第147話目次第149話
「ただいまぁ……」

真帆が家に帰ってきた。
今日はバイトもないので、まっすぐ家に帰ってきている。

「お帰りなさ〜い……真帆」

先に帰ってきたらしく、美帆がニコニコ出迎えてきた。
真帆はそんな美帆をみて、冷や汗をながす。

(やばっ、姉さんが怒ってる……私、何かした?)

まったく身に覚えのない怒りをぶつけられて真帆はとまどっている。

「嘘つきにはお仕置きをしないといけませんね、妖精さん♪」

(嘘?えっ?私、姉さんに嘘なんてついたっけ?えっ?えっ?えっ?)

「さっそく、お仕置きしてくださいね♪」

「ちょ、ちょっと、姉さん!……きゃぁぁぁぁ!」

家の廊下には真帆の悲鳴が響いていた。

太陽の恵み、光の恵

第25部 白雪Exchange編 その4

Written by B
真帆の部屋。
なぜか真帆はバスタオル一枚を身体にまとってぶるぶる震えていた。
なぜか髪の毛はびっしょり濡れている。
それを美帆はいい気味を言わんばかりにニコニコとほほえんでいた。

「姉さん!風邪引いたらどうするのよ!」
「真帆がいけないんですよ。私に嘘をつくから」
「私がなに嘘ついたのよ!」
「『勉強ができない』なんて大嘘つくからです」
「へっ……」

まったく身に覚えのないことを言われてとまどう真帆。

「わ、私、本当に勉強できないんだってば……」
「どこがですか?あの授業。私はついていくだけで精一杯ですよ」
「えっ?」
「それを簡単にできないなんて……」
「ちょ、ちょっと姉さん誤解だよぉ……」
「本当は私よりもできるんじゃないですか?」
「違うって……」
「夕子さんも『あたしよりもできる』って言ってましたよ」
「だから、姉さん……」

この後、真帆は自分が本当に勉強ができないことを説明するのにかなり時間を掛けてしまった。



「なるほど、わかりました……」
「はぁ、はぁ……疲れた……」
「それはそうと、ひびきのはどうでしたか?」
「いきなり話を変えるのね、姉さん。あのね……」

いきなりの方向転換に言いたいことはたくさんあるのだが、ぐっとこらえて今日の様子を話す真帆。

「そうなんですか、特に進展はなしと……」
「な〜んか、坂城さんは不安そうな顔をしてたけど、顔を合わせしないようにしちゃった」
「どうして?」
「だって、私だってバレたら大変じゃない。そうでしょ?」
「まあそうですね……」
「とりあえず、今日は学校に慣れただけって感じ。本格的な調査は明日から」
「わかりました。期待してますね」
「う〜ん、そんなに期待されても困るけど……まあ頑張ってみるね」

美帆としては進展がなかったことに不満はあるものの、明日以降に期待することにした。



「姉さんこそ、きらめきはどうだったの?勉強以外になんかあったの?」
「そうですね〜、え〜とですねぇ〜」
「……えっ?……」

美帆が真帆に話した内容と簡単にまとめるとこんな感じになる。


朝日奈夕子は大物だということ。

体育の授業で夕子の友達のゆかりという女の子とのんびりとお話をしたこと。

お昼休みに早乙女好雄という人がスリーサイズを聞いてきたので妖精さんにお仕置きをさせようと思うが先に夕子が好雄を殴りつけてしまったこと。

帰りに夕子と喫茶店に寄ってお話をしたときにいろいろ頼まれたこと。


こんな話を簡単にまとめて真帆に話した。

「……どうかしました?」
「……ヒナもゆかりも好雄くんも……姉さんになんつ〜ことを……」

美帆が気がついた時には真帆は頭を抱えていた。



「しかし、きらめきも楽しい感じですね。おもしろい人がいっぱいいるようで」
「えっ?」

美帆の率直な感想に真帆が驚く。

「おもしろい人って……まさか、姉さん、誰かと会ったの?」
「いや、私はというよりも妖精さんがそういってましたが……」


「例えば、すごく色っぽい女の子とその周りを囲んでいる男の子達とか?」
「それは放課後ちらっと見ました」


「片目がこうばさっと隠れている怖そうな女の子とかに目をつけられなかった?」
「それは見ませんでしたが、髪の毛がこんなかんじでわっかの女の子は見ました」


「ふる〜いカメラ持って写真を撮らせようとする女の子は?」
「ああ、妖精さんがそんなことを言ってました」


「誰かにナンパされなかった?」
「早乙女さんのことですか?」
「いや、あんな浮気男じゃなくて、もっと二枚目の浮気男」
「う〜ん、覚えがありませんねぇ」


「じゃあ、『真帆さんは根性があるわ!一緒にマネージャーしましょう!』って言われた?」
「いいえ」


「学校で噂になっている、制服を着た金髪の幽霊とかは?」
「なんですかそれ?」


「ふぅ〜……よかったぁ……」
「???」
「いや、変な事になってないかと心配だったんだけど……」

(姉さんが暴走して妖精さんでひどいことをしないかと不安だったんだぁ……よかった)

一通り質問責めをすますと、真帆は大きく安堵のため息をつく。

「あの〜、真帆」
「ん?な〜に?」

「そんなにきらめきは変な人がたくさんいるんですか?」
「えっ?」

「真帆が心配するほどの人がそんなにたくさんいるなんて……」
「あ゛……」
「エリート進学校の人間はよくわかりません……」

確かに真帆の今の質問攻めは『きらめきはこんなに変な?人がたくさんいる』と言っているようなものだ。
真帆は自分で自分の学校の印象を悪く?しているように美帆はとらえていた。


「あっ、今のは気にしないで!たいしたことないから、あははは………」
「そうなんですか?」
「そうそう!そういうこと!」
「???」

ここは真帆の強引な締めで、話を終わりにしてしまった。



「はぁぁぁ〜」

美帆が部屋を出て行ったとたん、真帆は脱力してベッドによこになってしまった。
しかし、すぐに起きあがる。

「もう、ヒナにちゃっと言っておかないとどうなるかわかったものじゃない!」

夕子に一言言わないと気が済まなくなってしまっていた。
とりあえず、まだバスタオル1枚の格好だったので、部屋着に着替えて受話器に向かった。



トゥルルル、トゥルルル……



「どうせ、好雄くんとデートのような気がするけど……」

「もしもし〜」

発信音が2,3度なったら相手がすぐに出てきた。
相手は夕子だ。

「もしもし、ヒナ。わたし……」
「あっ、真帆?元気だった〜?」
「ヒナ」
「ん?どうしたの?」

妙に低い声で話す真帆。
夕子はその異変にまだ気がついてない。

「ヒ〜ナ〜ちゃ〜〜〜ん!」
「ど、どうしたの?」

ようやく真帆の状況に気がついた夕子。

「どうもこうもないでしょ!あれほど好雄くんにスリーサイズを聞かせないようにって言ったのに!」
「あたしだって言ったわよ!それなのにヨッシーったら『いや、条件反射で』とか言って……」

「言ったでしょ?姉さんが怒ると紐緒さんよりもひどいことをしかねないって」
「わ、わかってるけど……」

「私、心配なんだよ。姉さんが誤解して、きらめきをメチャメチャにしかねなかって……」
「そ、そこまでひどいの、美帆さんって……」
「さっきも姉さんに誤解されてひどい目にあったんだから」
「それはお気の毒に……」

「ヒナがいけないのよ!『あたしよりも勉強ができる』なんて誤解されるような事言って!」
「だって事実っしょ?」
「ヒナが学年で一番下なんてこと姉さんは知らないわよ!」

夕子はのらりくらりかわそうとするのだが、真帆が直球で怒るので避けようがない。
しかし、すぐに真帆も言いたいことも言ったのかおちついてきたようだ。



「で、放課後。姉さんに何頼んだのよ?」
「真帆がちっともやってくれないことよ」
「えっ?」
「真帆。色々頼まれて、ほったからしじゃないの?」
「あ゛っ……」

今度は夕子が低い声になる。
真帆も思い当たることがあるらしく、声が止まる。

「みんな真帆を頼ってるのに、その態度は何?」
「い、いや、あたしもバイトで忙しかったから……」

「そんなの理由にならないよ。みんな真帆の人脈に期待してるよ」
「だって、適任者が……」

「だから、いるでしょ?」
「誰?」

「美帆さんよ」
「あっ……」

「美帆さんに頼めば一発で解決じゃなかったの?」
「いや、灯台もと暗しっていうか、普通の時に姉さんをきらめきに連れていけないでしょ?」
「あっ、そうか。でも今週は美帆さんが来てるからいいでしょ?」
「そうね、じゃあヒナ、お願いできる?」
「まかせて。学校には内緒にするようには言っておくから」

用件はこれですんだ真帆はそれで話を打ち切ることにした。



「じゃあ、頑張ってね」
「ありがと、それじゃあね」



ガチャ



「うわぁ〜、忘れてた〜!」

真帆は頭を抱えてしまった。
確かに何人かに人を紹介してくれと言われて何もしていなかったのだ。
確かに一番の適任者は美帆だったのだが、真帆はすっかり忘れていた。
学校内にも適任者がいなかったこともあり、おざなりになっていた。

「姉さんに悪いことしちゃったな……」

美帆のことだから、嫌とは言ってないみたいだったのだが、本来自分が頼むことを夕子に頼ませてしまったことを後悔していた。

「また、あとで謝ろうっと!」

ようやく平常の心理状態に落ち着いた真帆は机にむかった。
今日美帆がとってきた授業のノートを見るためだ。

「うわ〜、こんなのわからないよ〜」

開けて一番真帆が嘆いた。
美帆らしく丁寧に授業の内容が書かれていたが、真帆にはさっぱりわからない。

「姉さんがわからないって言ってるの、私がわかるわけないじゃない!」

真帆の嘆きは当分続くのであった。
To be continued
後書き 兼 言い訳

さて、1日目が終わりました。
今週というと5日間ありますが、毎日毎日全部書くつもりはもちろんありません。
でも、最初なのでこれぐらい話はするのでは?と思いました。

さて、真帆が美帆に色々聞いた中に、思い当たる人が何人も登場しています。
それらはのちほどと言うことで。

次回は真帆サイドオンリーになります。

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