第93話目次第95話
GW最終日の日曜は綺麗な五月晴れ。

今日はダブルデートの日

場所となるひびきの遊園地には多くの家族連れや若者が来ている。

「緊張するな……」

今は昼の12時40分。
純一郎は約束の時間の20分も前に待ち合わせ場所である入場門に来ていた。
遅刻は厳禁とは思ったのはいいがあまりに早いのは純一郎らしいかもしれない。

「しかし、公二の奴もとんでもないことをするな……」

デートの付き添いをお願いをした日の夕方にセッティングOKの返事の電話が来た。

しかしその返事には
「俺達だとお見合いの付き添いだから、代わりに匠と白雪さんにお願いしたから」
というおまけがついていた。


「まあ確かに公二のいうとおりだけど……」

春休みの温泉旅行で匠は「美帆ちゃんが好き」と顔を真っ赤にして白状した。
その白状ぶりはあまりに普段と違いすぎていたのが純一郎にとって気になっていた。

「あんな事もあったし……匠は大丈夫か?」

匠はデート慣れしているから心配ないし、頼りになるとは思うが今日は不安だ。


「ん?あれは匠か?……あっ……」

ふとみると匠がやってくるのが見えたのだが、

(おい!あいつの顔はおもいっきり緊張してる顔だぞ!)

太陽の恵み、光の恵

第18部 GW編 その7

Written by B
「ええっ!妖精さん連れて来てないんですか?」
「だ、だって……恥ずかしいですから……」

一方、楓子、美帆の二人は遊園地に向かう道すがらに顔をあわせて、一緒に歩いている。

「そんなに緊張しなくても大丈夫だって!ねっ?」
「そ、そうですね……」

初デートなのだが、付き添いがいることで比較的リラックスしている楓子。
一方、美帆はかなり緊張している。
ちなみに迷いに迷った美帆の衣装は一番お気に入りのパステルカラーのワンピースにした。

「実は私もちょっと緊張してるの……誰も同じ。だから気にすることはないよ」
「は、はい……」

匠と美帆の裏事情をまったく知らない楓子は美帆の緊張をとろうとする。
これではどっちがメインなのだかわからなくなってくる。



「匠、今日はよろしくな」
「あ、ああ……」

入場門に到着した匠に挨拶する純一郎。

「おい!そんなに緊張するなって!」
「き、緊張してないよ……」

しかし、顔を見ればどう見ても緊張してるのがバレバレである。

「お前のいつもの通りにやれば大丈夫なんだろ?」
「そ、そうだよね……」
「そうそう」

匠は少し落ち着いたようだ。
そんな匠があまりに心配な純一郎。

(まったく、これじゃあどっちがデート慣れしているかわからないぞ……)

しかし、ここで純一郎はあることにまったく気が付いていない。
それは匠を心配していた間に、体の中から緊張感がぬけ、ほどよい状態になっていることに。



そうしているうちに楓子と美帆がやってきた。

「あっ、佐倉さんに白雪さん、こんにちは」
「こ、こんにちは!」
「や、やあ……」
「こ、こんにちは……」

すこし緊張している純一郎に楓子。
かなり緊張している匠に美帆。
それぞれがそれぞれに挨拶をする。

(ダメだ、匠が緊張しすぎだ。しょうがない、俺が引っ張るか……)

匠が役に立たないと感じた純一郎が仕切ることにする。

「こ、ここで挨拶もなんだし、さっそく中に行こうな」
「お、おお、そうだな……」
「わ〜い!」
「た、楽しみですね……」

不安だらけのダブルデートがようやくスタートした。



入場門をくぐった4人は歩きながら最初の乗り物の相談をする。

「じゃあ、早速だけどどこに行こうか?」
「あの〜、ジェットコースターなんかどうかなぁ?」
「ああ、いいな。じゃあ、それでいいか?」
「お、俺はそれでいいよ」
「だ、大丈夫ですよ……」
「じゃあ、決まりだな」

そういうわけで最初はジェットコースターに決まった。



ここの遊園地のジェットコースターは最新鋭のマシンのような速度も恐怖感もない。
でもオーソドックスな作りで速度も日本の遊園地の平均以上はあるので、何度乗っても飽きない。

実はこの4人とも乗ったことはある。
しかし、隣が同性か異性かではその緊張感は違ったものになる。

運良く4人は先頭の2列に乗り込めた。
先頭が匠と美帆、2列目が純一郎と楓子のカップルで乗り込む。

「なんかドキドキしちゃうね♪」
「そうだな、しかしこの出発前の緊張感って結構いいもんだよな」
「なんか大会の試合前って感じに似ているかもね!」
「そうそう。でも、その緊張感っていいもんだろ?」
「うんうん。だからスポーツってやめられないんだよね♪」

落ち着いている純一郎に対して、隣が純一郎ということでハイテンションになっている楓子。
こちらは結構いい雰囲気になっている。

「あのぅ……匠さんってこういうのは乗り慣れているんですか?」
「ま、まあね……来たときはいつも乗ってるね」
「そうですか。私はあまり乗らないですけど」
「へぇ、でもおもしろいよ」

こちらはどちらも落ち着いたのか、たどたどしいながらも会話をしている。
しかしまだ緊張感が残っているようだ。



ようやくジェットコースターが動き出す。



ガタンゴトンガタンゴトン……



「おっ、動き出したな」
「楽しみだなぁ……」



ガタンゴトンガタンゴトン……



「いよいよですね」
「ああ……」


それぞれが緊張しながらその時を待つ。



ガタンゴトンガタン……ゴトッ



(止まったな)
(ワクワク、ワクワク……)
(うわぁ……きちゃうよ……)
(ドキドキ、ドキドキ……)



そしてその瞬間が訪れる。



ゴゴゴゴゴゴゴーーーーーッ!



「うぉぉぉぉぉ!」
「きゃぁぁぁぁ!」
「わぁぁぁぁぁ!」
「きゃぁぁぁぁ!」

かなりの速度でコースターが動き出す。



ゴゴゴゴゴゴゴーーーーーッ!



「うぉぉぉぉぉ!」
「きゃぁぁぁぁ!」
「わぁぁぁぁぁ!」
「きゃぁぁぁぁ!」

横回転縦回転、様々な回転が乗っている人を襲う。
先頭の4人も例外ではない。

(絶叫している佐倉さんも可愛いなぁ……)
(穂刈くんって平気なんだ。かっこいい……)

2列目の二人はお互いの顔をちらっと見る余裕もでている。

(まわるまわる!はやいはやい!うごくうごく!うわぁ……)
(なんか今日は特別に早いような……)

ところが先頭の二人は余裕が全くない。
最初から緊張しているときにこの速度と回転がきたものだから、余計に混乱してしまう。



ゴゴゴーー……ガタンゴトン……ガタン



ようやくジェットコースターも止まった

「はぁ、面白かったな」
「そうだね、とっても面白かった!」

「……」
「怖かった……」

先頭と2列目ではまったく反応が違っていた。



無事?にジェットコースターを楽しんだ4人は次のアトラクションを探す。

「さてと、匠、今だと何が新しいんだ?」
「え、え〜と、ゴーストハウスじゃないか?」

匠はジェットコースターの影響が残ってはいるものの、なんとか知識を動員して最新情報を持ち出す。

「お化け屋敷ですか……」
「楽しそう!」

ちょっと不安な美帆に対してハイテンションの続く楓子。
どうやら異論はなさそうだ。

「じゃあ、ゴーストハウスで決まりだな。匠、組み合わせはさっきと同じでいいな?」
「あ、ああ……」

そういうわけで次はゴーストハウスに乗ることにした。



ゴーストハウス。
お化け屋敷と呼ぶ人もいるがここのは西洋風お化けのでるお化け屋敷である。

古い2階建ての洋館を再現し、その中を歩く趣向となっている。
機械仕掛けから、人間がメイクアップして脅かすものまで、脅かしの趣向は満載。
最近リニューアルしたため、注目度も高い。

そんなゴーストハウスをさっきと同じ組み合わせで入ることにする。

「じゃあ、先に行くからよろしくな」
「いってきま〜す」

先に純一郎と楓子が入る。
二人並んでにこやかに入ってくる。



「美帆ちゃん……行こうか?」
「はい……」

匠がエスコートすべく右手を差し出す。
その手を美帆の左手が掴む。

「うわぁ!」
「あっ!」

ここで二人はようやく目の前の事実に気が付いた。

(うわぁ、思わず手を出しちゃったよ……)
(ああ、思わず握って……)

(美帆ちゃんの手が、美帆ちゃんの手が、美帆ちゃんの手が……)
(匠さんの手が、匠さんの手が、匠さんの手が……)

思わず顔を真っ赤にしてしまう二人。
しかし手はしっかりと握られたままゴーストハウスに入っていく。



「きゃぁぁぁぁぁぁ!」
「うわぁ!」

ゴーストハウスの中。
今は楓子が血まみれのフランケンシュタインの出現に驚いて思わず純一郎に抱きつき、
それに純一郎が驚いたところだ。

「ご、ごめんなさい!」
「い、いや、こっちこそ驚かせてごめん」

すぐに離れて謝る二人。

(やだぁ、思わず抱きついちゃったけど……結構筋肉質で……いや〜ん!何考えてるんだろ……)
(楓子ちゃんって結構胸が大きい……さっき俺の下腹部に柔らかいのが……ぐわぁ!何考えてるんだ!)

でも内心ドキドキがまだ続いていた。

しかし、それを表には出すことはなく、冷静を装う。

「後にも迷惑だし、行こうか?」
「うん、そうだね……」

(私と違って穂刈くんっていつでも冷静で頼りになる……)
(しかし、佐倉さんって子供っぽくて、それがいいんだよなぁ……)

それでもお互いの事が少しわかったような気がした二人だった。



一方、その後の匠と美帆のペアはというと。

「きゃぁぁぁぁぁぁ!」
「うわぁ!」

こちらは美帆が空飛ぶ生首に恐怖のあまりに叫んでいる。
一方の匠は怖くは無かったものの不意打ちの生首の出現に驚いている。

「はあ、怖かった……」
「ああ、ビックリした……」

息を落ち着かせたところで、お互いを確認すべく探す。
そして二人の目が合う。

「あっ……」
「あっ……」



ドキン!



(美帆ちゃん……)
(匠さん……)

お互いにドキドキが止まらない。


「特定の異性を口説きたい時は絶叫系マシンに同乗させろ」という説がある。
絶叫系マシンでドキドキすることがあるが、
これを脳が隣の異性へのドキドキ感に解釈してしまうということからきている。

一応医学的な話だが実際はどこまで本当なのかよくわからない。
しかし、匠と美帆はこれをここで知らず知らずにやってしまっていたのだ。

(美帆ちゃん……)
(匠さん……)

結局ゴーストハウスを出るまでこれの繰り返しになってしまった。



結構収穫もあったゴーストハウスを出た4人は次のアトラクションを探す。

「さて、じゃあ次はどうしようか?」
「え〜と、メリーゴーランド!」
「ちょ、ちょっと待て、それはちょっと……」
「え〜?みんなで乗れば怖くないから!」
「別に怖くないけど……こ、こら!引っ張るな!」

強引に純一郎を引っ張っていく楓子。
それを追いかける匠と美帆。

ダブルデートはまだまだ続く。
To be continued
後書き 兼 言い訳
お待たせしました。
ようやくダブルデートとなりましたが、1回で終わりませんでした(汗

最近あまりサイズが大きくならないようにしているので2回に分けてしまうことが多いですな。
テキストにして10kb〜15kbぐらいでまとめてます。

細かいことはまだ続きがあるので今回はあまり書きません。

次回はもちろんダブルデート後半です。
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