ひびきの高校の校庭。
そこで大きな円陣が組まれている。
そして、その中央で強烈に放たれる殺気。
「さぁ!次はだれ?
次にこうなりたい人は誰なの!」
一人目を秒殺した花桜梨は周囲をにらみつける。
周りの人たちは足が動かない。
足がすくんでいる人もいるようだ。
「何よ!誰も来ないの?」
そんな周りを挑発する花桜梨。
「う、う、うわぁぁぁ!」
一人が竹刀をもって前から襲いかかってきた。
「……隙だらけね……それにばればれよ……」
花桜梨はぼそっとつぶやいた。
太陽の恵み、光の恵
第27部 "乱れ桜"花桜梨・復活編 その8
第165話〜百人組手〜
Written by B
上段の構えで花桜梨に真正面からむかって来る。
シュッ!
半ばやけ気味に竹刀を振り下ろす。
がしっ!
花桜梨はその竹刀を左手でわしづかみする。
ぼかっ!
「うぉ……」
そして、その格好で右膝を相手のあごに蹴り上げる。
相手はあっさりと前のめりに倒れる。
花桜梨はそのときに持っていた竹刀を引き抜く。
そして、その竹刀をそのまま両手で持ち、前方に突き指す。
「そこにいるのはわかってるわよ!」
ぐぼっ!
「うっ……」
後ろにもう一人隠れていた。
一人目の後ろに隠れて隙をうかがうつもりだったのだろう。
しかし、その彼女の腹には花桜梨の突き刺した竹刀の柄が食い込んでいた。
バタッ……
二人目は何もすることなく、腹を抱えながら倒れ込んだ。
「!」
花桜梨は素早く振り返る。
目の前にはチェーンが襲ってきたが、花桜梨は体を下げて避ける。
避けると素早く立ち上がり、チェーンをつかんで引っ張る。
「うわぁ!」
チェーンを持っていたスケ番が引っ張り出される。
「チェーンはこう投げるのよ!」
シュッ!
花桜梨は持っていたチェーンをスケ番の首めがけて投げつけた。
「!……う、く、苦しい……」
花桜梨の投げたチェーンは相手のスケ番の首に見事に2重3重に巻きついた。
巻き付かれたスケ番はあまりに苦しくてその場でしゃがみ込んでしまう。
「……なによ。武器の使い方が下手な人ばっかり……」
それからも、木刀やチェーンなどで何人か襲ってきたが、花桜梨の敵ではなかった。
相手の攻撃を上手く避け、さらにその武器を奪い取って相手に打撃を与える。
木刀や竹刀相手には隙だからけの足や腹部に蹴りを入れてから、武器を奪って顔面にたたきつける。
チェーン相手には上手くチェーンをつかんですぐさま投げつけて、相手を動かなくしてから蹴りを入れる。
花桜梨はまったくダメージを受けていない。
「おまえら!武器を捨てろ!逆に利用されるだけだ!」
リーダーが後ろから叫ぶ。
持っている武器をうまく逆利用されていることに危機感を感じたみたいだ。
周りが一斉に武器を後ろに放り投げる。
「あと、一人だけで行くな!2人、3人同時にいけ!」
すぐに次の指示が飛ぶ。
「……ふふ……こんなの、2人でも3人でも同じなのに……」
花桜梨はその指示を聞いてくすりと笑った。
「「おりゃぁぁぁ!」」
花桜梨の真正面から2人が襲ってきた。
「うふふ……前から来ても無駄よ……」
花桜梨は2人にむかって走り込む。
そして、素早く両手でそれぞれの首をつかむ。
「「!」」
花桜梨は右足で右側の女の左足を素早く払う、
そしてすぐに、左足で左側の女の右足を払う。
両側の2人のバランスが崩れる。
花桜梨は両手で首をつかんだまま地面に押し倒す。
どかっ!
息が苦しいところに頭をおもいっきり地面にたたきつけられた2人は立ち上がれない。
「!」
すぐ後ろに気配を感じた花桜梨は素早く立ち上がり振り向く。
そこには一人が花桜梨を蹴りつけようとしていた。
がしっ!
「!」
花桜梨は蹴りつけようとした相手の右足の足首を両手でつかむ。
そして、花桜梨は脇で足首を抱えるようにして、体を左に高速回転させる。
「うわぁ!」
相手は片足を強引にひねられながら、自分もつられて回転しながら地面にたたきつけられる。
「ううっ……」
相手はひねられた足を痛そうに抱えて起きあがらない。
「弱いのばかり……つまらないわね」
花桜梨はゆっくりと起きあがる。
「ふんっ!」
シュン!
花桜梨は右足を上げ、右回転する。
ボフッ!
花桜梨の右足が、後ろのスケ番の右脇腹深くにめりこんでいる。
花桜梨はそのままスケ番を蹴り倒す。
倒れる相手をみずに視線を前に持っていくと前から殴りかかってくる人がいる。
相手は右手を振り上げており、いまにも振り下ろそうとしている。
花桜梨はそれを限界まで待つ。
がしっ!
花桜梨は振り下ろす右腕をつかむ。
そして、体を反転させながら、相手の右手を自分の右腕で抱えるようにする。
そして、一気に投げ降ろす。
「てやぁ!」
「「うわぁ!」」
どすん!
投げられた相手は花桜梨の後ろから襲いかかろうとしたもう一人にボディプレスを仕掛ける形になり、
2人まとめて地面にたたきつけられる。
たったったっ……
花桜梨はすぐに走り出し、今倒した2人を踏んづけていく。
目の前には、殴ろうとするが、足がすくんで動かないスケ番がいる。
「くらいなさい!」
花桜梨は右足で地面を蹴り上げ高くジャンプする。
左足は前方に蹴り上げてバランスをとる。
そして右足は相手の顔面へ。
ずがっ!
見事に膝蹴りが決まり。相手は力無く倒れてしまう。
ここまでの作業。花桜梨は一連の流れて4人を片づけた。
休む間もなく、一気に。
しかも相手には何もさせていない。
周りはその様子をただ見ているだけだった。
「な、なんなのよ……」
花桜梨の周りの輪から離れた場所でスケ番のリーダーが驚いていた。
「あれで、現役じゃないっていうの……」
5年ぶりにみる花桜梨の姿。
その姿は自分の想像以上だった。
「昔よりも素早い、それに強くなってる……」
自分たちの手下があっけなく倒される。
対する花桜梨はまったくノーダメージ。
「2人、3人がかりじゃダメなんて……何であそこまで強いの?」
「………」
「こらぁ!ぼやぼやするな!4人でも5人でも捕まえてやっちまえ!」
リーダーは何とか花桜梨を倒すべく指示する。
そんなリーダーの足が少し震えているように見える。
「やっと、らしくなってきたわね……」
そのとき花桜梨は今頃こんな言葉を言っていた。
花桜梨の右足は一人の腹にめり込んでいる。
深く食い込んでいて、相手は動くことすらできない。
ただ、苦しそうに耐えているだけ。
ぼしっ!
花桜梨はその格好のまま、右からくる別の人に肘を顔面にたたきつける。
一旦、右腕を体の前にもち、回転とスピードをつけてたたきつけたので、威力はある。
たたきつけられた相手はその場で座り込み、顔面を抑えて悶えている。
そして今度は、まだ食い込んでいる右足を軸にして、左足を蹴り上げる。
上半身を地面に降ろし、ちょうどオーバーヘッドキックするように体を後方回転させる。
ぼこっ!
花桜梨の左足の甲は後ろの敵の顔面を直撃した。
くらった相手は鼻のあたりを痛そうに抑えている。
そして、今まで花桜梨の右足を食い込ませられた相手は腹を押さえて悶え苦しんでいる。
校庭にはぽつりぽつりと倒れて動けない人が増え始めていた。
いずれも花桜梨にやられた人たちだ。
その人たちはてんでバラバラに苦しんでいる。
このまま増えれば校庭を埋め尽くすかもしれない。
花桜梨によって散った桜が地面に舞い始めた。
「乱れ桜」の伝説が校庭で再現されようとしていた。
校舎から大勢のギャラリーが見つめる中で。
To be continued
後書き 兼 言い訳
アクションシーンって難しいよぉ。
いや、たくさんの人に囲まれた時に、どう攻められて、どう対処するかってずっと考えてて時間がかかりました。
そういう経験ないし(普通ないだろ)
そういう漫画とか読まないし。
花桜梨のアクションがイメージできるでしょうか。
次回は花桜梨を見つめるギャラリーの様子です。