第134話目次第136話
インターハイ

運動系部活に入って高校生のほとんどが目標にしている大会。

3年生にとっては高校生活の集大成ともいえる大会。
2年生にとっては自分の成長を確かめたり、来年へ向けての準備を始める大会。
1年生にとっては高校生というのを実感できる大会。

それがインターハイというものかもしれない。

インターハイ直前のこの時期は運動系部活は大いに盛り上がる。
一番活気があふれる時期といってもいいだろう。


当然ながら文化系部活の大半はそうでもないのだが、
ここに静かな熱気を帯びた部?がある。

「……いよいよだな」
「そうね……」
「わくわくするっス」

部屋には大会のスケジュールが書かれた大きな模造紙に所狭しと張られている。
生徒会の幹部3人はすぐに迫ったインターハイについて盛り上がっていた。

太陽の恵み、光の恵

第24部 インターハイ編 その1

Written by B
生徒会室

ほむら、吹雪、夏海の3人は、インターハイについてあれこれ話していた。
別に生徒会がなにかするわけでもない。
ただ、生徒の長として生徒達のことが気になるだけの話だ。

「今年はどうなんだろうな?」
「う〜ん、例年とそれほど変化がないみたいっス」
「とくに強くなった部もあまり聞かないわね」
「野球部が結構強くなったみたいだけど、あそこは別だからな」
「じゃあ、今年も全国大会は無理なのかしら」
「う〜ん、今までも数えるほどしかないからな」
「難しいっスね」
「そうね……」

ひびきのは部活が盛んなことで有名だ。
しかし実力はというと、全国にはもう少しといったレベル。
地区大会でもあと1,2勝で全国大会というところで負けてしまっている。
全国大会には何年かに1回のペースしかない。

「あたし達がいる間に1回ぐらい全国大会の応援に行きたいよな」
「正直言うと私もそう思う」
「ほう、吹雪もそう思うのか」
「あたりまえよ。自分の学校が全国大会だなんて嬉しいじゃない」
「私もそう思うっス」
「それはあたしも同じだ。生徒会長として自慢できるからな」

生徒会室には3人だけ。
今日の活動はないようだ。
3人はただ無駄話をしているだけだ。
3人は部屋の中央で一つの机をちょうど正三角形になるように椅子をおいて話している。



「でも、生徒会がインターハイに向けてなにかしてるのかしら?」
「全然してないよ」
「それでいいの?」
「だって、うちの部って自主的にいろいろやってるだろ?だからあたし達が介入することがないんだよ」
「それっていいことなんっスか?」
「う〜ん、それだけ部活をがんばっているってことだからいいんじゃないか?」
「そうね、部活のことはその部の人が一番わかってるから、下手なことはしないほうがいいかもね」

実際生徒会は運動部に対して特段のことはしていない。
予算の配分と学校の施設の使用の手続きぐらいしかしていない。

それでも部活は十分に活動しているから別になにも問題はない。

「でも、やってみたいよなぁ、全国大会の応援」
「何するつもりなの?」
「いや、大きな校旗を振り回して応援するんだよ。かっこいいだろう?」
「でも、それって……校長がやりそうだけど?」
「あっ、和美ちゃんならやりかねないなぁ……」
「納得っす……」

3人の頭の中には特大の校旗をぶんぶん振り回す校長の姿が思い起こされていた。



「それでも何もしないっていうのも、気が引けるんだよな」
「そうね、私もそう思うわ」
「しかし、何をすればいいんっすか?」
「当日応援ができればいいんだけど、部外者の応援はダメみたいだし」
「そうなのよね……結局学校で吉報を待つしかないって訳よね」
「なんか辛いっすよね」

自分たちでも何かしたい。
でも何もすることがない。
それが生徒会としてもどかしいのは確か。

「昔は壮行会ってやってたんだよな、確か?」
「へぇ〜、でもどうして今はないんすか?」
「なんか、出場する人数が多くなりすぎて、会の進行がうまくいかなくなったらしいわよ」
「和美ちゃんも『下手にプレッシャーをかけてもしょうがないだろ』って言ってやめたみたいだぞ」
「ふ〜ん、でも壮行会ぐらいやってもいいと思うけど」
「学校の代表って感じで誇りも出てくるとあたしは思うけどな」
「私も同感。名誉だと思うわよ」
「まあ、人それぞれだから、絶対にやるべきかは難しいけどな」
「結局できないんっすね」
「……」
「……」

壮行会もだめ。
やっぱり何もできなく、3人はだまってしまう。



しばらくして、ほむらが椅子から降りた。

「なぁ、吹雪、夏海。ちょっと行かないか?」
「どこに?」
「神社」
「神頼みですか?」
「ああ、もうあたし達にできることはこれしかないからな」
「私も神頼みって好きじゃないけど、これしかないのかしらね」
「私もついていくっス!」
「じゃ、さっそく出発だな」

3人は鞄を持ち、生徒会室から出て行った。
もちろん吹雪が生徒会室の鍵を閉めることは忘れていない。



パンパン!



ひびきの神社

3人はここでお祈りをしていた。

(どこでもいいので全国大会に行けますように)
(全国大会に行けますように)
(とにかく勝てますように)

考えていることは微妙に違ってはいるが、思いは同じ……だと思う。

お賽銭を入れ、手を合わせ、拝んだ3人はすこしだけ清々しい顔をしていた。

「さ〜て、じゃあ次はお守りでも買うかぁ!」
「お守りっすか?」
「神社といったらお守りだろ?」
「まあ、そうだけど……いったい幾つ買う気なの?」
「当然部活分」
「そ、そんなに?いったい幾つあると思ってるの?」
「え〜と、幾つだっけ?え〜と、ひとつ、ふたつ……」
「みっつ、よっつ……」
「いつつ、むっつ……」

3人は指を折り、部活の数を数え始めた。

そしてようやく数え終わる。

「……本気?」
「本気だ、お金がかかるのは覚悟の上だ」
「まあ、仕方ないわね……」
「いいじゃないっすか。喜ぶと思うっすよ」
「じゃあ決まりだな」

そういうわけで、3人はお守りの売り場に向かう。



お守りの売り場はすぐ近くにある。
そこで3人は見知った顔を見かけた。

「あれ?寿じゃねぇか?」
「あっ、赤井さんだぁ!」

売り場には美幸が買い物を済ませたところのようだ。

「寿さんはどうしてここに?」
「うん!インターハイがもうすぐだからお守りを買おうと思って」
「あら偶然ね。私たちもちょうど買おうかと思ってたの?」
「へぇ〜、ここのお守りって効果抜群なんだよねぇ〜」

そういいながら美幸は袋の中から買ったばかりのお守りを見せた。

「……」
「……」
「……」

ところがそれを見た3人は固まってしまう。
当然美幸は不思議がる。

「あれ?どうしたの?」
「なぁ、ちゃんと見て買ったのか?」
「へ?だってちゃんと勝負事のお守りを……あ゛っ」

美幸の手のお守りには『交通安全』と書かれていた。

「あれ?えっ?ええっ!また間違えてるぅ……あっ、まただ……」

落ち込む美幸。
美幸の不幸ぶりはよく知っている3人はフォローに入る。

「あっ、でも交通安全でも喜ぶとおもうぜ」
「そうそう。交通事故って防ぎようにない場合もあるのよね」
「もらえば何でも嬉しいっすよ」
「そうか……みんな喜んでくれるかなぁ。じゃあいいか!」

フォローが通じたのかどうかよくわからないがとにかく、元気になった美幸をみてほっとする3人だった。



美幸が立ち去った後、ほむら達3人もお守りを買い始める。

「さて、あたし達も買うか……で、なんのお守りがいいんだ?」
「勝負事じゃないんっすか?」
「怪我防止でもいいんじゃないかしら?」
「う〜ん、お守りって難しいなぁ……決めた!勝負事にしよう」
「まっ、それが妥当かもね」

そういうわけで3人は部活の数だけ勝負事のお守りを買った。



翌日の放課後。

3人はまた生徒会室に集まっていた。

「え〜と、全部配ったか?」
「間違いなく全部配ったわ」
「みんな喜んでたっすよ」
「そうかそうか、いやぁ、やってよかったなぁ」

放課後、3人で分担して買ったお守りを配っていた。
どの部も驚いていたが、喜んで受け取ってくれていた。
よろこんだ顔を見た3人はとにかく機嫌がいい。

「久々に生徒会らしいことができたな」
「そうね、あとは試合で勝ってくれればね」
「楽しみっすね」

「ああ、あのお守りの効果がでればありがたいな」
「そうすれば生徒会のメンツもたつってものね」
「そうそう」

「でも、もし全国大会に出場が決まったら大々的に壮行会をやろうな」
「そうね。思いっきり派手にやりましょうね!」
「いやぁ、楽しみっすねぇ」

自分たちがやるわけではないが、インターハイ本番が楽しみになってきた3人であった。
To be continued
後書き 兼 言い訳

さっそく第24部です(笑い)
今回はインターハイを中心に部活の様子を書こうと思ってます。

って書いておきながら、いきなりなんだこれ(笑)

今回は生徒会3人衆のお話でした。
この3人なら突発的にこんな事をやりそうだとは思います。

次回からは本当にインターハイ本番です。

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