第3話目次第5話

太陽の恵み、光の恵 外伝

第0集 光と公二の新婚アルバム

Written by B
そのページには2枚の写真があった。

両方とも同じ神社の前の写真。

1枚は中央には公二の父が恵を抱いて立っている。
生まれたばかりの恵は白羽二重の内着を着せられており、赤がまぶしい祝い着が掛けられている。
その隣にはよそ行きの服の光に公二の母と光の両親。
公二はいない。
みんな笑顔だが、光だけがほんのちょっと寂しそうにも見える。


もう一枚は公二が恵を抱いており、その隣で光がいる。
こちらの恵も同じ白羽二重の内着を着せられている。
公二は恵を見て笑っており、光はその隣で苦笑いしているようにも見える。



「なにこれ?」
「お宮参りなんだけど……」



琴子は2枚の写真を何度も見る。
そして首をかしげる。

「お宮参り?あの生まれてから1ヶ月ほどでいくあれでしょ?」
「そうそう」
「それがこっちの写真ね。主人君は?」
「公二はこれなかったの?」
「お金がなかったから?」
「それもある……生まれる直前に何度も来てくれてお金がなかったらしいの」
「親の援助は?」
「『父親なんだから自分のお金で行く!』ってもらわないようにしてたの」
「主人くんらしいわね」
「お宮参りも行きたかったけど、お金もないしバイトも入れてたから泣く泣く諦めたみたいなの」



「公二ったら電話でとっても悔しそうだったの覚えてるな…」


『……そういうわけで、ごめん……』
『ええよええよ。しゃあないやん。また次があるに』
『でも、恵にとって最初の行事なのに……』
『恵の行事はこれだけじゃあらへんから。そんなに気にせんでええで』
『ありがとう……』


「主人君、本当に悔しかったのね」
「ほんと、めずらしく私が慰めどおしだったからね」



琴子は光の様子がちょっと変な事に気づいた。
琴子から見て、光が時折苦笑いしているように見えた。
写真の光と同じようにだ。

「ねぇ、光。さっきから変な笑い顔してるけど、何か思い出してるの?」
「えっ?わかっちゃった。いや、この後の公二を思い出して……」
「どういうこと?」


「いやね、お宮参りから1月ぐらいして公二が来たんだけど、いきなり『お宮参りするぞ!』だって」
「えっ?行ったんでしょ?」
「そう行ったんだけど『俺は行ってない!』だって」
「……珍しく頑固ね」
「もうそうなの!私が唖然としている間に恵を連れて行こうとして、慌ててついていったんだから!」
「その結果があの写真?」
「そういうこと」
「お疲れ様」

光は苦笑いしたまま。
相当あのとき振り回されたのだろう。
琴子もそれが想像できたからねぎらいの言葉を掛けたのである。



「でも、なんでそんなにお宮参りに執着してたの?」
「う〜ん、はっきりとは聞いてないけど、恵というより父親として初めての行事にどうしても行きたかったみたいなんだ」
「父親ねぇ」
「あのころ『早く父親らしいことがしたい!』ってしきりに言ってたからね」
「でも、あのとき主人君が行ってもなにもすることないんでしょ?」
「そうなんだよ。恵を抱くのはお父さんって決まってるから公二は何もしないんだけどね」
「でも、その場にいるってことが主人君にとって重要じゃないのかしら」
「そうかもね」




「ところで、光は母親として最初の行事は?」
「そんなの決まってるじゃない!『恵を産むこと』だよ!」
「あっ、そりゃそうね」
To be continued
後書き 兼 言い訳
出産の続きという感じでお宮参りのお話です。
公二くんの頑固っぷりがわかっていただければ嬉しいです。

本当はもうすこし早く仕上げてX'masの様子を書ければよかったんですけど、例のごとくできませんでした。
というわけで次はどうしようかな?
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