太陽の恵み、光の恵 外伝
第1集 不良少女と呼ばれて〜詩織と公人〜
その14 やりすぎた訳
Written by B
「やりすぎちゃったって、どういうこと?」
「メグとの喧嘩は、メグの脚本だったんだけど、一部アドリブを入れるようになっちゃって」
「それで?」
「気合いが入っちゃって、つい言っちゃいけない事いっちゃったのよ」
『いやぁ、止めてぇ!』
『うるさい、このアマぁ!』
廊下では詩織が愛の顔をひっかいていた。
ひっかいた跡からすこし血も流れている。
『あんたは、し、つ、こ、いんだよ!』
『痛い!痛い!痛い!』
涙を流して嫌がる愛を詩織が振り払うようにする。
『いい加減に離れろ!』
『きゃっ!』
どかっ!
詩織は愛を廊下の床に叩きつけた。
そして、床に倒れた愛の頭を思いきり踏みつける。
『あんたなんて絶交よ!今度近づいたらただじゃおかないからね!」
『は、はい!』
詩織の顔は鬼に近く、愛の顔はとても青ざめていた。
「何がいけないの?」
「『近づくなって』言っちゃったの。だって、こう言ったら、学校で一緒になれないじゃない」
「あっ……もう続きができなくなっちゃった、ってこと?」
「そういうこと。興奮しすぎてつい言っちゃった。後で気づいて思いきり後悔したわよ。だって、もう学校で助けてくれる人がいなくなったの」
「そういうことか」
「この騒動で私に近づく人は誰もいなくなって、メグもいなくなると、もうひとりぼっち」
「辛かったんだよね?」
「ええ、もうとっても」
「でも、本当に学校ではひとりぼっちだったの?」
「本当を言うと、何人かいたの」
「へぇ、私以外にも物好きがいたんだ」
「物好き?」
「うん、そのころの詩織に挨拶したら、周りから『奈津江も物好きね』って言われたの」
「う〜ん……それは私も納得ね」
「詩織が納得してどうするのよ……でも、他に誰がいたの?」
詩織が、学校で暴れてから、詩織に近づく人はまったくいなくなってしまった。
教室でも廊下でも、登校から下校までだれも近づかない。
しかし例外はいた。
まずは奈津江当人。
彼女は体育の時にしか一緒になる機会がないが、体育の時はいつも一緒だ。
『詩織、今朝はどうしたの?』
『………』
『ぶすっとしてたら何も始まらないよ?』
『………』
しかし、詩織はまったく返事をしなかった。
ただ、奈津江も自分自身のことで精一杯なところもあり、あまり親身になれる余裕もなかった。
そもそも奈津江が恋愛問題でこの状態の詩織に相談しているぐらいだから。
例えば白雪真帆。
彼女は学年一交友が広いことで有名だが、それは彼女のフレンドリーさで、それは詩織に対しても変わっていなかった。
登校時に一緒になるといつも声を掛けてきた。
『藤崎さん。おはよう!』
『………』
笑顔で真帆は挨拶するが、詩織は無視してしまう。
一番詩織を心配していたのは、同じクラスの好雄とその友達の夕子だった。
好雄は詩織を放課後、体育館裏に呼び出して説得していた。
『おい、詩織ちゃん!いったいどうしたんだよ!あれはどう見てもおかしいぜ!』
『………』
『何かあったのか?俺でよかったら相談するよ』
『詩織ちゃん。あたしに力になれない?』
『………』
『俺達は絶対に秘密は守るから!』
『そうだよ!ねぇ、何か言ってよ!』
しかし、詩織は何も言わずにその場から立ち去ってしまった。
「あの2人は本当に真剣だからねぇ。それに早乙女は高見くんの親友だからねぇ」
「そう、早乙女くんは夕子ちゃんと一緒に何度も私を説得してくれたわ」
「どう思った?」
「本当は……とっても嬉しかった……でも、それに甘えられなかった。巻き込んじゃいけないと思ってたから。
もう私は行くところまで行くしかないと思ってたから。だから無視した……」
「誰も止められなくなっちゃったと……っていうか、自分から突き放している気がするけど」
「そう、メグも電話しづらくなったみたいで、それ以降電話も来なくなって……」
「本格的な暴走の始まりってわけね」
To be continued
後書き 兼 言い訳
ちょっと、形式を変えました。
現在は会話形式、過去は第三者視点のストーリー形式に整理しました。
今までのが混雑でわかりにくいなぁと感じていたものですから。
これまでのは、時間があったらなおしていきます。
さて、次回はいよいよ詩織がグレるかな?