第230話目次第232話
海へは別に恋人や家族だけが行くものではない。同性の友達同士行くのも楽しいものである。そこに新しい恋を見つける必要もない。友達と海で遊ぶだけでもとても楽しいものである。

そんなわけで、海へと遊びにやってきたお友達3人。優紀子と従姉妹の友梨子、その2人に無理矢理ついてきたちとせの3人である。

友達同士でも水着で遊ぶのだが、ちとせと友梨子が優紀子の水着を見てびっくりしている。


「な、なんや、ゆっこ!その水着はどないしたん!?」

「そうだよ、ゆっこ!いったいどうしちゃったの?!」

「えっ?そう?ちょっと思い切ってみただけだよ?」

「ちょっとだけじゃあらへん!去年はピンクのフリフリのロリロリ水着だったやん!」

「同じく!」


優紀子はシンプルなデザインの白のワンピースの水着を着ていたのだ。それに予想外に過剰な反応をする2人に優紀子も戸惑っていた。

太陽の恵み、光の恵

第34部 真帆の浜茶屋奮闘記編 その5

Written by B
浜辺へ歩きながらちとせと友梨子の追求は続く。ちなみに、ちとせはお気に入りのマリンブルーの肩ひものないビキニ。友梨子もお気に入りの青と白のストライプのセパレート水着である。


「白なんて、普通彼氏がおらんと着いへんで。しかも相当なにかないと着れへん」

「そ、そうかな?」

「そうだよ、ゆっこ!白なんて『私をあなた色にして♪』って意味だよ!……ん?まてよ……もしかして!」

「な、なに、友梨ちゃん?ど、どういうことかなぁ〜?」

「ゆっこ!彼氏と何かあったね!」

「そうや!うちもそう思っとったんや!ゆっこ、白状せい!」

「そ、そ、そ、そんなこと……それに、か、かれなんて……」


海岸まで到着したところで、3人はストップ。足下は海がちょっとだけつかるところで、ちとせと友梨子は優紀子を挟むようにして両手を腰にあて仁王立ち。一方、優紀子は動揺した顔が見え見えである。もはやパニック寸前で視線が落ち着かず、目が完全に泳いでいる。しかし2人は気にしない。


「ゆっこ、どこまでいったの?当然キスはしたよね!あっ、もしかしてそれ以上!」

「い、いや!そ、その、あの、え〜と、そのぉ〜」

「なにぃ、どこや!ゆっこの部屋か?ホテルか?」

「その、あ、え、お、あ……」

「あっ、もしかして教室とか体育館倉庫とか!」

「あ、いえ……」

「白状しなさい!」
「白状せい!」



「部室!!」



「「……えっ?」」

「あっ……」

「「………」」


あまりにパニックになっていた優紀子が我に返って両手を抑えたがもう遅い。ちとせと友梨子も勢いで追求していたようで、予想外の答えで我に返り固まっている。しかし、すぐに2人は顔を見合わせて頷くと、優紀子を突き飛ばす。


ボンッ!


「キャッ!」


ザッパーン!


海に尻餅をついた優紀子を、ちとせと友梨子が捕まえて優紀子の顔を浅瀬の海に沈める。沈めて、浮かして、沈めて、浮かして、もう拷問のようにである。しかし、周りから見れば、可愛い女の子3人が海でじゃれ合っているようにしか見えない。


「ゆっこ!いくら何でも早すぎ!」

「そうや、うちに相談せぇへんで、どないことするんや!」

「ぶくぶくぶくぶく……」

「ゆっこ達の仲をもどかしく見ていた私が馬鹿みたいじゃないですか!」

「あぁ〜!ゆっこのはじめてはうちがもらおうと狙っとったのに!」

「ぷはぁ!……ちょっと!2人とも!」

「もう言い逃れはできないよ!後で全部吐いてもらうよ!」

「そうや!隠し事は許さへんで!」

「わかった!わかったから助けて!」


結局、優紀子が降参することになる。






「そうかそうか。うん、よかったよかった。ゆっこがそこまで積極的になって」

「ううっ、秘密にしたかったのにぃ……」

「無理。私はちとせさんを心配させたんだからそのぐらいしないと」

「そうやな。友梨っぺの言う通りや」

「………」


海の家「えるに〜にょ」。ここで3人は早めの昼ご飯を食べている。頼んだのは名物の焼きそばとオレンジジュース。ちなみに「お祝い」ということで優紀子の分はちとせと友梨子が払うことになった。ちなみに、最初ちとせはお店の店員に御赤飯を注文してあっさり断られたことを追記しておく。
優紀子の話はひとまず置いておいて、昼ご飯を食べている3人。色気より食い気である。


「そういえば、さっきの店員のねぇちゃん。えらい胸がでっかかったなぁ。ゆっこの胸もあいつにああ大きくしてもらえるやないか」

「ちとせ、何よそのセクハラ……」

「あ〜あ、でもいいなぁ、私もああいう彼氏欲しいなぁ……」

「そうだよ!友梨ちゃんは部活にいい人いないの?」

「それがいないのよ!先輩のマネージャーは彼氏とラブラブなんだけどね……」

「そうなんだ……じゃあ、できたら当然私に教えてくれるよね?」

「そうやな、それが従姉妹の礼儀っつうやつやな」

「な、なんでそうなるのよ!もうこの話は終わり!」


ちょうどこのときに3人とも食べ終わったため友梨子は無理矢理話を切り上げ、会計に向かってしまった。仕方なしに優紀子とちとせも外に出ることにする。






「あれ?なんやあの人だかり」


3人は波の打ち際で水の掛け合いをしたり、すこし泳いだり、浜辺でおしゃべりをしたりと海を楽しんでいたが、ちとせが遠くの人だかりを見つけた。


「そうだね。なんか受付もやってみたいだよ?」

「なんやろ?見に行ってみるか」


3人は人だかりのところに行ってみると、なにやらコートみたいなところの周りに人が集まっている。みると、若い人たちが2人一組で何組か並んで受付に並んでいる。優紀子達はその近くにある看板を見てみる。


「ねぇゆっこ。ビーチバレー大会の受付やってるみたいだよ」

「あっ、そうみたいだね」

「うわぁ!参加費無料!優勝で賞金20万円!1回戦負けでも商品がでるらしいで!」

「ちとせ。タダで物がもらえるってことじゃないんだから」

「なぁ、だれかうちと一緒にでぇへん?まだ受付中みたいやし、一攫千金や!」

「私は遠慮するよ。だってあまり運動得意じゃないから……それにうまそうな人ばかりだよ?」

「なに言うとんのや。参加する事に意義があるんや!」

「じゃあ、私出ましょうか?結構運動には自信ありますけど」

「おお!友梨っぺ!話がわかるやないか」

「ええ、がんばりましょう!そういうわけでゆっこ、受付よろしく!」

「なんでわたしなのぉ〜?」


こうしてちとせと友梨子でビーチバレー大会に参加することになった。






受付も済ませ、試合に備えるちとせと友梨子。周りにも練習している人たちもいる。そこで3人は見知った顔を見つける。


「あっ、神条さん」

「あっ、八重先輩」

「おっ、ゆっこにちとせじゃないか」

「あら?牧原さん。お久しぶりね」


それは、花桜梨と芹華だった。2人とも参加するらしく、軽い準備運動をしているところだった。芹華は黒のセパレート、花桜梨は少しハイレグぎみの黒のワンピースの水着をびしっと着こなしている。


「なんや、かっこええ水着やないか。今日は友達とか?彼氏とは来いへんのか?」

「ば、馬鹿!あいつとはもう何度も……ああっ!この話はやめやめ!」

「ううん、残念。ところで友梨っぺ、このお友達と話してたけど、知ってる人?」

「ええ、私の学校の先輩で、とても「牧原さん」はい?」

「余計なことは、言わないでね♪」

「は、はい!言いません!何も言いません!」


花桜梨が自分の唇に人差し指を立て、友梨子に向かって軽くウィンクする。友梨子はその裏にある殺気に気づき、直立不動で顔を引きつらせながら返事をする。それを優紀子と芹華が横から見ていた。


「神条さん。あれ、どういうこと?」

「ゆっこ、まあ察してやれ。いろいろあるんだよ」

「ふ〜ん、じゃあ聞かない……」






そして大会が始まった。
参加チームが32チームと多いこともあり、すべて15点1セットマッチ。2面のコートで行われているが、やはり腕に覚えがあるペアも多く、最初はワンサイドになる試合が多かった。

花桜梨と芹華のペアの試合もそんな試合だった。試合中も力のある声がコートを飛び交っていた。


「てやぁ!」

バシン!



「たぁっ!」

バシン!



「たりゃぁ!」

バシン!


これらは全部花桜梨の声である。
バレー経験のある花桜梨がレシーブし、芹華がトスを挙げ、花桜梨がアタックを決めてばかりだった。もちろん芹華がレシーブすることもあるが、その場合は花桜梨がツーアタックをしてしまうため、芹華はトスを挙げることに専念すればよかった。
相手が運動が得意そうな男の大学生のペアだったが一方的な展開。しかし芹華は花桜梨の気迫に戸惑っている様子。


「花桜梨、ここは戦場じゃないんだから。そんなにむきにならなくても……」

「わかってるんだけど、最近自分が抑えられなくて……負けたくないから……」

「気迫が凄すぎるぞ。周りが引いてないか?大丈夫か?」

「気がつくと周りが引いてることはある……」

「………」


とはいえ、花桜梨と芹華は楽々と1回戦を勝ってしまった。かなりの勝ちっぷりに観客からの声援も多かった。


「神条さんがあれだけ戸惑ってるの初めてみた……」

「友梨っぺ。あんたえらい人と知り合いなんやな……」

「あの人は学校でも有名人ですから……」

「モテモテなんか?」

「まあ、そんなところです。ただし女子からなんですけど……」

「………」


近くで観戦していた優紀子、友梨子、ちとせの3人はただ呆れるばかりだった。






結局、花桜梨と芹華のペアは準決勝で負けてしまった。花桜梨は相変わらずだったのだが、芹華が疲れ切ってしまい、相手チームがそれに乗じ、アタックで芹華を狙われたのが敗因だった。


「ごめん、花桜梨。あたしがへばっちまったばかりに……」

「いいわよ、私もフォローできなかったから」

「でも、悔しいな……」

「私もとっても悔しい。でも、とても楽しかった」

「そうか、それならよかった。あたしもとても楽しかったよ」


ベスト4の賞金として5万円をもらった2人はそのまま山分け。特に何か買うとか食べるとかせず、ツーリングのときのガソリン代に充てるつもりらしい。






ところで花桜梨と芹華でベスト4のレベルの大会なのだから、ちとせと友梨子のペアはというと、あっさりと1回戦負けしてしまった。


「しかし、でっかい参加賞やわぁ」

「いいじゃないですか、ちとせさん。公式球なんて普通はもらえないですよ?」


参加賞としてもらったビーチバレーの公式球を持って、ビーチパラソルの下でくつろいでいる3人。


「ちとせ、観客はみんなちとせ達を応援してたね」

「あんなの判官贔屓や。あぁ、恥ずかしかったわ」

「レベルが違いすぎてて、私も恥ずかしかった!もう出ない!」


楽しそうな優紀子を横目に、ちとせと友梨子は出て半分後悔しているみたいだ。
しばらくボールをいじくりながらおしゃべりしていたが、ちとせが大あくび。


「ふぁ〜あ、なんか疲れちゃった。ゆっこ、ちょっと寝てええか?」

「しょうがないなぁ。いいよ、見ててあげるから」

「そうか。じゃあ、遠慮なく」


ちとせは横になったかと思うと、足をのばしている優紀子の左の太ももを枕にしてしまう。


「ちょ、ちょっとちとせ!」

「ええやん。ちょうどええ枕があるんやし」

「うわぁ、ゆっこの太ももって柔らかそう……じゃあ私も」


そういうと友梨子も右の太ももを枕にして横になってしまった。優紀子は慌てるが、動くことができない。一方のちとせと友梨子は気持ちよさそうな顔をしている。


「ああ、いい感じ……」

「そうやろ?これはよく眠れそうやわ」

「あ、あのぉ……」

「………」

「………」

「2人とも勝手に寝るのはいいけど、私が動けないじゃない!」


結局、そのまま2人は寝てしまい、動けなくなった優紀子は2人の寝顔をみて過ごすしかなかった。






「あぁ〜、いろいろあったけど、楽しかったわ」

「私も。お土産もできたしね」

「はぁ〜、私も楽しかったけどつかれたぁ〜」


夕方、着替え終わった3人は、家路につくべくはばたき駅で急行電車を待っていた。ビーチバレーがかさばっているが荷物は最小限にしている3人はあまり疲れた顔を見せない。


「ところで、本当に友梨っぺのとこに泊まってもええんか?」

「もちろんです。大歓迎ですよ」

「友梨ちゃん、ごめんね。突然押しかけちゃったりして……」

「気にしないでよ。夜も楽しくできるから、うれしいですよ」




「そうやな。聞きたいことがたっぷりとあるからな」

「そうですよね」

「ちょ、ちょっと……なんで私のほうを……だ、だめだよ!そんなこと話せるわけないじゃない!」



にやりと笑いながら優紀子をちらちらと見るちとせと友梨子。優紀子はなんとなく気づいてきて、必死に否定する。


「女の子としてはねぇ……気になるじゃない。ねぇ、ちとせさん?」

「そうやな。親友としてたぁ〜っぷり聞かせてほしいな」

「あっ、電車が来た!急いで席を取らないと!」

「こら、ゆっこ!逃げるな!」


ちょうど来た電車に急いで入ることで逃げる優紀子。慌てて追いかける2人。運良く3人とも席に座ることができたのだが、優紀子への追求が終わるわけではなく、目的地までじっくりと追求の場となってしまっていた。
結局夜も今までどおりの展開で、結局優紀子は全部白状してしまうことになるのだった。

それはそれとして、3人にとっては楽しい海での一日だったことには間違いない。
To be continued
後書き 兼 言い訳
ゆっこたんのお話でした。

当初は書く予定はなかったんだけど、前話で書く予定だったビーチバレーを落としたため、書くために彼女を登場させたものです。
いや、彼女も立派なヒロインだし、がんばらせないと……と言う割には相変わらず、お人好しで苦労してますが(汗

まぁ、彼女には彼氏と結ばれたことで許してもらいましょう(こら)

次はGS4人娘の予定です。
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