第145話目次第147話
翌週の月曜の朝。

「とうとう……来ちゃった……」

真帆は珍しく朝早く目が覚めた。

「どうしよう……不安だよぉ……」

今日から1週間。
真帆は美帆の制服を着てひびきの高校に行くことになった。
美帆のお願いに引き受けたとはいえ、やはり不安だ。
だからこそ、朝早く目が覚めてしまったのだ。



ガチャ



「真帆、おはよう」
「姉さん、おはよう……」

ちょうどいいタイミングで、美帆が部屋にやってきた。
隣でごそごそやっているのに気がついたのかもしれない。
いや、妖精さんが教えたのが正解だろう。

「ご飯を食べたら着替えましょうね♪」
「やっぱり……やるの?」
「はい」
「本気?」
「女に二言はありません」
「……」

美帆はやる気満々らしい。

「はぁ……」

真帆は完全に諦めた。

太陽の恵み、光の恵

第25部 白雪Exchange編 その2

Written by B
朝ご飯を食べた後、二人は美帆の部屋に集まる。

「じゃあ、これをお願いね」
「う、うん……」

美帆が自分のクローゼットから予備のひびきの高校の制服を真帆に渡す。
真帆はそれを渋々受け取る。

「真帆は?」
「はい、これ……」

真帆も予備のきらめき高校の制服を美帆に渡す。

「じゃあ、さっそく着てみますね♪」
「そうするね」

お互い背中を向けあう。
そして美帆は期待いっぱい、真帆は不安いっぱいで着替え始めた。



「姉さん終わったよ」
「私もです」

しばらくして着替え終わる。
二人は同時に反対側を向く。
二人はお互いの制服姿を見る。


「あれ?」
「あら?」


しかし、どうもおかしい。

「こんなだったかしら?」
「なんか違うような……」

確かに自分が着ていた制服なのだが、どうも違和感を感じる。
しばらく思案に暮れていたが、真帆が先に気がついた。

「姉さん!それネクタイ結びなんかしないよ!」
「えっ?」
「うちの学校はリボンのように結ぶんだよ」

違和感を感じていた原因。
それは美帆がリボンをいつものようにネクタイ結びにしていたからだ。

「ちょっと貸して。え〜と、こうして、ああして……」

真帆はリボンをほどいて、自分で美帆のリボンを結び始めた。

「う〜ん、反対側だから難しいな……え〜と……よし!これでOK!」

幾分苦戦したがなんとか結び終えたようだ。



「そういえば、真帆もおかしいですよ」
「えっ?」
「私は蝶結びなんてしてませんよ」

美帆も違和感の原因がわかった。
真帆がリボンを蝶結びにしていたからだ。
美帆はいつもネクタイ結びにしている。

「あれ?去年行ったとき、こう結んでいたような……」
「それは他の人じゃないですか?ひびきのはどちらでもいいんですよ」
「そうなんだ」
「私も貸してくださいね……え〜と、こうして、ああして……」

美帆も真帆のリボンを結び始めた。

「これで大丈夫ですね」
「ありがとう姉さん」



「あとは……」
「髪型だね」

二人は髪型を変え始めた。

美帆は自分の前で結んでいた髪の毛をほどいた。
逆に真帆は自分の前で髪の毛を結ぶ。


これで入れ替わりが完成した。
改めてお互いに向かい合う。

「あっ……」
「あっ……」

二人は目の前にいる自分をみて呆然としていた。



(わたしが目の前に……)

美帆は真帆が自分の鏡のように見えた。

ひびきのの制服を着て髪の毛も美帆独特の髪型をしている。

しかし、なにか違う。

明るさというか、華やかさがあふれていた。

それらは美帆自身にはなかったものだ。

(不思議……)

目の前の自分は美帆の理想像の一つだった。



(私が目の前にいる……)

真帆も美帆が自分の鏡のように見えた。

きらめきの制服を着て、髪の毛も綺麗なロングヘアにしている。

しかし、なにか違う。

おしとやかさ、上品さがあふれていた。

これらは真帆が持ちたくても持てなかったもの。

(姉さん、素敵……)

目の前の自分は真帆の理想像だった。



「……」
「……」

お互いに見つめ合う美帆と真帆。

「「美帆!真帆!学校に遅れるわよ!」」

それは二人の母親が呼びかけるまで続いていた。

「あっ!行かなくちゃ!」
「そうですね!」

二人は自分の部屋に戻って鞄を取り、登校の準備を始めた。



「あはは、お母さんも呆れてたね」
「怒られなかったのが不思議なぐらいですね」

家をでる間際、二人は母に一言、

「たちの悪い悪戯は控えめにね」

と言われてしまった。
さすが母親。バレバレだったようだ。

「じゃあ、今日の授業の教科書が入ってるけど、真面目に勉強しなくていいよ」
「いいんですか?」
「下手にするとバレちゃうよ。寝てる振りをしているだけでいいよ」
「そういうものですか……」

真帆は自分の鞄を美帆に渡す。
美帆も受け取りながら、自分の鞄を真帆に渡す。

「昨日美幸ちゃんに連絡しておきましたから、校門で待ってくれると思います」
「大丈夫?コンボイとかにはねられて遅刻するって可能性はないの?」
「う〜ん、そのときは一人で……」
(え〜ん、不安だよぉ……)

「こっちも同じクラスのヒナちゃんに頼んでおいたから」
「よく話に出てくる朝日奈さんですね」
「うん、校門で待ってくれてるはずだから」
「あら?たしか遅刻の常習犯って聞きましたけど……大丈夫ですか?」
「あっ……ま、まあ大丈夫だと思う……」
(う、うかつだった……ヒナぁ、頼むから今日は来てよぉ……)



「じゃあ、行ってきますね」
「また話を聞かせてね。こっちも情報を仕入れるから」
「お願いしますね」
「じゃあ、行ってきま〜す!」
「行ってきます!」

二人は反対方向に向かって歩き出した。
美帆はきらめき高校へ。
真帆はひびきの高校へ。
それぞれ未知の領域へと足を運んでいった。



ひびきの高校校門。
奇跡的?に校門で美幸が待っていた。

「お〜い、真帆ぴょ〜ん!」

美幸が真帆に手を振る。

「美幸ちゃん!大声出さないでよ!バレちゃうでしょ!」
「あっ、そうか!えへへ。ごめんごめん」

真帆は慌てて美幸に寄り添う。
美幸もようやく失敗に気がついて照れてしまう。

「まあ、いいけど。今週はよろしくね」
「うん!美幸にまかせなさい!」
(ごめん……それが一番心配なの……)

ドンと胸を叩く美幸を見つめながら真帆は不安だらけだった。



一方の美帆。

「え〜と、確かここで待っていればよかったはずですが……」

美帆は校門でうろうろしていた。

「お〜い、真帆!」
(えっ?真帆?間違えてこっちに来ちゃったのかしら?)

真帆の名を呼ぶ声に美帆は少し慌てていた。

「真帆!どこ見てるのよ!」
(いったい真帆はどこにいるのでしょうか?)

あちこちを見回す美帆。
そうしているうちに、呼ぶ声がだんだんと大きくなってくる。

「こら!」
「きゃっ!」
「あなたが真帆でしょ?」
「えっ?あたし……あっ、そうでした……」
「ふぅ……先が思いやられるわ……」

今は自分が真帆であることをすっかり忘れていた美帆。
それを見た、美帆を呼んだ女の子は呆れていた。

「あなたが朝日奈さんですね。初めまして」
「こんちわ。私が朝日奈夕子。あっ、真帆はいつもヒナちゃんって呼んでるから」
「そうですか、いつも真帆がお世話になっています」
「そんなことないよ。私が真帆にお世話になりっぱなしなんだから」

夕子は美帆を迎えるためにいつもよりかな〜り早く学校に来ていた。

「じゃあ、今週はヨロシクね」
「はい、お願いします」
「それじゃあ、教室にレッツゴー!」

夕子は美帆を引っ張り、校門に入っていった。



「……っとその前に……」
「?」
「ちょっと、こっちに来て」
「は、はい……」

夕子はいきなり進路を変更して体育館の裏にわざわざ連れ込んだ。
いきなり人まばらな場所に連れられてとまどう美帆。

「あ、あのぉ〜……」
「一応チェックしておかないとね……えいっ!」



むぎゅ



「きゃっ!」

夕子はいきなり両手で美帆の両胸を揉み始めた。
当然美帆はびっくり仰天。

しかし、夕子はひとつかみもんだ後、一言。


「う〜ん……やっぱり偽物ね……この感触はあんパンかな?」
「うっ……」


「どこで買ったの?」
「……駅前のコンビニで……」

夕子は美帆の制服の胸元からなかをのぞき見る。
確かにビニールの袋らしきものが美帆の制服の裏に隠れていた。
美帆はあまりに恥ずかしくて顔を真っ赤にしてしまう。


「やっぱり気にしてたの?」
「はい、真帆ったら羨ましいぐらい大きくて……」
「あはは、あたしも同じ。いくらなんでもあれは卑怯でしょ?」
「ええ!双子の姉として許せません!」
「あはは。いや、実は真帆の胸をじろじろみる男子って、結構いるのよね。だから、それでバレたらヤバイとおもったんだけど」
「そんなひどい男子がいるのですか」
「まぁ、男が興味を持つのもわかるけどね」
「変な目で見る人は妖精さんにひどい目にあわせますからね♪」
「あ、あはははは………」

思いがけず?うちとけた二人はようやく二人の教室である2年G組の教室に向かっていった。
To be continued
後書き 兼 言い訳

入れ替わりの準備、制服の交換です。
他人様の白雪SSってあまり読んでないのですが、こういうシーンって誰か書いてるかなぁ?
(たぶん書いてるとは思いますけど)

さて、真帆には美幸が、美帆には夕子がつきました。
たぶん、これが自然だと思いました。

ちなみに、真帆と夕子は同じクラス(G組)です。

次回は、授業の様子を交えて色々書ければと思います。

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