第91話目次第93話
ひびきの遊園地。

GW中はヒーローショーが人気がある。

今年は女仮面ライダーということで、スタッフも全員女性にしてみた。

「しかし、超戦士ドラゴンは強かったなぁ〜!」
「そうそう!あれは正義の味方のお手本ね!」
「うんうん!パンチが強くてかっこよかったよねぇ〜!」

しかし、スタッフルームでの会話は男性がいるときとまったく変化はない。
ちなみにこの3人、和泉恭子、赤井ほむら、渡井かずみは学校も違うし、昨日が初対面。
だけど今は昔のヒーローの話題で盛り上がっているところがすごいところ。

(あの3人はすごすぎる……ちょっとついていけない……)

昔は少女漫画ばかり読んでいた真帆にはついていけない話題だった。

そんなときに、バイト統括兼司会のお姉さん役の舞佳が全員に招集をかける。

「それじゃあ、今日も始めるから頑張って!」

太陽の恵み、光の恵

第18部 GW編 その5

Written by B
今日1回目のショーがもうじき始まる。
舞台裏ではスタッフが準備をしていた。

「ああ、なんかわくわくしてきちゃった」
「私は緊張しっぱなしだよ〜」

今回のヒーローショーで主役を演じる和泉恭子はきらめき高校の2年生。
真帆とは顔なじみである。

ちなみにほむらとかずみはあまりに背が小さいので主役の衣装が着れず、
仕方なしに戦闘員役をやっている。

「あの二人、アクションが激しいからこっちも大変なのよ」
「身のこなしが軽いからね」

しかしこの背の低い戦闘員、なかなかの名演技をする。
飛んだり跳ねたりがすごいため、主役との戦闘シーンがリアルで子供たちに大ウケしている。
二人はただ楽しんでいるだけでいいのだが、格好良く戦わなければならない恭子にとっては辛い。

「でも子供たちが喜んでくれるならやりがいがあるわよ」
「確かに子供が喜んでいるのを見るとこっちも嬉しくなるよね」

ちなみに恭子も真帆も着替え終わっている。
今の仮面ライダーとモンスターが仲良く会話をしているところを見られたら夢もへったくれもないだろう。

「それじゃあ行くわよ!」
「がんばりましょ!」

こうして今日最初のショーが始まった。



「おつかれ〜」
「ああ、つかれた〜」

最初のショーも無事に終わった。
子供たちも大興奮で大成功だった。
全員が衣装を脱いで、Tシャツに短パン姿になって汗を拭いている。

「赤井さん、あの子はあなたの知り合い?」

恭子がほむらに今回戦闘員がさらった子について聞いてみる。
ほむらが舞佳と「あの子をさらいたい」と事前に相談していたのが気になっていたからだ。

「ああ、あの子の母親があたしとおなじクラスだ」
「ふ〜〜〜〜ん」
「えっ?えっ?今なんていったの?」

ほむらの言っていることが理解できなかった恭子がもう一度聞いてみる。

「つまりあの子は、あたしのクラスメイトの子供だ」
「ひぇ〜〜〜〜!」
「驚くことはないぞ、あたしの高校では有名な親子だからな」

おもいっきり驚く恭子に平然としているほむら。
知っていると知らないのではこんなにも違うのかという

「な〜に、白雪も知ってるぞ」
「真帆ちゃん、そうなの?」
「うん、姉さんの友達でもあるんだよね」

目を白黒としている恭子。

「まあ、気にするな。別に普通の高校生だから」
「じ、じゃあ気にしない事にするね……」

落ち着いているほむらと真帆をみていると、たいしたことがないような気がしてきた。
恭子はそう思うことにした。



「は〜い、午後にそなえてお弁当よん♪」

ちょうどお昼になって舞佳が弁当をもってやってきた。

「いや〜、待ってたんだよ〜」
「そんなにお腹空かせたら午後が大変だよ〜」
「だって、張り切っちゃうんだよな〜」
「ささっ、早く食べましょ!」
「賛成!」

というわけで、仲良く食べようとしたのだが、

「あれ?あいつはまだか?」
「まだシャワーみたいだよ」

どうやらまだ一人来ていない。

「あら?遅れてごめんなさい」

とか言っているうちに、Tシャツ姿の女の子が部屋に戻ってきた。

「御田さんおそいよ〜」
「ごめんなさい、身だしなみには時間をかけているから」
「どうせ、午後も汗をかくんだから、今は簡単でもいいのよ」
「あら?衣装を着ると汗の臭いで大変なのよ、次に着る人が嫌でしょ?」

「せ、洗濯するからいいんじゃないの?」
「あら?……そうね……」



ドテッ!



真帆達は某新喜劇ばりに一斉にこけてしまう。



「あら?今の転び方上手ですわ!どうやってそれ?」
「あ、あの〜、御田さん。別になにもやってないんだけど……」

悪のボス役をやっているこの女の子は御田 万里といってかずみと同じ高校の同学年。
両親が映画監督と舞台女優という、まさに演劇界のサラブレッド。
でも、なぜかヒーローショーのバイトをしている。

「なあ、あんたどうしてこんなバイトを……」
「渡井さんに『私の演技が活かせるバイトはないかしら?』とお願いしたの」
「で、紹介したのがこれ……」
「うん、だってそうでしょ?」
「確かに……」

紹介する方もする方だが、それを真に受けてやるほうもやるほうである。

「ところで、御田さんの演技は活かせてるの?」
「悪役ってなかなかできないので、とても勉強になるわ」
「ふ〜ん、それはよかったね」
「でも、子供たちを恐怖に陥れる演技は結構難しいわね」

(なあ、マジで言ってるのか?)
(どうやら本気みたい……)
(エリートの考えていることはわからないわ……)

かずみと万里の会話を離れて聞いている3人はちょっと戸惑っていた。



こうしてお昼御飯も終わって、午後1回目。

午前よりも人が多いので、スタッフもやりがいがある。

「さあて、今回はだれをさらうかなぁ〜」
「やっぱり、可愛い子がいいよね〜」

衣装を身にまとったほむらとかずみが舞台の袖で今回さらう子を決めている。

「なあ、あの子は結構可愛いかもな」
「うん、衣装も可愛らしいし、いいんじゃない?」
「じゃあ決まりだな」
「OK!」

どうやらターゲットが決まったらしい。



一方万里は自分の演技にまだ迷っているようだ。

「う〜ん、悪のボスはもう少し色気があったほうがいいのかしら?」
「子供相手だからいいんじゃないの?」
「いや、色気があった方が怖さがでていいと思うけど」
「ありがとう、今回はそうしてみるわ」

納得した様子の万里。
一方つき合わされた恭子と真帆はすこし呆れた様子だ。



そうしているうちに、開演時間になった。
それぞれ所定の位置につく。

「みんな〜!元気にしてたかな〜?」
「「「は〜い!」」」

舞佳の呼びかけでヒーローショーが開演した



「みんなの仮面ライダーはもうすぐくるから待って……キャ〜!」

舞佳の叫び声を合図に、悪役達がステージにあがる。

「ウフフフフ!……仮面ライダーじゃなくて残念ですわねぇ〜……」
「νρηκυομη!」
「イーーーーッ!」
「イーーーーッ!」

全員お決まりの台詞を言う。
しかし、ボス役の万里はかなり色気を含んだ口調になっている。



「お前達、子供たちを捕まえなさぁい!」
「イーーーーッ!」
「イーーーーッ!」

(じゃあ、さっそく)
(レッツゴ〜!)

ほむらとかずみは舞台から降り、狙いを探す仕草をしながらも事前に決めた女の子を狙って一直線。
そして女の子を捕まえる。

「きゃぁ〜〜〜〜!」

(いやぁ、いい反応だねぇ)
(捕まえがいがあるね〜)

女の子の叫び声を聞いてある意味満足している二人。
しかし舞台の影にいる恭子と真帆は反応が違っていた。

(な、なんでここにいるのよ!)
(ば、馬鹿!よりによって、あの子をさらわないでよ!)

なぜかさらわれた女の子をみて焦っているようだ。



しかし、そんな事とは関係なくショーは続く。

「うふふふ、仮面ライダーさぁん、早く来ないとこの子にひど〜い目に遭わせてやるわよ〜」
「イーーーーッ!」
「イーーーーッ!」

「こ、こわい……」

相変わらずノリノリで色気を振りまく万里。
また同じくハイテンションで叫ぶほむらとかずみ。
それに怯える女の子。

「νφτβψιυομ!」

(あ〜あ、なんでこうなるんだろ〜)

一方真帆は逆に動きが悪い。



「待ちなさい!」

「そ、その声は!」

ショーはいよいよ主役の登場で盛り上がり始める。

「あなたの企みは私が阻止してみせる!」

「お、おのれぇ……」

「「「わぁぁ〜!」」」

主役の登場である。
恭子も本番になるとテンションが違う。
なかなか慣れたいい演技をする。

(なんか、今日の戦闘シーンは疲れそうね……)

恭子の予感通りに、戦闘員との戦闘シーンはほむらとかずみがあまりに張り切っていた。
二人を相手にした恭子もさすがに疲れてしまう。



「おのれ……今度はこいつが相手よ!」
「ηκυηνρομ!」

つづいてモンスター役の真帆が恭子に襲いかかる。

「μψυφτβμην!」

叫んで主役にパンチを繰り出す。


いつもなら、それを真正面から受けた主役が倒れるはずだったのだが、



ドカン!



「うわぁ!」

いきなり爆発音がしたと思うと、主役の恭子がボロボロに倒れている。
どうやら小さな爆発が起こって、それをまともにくらったような感じだった。



恭子は倒れて動かない。

「υηνψυ」

(恭子ちゃん!)

真帆が恭子に声を掛けようとするのだが通じない。
真帆の声は中のマイクを通じてコンピュータ合成のモンスターの声になってしまうので通じない。

(恭子ちゃん、大丈夫!)

あまりの異常な展開に舞佳も近づこうとしたが、

(だ、だいじょうぶ……こ、このぐらい……)

恭子が右手の手のひらを舞佳の方に向け、舞佳が来るのを停めた。

(わ、わかったわ……)

舞佳も恭子がショーが続行できるとわかり、すぐさま次に進める。

「きゃあ、仮面ライダーが危ないわ!みんな〜、一緒に仮面ライダーを応援しよう!」

舞佳のとっさの判断のおかげで、子供たちはハプニングを演出だと思ってくれたようだ。



なんとか立ち上がる恭子。

「ち、ちくしょう……」

そうつぶやいた恭子は尋常じゃない様子。
そして恭子がモンスターに襲いかかった。
やっつけるというのではなく、まさしく襲いかかるという感じだった。

「くらえ!」

「ροηκμμην!」

「このやろう!」

「ψυφτβιυνο!」

(きょ、恭子ちゃんどうしたの……)

普通は寸止めぐらいの弱さなのだが、今回は本気で蹴って本気で殴っている。
さすがの真帆もびっくりしてなにもできない。

これがモンスターがやられている演出になっているようで、子供たちは大喜び。
結局真帆もあわてて逃げてしまった。

子供たちにとってはいつもながらの大円団に終わって満足した様子だった。



それからして舞台裏。

「ぐすん、ぐすん……」
「ご、ごめん……」
「別に悪気はないから……」

先程ほむら達がさらった女の子が泣いていて、それを恭子と真帆が慰めていた。

「いやあ、まいったなぁ……」
「まさか、同じ年とはおもっていなかったからねぇ〜」

一方部屋の中ではほむらとかずみが汗を拭きながらばつの悪そうな顔をしている。

「み、美樹原さんこそどうしてここに……」
「懐かしくてちょっと顔をだしただけなのに……」
「そ、そうだったの、ごめんね、メグ……」

実はこの女の子は美樹原 愛と言って恭子と真帆の同級生だったのだ。

たしかに愛の外見はピンクが基調の可愛らしい衣装を来ている。
ルックスも中学生、いや見ようによっては小学生にも見えてしまうほど子供っぽい。
ほむらやかずみが見間違えてもおかしくはなかった。

「私も何度も小学生に間違われたことはあるけど……」
「けど?」

「自分よりも小さい人に言われたことがショック……」

(!!!)
(!!!)

愛の言葉に部屋の中でこっそり聞いていたほむらとかずみは顔が引きつってしまう。

「でも、美樹原さんがかわいいから選んだから……」
「そうそう、可愛いことは別に子供っぽいとは関係ないのよ……」
「そう……ならいいんだけど……」

納得した様子の愛はそれで二人と別れて帰ってしまった。
それでも出演記念のグッズはもらって帰った愛だった。

「……」
「……」

一方ほむらとかずみはすこしの間顔が引きつったままだった。



「ところで、和泉さん、怪我は大丈夫でして?」
「え、ええ、だいじょうぶ……」

部屋の中では全員がいきなり怪我をした恭子を心配していた。

「いきなりの爆発だったな」
「うん、びっくりした〜」

「なんか仕掛けられてた?」
「い、いや、なんにもなかったから……」

「続けられるの?」
「大丈夫、次で終わりだから……」
「?」

とにかく大丈夫を連発する恭子に不安を抱きながらも無事なことに安心したようだ。
事実午後の最後の部はなにも問題もなく無事に終了した。



「じゃあ、また機会があったらよろしくね〜♪それじゃあ解散!」

今日でGW中のヒーローショーは終わり。
スタッフも解散となった。

「おつかれ〜」
「楽しかったわ」
「じゃあ、またあったらよろしくな〜」
「ええ、よろしくね」

学校が違う人は今後いつ逢えるかわからない。
もしかしたら二度と会えないかもしれない。
それでもまたの再会を約束して別れた。



恭子は真帆と一緒に家への帰り道を歩いている。

「ねぇ、本当に大丈夫なの?」
「大丈夫よ!ほら!」

真帆の心配をよそに、ポーズを決めて元気なところを見せる恭子

「嘘言わないで」
「えっ?」
「あの後の恭子ちゃんの様子はおかしかった。あの爆発も普通は起こらない」
「……」

真帆の鋭い指摘に恭子は何も反論できない。
恭子は正直に話すことにする。


「……紐緒さんよ……」

「えっ?」

「あの人が、嫌がらせでやってるのよ……」

「あの紐緒さんが?」

紐緒さんとは、フルネームは紐緒 結奈。
恭子と真帆が通っているきらめき高校の同級生でマッドサイエンティストと呼ばれている才女だ。
目標が世界征服と公言するミステリアスな女の子である。

「『ヒーローショーが気にくわない』とか言って、たまに邪魔をしにくるのよ!」
「えっ、あの爆発も?」

「そうよ!たまには電撃とか噴煙とかで邪魔するのよ!」
「す、すごいね……」

「私、あの人の企みを暴いてみせる!そして阻止するのよ!」
「が、がんばってね……」

力強い恭子の口調に真帆はちょっと引いてしまっていた。



「ところで、真帆。さっき九段下さんと話していたでしょ?」
「うん、それがどうしたの?」
「確かこのバイトも九段下さんの紹介でしょ?」
「そうだけど?」

「さっきなにか頼まれたみたいだけど、なんなの?」
「えっ?……」

真帆の口が止まる。

「またバイトを頼まれたんじゃないの?」
「う、うん……」

「ねぇねぇ、どんなバイトなの?教えて?」
「で、でも……」

真帆はうつむいてしまっている。
顔もわずかに紅い。

「いいから、いいから」
「誰にもいわない?」
「大丈夫だって!」



「……ィーン……」
「えっ?」

真帆は小さくつぶやいた。
しかし恭子には聞き取れない。

しかたなしに真帆はもう少し大きい声で返事をする。


「レースクィーンのバイトに誘われた……」


「ええええええっ!」

「ちょ、ちょっと声が大きい!」
「ご、ごめん……しかし、すごいねぇ」

「1回だけでいいから、って言われたから思わず受けちゃった……」

真帆のスタイルの良さは恭子もよくわかっている。
だから恭子も納得してしまっている。

「でも、折角の機会だから挑戦してみようと思って……」
「そうだよね、なんでもチャレンジチャレンジ!」
「恭子ちゃん、ありがとう。恭子ちゃんも頑張ってね」
「まかせときなさい!」

「あはははは!」
「あはははは!」

いろんな事はあったけど、いろいろな収穫もあった。
せっかくのGWを潰してまで働いてよかった。
真帆はそう感じていた。
To be continued
後書き 兼 言い訳
今回はヒーローショーの裏側でした。

しかし、なんだこりゃ(汗

今回の出演者を列挙しておきます。
紐緒(名前だけ)、美樹原、和泉(恭)、赤井、白雪(真)、九段下、渡井、御田
ときメモPOCKETのキャラが一人いるし、隠しキャラが3人いるし。
しかも1のイベントを使ってるし。

これでもときメモ2SSと言っていいんですか?
いいんです!
(開き直り

1,3キャラでは渡井以外の4人が初登場です。

ちなみに愛が愚痴っていたほむら・かずみとのスタイルの比較は駄文46にてどうぞ。
たしかにこの二人は愛よりも胸もおしりもありません(笑)

あと話の最初の午前の部というのが90話でのヒーローショーの事です。

さて、次回はダブルデートの前日のお話です。
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