合宿中はとても天気がよい。
夕立で少しだけ振ることはあるが、その程度。
特にお昼は晴天続き。
太陽光線がまぶしく暑いがこれこそが夏。
「あ゛〜ぢぃ〜よぉ〜」
午後過ぎの一番暑い時間の合宿所
公二も合宿所内の見回りで自転車に乗って汗をかきながら、回っている。
学校のジャージズボンと白いTシャツが少しだけ汗でにじんでいる。
たぶんロビーでは光は恵と一緒にお昼寝だろう。
役目は合宿所内の自動販売機の売り切れチェック。
あとはゴミ箱や電話機など設備の異常を確認することもある。
全部をくまなく回っているので、たくさんの人に顔を合わせる。
「ぬしり〜ん!おつかれ〜!」
「あっ……おつかれさま……」
美幸も例外ではない。
太陽の恵み、光の恵
第32部 夏合宿ウィーク 前編 その7
第218話〜濡服誘惑〜
Written by B
テニスコートから少し離れた水飲み場に美幸はいた。
水飲み場は水道設備の建物の隣に設置されている。
そのために日陰があり、涼むのにはちょうどいい。
休憩時間なのだろうか。
美幸はテニスウェアだった、白の上下がとてもまぶしい。
美幸は公二の自転車を見つけると猛ダッシュでやってきた。
そして自転車の前のかごをがっちりとつかむ。
逃げられなくなった公二は仕方なく、自転車から降りる。
そして、水飲み場へと自転車を移動させる。
その間、美幸は公二の横をぴったりとくっついている。
公二は水飲み場につくと、すぐに蛇口を空けて水を飲み始めた。
暑いのでついごくごくのんでしまう。
ちなみにここの水は一度施設内の浄化施設を通っているのでお腹を壊すことはない。
「ぷはぁ!生きかえったぁ!」
「でしょでしょ?」
気分が少しだけ爽快になった、公二の前に回った美幸が嬉しそうな顔で見つめている。
(う〜ん、美幸ちゃんってかわいいけどなぁ……)
確かに美幸は普通に見てかわいい。
かなり髪の毛の量の多い超ロングヘアと、耳を突き抜ける通称超音波ボイスがインパクトありすぎで、注意がそれているのだが、結構美形なのである。
クラスの男子も「普段は全然なんだけど、たまに見るとかわいいんだよなぁ」と言っている。
勉強は出来ないが、性格もいい。
モテる要素は多いが、それを邪魔する要素も多い。
現にクラスの女子も「美幸ちゃん、ショートにしたら?絶対にモテるから!」と勧めている。
しかし美幸は「美幸、これがいいからやめとく〜」と言ってロングヘアのままだ。
その美幸が一番の笑顔を見せるのが公二なのだから、公二はたまったものではない。
(そんなに笑顔で見つめられると邪険に扱えないよ……)
公二にとっては頭が痛い。
しかも、水飲み場どころか周りにも人がいない。
二人っきりだ。
そういうわけで公二は美幸とおしゃべり。
「ところで練習はどうだったの?」
「う、ううっ〜……今日の練習はきつかったよぉ〜」
そういうと美幸は両肩を落とし、疲れた仕草をする。
「でも、かなりテニスがうまくなったんでしょ?」
「う〜ん、びみょ〜」
美幸はテニスラケットを振る仕草をしてみせる。
うまいかよくわからないが、綺麗なフォームをしていると公二は感じた。
「しかし、あついよぉ〜」
「あれ?水飲んでないの?」
「まだ飲んでないよぉ〜」
「だったら飲んだら?」
「そうするぅ〜」
美幸はゆっくりと蛇口の前へと歩く。
そして蛇口を思い切り空けた。
事件がここで起こった。
「きゃぁぁ!」
「うわぁ!」
いきなり水が大噴射したのだ。
2人は突然の出来事でパニック状態。
何をしていいのかすらよくわからない。
「誰か〜、止めてぇ!」
美幸はかなりパニックしている、その間も大量の水を浴びまくっている。
「じゃ、蛇口を止めないと!」
公二も慌てていたが、蛇口が落ちているのを発見。
水道管から外れていたことを直感的に理解した公二はなにか止めるものを探す。
しかし、そんな都合のいいものが外に落ちているわけがない。
「もうしょうがない!」
公二は自分のTシャツを脱ぐ。
上はTシャツだけなので上半身裸になっているが、そんなことは気にしている余裕もない。
そして、何回か折りたたむと、蛇口の外れた水道管にかぶせて水の勢いを止める。
すぐに水道管の下の元栓を探す。
「あった!これだ!」
真下に元栓があったので急いで閉める。
激しく噴射していた水がようやく止まった。
「あ〜、びっくりした……」
水飲み場の周りは水浸し。
とりあえず、ある程度のところで抑えてほっと一息。
公二は水飲み場のコンクリートの土台に座り込む。
「でも、なんかとってもおもしろかったねぇ〜」
一方の美幸はにこにこ顔。
さっきはパニックでおろおろしていたが、終わってしまえば楽しい出来事だったのか、
それとも美幸のポジティブな性格から出る言葉か。
「そ、そうだね……」
「えへへ〜……」
公二に向かってにっこりと笑顔の美幸。
それをみて公二は固まっている。
(す、透けてる……)
美幸はびしょ濡れになっていた。
髪とかなら良いのだが、テニスウェアまでがびっしょりと濡れている。
白いテニスウェアがうっすらと透けてしまっており、水色のブラが透けて見えてしまっていたのだ。
(や、やばい……なんとかしないと)
公二はすぐに立ち上がる。
「美幸ちゃん濡れてるからタオル持ってくる!」
「えっ?」
「そこで待ってて!」
公二は上半身裸のまま、自転車に乗ってどこかに行ってしまった。
「ぬしりん、どこいっちゃったんだろう?」
1人の残された美幸はじっと立ったまま。
美幸はふと、じぶんの体を見てみる。
「あれ?……透けてる……」
ようやく自分の下着が透けてしまっていることに気づいた美幸。
「そうなんだ……見えちゃってたんだ……」
美幸の声のトーンが段々と重くなっている。
そしておもむろに建物の裏へと向かっていった。
「はぁはぁ……ちょうど見つかってよかったよ」
公二がすこしして戻ってきた。
大体育館に設置しているシャワールームに備え付けの大きなタオルを何枚か持ってきたのだ。
戻ってきたのだが、肝心の美幸がいない。
「美幸ちゃ〜ん!どこにいるの?」
「こっちだよ……」
美幸の静かな声が水飲み場の隣の水道設備の建物の裏から聞こえてきた。
建物の裏には用具倉庫の建物があり、どこからも見えにくい場所になっている。
「なんでそんな場所に……」
公二は不思議に思いながらも裏に回る。
そこで公二は驚いた。
(なんで脱いでるんだよ!)
美幸はテニスウェアの上着を脱いでしまっていた。
上着の下はさっき透けた青のブラだけ。
美幸は公二に背中を向けて、脱いだ上着をぞうきんのように絞っていた。
「み、みゆきちゃん?」
「あっ!ぬしりん!」
公二の声に美幸は首だけ振り向く。
するとそのまま公二に向かって猛ダッシュ!
「うわぁ!」
「………」
そして美幸はそのまま公二に抱きついた。
「ちょ、ちょっと……」
「………」
美幸の顔が公二の胸の位置に来ている。
両手は公二の背中に回っている。
公二は上半身裸のままだ。
「ぬしりんの体ってセクシー……」
公二は美幸の突然の事に何も出来ない。
さっきよりもパニックになっているかもしれない。
美幸は下を向いており、髪に隠れていて表情が見えない。
「あのね、これは事故だから……」
美幸が小さな声でつぶやく。
すると抱きついていた両手の力がゆるむ。
そして左手は自分のブラの肩ひもに、右手は背中に回る。
プチッという小さな音。
ストンという何かが落ちる音。
「ぬしりん……」
再び美幸は公二に抱きついた。
(ちょ、ちょ、ちょっと待て!)
気がついた時には公二はさらにパニック状態。
(み、美幸ちゃんの胸が……)
そう、2人はお互い上半身裸の状態で抱き合った状態になっていた。
(な、な、なに考えてるんだよ……)
美幸は強く公二に抱きついている。
表情は全く見えないので、美幸の意図がわからない。
(美幸ちゃんって光と同じぐらいだな。それに光よりも張りがある……って何考えてるんだ!)
ここでようやく公二が我を取り戻した。
公二は持っていた大きいタオルを美幸の肩から背中にそっとかける。
「美幸ちゃん、風邪引くよ」
「えっ?」
「早く部屋に戻って着替えてきなよ」
「………」
「それじゃあ!俺は用事があるから!」
美幸が突然のタオルで驚いている隙に美幸から離れて逃げるようにその場から立ち去った。
(はぁ、理性がやばかった!もっと注意しないと!)
公二は大慌てて仕事に取り組んでさっきのことを忘れることにした。
一方の美幸。
「とうとうやっちゃった……」
両肩から背中にタオルが掛かったまま、その場にへたり込んでいる。
「ぬしりんを誘惑しちゃった……胸当てちゃった……」
先ほどの行動、美幸は本能的に体が動いていた。
考えに考えた行動ではない。
公二への想いが美幸を動かしていた。
そこまでストレートなボディランゲージで、美幸が公二に伝えるメッセージは一つしかない。
「『Hしたい』って言っちゃったようなものだよね……」
美幸はゆっくりと立ち上がるとさっき落としたブラを拾って体に着ける。
そして少しだけ乾いたテニスウェアを着ると美幸も水飲み場からテニスコートへと向かっていった。
「もう美幸じゃとめられない……もう最後まで行くしかない……」
美幸を抑えていたストッパーがまた一つ外れてしまった。
合宿所のほんの片隅で起きた出来事だった。
To be continued
後書き 兼 言い訳
どっ引きですか?
そうだったら、それでこちらは満足です。
ある意味それぐらいのつもりで書いてますから(こら
ええ、美幸ちゃん、エスカレートするばかりです。
ある意味一直線な性格なのかもしれません。
どうなれば止まるのでしょうか。
それは作者にすらあまりよくわかってません(ぉ
さて、次は前半最終話。
今までの流れに関係なくあの人が単発で突然登場します。