太陽の恵み、光の恵 外伝
第1集 不良少女と呼ばれて〜詩織と公人〜
その11 ショックだった訳
Written by B
「それで、入学してから優等生生活というわけね」
「そうね。私は中学と同様に吹奏楽部に、公人は中学と同様にサッカー部に」
「ところで、なんで詩織は吹奏楽部なの?」
「えっ?」
「優等生嫌いなのに、あえて優等生っぽい吹奏楽部に?」
「う〜ん、特に意味はないわね。『ど・れ・に・し・よ・う・か・な』って感じで」
「……帰宅部はなかったの?……」
「それはもったいないと思ったから、選択肢にはなかったわね」
「本当はトランペットとかサックスとかしたかったけど、なぜかフルート。な〜んか、前途を示してるようでやだよねぇ」
「それで5月のゴールデンウィークに入る前に」
「そう、公人の短期イギリス留学が始まったんだよね……」
「1ヶ月の語学留学だったよね。でも、藤崎さん。知らなかったの?」
「全然よ!どうも公人の様子がおかしいと思ったのは確かよ。必要以上に私を避けてたし、話しかけようともしなかった」
「えっ?本当に知らなかったの?」
「本当に本当に本当よ!だから、掲示板で公人の留学を知って驚いたわよ」
「それで?」
「わかるでしょ?当然怒ったわよ!完全に頭に来て、すぐに公人を屋上に呼び出したのよ!」
『公人!』
『なんだよ、詩織』
『なんなのよあれ!』
『あれ?……ああ、留学の事か……』
『何で私に言ってくれなかったのよ!』
『いや、正式に決まってから言おうと思ったんだけど……』
『それじゃあ遅いわよ!』
「相談してくれなかったことが、頭に来たわけ?」
「そうよ!留学って大事なことでしょ?それをなんで私に相談してくれないの?だって、私と公人の仲じゃない!撲って撲たれての関係なのよ!それなのに……」
「撲って撲たれては関係ないでしょ。それで理由は聞いたの?」
「当然聞いたわ」
『なんで私に聞いてくれなかったの?』
『それは……』
『はっきり、言ってよ!なんで……ぐすっ……なんでなのよ!』
「涙なんか流して、訴えたのよ。私って演技派よね」
「それ違うような……それで、高見くんは?」
「今でも信じられない……公人があんなことを言うなんて……」
『これだけは……これだけは詩織に相談したくなかったんだ!』
「ショックだった……まさか公人が私を必要としてなかったなんて……」
「………」
「『相談したくなかった』よ!私本当にショックだったのよ!」
「わかる気がするな……」
『ごめん……』
『………』
『だから……ごめん……』
「そういって、公人は屋上から立ち去っちゃった」
「………」
「私はその場で呆然と立ちつくしてた……それだけショックだった」
「さすがの詩織もショックだったのか……」
詩織の言葉から奈津江は詩織のショックの大きさを感じ取っていた。
「それで、公人はそれっきりでイギリスに行っちゃった」
「お見送りは?」
「公人は私に出発の時間も教えてくれなくて、さらにショックだった……そして公人のいない1ヶ月で、私が変わっちゃったのよね……」
To be continued
後書き 兼 言い訳
今回はご期待に添えていないかもしれません。
今までが前振りで、これからが本題に入る、という話です。
公人の台詞の意図は当分書きません。
今後の話に響かないと思っています。
次はいよいよ詩織がキレる……かなぁ?