第192話目次第194話
夏!

夏といったら海!

海といったら水着!



というのは明らかに言い過ぎ。
しかし、グラビア等で水着が氾濫している現在でも、やっぱり夏は水着が一番似合う季節。

女の子たちは自分の魅力を最大限に引き出す水着を着て海やプールで遊び回る。
それについては彼がいようがいまいが同じ。

この時期は夏本番に向けての新作水着が発売される時期。

ひびきの駅前のデパートでも水着フェアが開催されていて、大人なら中高生まで水着を探しににぎわっている。
カラフルな様々な水着がたくさん並んでいる水着売り場。
ここは一足先にやってきた夏。


「う〜ん、どれも大胆な水着だねぇ……どれがいいのかなぁ?」
「光、なに地味なの選んでるのよ」
「え〜?」


光も琴子を誘ってやってきていた。

太陽の恵み、光の恵

第30部 1学期末の学校編 その4

Written by B
光も水着を買いに来たのだが、一人で買い物してもおもしろくない。
そこで琴子を無理矢理誘ってデパートにやってきていた。

本当の目的は恵の水着なのだが、ついでに自分の水着を買おうと思っている。
ところが、選んでいる時点で琴子にダメ出しされている。


「光がみてるのってワンピース、それも色が地味なのばっかりじゃない」
「でも〜。私にはこれぐらいしか似合わないよぉ」
「何いってるのよ全く……」


琴子は光が選ぼうとしている水着が気にくわない。
光の水着にしては地味すぎるものばかり、だと思っている。
そして、なんでそんな水着を選ぶのかもわかっている。


「光、もしかして恵ちゃんのこと考えてたんでしょ?」
「………」
「まさか、『母親の私が大胆な水着なんて着られない』なんて思ってないでしょうね?」
「………」
「ふぅ……図星のようね……まったく光らしいわね……」


光は何も言えずうつむいてしまった。
図星で反論できなくないようだ。



琴子はそんな光を見て軽くため息をつく。


「光、恵ちゃんのことを考えるのもいいけど、主人くんのことも考えてあげたら?

 せっかくの夏なんですもの。
 主人くんが興奮するような水着着ても、彼は絶対に怒らないわよ。

 主人くんも光が『お母さん』に閉じこもっているのを心配していると思うわよ。
 光はまだ17よ?
 大胆なの着たって問題ないし、恵ちゃんもわかってくれると思うわよ。

 たとえばこんなの着てみたら?」


琴子はそういいながら横にあった水着がかかったハンガーをとり、光に渡す。



「!!!」
「!!!」



しかし、その水着があまりに大胆だったため、二人とも何も言えなくなってしまう。
二人の頭の中ではぐるぐると考え始める。


(こ、琴子、こんな大胆なの……恥ずかしくて死んじゃうよぉ)
(わ、私としたことが……こんなの私でも恥ずかしくて着られないわよ!)


(すごく大胆……でも、公二は喜んでくれるかなぁ)
(光、引いちゃってるかも……最初はもっと抑えめなのを選んであげればよかったのかも……)


(確かに琴子のいうとおりかもね。公二にも言われたし……)
(どうしましょう……ああ、どうしましょう)


(いいよね。恵もわかってくれるよね……このぐらい「女」でいても……)
(光も固まってるわ……別のを渡さないと……)



「光、ごめん、これじゃな「琴子、これ買うことにするね」」
「えっ?」

琴子は別の水着を渡そうと探しながら言おうとしたら、それにかぶさるように光の思わぬ一言。

「ありがとう。私もちょっと冒険してみることにしたよ♪」
「そ、そうね……それがいいわよ」
「じゃあ、気持ちがわからないうちに買ってくるから待っててね」
「ええ、待ってるわ」

光は顔を赤くしながら水着を持ってレジに向かった。

「光、それ……冒険っていうレベルじゃないわよ……」

そんな光に琴子はそうつぶやくのが精一杯だった。



光が買った紙袋を両手で大事そうに抱えながら戻ってきた。

「琴子。ありがとう。夏は楽しめそうだよ」
「ど、どういたしまして」
「お礼に私が琴子の水着を選んであげるね♪」
「えっ?わ、私はいいわよ……」

光の思わぬ一言に琴子は両手を広げ、胸の前で横に振って一歩後ずさりする。

そんな琴子をみて、今度は光がため息をつく。

「ふぅ……琴子らしいけど。そんなんじゃんだめだよ!
 ラブラブの彼氏がいるんでしょ!
 彼が興奮するような、ナイスバディを強調する水着を買わなきゃ!」

「は、はいっ!」

光は人差し指を琴子の眉間の先にびしっと指す。
琴子は思わず硬直してしまう。

「まったく、琴子ってナイスバディなの自覚してないの?
 それに琴子ってかなり大人っぽくて色気があるんだよ?
 せっかくだからそれを使わなきゃ」

「………」
(だめね……今度は私が光に説教されてるけど……けど……けど……)

光が両手を腰にあて、仁王立ちしながら琴子に説いている。
琴子は口に出して反論していないものの、心の中ではとまどっている。



「そんな琴子の魅力を十二分に出す水着はどれだろう……え〜と……」


光はカラフルな水着をいくつもみて、琴子にあうものを探している。

「あ、あの光……」
「琴子はいいの!そこで待ってて!」
「は、はぁ……」

琴子は後ろからおそるおそる止めようとしているが光は止めるつもりはまったくない。
すると光がうれしそうな声をあげる。

「あっ!これこれ!これが琴子にぴったりだ!ことこ〜」
「な、なにかしら?」
「いいのが見つかったよ。これ買ったら?」

呼ばれた琴子は光から水着を受け取る。
思わず受け取った琴子はしばらくしてからその水着をみてみる。

「ちょ、ちょっと光!」

琴子は顔を赤くして固まってしまう。
しかし光はそんなことはまったく気にせず、もう一度びしっと右手の人差し指で琴子の顔を指す。


「琴子!そのぐらい大胆でないと彼も喜ばないよ!」
「は、はぁ……」
「ほら!気が変わらないうちに早く!」
「は、はい……」


琴子は光の気迫に押されてその水着を買ってしまった。



「はあ……こんな水着着たことないのに……」
「大丈夫だよ。琴子なら似合うと思うよ……」

右手で買った水着の袋を持ち、顔を赤くした琴子が戻ってきた。
光はいつもの笑顔で迎えていた。

「さて、私たちのは買ったし、恵のを探すか!琴子も手伝ってよ」
「いいわよ。恵ちゃんに合うかわいいのを探しましょう」
「うん!よ〜し、がんばるぞぉ!」

自分たちの水着のごたごたはすっかり忘れて、恵にあう水着のことで頭がいっぱいになっている二人。
二人は隣にある子供用水着コーナーに入っていった。



でる客がいれば入ってくる客もいる。

「ねぇ?美帆ぴょんはどうして来ないの?」
「う〜ん、『もう買ったから……』とか言ってたけど」
「へぇ〜、やっぱり彼氏がいるとそうなのかなぁ?」
「でも姉さんはどんな水着を買ったんだろう?いつもみたいにシンプルなのかなぁ?」
「でも、そういうのが美帆ぴょんらしいと思うけど」
「まあ、そういうところを坂城さんも惚れたんたろうけど」

美幸と真帆が水着売り場にやってきた。
本当は美帆も誘ったのだが、やんわりと断られたため、二人でやってきている。



二人は気になった水着を手に取りながらいろいろと言い合っている。

「ねぇ、これってかなり大胆じゃない?こんなの着る人っているの」
「真帆ぴょんなら着られない?」
「ちょっとぉ!こんなの無理だって!」


「美幸ちゃん。これってかなりカラフルだよね」
「そうそう。今年の流行色を使ってるよね〜、へぇ〜いいなあ〜」
「気に入ったの?」
「う〜ん、もうちょっとみてみる」


「真帆ぴょん。こんなシンプルなデザインなんかどう?」
「で、でも布地が小さくない?」
「え〜?これがふつうだよ?真帆ぴょんったら恥ずかしがり屋なんだから」
「そ、そんなつもりはないけど……」
「シンプルなのも流行ってるからこれにしたら?」
「色は好きなんだよね……候補にしておくね……」


「結構おしゃれ。美幸ちゃん。こういうの好みじゃない?」
「うん!こういうの探してたんだ!」
「このアクセサリーみたいなのがポイントだよね」
「美幸でもいろいろアレンジできそう……これにしよおっと!」


おしゃれな二人だけあって水着にはうるさい。
しかし美幸は買うものが決まったようだ。

「ところで真帆ぴょんは決まった?」
「う〜ん、まだ迷ってる……」
「美幸はこっちを進めるよ。真帆ぴょんらしくて似合うと思うよ」
「そ、そうかな?」
「うん。真帆ぴょんってスタイルいいから、このぐらいで十分引き立つと思うよ」
「美幸ちゃんが言うなら……これにするね」

真帆も買う水着が決まったようだ。
二人で一緒にレジで買うことにする。



にこにこでデパートを出る二人。
いいのが買えて満足のご様子。
しかし、ここで美幸があることに気づいた。

「ねぇ、真帆ぴょん。それ来て誰といくの?」
「あっ……」

せっかく水着を買ってもそれみてくれる彼の存在はない。
しかし、男に見せるだけが水着ではない。

「い、いや。女の子同士でもいいじゃない。せっかくだから一緒に遊びに行かない?」
「い、いいけど、夏休みは合宿もあるからなぁ」
「私も泊まり込みのバイトを入れてるから、夏休みの終わり頃なんてどう?」
「それなら空いてる!じゃあ、それぞれ友達誘っていこうよ!」
「そうね!そうしましょうか!」

友達と一緒に海に行くのも楽しいもの。
夏休みまでまだ早いが、さっそく遊びに行く予定が立つのは高校生らしいところか。



水着売り場にいるのはたいてい女性。
男性用売り場もあるが女性用に比べれば面積は狭い。
しかし、女性用にも男がいる場合がある。

「ねぇねぇ。これなんかどうかなぁ?」
「夕子。そんなにいっぺんにみられてもわかんないよ」
「好雄。どっちが似合うと思う?」
「両方似合うんだよ!」
「それじゃあ、わからない〜」
「そんなこと言われても困る」

ひとつは、好雄と夕子のようにカップルで彼女の水着を見に来ている人たち。

「じゃあ、こっちだ!」
「わ〜い、じゃああそこのレジで買ってきてね♪」
「………」
「おねがぁ〜い♪」
「はいはい、わかったよ……まったく、毎年俺に買わせやがって」
「いいじゃない。あとでサービスしてあげるから♪」

このように彼氏が彼女に買ってあげるケースも少なくない。



そんな2人の隣で熱心に水着を探している男が一人。

「おい、公人。見つかったか?」
「まだ探しているところだ」
「あのなぁ、詩織ちゃんなんかどれ着ても似合うんじゃないのか?」
「ちょっと!それじゃあ、私では似合わないっていうこと?」
「痛い!耳を引っ張るな!夕子がどうということじゃなくて……」

もうひとつは、公人のように彼女にプレゼントするために選んでいる人たちだ。
なんだかんだ言いながら、夕子の水着を選び終わった2人が公人の後ろで心配そうに?様子をみている。

「しかし公人、誕生日はとっくに過ぎてるのになんでプレゼントするんだ?」
「そんなに詩織ちゃんに着せたい水着があるの?」
「いや、そういう訳じゃないんだけど……」

公人は片っ端から水着をじっくりと見ている。
気に入ったのがあれば、端によけておいて、後でわかるようにしている。

「大体、詩織ちゃんなんか、センスがいいから自分でいいのを選ぶんじゃないの?」
「それが不安なんだよ」
「えっ?どうして、詩織ちゃんの何が不安なんだ?」
「詩織の奴『今年は公人が狂喜乱舞してくれるような水着を着る!』って気合いが入ってたから……」

公人と詩織も、夕子と好雄も恋人としては初めての夏。
女の子としては気合いが入るのは当然かもしれない。



しかし公人としてはそれが不安のようだ。

「いいじゃん。彼氏としては嬉しいっしょ?」
「朝日奈さん。詩織の本性わかるでしょ?あれで水着選んだらどうなる?」
「う〜ん……」
「詩織だと、とんでもない水着を買ってきそうで不安で不安で不安で……」
「例えば?」
「例えば………なの買ったらどうしようかと考えると眠れなくて……」
「うっ……ありえるかも……」
「そ、それは、さすがの俺でも引く……」

好雄と夕子の血の気が少しだけ引いている。
本当に引いているようだ。

しかし、当の公人は平然と水着を探している。

「詩織が俺の事を第一に考えてくれるのは男冥利で嬉しいけど、詩織は暴走する危険があるから。それなら俺が選ぼうと」
「詩織ちゃんには言ってあるの?」
「もちろん。『俺がプレゼントするから待ってろ』って言ってあるから」
「なるほど、ねぇ……」
「そういうこと……あっ、これいいなぁ。結構俺好み……よしこれに決めた!」

話しているうちに、公人は個人的に気に入った水着を見つけた。
詩織にも似合いそうだったのでこれを買うことにしたようだ。
その水着を夕子と好雄もみて品評している。

「露出度、色、デザイン……結構セクシーだけど、どぎつくはないか……」
「詩織ちゃんも気に入ってくれるかもしれないね……公人も結構センスあるじゃん」



「これなら詩織も喜ぶだろうな……じゃあ買ってくるから待っててよ」

公人は急いでレジに向かっていった。
そんな公人の背中を見つめながら好雄がつぶやく。

「しかしアクセル役の詩織を止めるブレーキ役の公人も大変だな……うん、親友として気持ちはよ〜くわかる」
「なによ。私の顔を見ながら。なんか文句あるの?」
「い〜や、な〜んでもありません」

不機嫌そうな夕子の視線を思いきりそらす好雄であった。



こうして水着売り場は毎日大賑わい。

みんなが待っている夏本番。
夏休みまではもう少し。



「あ〜あ、その前にテストがあるんだよなぁ。好雄、こんどカンペ作らない?」
「あのなぁ、夕子。勉強ぐらい真面目にやったらどうだ?」
「楽しないと世の中生きていけないよ。早く夏休みにならないかなぁ〜」
「でも、補修だと夏休みつぶれるぞ」
「………」



待っているだけは駄目なようだ。
To be continued
後書き 兼 言い訳
水着売り場の風景です。
キャラをもっとだせればいいのですが、ごちゃごちゃになるので3組だけにしました。

さて、この話のなかで肝心の水着の描写がありません。
それは各自ご想像ください(こら)

さあて、次はどうしようかな(最近そればっかり)
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