしい公二と光。
「浮いちゃってるかな?」
「かもしれないけど、まあいいんじゃない?恵が喜べば」
「そうだよね♪」
公二と光が恵に聞こえないように話しているうちにメリーゴーランドが回り始めた。
♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪
オルゴール調の音楽に乗ってメリーゴーランドが回る。
作り物の馬もあがったりさがったりしながら回る。
外を見ると景色が巡る巡る変わっていく。
「わ〜い!わ〜い!」
恵は大喜びだ。
「意外と面白いね♪」
「なかなか面白いな」
公二も光も乗る前はなんだかんだ言っておきながら、結構楽しんでいる。
「パパ、ママ、おもしろ〜い!」
「そうだよね♪」
大喜びの恵に光も公二も嬉しくなってしまう。
そんな3人をすぐ前で見ていた若いカップルがいた。
「ねぇ、私たちがメリーゴーランドに乗ったのっていつかしら?」
「そうだなぁ、小3ぐらいじゃないか?」
黄色のヘアバンドが似合うロングの髪が綺麗な女の子と
その女の子と腕を組んでいるがっちりした体型の男の子。
自然に腕を組んでいるところからして、恋人同士なのかもしれない。
「公人。私たちも久しぶりに乗ってみない?」
「し、詩織。本気で言ってるのか?」
女の子の誘いに男の子が戸惑っている。
「あら、本気よ。せっかくだから昔に戻ってみない?」
「でもなぁ〜」
「何よ、木馬じゃなくて他のものに乗りたいの?」
「なんだよそれ」
「私とか、あっ、私を三角とか乗せたいとか……」
「うわぁぁ!人前で言うな!」
さすがに恥ずかしいのか男の子は言葉を濁す。
「とにかく!あの人達みたいに若い人だって乗ってるんだから♪」
「こ、こら、詩織!ひっぱるな!」
「ねぇ〜、いいでしょ〜?ねぇったら〜」
服の袖を引っ張り上目遣いで男の子を見つめる女の子。
そんな女の子の仕草があまりに可愛いのか男の子の動きが止まってしまう。
「わかったよ……」
「やった〜♪」
渋々認める男の子。
子供のように喜ぶ女の子。
女の子は男の子を引っ張って受付にならぼうと歩き出した。
もちろんその後で二人も公二と光同様楽しんだのはいうまでもない。
メリーゴーランドを満喫した3人は、次の乗り物に乗ろうと歩いていた。
「あれ?ヒーローショーなんてやってるんだ」
「へぇ〜、今も昔みたいにやってるのかな?」
どうやら広場でヒーローショーをやっているみたいだ。
子供が会場の前に集まっているところからしてこれから始まるらしい。
「恵、ヒーローショー、行ってみる?」
「うん!いってみる!」
「じゃあ行くか」
「そうだね」
3人はヒーローショーの会場に向かった。
会場の後の方で、3人は椅子に座っていた。
恵は光が抱きかかえている。
「最近は仮面ライダーも女性がいるんだ……」
「確かそうだったなぁ……」
恵の影響か子供番組に少しだけ詳しくなっている公二と光。
どうやら今回は女仮面ライダーのショーらしい。
「あっ、始まるみたいだね」
会場の雰囲気が変わったようで、いよいよ始まるらしい。
ステージのわきからマイクを持った女性が現る。
「みんな〜!元気にしてたかな〜?」
「「「は〜い!」」」
お姉さんの問いかけに元気に答える子供たち。
そのお姉さんはかなり見覚えのある女性だった。
「あっ……」
「舞佳さん……」
「こんなバイトもしてるんだ……」
「さすがにこれは知らなかった……」
舞佳の登場は不意打ちで、かなり驚いている。
「みんなの仮面ライダーはもうすぐくるから待って……キャ〜!」
舞佳がいつもは決してあげない叫び声をあげる。
(なかなか名演技だね……)
(いや、舞佳さん結構大げさなような気がする……)
ステージの舞佳が現れた方と逆のほうから悪役のボスと二人の戦闘員、それとモンスターが現れた。
「ウフフフフ!……仮面ライダーじゃなくて残念ですわね……」
「νρηκυομη!」
「イーーーーッ!」
「イーーーーッ!」
戦闘員はお決まりのかけ声。
モンスターのモンスターの中にスピーカーがあるらしく、そこから声が出ている。
長年続いているお決まりの展開だが子供には効果がある。
「「うわぁぁ〜〜〜!」」
悲鳴をあげる子や泣いている子もいる。
「うゎあ、あくやくだぁ〜」
恵も悪役の登場で興奮している。
でも別の意味で冷静だ。
(なあ、この番組みたことないはずだろ?)
(うん、でも似たようなの結構みているから、悪役ぐらいわかるんじゃないの?)
(なんか戦闘員の背が低くないか?)
(たしかにそうかも、でもそういうもんじゃないの?)
公二と光はもっと冷静だった。
しかし、それもここまでだった。
「お前達、子供たちを捕まえなさい!」
「イーーーーッ!」
「イーーーーッ!」
悪のボスの一言で戦闘員がステージから降りた。
「「「きゃあ〜〜!」」」
子供たちは戦闘員に怯えてしまう。
「イーーーーッ!」
「イーーーーッ!」
戦闘員はあたりを見回す仕草をしたあと、会場の後方に一直線。
(ねぇ、これって普通は会場の前の子じゃないの?)
(たしかに……)
そう思っていたとき悲鳴が側から聞こえてきた。
「きゃぁぁぁ〜!」
なんと恵が戦闘員に連れられてしまったのだ。
二人の戦闘員に抱えられてステージに連れられてしまう。
「恵!」
「ええっ!」
びっくりしてしまう公二と光。
そして恵が連れられたステージを見ると舞佳がこちらをみてウィンクをしている。
(まさか舞佳さん……)
(狙ってた……)
「うふふふ、仮面ライダーさん、早く来ないとこの子にひどい目に遭わせてやるわよ」
「νφτβψιυομ!」
「イーーーーッ!」
「イーーーーッ!」
悪役からのお決まりの台詞が出てきたところで、会場に別の声が響き渡る。
「待ちなさい!」
「そ、その声は!」
周りを見渡す悪のボスと戦闘員達。
すると会場の後に本日の主役が現れた。
「あなたの企みは私が阻止してみせる!」
「お、おのれぇ……」
「「「うわぁぁぁぁ!」」」
きらびやかな未来的なコスチュームに包まれた女仮面ライダーの登場に会場がヒートアップする。
ステージに上がった主役は悪役達と対峙する。
「お前達、やっておいまい!」
「イーーーーッ!」
「イーーーーッ!」
恵を抱えたままの悪のボスが戦闘員に命令する。
戦闘員は仮面ライダーに向かって襲いかかる。
「てやぁ!」
「イーーーーッ!」
「とうっ!」
「イーーーーッ!」
戦闘員と仮面ライダーは飛んだり跳ねたりの戦闘シーンを展開する。
激しいアクションに会場も盛り上がる。
しかし、最後は簡単に戦闘員がやられてしまう。
「イー……」
「イー……」
戦闘員はステージのわきに逃げてしまった。
「おのれ……今度はこいつが相手よ!」
「ηκυηνρομ!」
今度はモンスターがのっしのっしと仮面ライダーに襲いかかる。
「μψυφτβμην!」
「うわぁ!」
今度はモンスターが圧倒的に強い。
仮面ライダーはパンチやキックをするが一向に効かない。
「ιυροηκνο!」
「ああっ!」
ついには仮面ライダーは倒れてしまう。
「「「きゃぁ〜!」」」
ヒーローのピンチに子供たちも心配になる。
「きゃあ、仮面ライダーが危ないわ!みんな〜、一緒に仮面ライダーを応援しよう!」
ここで舞佳の一言でお決まりの子供たちの応援が始まる。
「「「がんばれ〜!仮面ライダー!」」」
舞佳の見事な誘導で子供たちの応援を引き出す。
ここで仮面ライダーが立ち上がる。
「「「わぁぁ〜!」」」
自分たちの声援で立ち上がったと思う子供たちは大喜びだ。
これで形成が逆転。仮面ライダーの一方的な展開が始まる。
「とおっ!」
「ροηκμμην!」
「くらえ!」
「ψυφτβιυνο!」
とうとう、モンスターもステージのわきに逃げてしまう。
「おのれ〜!」
「子供は返してもらうよ!」
仮面ライダーはそれまで悪のボスに抱えられて怯えていた恵を奪い返す。
「くやしぃ〜!憶えてらっしゃい!」
悪のボスは捨てぜりふを吐いて逃げてしまった。
お決まりの台詞とお決まりの展開。
しかし子供たちはハラハラドキドキ、満喫しているようだ。
ヒーローショーはこれで終わって握手会へと変わっていく。
(ふぅ……よかった……)
(本当だ、まったく……)
光も公二も恵のことが心配でとても満喫できなかった。
「は〜い、ありがとう♪」
「うん!」
ヒーローショーが終わったあと。
会場の裏で公二と光は恵と再会した。
「舞佳さん、勘弁して下さいよ〜!」
「そうですよ、恵が心配で心配で……」
「お、おい、泣くなって……」
恵を抱きかかえた光は少し涙声になっている。
たかがヒーローショーだかよほど心配だったみたいだ。
「いやぁ、最初はどうしようか迷ったんだけど、バイトの子がどうしてもって言うから……」
「えっ……」
「いやぁ、恵ちゃんを借りちゃって悪かったな」
「ええっ!赤井さん!」
「ほむら!どうして?」
後の楽屋からTシャツに短パン姿のほむらがあらわれたのだ。
これには二人は大声で驚いた。
「いやぁ、昨日今日とバイトで戦闘員やってんだよ」
「へぇ〜……」
「せっかくだから、恵ちゃんにめったにできない体験させてあげたいと思ってな」
「そうだったんだ」
そんな会話をしていると後からもう一人あらわれた。
「ほんと、恵ちゃんが泣きださなくてハラハラしたわよ」
なんと次に現れたのはTシャツで頭を手ぬぐいで巻いている真帆だった。
「ええっ!真帆さん!」
「真帆さんもバイトだったの?」
またもや驚く公二と光。
「私も赤井さんとおなじでバイト。私はモンスター役ね」
「あっ、そうだったの……」
「声は全然違うからわかりようがないけどね」
それからしばらくの間、公二と光は、ほむらと真帆とショーの舞台裏の話で盛り上がった。
ちなみに舞佳はいつの間にかいなくなっていた。
話だとどうやら会場の整備の指導役をしているらしい。
ヒーローショーに知り合いがいたとは思わなかったので驚いたが、
普通は知ることのできない裏側を知ることができて公二も光も満足した。
ちなみに恵はヒーローショー出演記念にもらった特別なヒーローグッズに夢中。
だから恵を連れ去ったのがほむらで、モンスターの中に真帆がいたとは全く知らないままですんだ。
ヒーローショーが終わる頃にはもうお昼。
しかしまだお昼。
3人の遊園地はまだまだ続く。
To be continued
後書き 兼 言い訳
今回は公二、光、恵の初めての遊園地のお話です。
実は1話ですまそうと思ったのですが、あまりに長くなりそうだったので2話に分けました。
っていうか、ヒーローショーが長すぎ(汗汗汗
お約束の展開の連続にしてみました。
あと某1イベントをイメージした人はそこは突っ込まないで下さい(汗
なぜわざわざ仮面ライダーを女にしたかって?
台詞の色をみればわかる方はわかると思います。
(ちなみに最近本当に女仮面ライダーが登場して話題になりましたが、実は昔一人いたんですよね)
ヒーローショーの舞台裏の話は遊園地の話の次に予定してます。
あと、とうとう出しました。詩織、公人のメモ1カップル。
しかしどうしよう。詩織のキャラクターを全然決めてないのに出しちゃった(汗
どういう詩織像にするかは未だ流動的です。
ちなみにここでの2人は既に恋人同士です。1年次の卒業式の日に告白しちゃってます(爆
次回は遊園地の後半です。