第121話目次第123話
「最近、昔のアニメのリニューアルって多いよね」
「ああ、昔のアニメっておもしれぇからな」
「それはボクも同感だな」

ここはほむらの家。
たまたまバイトが休みの茜がほむらの家に遊びにやってきていた。

ちょうど2人は茜お手製のクッキーを食べながらテレビを見ていた。

「しかし、これも古いとは感じないよな」
「確か日本で最初にできたアニメなんだよね?」
「そうそう。でも今見てもおもしろいよな」

2人が見ているアニメは「鉄○○トム」
今年は設定では○ト○生誕の年ということで、何度目かのアニメ化となったらしい。
いいものは何度見ても面白い。
しかし、ほむらの表情がちょっと暗い。

「でも、これ、な〜んか違うんだよなぁ?」
「へぇ?どこが?」
「それはなぁ……」

どうやら何か不満があるようだ。
アニメにうるさいほむらが語り出す。

太陽の恵み、光の恵

第22部 ASTRO BOY編 その2

Written by B
画面ではテーマソングが流れている。

「まずは、この主題歌が納得いかないよな」
「これ?ボクはいい曲だと思うな」
「やっぱりア○ムといえば『そ〜ら〜をこ〜えて〜♪ラララほ〜し〜のか〜なた〜♪』だろ?」
「確かにそうだよね、お兄ちゃんでもたぶんそう答えるよ」
「だから、どうもこの曲があたしとしてはしっくりこないんだよな」
「そういうものなのかなぁ?」

ほむらはお茶をすすり、テレビにまっすぐ向きながら話を続ける。

「なんか、テレビ局には『なんであの曲じゃないんだ?』って問い合わせがおおかったらしいぜ」
「へぇ〜!そうなんだ。わざわざテレビ局になんて変わった人もいるもんだね」
「結局、この前1度だけってことで、あの曲をオープニングで流したんだってさ」
「それも変なような気がするけど……まあいいか」



ほむらはせんべいをかじりながらアニメを見ている。
アニメは話が始まっている。

「でも、最近のアニメの音楽って、変にカッコつけてて、あたしの好みじゃないんだよな」
「ふ〜ん、ほむらの好みって?」
「そうだなぁ、こうわかりやすくて、力強い、そんなアニメの音楽が好きだな」
「例えば」
「『そ〜らに〜そびえる〜くろがねのし〜ろ〜♪』とか『だれだ!だれだ!だれだ〜♪』とか」
「あははは、ほむららしいな」

ほむらの語りに思わず笑顔がこぼれる茜。
一方、ほむらの表情がなぜか不機嫌な表情に変わっている。

「それに引き替え、最近はアニメと関係ない曲ばっかだしな」
「確かに普通の音楽番組でも歌ってたのをちらっと見たことがあるよ」
「あと、しょっちゅう歌が変わるのが納得いかねぇな、憶えられないんだよ」
「う〜ん、そんな気がするね」
「あれじゃあ、テーマソングにならないんだよなぁ……」
「……」



「あっ〜!むしゃくしゃしてきた!茜!これからカラオケボックスに行くぞ!」
「えっ?」

ほむらはいきなり立ち上がった。

「おもいっきりアニメソングを歌いまくるぞ!」
「ちょっ、ちょっと!」

ほむらは部屋から出て行ってしまう。
茜はテレビを消して慌てて追いかける。

「ねぇほむら。アニメはいいの?」
「ああ、あの話はマンガで読んだからいい」
「それじゃあ、元も子もないよぉ!」

結局、ほむらと茜はカラオケボックスで2時間ほどアニメソングだけを歌いまくったそうだ。



それからしばらくして。

「おもしろかったね」
「おもしろかった!」
「そうかそうか、恵も面白かったか」
「は〜い!」

公二と光と恵はリビングのテレビで同じアニメを見ていて、
ちょうどそのアニメが終わったところだ。
3人は一つのソファーで並んでテレビに向かって座っている。

「これって子供でもわかりやすいストーリーでいいよね」
「そうだな、でも大人が見ると深い話でもあるんだよね」
「親子でも楽しめるって、こういうのを言うんだよね」
「本当、作った人に感謝しないとな」
「そうだね」

子供が楽しめるアニメは多い。
しかし、大人が楽しめるかは別。ちょっとついていけない場合もある。
でも子供のためにつきあうということも有るだろう。
ただ、自分たちもまだまだ遊び盛りの公二や光にとってはそれはきつい。
やっぱり、自分たちも楽しみたいというのは当然だろう。

「ディ○ニーもいいけど、やっぱり手○治○もいいね」
「うんうん!やっぱり日本のアニメはいいよね」
「なんとっても、アカデミー賞だってとるんだからな」
「最近はアニメっていっても馬鹿にできないよね」
「それにデ○ズ○ーのライオ○キ○グなんで、ジャン○ル○帝のパクリって説がでてたぐらいだからね」
「ふ〜ん、世界にも影響があるんだね」
「なんかびっくりだよな」

昔からアニメを見続けてきた公二と光。
身近な存在のアニメの最近の世界的な広がりにすこし驚いている。
近所の親しいおじさんがいきなり有名人になってしまったような感覚というべきか。
そんな不思議な感覚である。



その夜。
恵を寝かしつけた後、公二と光はテーブルで宿題にとりかかった。
とくに問題もなく片づけた後、そのまま本を読んでくつろいでいた。

光が読んでいたのは、今日本屋で買った育児の月刊誌。
公二が読んでいたのは俗に言うテレビ雑誌である。

「なあ、光」
「な〜に、あなた?」
「最近、アニメの数が多いと思わないか?」
「う〜ん、昔に比べたら多いよね」
「俺達が子供の頃は夕方か夜が定番だったのに、今は早朝とか深夜とかもやってるんだよな」
「そうなんだよね」
「こうやって、雑誌を見るとすぐに目につくんだよ」

公二はタンスに寄りかかって、テレビ雑誌を読みながら光と話をしている。



一方光はベッドに座って、育児雑誌を読みながら返事をしている。
お互いの顔は見ていない。
しかし、会話は弾んでいる。

「こっちには、アニメを使った教材の広告がいっぱいのってるよ」
「やっぱり子供に興味を持ってもらうのにはアニメが一番ってことか?」
「そうだろうね。『子供にも楽しめるようにアニメを採用』って感じの宣伝文句がたくさんあるしね」

今は公二は光の今読んでいる雑誌はまだ見ていないが、光が買った別の号の同じ雑誌を見たことがあるので光の言うことがよくわかる。

「あと、OVAとかなんとかアニメとかDVDもやたらと多いんだよな」
「この前レンタルビデオ屋に言ったらアニメコーナーが幅をきかせてたからね」
「昔はこんなにアニメがいっぱいなんてことはなかったもんな」
「そうそう、テレビだけだったからね」

2人は雑誌を読みながらも子供の頃、2人で一緒に見たテレビのアニメのことを思い出していた。

「俺達が子供の頃はどのアニメも面白かったけど、今もそうなのかなぁ?」
「う〜ん、恵といろいろアニメを見たけど、そうでもないかなぁ」
「そうだよなぁ、これだけ出ていれば当たりはずれもでてくるよな」
「一長一短だよね」

部屋にはパラパラという雑誌のページをめくる音が響く。



「しかし、昔も光とよくテレビでアニメを見たよな」
「そうそう……なんか懐かしいよね」
「一緒に笑って、一緒に怖がって……」
「はしゃぎ疲れていつの間にか2人で眠っちゃったこともあったよね」
「そうだなぁ」

肩を寄せ合いながら、一緒に見たアニメ。
とてもおもしろかったような記憶があるのは2人とも同じ。

「でも、高校生になってもアニメをみてるなんて、中学の頃は想像できなかったな」
「ほんと、子供と一緒に昔見たアニメのリバイバルなんか見るなんて」

今は2人の間に可愛い天使が座っているが、やはり一緒に楽しく見ていた。
仲が良いのは昔も今も変わっていない。

「もしかしたら、将来、俺達の孫と同じアニメをみることになるのかな?」
「あはは、そんなに先の話を……でもそうかもしれないね」
「それってなんか楽しみだろ?子供や孫と同じ話で盛り上がれるんだぞ」
「そうだよねぇ……もしかしたら、おかん達とも同じ話ができるかもね」
「ドラマだと絶対無理だけど、アニメや映画ならできるかもね」
「いいアニメは何回も再放送するからね」

2人は目を閉じて想像してみる。
自分の孫達と一緒に今日見たアニメを一緒に見ているところ。
はしゃぐ孫、一緒にはしゃぐ恵、それを優しく見つめている自分たち。

「……しかし、おじいさんになった俺達って想像つかないな」
「あはは!私もそう。まだまだ先の話だから」
「でも、俺達の親父達はもうおじいさん、おばあさんなんだよな」
「確かに……でも、おじいさん、おばあさんって感じが無いんだよな」
「当たり前だよ。まだ40代だから」

たしかに、おぼろげに想像できるのだが、自分たちの姿は想像できなかった。
自分の将来の姿はなかなか想像できないものだ。

「ねぇ、もしかしたら私たちもそのころ……」
「俺達が40のときには、恵は25……」
「あり得るね……」
「そうだな……」

確かに孫と一緒にアニメを見るのは、ちょっと楽しみでもあるが、
なんか複雑な感じもする2人だった。



そんな、2人が将来のことを想像していた頃。



コンコン!



「誰なのだ?」
「僕だ、入っていいか?」
「お兄様?ならいいのだ」



ガチャ!



「こんな夜にすまない」
「こんな時間に何の用なのだ?」
「いや、何をしてるのかちょっと見てみたくなってね」

ここは伊集院メイの部屋。
部屋といっても庶民のような6畳の部屋ではもちろんない。
30畳ぐらいの巨大な部屋だ。

繊細な装飾が施された豪華なベッドやテーブルやクローゼットなどの反対側のサイドには、無彩色のコンピュータやらAV機器やらが並んでいるのがなにか異様だ。

「ところで今は何をしていたのかね?」
「今はアニメを見ていたのだ」
「アニメ?」
「そうなのだ、今日いいDVDが手に入ったのでさっそく見ているのだ」

メイはこれまた豪華な一人用のソファーにどっかりと座って超大型テレビでアニメを見ていた。

「これは、確か鉄○ア○○だっけ?」
「そうなのだ、前にやってたものなのだ。これもなかなか面白いのだ」
「ほう、そういうものなのか。僕にはよくわからないな」
「お兄様は難しい小説を読み過ぎなのだ」

今、メイと話しているのは、メイの1歳年上の兄で伊集院レイ。
伊集院家の跡取りで、現在はきらめき高校に通っている。
メイと違って長身で、男なのに金髪の長い髪をなびかせ、学校ではかなりモテるらしい。

「僕には、やはり小説の方が面白いと思うけどな」
「アニメも下手な小説よりは面白いものはたくさんあるぞ」
「そうらしいな」



レイはメイのソファーの後ろに立ち、アニメをちらっと見たら壁にある本棚に歩いていく。

「しかし、メイのところにはDVDがたくさんあるではないか」
「面白いものはいつ見ても面白いのだ」

メイの部屋の本棚の一角はアニメのDVD−BOXが占めていた。
どれも名作と言われているアニメばかりだ。
ジャンルは主にSFものがたくさん見受けられる。

「母上が、メイはアニメばかり見ていると嘆いておられたぞ」
「心配しなくても本も見てるし、勉強だってしてるから大丈夫なのだ」
「そうならいいんだ」

レイはしげしげとDVD−BOXのパッケージを眺めている。
メイはテレビのアニメに夢中だ。



「じゃあ、これで失礼するぞ」
「えっ?もう帰るのですか?」

メイは驚いて振り向く。
レイは部屋の扉にメイの方を向いて立っていた。

「宿題がまだなのでな。メイ、アニメの見過ぎには注意するのだな」
「わかってるのだ」
「今だって目が悪いんだから、気を付けたまえ。それじゃあおやすみ」
「おやすみなさい、お兄様」

メイは再びテレビの方に向く。



バタン



レイはそれをみて、メイの扉から出て行く。

(しかし、最近お兄様はよく来るけど、なにをしにメイの部屋に来るのだ?)



バタン



レイはメイの部屋から出た。

「ふぅ……よかったぁ、バレてないみたい♪」

部屋からでたとたん、レイの表情が一変する。
先程までは冷静な表情だったが、今は少し笑顔がこぼれている。

「メイは全然気づいてないみたい……後でセキュリティについて注意しておかないとね」
「でも、そうするとこれが見られなくなっちゃうからなぁ、どうしよう?」

レイは後ろ手に持っていたものを前に持ってくる。

「メイったら、興味ないとか言っておきながら、こんなの持ってるんだから♪」

レイが持っていたのはDVD−BOXのパッケージ。
タイトルは「リボ○の騎○」

「メイって結構少女漫画のアニメを持ってるから助かるよね♪」

レイの表情はすでに女の子の表情だ。

「はやく見なくっちゃ♪」



ドタドタドタ……



レイは自分の部屋に走っていった。



伊集院レイ。
実は女の子だったのだ。

伊集院家の古くからのしきたりにより、レイはずっと男装をし続けている。
このことはレイの両親を始め、両手で数えるぐらいの人しか知らない事実だ。

しかし、レイだって女の子。
普通の女の子が興味があることにはやはり興味がある。

最近は、メイのコレクションで増え始めた少女漫画のDVDをこっそり拝借し、自分の部屋で楽しむことを憶えた。


しかし、メイは自分のDVDを無断で借りられていることに気づいていない。
それどころか、メイはレイが女の子であることすら知らない。

メイとレイのこんな風景はいつまで続くのだろうか。
To be continued
後書き 兼 言い訳

「見てもいないアニメについてあ〜だこうだ書くな」とか、
「2キャラを使って自分の言いたいことを書くな」って突っ込まないで下さい(ぉぃぉぃ

今回は2キャラです。

アニメと言えば、まずほむらです。
高校生のほむらならこのぐらいは言いそうな気がしたので書いてみました。

そしておなじみの3人。
どう使おうか迷いましたが、親としての観点を書いてみました。
自分は親でもなんでもないので、勝手な想像ですが。

そして、最後はメイと「レイちゃん」のお話です
いやぁ、「レイ君」と「レイちゃん」をかき分けるのは難しいですな。
書きがいがありそうなので、今後も書ければと思ってます。

しかし、後書きになってないな(汗

次は3キャラです。

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