アルバムの最初のページには1枚だけ。
後ろに薄暗く写っている勉強机や本棚からして公二の部屋らしい。
そしてそこに写っているのは幼い顔立ちの公二と光。
2人は横に並んで立っている。
公二は部屋着のズボンとシャツ。
一方の光はお出かけ用の赤のワンピース。
どう見ても会わない。
2人は手は握っていない。
すこし照れくさそうに並んでたっている。
太陽の恵み、光の恵 外伝
第0集 光と公二の新婚アルバム
その1 婚約した夜
Written by B
「これは?」
「あのね……そのぉ……え〜と……」
琴子の普通の質問に、顔を真っ赤にする光。
写真と今の光の様子からして琴子は簡単に推測できる。
「もしかして、婚約した日?」
「……そうなの……婚約記念で……」
アルバムはテーブルの中央に大きく広げられていた。
琴子はじっくりと写真を見ている。
光は琴子とテーブルを挟んで反対側で顔を真っ赤にしてもじもじしている。
「やっぱりねぇ。どうりで若いかと思った」
「うん。これ、お父さんが取ってくれたんだけど……」
「お父さんって?」
「えっ?お父さんはお父さんだけど」
何でそんなこと聞くの?とでも言いたげに不思議そうな顔をする光。
それをみて、琴子は質問の言葉が足りないことに気づく。
「だから、主人君のお父さんか、光のお父さんのどっちか?ってこと」
「ああ、そういうことね。うん、公二のお父さんだよ」
「そうなんだ」
「そうだよ。このときは大騒ぎだったから、おとんがカメラなんて持つわけないじゃない。あははは」
軽く笑う光。
琴子も首を少し縦に振り、納得した表情を光に見せる。
「ふ〜ん、自分のお父さんは『おとん』って呼んでいるわけね。わかったわ」
「うん。でも、お父さんを『お父さん』って呼ぶのって、最初は結構恥ずかしかったんだよ」
「それはなんとなくわかるわ」
「最初は間違えて『おじさん』って言っちゃって、それはそれで恥ずかしかったり……」
「結構たいへんなんだね……」
「それにしても部屋がちょっと暗いってことは夜?」
「そうだよ」
「主人君の家に泊まったってこと?」
「うん。本当はホテルに泊まる予定だったけど、こうなったから折角の機会だからってことで……」
「まあ当然そうなるわね」
「私の妊娠がわかってからうちは大騒ぎだったから、ようやくみんなほっとしたって感じかな?」
「それってどんな感じ?」
「う〜ん、そうだねぇ……寝る部屋に3人だけになったときかなぁ……」
『ふぅ、ようやく落ち着いたよ』
『本当ね』
『そうやね……』
『しかし、光。これからが大変だぞ』
『うん……』
『がんばりなさいね』
『おおきに……』
『さて、なんか疲れたな……明日も早いから寝るか?』
『そうね、光も疲れたでしょ?寝たら?』
『そうする……』
「……ってな感じで夜11時ぐらいにもう寝ちゃったんだよね」
「そうなの?本当なの?」
「こ、琴子。なんでその信じてないような顔は……」
琴子は確かに信じられないというような驚きの顔で光を見ている。
「いや、当然、公二と光は婚約初夜をそれはそれはアツアツに過ごしたかと思って……」
「琴子!私はそこまでエッチじゃないよ」
「うふふ、冗談よ。でも、せっかくの日を主人君と過ごさなかったのが驚きで……」
「う〜ん……確かにもったいないって思ったけどね。でも、そのときは気が抜けちゃって……」
「確かに、相当気疲れとかもあったんでしょ?」
「そうだね、その前の夜はまったく寝られなかったからね」
「……悩んでたから?」
「うん……」
光は小さく頷いた。
琴子はその顔が少し暗かったように思えた。
だから、すぐに話題を変えた。
「じゃあ、翌朝はどうだったの?」
「うん、朝起きたときはなんか恥ずかしかったなぁ……あのね……」
To be continued
後書き 兼 言い訳
第0集ですが、回想録という感じに進みます。
光が過去を振り返り、それに琴子がつっこむ(違)という形になるかと思います。
今回はスタートということでたいした内容ではないですね。
もしかしたらあとで追加しちゃうかも(こらこら)
でも、このときの光はほっとして疲れがどっと沸いてきたような気がします。
かなりの一大事ですからねぇ。