太陽の恵み、光の恵 外伝
第1集 不良少女と呼ばれて〜詩織と公人〜
その13 血まみれの訳
Written by B
話はいよいよ詩織が豹変するところに入っていく。
(さてと、ここからが本題ね、ここからいろいろあったみたいだからね……)
質問している奈津江も自然と顔が引き締まる。
「それで詩織が言う『血まみれメグ事件』だよね」
「ええ、私が友達のメグを罵倒して、蹴り倒して顔面を蹴って、最後はメグが血まみれになったのよね」
「私も近くで見てたけどびっくりしたよ。だって朝の廊下で乱暴してたんだもん」
生徒が多く通り過ぎる廊下。
詩織が怯えて丸くなっている愛を踏みつけていた。
『きゃぁ!詩織ちゃんやめて!』
『うるさいわよ!このグズ女!』
『痛い痛い痛い!』
『人にまとわりついて、私は迷惑なんだよ!』
どかっ!
周りに人が集まっているが、詩織はそれを無視するかのように愛の脇腹を蹴りつける。
『ううっ……』
『いちいち痛がりやがって!なによネコかぶっちゃって!』
『詩織ちゃんやめて……いつもの詩織ちゃんじゃない……』
『ほらほら!私にあなたは邪魔なのよ!』
どかどかっ!
今度は愛の顔面を蹴りつけた。
『や、め、て……』
『私はこういう私なのよ!ほらほら!』
『『きゃぁぁぁぁぁぁ!』』
廊下には女の子の悲鳴が響き渡った。
「私は見てないから聞いた話だと、詩織がメグの顔面を蹴りつけて、しばらくしてから流血したって話だけどあってる?」
「あってる。それにしても女の子の悲鳴がすごかったわね」
「1時間目はその騒動で授業にならなかったからね」
「気を失った女の子もいたよ。だってメグの顔面血まみれだったから」
「あれ見てどう思った?」
「詩織が遂におかしくなったって思ったな、さすがにあそこまでするとは思わなかったから」
「でも、今までの私じゃないって思われるのはわかるでしょ」
「確かに、つまりそれが目的?」
「そういうこと」
「つまり美樹原と仕組んだお芝居ってこと、どっちが考えたの?」
「全部メグ。私の台詞まで全部メグが考えたの」
「じゃあ、血まみれになった、っていうのは?」
「メグの渾身の演技。ホラーで使われるの血のりを用意して顔面に塗りつけたの」
「やっぱり……」
「でも、メグやりすぎよ。だって顔面血まみれにしちゃったんだもん」
「えっ、そうなの?」
「そうよ。普通顔蹴った場合は額や口が切れるか鼻血でしょ?それなのに顔中なんだからびっくりよ」
「確かに不自然よね……でも、そんなの誰も気にしてないでしょ?」
「そうね。インパクトは大きいから反響は大きかったけどね」
「でも、すぐにこれやろうと思ったの?」
「ううん。さすがに朝早く学校に来させられて、メグから台本渡されてもすぐにうんとは言えなかった」
「なんで?」
「だって、これやったらもう引き返せないのよ?今まで嫌々ながらも築き上げてきたものをすべて壊すことになるのよ。それが嫌だったから今までこうして続けてきたんだから。だからどうなるのか怖くて躊躇していた。そのときね。メグが私を罵倒してくれたの」
「罵倒?」
「うん。それが私の背中を押してくれたの。メグが私のことを思って、あえて私を罵倒してくれたの……」
『詩織ちゃんの意気地なし!そんなんじゃ、いつまでたっても優等生のままよ!
そんな詩織ちゃんなんて一生優等生やってればいいのよ!一生ストレスに潰され続ければいいのよ!
詩織ちゃんのグズ!弱虫!根性無し!悔しかったらやってみてよ!』
嬉しかった……だから私はメグの台本を受けた」
「そうだったんだ……」
「反響が大きくて、夜、メグと私で電話で喜び合ってたわ」
「それで次々と詩織はメグを……」
「そう、『1回じゃ信憑性が薄い』ってメグの提案で、次の日もその次の日も……」
「エスカレートしちゃったんだよね」
「でもやりすぎちゃった……」
To be continued
後書き 兼 言い訳
「血まみれメグ事件」の全貌です。
やっぱりメグが関わっていました。
しかし、メグはやりすぎのような気もしますが、詩織の事を思ってのことなのでしょう。
次回、話が段々暗くなりそうなのでお楽しみ(どこがじゃ!)