目次第1話

太陽の恵み、光の恵 外伝

第1集 不良少女と呼ばれて〜詩織と公人〜

Written by B
夏休みももうすぐというある日の放課後。

「風が気持ち良さそうだなぁ」

きらめき高校の屋上に鞠川奈津江はふらっとやってきた。

「……あれ?」

屋上には女の子が1人だけいた。
腰の上ぐらいまである長い髪をなびかせ、屋上のフェンスによりかかり、校庭をじっと見つめている。

(やっぱり、藤崎さんって美人だから絵になるよねぇ。ホント、外見だけはねぇ)

その女の子の名は藤崎 詩織。
きらめき高校の2年A組所属。
彼女の成績は学年で常にトップ。
運動をやらせれば運動系部活に入っている人といい勝負。
そして吹奏楽部でフルートを吹けばかなりの実力。
そしてとびっきりの美人。

学校で知らぬ人はいないほどの有名人だ。



その詩織が奈津江に気がついてこちらを振り向いた。

「あら、奈津江?」
「詩織、ところで部活はどうしたの?」
「さぼっちゃった」
「はぁっ?また?」
「今日は自主練の日だから。強制じゃないから。毎日出てたら息苦しくて。またっていうけど、出るときは出てるのよ」
「なんだ、自主連なのか、それを早く言えっつうの」
「奈津江こそ部活は」
「今日は体育館の整備でお休み」

奈津江は詩織の左側に立つ。
そして2人並んで校庭を見つめる。

「旦那さんを見てたわけ?」
「うん」

グラウンドではサッカー部が練習していた。
そして詩織の視線は一人のFWに注がれていた。

「まあ、相変わらずだねぇ」
「かっこいいでしょ?だって公人だもん♪」
「はいはい。何度も聞いてて飽きてるわよ」

その男子の名は高見 公人。
詩織と同じクラスであり、さらに言うと幼なじみであり、はっきり言うと恋人である。
彼はきらめき高校サッカー部のエースストライカーとして活躍している。
勉強も詩織同様にトップクラス。
性格の良さもあり、女の子の人気もあるのだが、すでに詩織と恋人同士になっているのは学校では周知の事実。

奈津江も学校内で2人のアツアツな場面を何度も見ている。
ただ、奈津江も意外とアツアツなのだがここでは触れない。



「ところで、もっと近くで見なくていいの?」
「いいの。近くにいると興奮してまともに見られなくなるし、それに屋上が好きだから」
「興奮するって、なんで?」
「今夜のことを考えると……」
「考えるな!そんなこと」
「あら、私エッチなこととは言ってないわよ。やだぁ、奈津江ちゃんのエッチ」
「その後のことは何度も聞いてるからわかるわよ!」

詩織の発言にツッコミまくる奈津江。
しかし、詩織はいたって普通の表情。

「あら?私はそういう女の子よ。こういうことだって出来るんだから♪」

そう言うと、詩織は両手でスカートの前のほうを持ち、それを思いきり胸まで持ち上げた。


ボカッ


それを見た奈津江は詩織の頭をグーパンチ

「いたい!」
「そんなもん見せるな!」
「大丈夫よ。下から見えないわよ」

体は外に向けているので、当然前は全開なので見えてもおかしくないところでも詩織は平気だがさすがに奈津江に殴られてそんなことはできない。

「ほんと、あんたの頭の中が理解できんわ」
「理解できなくていいわよ。最初から私はこんな変態なんだから」
「変態なのは承知よ。ところでどうしてそんなに変になったの?」
「あら、言ってなかったかしら?」
「何も聞いてないわよ」
「そうだっけ……う〜ん、奈津江には知ってもらったほうがいいかな……聞いてくれる?」
「いいけど、聞いちゃっていいの?」
「うん、奈津江のことは聞いてるのに自分は知らないのはフェアじゃないし、それに奈津江ならわかってくれるかなって……」


そういって詩織は昔話を始めた。


それは詩織と公人の長い物語。
詩織がこのきらめき高校で経験したドラマ。


今から語られるのは去年の今頃は不良少女と呼ばれていた詩織の物語。
To be continued
後書き 兼 言い訳
第1集は詩織の恋物語です。
いや、最初は書くつもりはまったくなかったんですよ(汗
そもそも高1で公人とくっつけたのは「こいつらまで恋愛の面倒はみきれない」という理由だから。

でも「じゃあ、どういう経緯で高1にくっついたんだ?」という疑問が当然わき上がり、
そこから話がふくらむふくらむ(汗
結局書くことになっちゃいました(意味ないじゃん

本編でも詩織は何度か登場していますが、台詞の一部がかなり飛んでます。
その理由がこれから語られます。

普通のイメージの詩織とは全然違うので注意してください。

そういうわけで次話は子供の頃の詩織と公人の話から。

(追記)
元々この話の聞き手は真帆にしていましたが、書いて後でどうも違和感があり、聞き手を奈津江に変更してリニューアルしていますが内容はほとんど変わっていません。
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