第228話目次第230話
午後2時。暑さは頂点に達し、浜辺も人も多くなり、


「それじゃあ、舞佳さんところに行って、かき氷買ってくるよ」

「めぐみもいくぅ〜」

「じゃあ、私がお留守番してるからよろしくね」

「光は何がいいんだ?」

「イチゴ!」

「じゃあ、行ってくるよ。ほら、恵行くよ」

「は〜い!ママ、いってきま〜す!」

「気を付けてね!」


公二は恵を連れて、舞佳と真帆がいる浜茶屋に向かっていった。

太陽の恵み、光の恵

第34部 真帆の浜茶屋奮闘記編 その3

Written by B
公二達が浜茶屋に到着すると、ちょうど店頭では真帆がお客対応していた。


「あっ、主人さん。こんにちは」

「マホおねえちゃん、こんにちは!」

「こんにちは、相変わらず繁盛してるね」

「ええ、おかげさまで。ところでお昼はおいしかった?」

「ああ、恵も光も俺も大満足だったよ」


お昼は公二が一人でこの浜茶屋に買いに来ていた。この店ではテイクアウトもできるからだ。買った焼きそばや焼き鳥は、ビーチパラソルの下で3人でおいしくいただいた。そして、今度はかき氷のテイクアウトを頼もうとしていた。


「今度もテイクアウト?」

「ああ、かき氷のメロンとイチゴとブルーハワイをひとつずつ」

「わかりました!すぐに持ってくるからそこでまってて」


そういうと真帆は店の奥に入っていった。






公二と恵は店の中に入り、品物が来るのを待つために、座る場所を探す。すると見知った顔が、隅で焼きそばに食らいついているのが見えた。


「おおっ、匠!おまえ何やってるんだ?」

「えっ?ああっ、公二!」


隅にいたのは匠だった。タオルをはちまき状にして頭を縛り、白いTシャツにジャージ姿はとてもモテるような格好ではない。


「なんだその格好は?」

「ああ、真帆ちゃんの紹介で、調理手伝いのバイトしてるんだ。さすがに泊まり込みじゃないけど、結構なバイトだよ。今は遅い昼休みだ」

「へぇ、がんばってるんだな。しかし、その格好はすごいなぁ、モテる雰囲気がまったくないぞ」

「余計なお世話だ、俺は美帆ちゃんだけが見てくれればそれでいい」

「ほう、モテ男だった匠が、言うようになったな」

「ああ、もう俺は美帆ちゃん一筋だ」


そういうと匠は焼きそばに集中しだす。公二と恵はその前に座り、かき氷を待つ。






「は〜い!主人くん、おまちどうさま!」

「おまちどうさま!」

「恵、それは言わなくていいんだよ」


真帆ではなく舞佳がかき氷を持ってきた。周りをみると、真帆が他のテーブルの客対応をしているので、代わりに来たのだろうか。


「あははは。元気があっていいねぇ。はい、かき氷3つね。運びやすいように袋に入れておいたわよ」

「ありがとうございます」


かき氷3つが入った袋を公二ではなく恵に渡す舞佳。恵はとてもうれしそうだ。


「溶けないうちに食べるんだよ」

「は〜い!」

「それじゃあ、お金はここにちょうど置いていきますので、さっそく帰ります」

「それがいいわね。ところで、奥さんはどこに?」

「あそこのパラソルに……あれ?」

「どうかしたの?」

「光がたくさんの男に……急いで帰ります!恵、行くぞ」

「は〜い♪」

「じゃあ、気を付けてねぇ〜」


公二は恵を連れて浜茶屋から出て行った。それを見送りながら、舞佳は光の様子をじっと見ていた。


「うわぁ〜、奥さん凄い水着ねぇ、さすがのお姉さんも完敗ね……あの男達はたぶんナンパね。そうなると……うふふ、これは見物ねぇ〜」

「舞佳さん。どうしたんですか?」

「あっ、真帆ちゃん。そうだ!坂城くん呼んできて!あそこでおもしろいものが見られるわよぉ〜♪」

「あそこって?……えっ?あれ?……わ、わかりました……」


一人でにやついている舞佳の様子をうかがっていた真帆は、舞佳の言われるままに匠を呼び出しに店に戻る。真帆がわかっているのは、光がナンパされそうなことだけだ。






「あの、その、え〜と……」


その光はビーチパラソルの下にいたのだが、周りに4人の男性に囲まれてしまった。全身黒く日焼けしており、髪は明るい茶色に染めている。古いサーフボードを持っており、光に見せるように立ててちょっとしたアピールになっている。
光はそんな男性達にじろじろ見られて少し恥ずかしそうにしている。


「ねぇ、一人なの?俺たちと遊ばない?」

「ひ、一人じゃないけど……」

「お友達と一緒?じゃあ、お友達と一緒にどう?」

「いや、まだ、戻ってきそうにないから」

「それだったら、先に一緒に行こうよ?あとで携帯とかで連絡つくでしょ?」

「でも……」

「ほらほら、恥ずかしがらなくても、い「さて、俺の妻に何の用かな?」」

「「「「えっ?」」」」


光が困っているときに、ふと見上げると公二がかき氷が入った袋を持って立っていた。


「あなた!」

「ただいま、何やってるんだよ。ちゃんと断ればいいだろ?」

「だってぇ〜」

「断らないから、つけ込まれるんだよ」

「ごめんなさい」

「「「「………」」」」

「まったく……あれ?どうしたの?俺の妻になんか用事?セールスならお断りだよ」


見ると先程の男性4人が唖然として立ちすくんでいる。普通なら憎まれ口の一つや二つを叩いて立ち去るのだが、まさか人妻とは想像していなかったらしい。
公二に怒られている光の隣に恵がとことこと近寄って一言言う。


「ねぇママ。このひとだれ?」

「「「「!!!」」」」

「あっ、この人達はママと関係ない人たちなの……」

「ふ〜ん」

「「「「………」」」」

「ほらほら、うちの娘が困ってるだろ?さっさと行った行った!」


公二が怒った口調で、男4人を手で追い払う仕草をする。男達は口をあんぐりと開けたまま180度Uターンするとそのまま呆然とした顔でとぼとぼと立ち去った。
残された3人は、さっそくかき氷を食べ始める。あんな男達より、目の前のかき氷だ。


「うわぁ〜、つめた〜い!」

「つめた〜い!」

「本当だ。でも、おいしいよね」

「「うん♪」」


光と恵はうれしそうな顔をしている。公二もそれをみてうれしそうな顔をする。






「くくっ……ねぇ、あれ見た?」

「くくっ……かっこわる〜い」

「くくっ……本当、男の俺からみてもみっともないですよ」


そんな幸せな親子から少し離れた場所の海の家の外。舞佳、真帆、匠の3人は先程の一部始終を遠くからしっかりと見ていた。そして、呆然としたまま立ち去るナンパ男達の姿を見て爆笑しそうなところを必死にこらえているのだ。


「でも、あんな若くて可愛くてセクシー水着着てる女の子が、まさか子持ち人妻だとは想像してないでしょうねぇ」

「だと思いますよ。だって、あの男性達、信じられないって顔してましたから」

「まあ、光ちゃんなら誤解されてもしょうがないけど……うわぁ、かっこわりぃ」


それでもようやく笑いが収まったところで、とても満足した3人はまた仕事に取りかかり始める。気分すっきりの3人はその後の仕事はとてもよかったようだ。






「恵、じゃあトンネルつくろうね」

「は〜い」


暑さの頂点も過ぎたところで、光と恵は砂遊びを始めた。ちなみに、さすがに恥ずかしいのか光はウインドブレーカーを着て砂遊びをしている。公二はそれをパラソルの下からじっと眺めている。
初めての海での砂遊びだけあって、とても元気に砂山の穴を掘る。


「恵、そこはだめでしょ?」

「こっちがいいの!」

「くずれちゃうよ?」

「いいの!」


光がいうのも聞かずに恵はどんどんと穴を掘るが、勢いだけで掘ってもうまくいかない。


ざざぁ〜……


「あっ、崩れちゃった」

「ううっ……うわ〜ん!」

「恵、泣いてもだめでしょ?」

「うわ〜ん!ママがこわしたぁ〜!」

「う〜ん、困ったなぁ……」


光が困ったところに、公二がパラソルからやってきて、恵の横に座る。


「じゃあ、今度はパパも一緒につくろうか?」

「……パパ?」

「こわれないような、おっきな山を作ってトンネルを作ろう、な?」

「……うん!」


恵は泣きやみ、再び砂山作りに取りかかった。うれしそうに砂山を作る恵、それをみて楽しそうに一緒に山を作る公二。それを不思議そうな顔をして見守る光。


「あれ?光、どうしたんだ?一緒に手伝えよ」

「うん……あなた、昔私たちもこんなことなかった?」

「う〜ん、光とはずいぶん砂遊びしたからなぁ……でも、あったと思うよ」

「私もよく覚えてないんだけど……よく泣かされたなぁって」

「……俺、そんなに泣かしてたか?」

「うん!」

「そんな笑顔で言うことはないだろ……ほら、早く手伝えよ」

「は〜い。恵、がんばって大きな山をつくろうね♪」

「は〜い♪」


それからは親子3人で大きな砂山を作り、大きなトンネルを作ることに成功した。恵はとても喜び、公二と光もその喜びようを側で眺めていた、その2人の目は父と母の目だった。






時は過ぎて夕方。


「夕焼けが綺麗だね……」

「そうだな……」


暑さも和らいだが、人はもう少ない。夕焼けの海を見ようとする人たちがまばらに残っているだけだ。恵はさすがに疲れたのか、パラソルの下でタオルを掛けられて寝ている。公二と光はパラソルからでて、海辺近くを歩いている。お互いの腰に手を回し、並んで夕日を見ながら歩いている。


「今日は楽しかったね」

「ああ、楽しかったな」

「恵、大満足だったね」

「幸せそうな寝顔をみればわかるよ」

「大満足な顔だったね」


ぽつりぽつりと語り合う2人。ぱらぱらと人の姿があるが、それぞれが自分たちの世界に入っており、誰も干渉しない。


「あなた、夕焼けの海って見るの久しぶりだね。いつ以来なんだろう?」

「そうだなぁ……小学校入るか入らないかじゃないか?」

「そんなに昔か……もうそんなに時が流れちゃったんだね」

「なんか色々あったけど、振り返るとあっという間なんだよな」

「今を大事にしなくちゃね……」

「ああ……」


2人の言葉が少なくなっていく。
2人の足が止まる。
じっと夕焼けを見つめる2人。
お互いに体を引っ張り合い、見つめ合う格好になる。


「光……」

「あなた……」


もう2人に言葉はいらない。
公二の両腕が光の腰に回り、光の両腕が公二の首の後ろに回る。
2人の瞳が閉じ、吸い寄せられるように唇が重なる。


「んっ……」

「んっ……」


熱い想いを伝えるように唇をじっと重ねていく。
そして、これ以上に近づきたいとばかりに口が開き、舌が絡み合っていく。


「んんっ……んむっ……はむっ……」

「んっ……ちゅっ……んんっ……」


2人の口の隙間から熱い吐息が漏れてくる。2人はさらに密着し強く抱きしめるようになってきている。お互いの体の間には薄い水着しかない。
2人だけの熱い時間が過ぎる。






「あっ〜!パパとママ、またらぶらぶ〜!」

「!!!」

「!!!」


こういうときに止めるのが恵の仕事。目が覚めた恵がパパとママを探したところ、自分を放っておいて相変わらずだったため怒ったのだ。
公二と光は慌ててパラソルまで戻る。恵はおかんむりだ。


「あっ、ごめんなさい……」

「ぶぅ〜」

「い、いや、別に恵を放っておこうとは……」

「ぶぅ〜」


しばらくは恵のご機嫌取りで時間が掛かりそうだ。






そして夜。
民宿での素朴でおいしい夕食をいただき、家族3人で一緒にお風呂に入るともう恵は眠くなって寝てしまった。よほど疲れたのだろう。お腹がいっぱいになり、体が温まったところで、ぐっすると眠ってしまった。


「んんっ……」

「んむっ……」


で、恵のパパとママはと言うと、さっそく夕方の続きに取りかかる。
部屋を暗くし、すべてを脱ぎ捨て、布団の上で重なり合っている。
言っておくが、まだ夜の8時だ。


「ぷはぁ……あなたぁ……今日はどうしたのぉ?夕方からもう激しいじゃない?」

「光だって……なあ、俺がどれだけ我慢してたかわかるか?あんな刺激的な水着見せられて、我慢するのに大変だったんだから」

「なによぉ、そんなにエッチな目でみてたの?」

「光こそ、そう見て欲しかったんだろ?」

「……そうなんだけどね……」

「もう我慢できない。俺は今からケダモノになるぞ。今夜は寝かさないからな」

「実は私も今日はケダモノになりたいなぁって……寝かさないでね♪」

「大歓迎だよ、じゃあさっそく……」

「あぁ〜ん♪」


ここから先は青少年教育上書けません。ただ言えることは、2人とも久しぶりにケダモノになって寝ずに夜を越したようです。
2人にとって朝から夜まで満足な海旅行となったようだ。
To be continued
後書き 兼 言い訳
ほのぼのとさせておいて、いつものとおりの終わり方です(汗

この親子らしい海での様子を書いてみましたがどうでしょうか?

次からは他キャラが続々と海へとやってきます。
その次はあの馬鹿ップルでも。
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