写真は生まれた恵を光が初めて抱いたときの写真だった。
恵は満面の笑顔。
その笑顔の明るさは今も変わってないと琴子は思った。
そして肝心の光だが、恐る恐るといった感じで恵を抱いている。
さらにカメラに向かって笑顔を見せているのだが、どうみても作っている。
しかも、両頬に水が乾いたあとのような線があることから、
その直前に光が号泣していたことがバレバレ。
幸せいっぱいの表情だが、どこかおかしい写真だった。
太陽の恵み、光の恵 外伝
第0集 光と公二の新婚アルバム
その3 泣きたくなる瞬間
Written by B
琴子は最初のページからアルバムを見ている。
アルバムは結構厚い、写真の数も結構ある。
しかし、最初から丁寧に見ている琴子を見て、光が助け船?をだす。
「ねぇねぇ、これって同じような写真がずっと続くから、すっ飛ばしていいよ」
「えっ?」
「見たい写真があれば言って?すぐに見せてあげるから」
「そう?じゃあ、さっそくリクエストいいかしら?」
「いいよ」
「じゃあ、恵ちゃんと光の一緒の写真ってある?」
この一言で光の顔は一瞬に真っ赤っかになる。
それをみた琴子は「呆れた」と言わんばかりの表情。
「なによ。いきなり赤くなるなんて」
「だってぇ……恥ずかしいから……」
「つべこべ言わずに見せなさい」
「は〜い……」
光は恥ずかしがりながらも、その写真を琴子に見せる。
「これ……」
「ふ〜ん……なるほどね……」
「恵ちゃんを初めて抱いて、感動して泣きじゃくった……ってことかしら、光?」
「……正解で〜す……」
光は力無く答えた。
顔が真っ赤っかなままであることから、そのとき、そうとう恥ずかしかったらしい。
そうなると聞きたくなるのが琴子。
さっそく聞いてみる。
「光、どれだけ泣いちゃったの?」
「琴子、そんなにいじめないでよぉ〜?琴子ならわかるでしょ?」
「ええ、光の気持ちはわかってるつもりよ。だから余計に聞きたいのよ」
「……嫌、って言っても……」
「諦めるつもりはないわよ」
「はぁ……琴子にはかなわないよ……」
完全に諦めた光はそのときの事を話すことにした。
「でも、わかるでしょ?恵を初めて抱いたらなんかこみ上げてくるのがあって……」
『恵だ……恵がうちの目の前に……』
『ああ、俺と光の子供だ……』
『……ううっ……恵……ううっ……』
『きゃっ!きゃっ!』
「恵を抱いたまま、おもいっきり泣いちゃった……」
「周りは驚いたでしょ?」
「おかんもお母さんも公二もびっくり。でも……」
「でも?」
『あらあら。どっちが赤ちゃんかしら?』
『本当ね。でも心から嬉しいから泣いてるんですよ』
『光は本当に泣き虫だな。でも、俺も同じだな。さっき感動して泣きそうになったよ』
「なんて、冷静に私を見ているのよ。なんか悔しくて……」
「うふふ。でも、光が嬉しいことがみんなに伝わったのは事実でしょ?」
「まあ、そうなんだけどね……」
「でも、本当に嬉しかったんでしょ?」
「うん……
色々苦労して、ようやく恵が産めた……
恵を初めて抱いたとき、その苦労が駆けめぐってきて……
なんか、この瞬間のためにずっと苦労したんだって思ったら……」
「光?」
「………」
「どうしたの?」
突然、光の話が止まった。
それに気づいた琴子が聞いてみると、
「ごめん……涙がでちゃった」
「ぷっ……うふふふふふ!」
泣きそうな顔の光をみて琴子は思わず笑ってしまった。
「ことこぉ〜、笑うことないじゃない!」
「だって……光って本当に感動しやすいわね」
「そんなこと言っても……」
琴子が次の写真を見るためには、一通り笑いきるための時間が必要であった。
To be continued
後書き 兼 言い訳
予告通りに時間が飛びました。
やっぱり時系列で書けませんでした(汗
次回はどこに飛ぶかはわかりません(こら