第152話目次第154話
今週の学校もこれで最終日。

「いってきま〜す!」
「いってきま〜す!」

美帆と真帆は元気に家を出る。

昨日で問題がすっかり解決した美帆と真帆はすっかりご機嫌。
でも、制服は入れ替わったまま。

「どうせだから、今週いっぱいは入れ替わったままでいようよ」

という二人の意見が一致したからだ。

「とにかく今日は」
「楽しみましょうね!」
「そういうこと!」

太陽の恵み、光の恵

第25部 白雪Exchange編 その9

Written by B
気分がすっかり楽になっていた真帆。
その影響はさっそく朝の教室で現れていた。

「あれ?美帆、今日はどうしたの?」
「えっ?これですか。今日は気分転換に……」
「へぇ、そっちも結構似合ってるね。こっちのほうがいいんじゃない?」
「あ、ありがとうございます」

真帆の制服はネクタイ結びではなく、リボン結びになっていた。
きらめきではリボン結びなので、本来はこっちが結び慣れている。
今まで、ばれないようにネクタイ結びしていたが、もう最後なので開き直ってリボン結びにしていたのだ。

「今度から、そっちにしたら?」
「い、いや、ほんの気分転換なので……」
「そう?美帆がそう言うのならいんだけど」

美帆の友達とおぼしきクラスメイトも不思議がりながらも納得していた。



そして朝の授業が始まった。

(あれ?坂城さんは?)

ふと見ると匠が来ていない。
そう思っていたら、担任とおぼしき人が一言。

「今朝、連絡があって、坂城は熱がでて休むそうだ」

(あちゃ〜、昨日やりすぎちゃったかも……)

真帆が想像するに、美帆に謝りの電話を掛けた後、心労で発熱したのかもしれない。
そう思うと、苦笑せずにはいられない真帆だった。



休み時間。

「ふんふんふ〜ん♪」

気分がすっかり楽になった真帆はスキップをしそうな勢いで廊下を歩いていた。
すぐ横を何人もの生徒が通り過ぎるが、誰も自分の事を気にしない。

(誰も気がついてない……)

と思ったとたん。

「きゃっ!」

真帆はいきなり腕を捕まれたかと思うと、いきなり階段に引っ張られてしまう。
いきなり階段に連れられた真帆は当然怒る。

「ちょっと!いったい誰……あっ……」

「やっぱりね……」

「花桜梨……さん?」

階段に引っ張り込んだのは花桜梨だった。
まったく意外な人物だったのと、引っ張る力が強かったことに真帆に驚いていた。

そんな、真帆に対して花桜梨は冷静に問いかける。

「美帆さんじゃないわね?」
「うっ……」

「どうなのかしら?」
「はい、そのとおりです……」

まっすぐに真剣な目で見つめられると、さすがの真帆も白状せずにはいられなかった。

「どうも、おかしいとおもってたんだけど……真帆さんだったわけね」
「おかしいって?」
「今週ずっと、美帆さんの雰囲気がおかしいとは思ってたの」
「雰囲気?」
「そう、なんとなく、美帆さんから感じるものがちょっと違ってたから。ずっと気になってて」

(す、すごい……花桜梨さん、そんなので見破ってたなんて……)

まさか、そんなことで見破るとは思ってもいなかった真帆は内心なかり驚いていた。



「ところで、なんで真帆さんが来てるわけ?」
「い、いや、実は姉さんの事で……」
「美帆さんが?」
「ええ、実は……」

真帆は今週の出来事を簡単に花桜梨に説明した。
細かい事情までは説明しなかったが、花桜梨は真帆の言うことを理解して聞いているようだった。

「そう、大変ね……」
「でも、姉さんが元気になってよかったです……」
「じゃあ、もう来週から来ないの?」
「えっ?」
「せっかく今こうして逢う機会が出来たのに、もったいないなって……」
「そ、そう?」
「真帆さんと話がしたいと前から思ってたんだけど……バイクの話とか」
「えっ?」

花桜梨が軽くウィンクをする。
それを見て真帆は花桜梨が言いたいことが十二分に伝わってきた。

「そ、その話だけは止めて……恥ずかしいから……」
「冗談よ。でもそう恥ずかしがることもないと思うけど……」
「バイクの話なら他にも……」
「実はみんなには内緒なの……」
「えっ?」
「だから、話す相手があまりいなくて……」
「そうだったんだ……わかった、それならあたしんちに電話してよ」
「いいの?」
「いいわよ。私も花桜梨さんと話してみたいし」
「本当にいいの?」
「うん、いいよ。バイトが入ってることはあるけど、夜なら大丈夫だから」
「じゃあ、楽しみにしてるわね」

花桜梨は笑顔で廊下に戻っていった。

(最初はどうなるかと思ったら……よかったぁ)

真帆は思いがけずに話友達ができて満足していた。



そして、放課後。

ベルが鳴ったとたん、教室の扉からほむらが入ってきた。
ほむらは真帆の席へ一直線にずかずか歩いていく。
何事か、というクラスメイトの視線は一切無視。

「よぉ、白雪。今ひまか?」
「え、ええ、だ、だ、大丈夫ですよ」
「じゃあ、生徒会室に来ないか?」
「え?」
「なぁに、たいしたことじゃないよ。すぐに帰るのはもったいないだろ?それだけ」
「わかった、じゃあ行きましょ!」
「おお、すぐに案内するぜ」

即答した真帆は、ほむらと一緒に教室からでて生徒会室へと向かう。



「あはははは!」
「にゃはははは!」

生徒会室。
備え付けのテレビにはゴッドリラーのビデオ画像。
テーブルにはたくさんのお菓子。

ほむらと真帆は別にテレビは見ていない。
テレビの音声をBGMに雑談をしているだけである。

「そうか、そんなにウチって明るいのか?」
「そうね。学校全体が明るいって感じがしたのよね」
「おめぇんとこ、そんなに暗いのか?」
「そんなことないけどね、でもこっちと比べるとおとなしい、って感じかな?」
「そっちは頭のいいやつばっかりだもんな。なんとなく想像がつく」
「私はそうでもないとおもってたんだけど。ここにきてやっぱりおとなしいなってわかったの」

お菓子をぼりぼり食べながらの雑談。

今日は生徒会の活動もなく、誰も来ることはないとのこと。

真帆もいつもの口調に戻って、気楽なご様子。



そんななか、ほむらがふと、何かを思い出したようで、真帆に話かける。

「あっ、そうだ。ちょうどいいや。白雪に聞きてぇことがあったんだ」
「えっ?何?」
「こんど、生徒会できらめきに行かなきゃならないんだよ」
「どうして?」
「なんか、文化祭で打ち合わせだってさ」
「文化祭?」
「確か、日程は1週間ずれてるのかな?で、姉妹高だからお互いの文化祭の宣伝をしたらどうかって話があって」
「へぇ〜」
「いや、橘が言い出したことなんだけど、和美ちゃんが気に入って『さっそく打ち合わせをやれ』だって」
「和美ちゃん?」
「あっ、校長のこと」
「そ、そうなんだ……」
「それで、きらめきと打ち合わせしなけりゃいけないんだけど。誰に連絡すればいいのかわからなくて」
「う〜ん……」
「学校の方で連絡してくれるみたいだけど、生徒間で直接連絡できるほうがいいとおもって」
「そうね……」
「誰か生徒会関係の人知らない?」

(普通に考えれば伊集院君だけど……直接の連絡はまず無理ね……まずは話をしてみないと)

「わかった。ちょっと話をしておくね。大丈夫だったら連絡するね」
「おおっ!ありがてぇ。いやぁ助かるよ」
「まかせて。来週中には連絡するから」

(あ〜あ、また引き受けちゃった。どうしてこう私はお人好しなんだろう?)

喜ぶほむらに対して真帆は自分のお人好しさに内心苦笑していた。



「じゃあ、また遊びにこいよ〜」
「無理だって、姉さんがいるんだから」
「な〜に、放課後来るぐらいならバレやしないって!」
「そ、そうかなぁ?」

校門で真帆とほむらが立っている。
真帆が帰ると言ったら、ほむらが見送りをしについてきた。
ほむらはまだ生徒会室で遊びたいらしい。

「じゃあなぁ」
「今日はありがとう。とてもたのしかった」
「な〜に、あたしも楽しかったぜ」
「それじゃあ、またね」

真帆は校門から歩き始めた。
後ろを向くと、ほむらが手を振って見送っている。

(なんか変だよ。同じ制服を着たひとを見送るなんて)

真帆はほむらの様子におもわすくすっと笑ってしまった。



「ただいまぁ……あれ?」

家に帰った真帆は美帆の部屋に顔を出す。。
部屋には誰もいない。

「靴はあるのに……シャワーでも浴びに行ったのかな?」

真帆は美帆の部屋に入っていく。

「あれ?」

ふと真帆は美帆のベッドを見る。
そこにはきらめき高校の制服が広げられて置いてあった。
たぶん、脱いでそのまま置いてあったのだろう。



「……」



真帆はその制服の上着をつかむとじっと見つめる。



「姉さんが着ていた制服……」



真帆はおもむろに制服を顔に当てる。



「姉さんの臭いがする……」



真帆は制服を抱きしめる。
そしてそのまま、美帆のベッドに倒れ込む。



「姉さん、姉さん、姉さん……」



真帆は切なげにつぶやき続ける。
そしてそのまま夢の中に落ちていく。



「妖精さん。私はどうしたらいいんでしょうか?」

美帆の部屋の前。
自分の部屋の中の真帆の様子をこっそり覗いていた美帆はとまどっている。

それはそうだ。

さっきまで自分が着ていた制服を抱きしめながらベッドにいるのだから。
初めて見る真帆の行動に美帆はどう反応していいのかわからない。
別にショックという意味ではない、真帆の行動の意味がわからないだけだ。

「え?気にするなって?そんなことでいいんですか?」

「はぁ?……寝ちゃってる?……それなら仕方ないですね……」

美帆は妖精さんの言葉を聞いてようやく自分の部屋にはいる。



美帆のベッドでの真帆の寝顔はどことなく寂しそうな寝顔だった。
To be continued
後書き 兼 言い訳

これでようやく第25部が終わりました。

とりあえず、元通りと言っていいのでしょうかねぇ?(苦笑)
ひとまず、悪い方向には行かなくてすんで一安心、と言ったところでしょうか。


とにかく次回から26部です。
かおりんのシリアス話をする予定……でしたが、ふとスケジュール的に入れなきゃ入れない話がありました。
どうも1部ごとに話数が多いから、スケジュール感が鈍ってしまう、気をつけないと。

そう言うわけで次部は光と恵の誕生日の話です。

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