太陽の恵み、光の恵 外伝
第1集 不良少女と呼ばれて〜詩織と公人〜
その10 伝説を知った訳
Written by B
「そういえば、伝説の樹について、いつ、誰から聞いたの?」
「ここに入ってからよね。友達から聞いたわ」
「それって……うわべだけの?」
「そうよ。あっ、メグからも聞いたわよ」
「でも、それって会話にかな〜り差があるんじゃないの?」
「あら、よくわかったわね。あのときは教室だったわね……」
『ねぇ、藤崎さん。あそこにある樹の伝説って知ってる?』
『えっ?知らないわ。教えて教えて?』
『あのね。お姉さんから聞いたんだけど、
「卒業式の日に伝説の樹の下で女の子から告白されて生まれたカップルは永遠に幸せになれる」
って伝説が昔からあるんだって!』
『ふ〜ん、とても素敵な伝説ね』
『ああ……私もそんな素敵な男性が見つかるかなぁ?』
『大丈夫よ。きっと見つかるわ』
『藤崎さんはどうなの?』
『う〜ん、今のところ見込みはないわねぇ』
「なんか、営業スマイルでの会話ってイメージがしたんだけど……ところで、そのときは本気でそう思ってたの?」
「全然」
「やっぱり。詩織って占いとかそういうのは信用してないんでしょ」
「もちろん」
「それで美樹原からは?」
「メグからは伝説の樹の下で聞いたわ」
『ねぇ、メグ。この樹の話聞いた?』
『うん、昔から知ってる……』
『なんか、古い樹よね……なんか、この石でガリガリと……』
『うわぁ!詩織ちゃんだめぇ!』
「詩織、何しようとして止められたの?」
「近くにあった石で樹にへのへのもへじを書こうかと」
「……それはもう聞かない……それで?」
「顔を真っ青にしてメグが止めるから理由を聞いてみたの」
『なんで止めるの?いいじゃない』
『この樹はだめなんだって!』
『なんで?学校の物だから?』
『それもあるけど……伝説は聞いてるでしょ?なんでそんな話があるか知ってる?』
『そこまでは知らないわ』
『この樹って霊験高らかな樹なんだって。
昔は神木として行事に使われていたって記録が残ってるぐらいの。
伝説もその霊の力のおかげって話があるの』
『ふ〜ん、そうなんだぁ……』
「へぇ、ところで詩織は霊なんて信じてないんでしょ?」
「当然」
「やっぱり、それで話はこれだけなの?」
「ここからが本題なの」
『メグ、何で知ってるの?』
『近所にOBの人がいて、その人に聞いたの……それで……』
『それで?』
『さっきの樹に傷をつける話だけど……あれヤバいの』
『えっ?どうヤバいの?』
『霊があるって言ったでしょ?
それに関連することなの。
これは一部しか知られてないんだけど、
「伝説の樹に悪意を持って傷を付けると伝説の樹に呪われる」
って伝説もあるの』
『の、呪い?』
『うん。霊験高らかな樹なら、そんなのがあってもおかしくないと思うけど……怖いよね、うふふ……』
『メグ?その笑いのほうが怖いんだけど……』
「へぇ、それは初耳だな。ところで美樹原の興味はそっちだったんでしょ?」
「その通り。もう私がメグを抑えるのに必死だったわよ」
『どんな呪いなんでしょう?
血まみれの落ち武者が現れたり……
見たこともないような動物の霊に取り憑かれたり……
毎日、鉄仮面の亡霊の悪夢を見たり。
うわぁ、想像しただけでも怖い……』
「私からすれば、想像しているメグの方が怖いと思うんだけど、どうかしら?」
「納得……」
「あまりに暴走するから、私は呪いのことなんて、すっかり脳内の奥深くに潜り込んじゃった」
「止めるのに必死だったってこと?」
「そうよ。もし覚えていればあんなことにはならなかったから……」
「そうよね……」
「私、霊なんて信じてなかった。でも、実際後で私が呪われたから……信じないわけにはいかないでしょ?あの樹には霊……というよりも神様がいる。今はそう思ってる」
奈津江はそこでは何も言わない。神仏占いまったく信じない詩織が伝説の樹だけは信じているのは百も承知だから。
To be continued
後書き 兼 言い訳
何かある前に重要な事を忘れてました。
伝説の樹についてのことを書かないとまずいですよね。
しかし、これから話の展開が重くなりそうなところをどう軽くするかが今後の課題ですな。
次こそ公人くんとなにかあります。