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太陽の恵み、光の恵 外伝

第1集 不良少女と呼ばれて〜詩織と公人〜

Written by B
詩織は突然煙草を吸い出した。

最初は屋上で吸っているのを見回りの先生が発生した。
そのまま職員室に連れられ、怒られたが詩織はむすっとしたまま何も反論なかった。

そして詩織は煙草を止めなかった。

いつの間にか、廊下や教室でも平気で吸うようになった。
先生が何度も指導しても言うことを聞かない。

授業中に聞く度に先生に教室から追い出される。
それでも、立たされた廊下でずっと煙草を吸ったまま。
壁により掛かり、天井に向かって煙草を吹かしていた。

そしていつの間にか誰も注意しなくなった。



「どうして煙草なんて?」
「煙草って学校では不良が吸うものでしょ?」
「……それだけ?」
「それだけよ」
「……まあ、いいや。それで?」
「私が不良になれば、みんな見る目を変えてくれるかな?と思って……」
「それだけ?」
「それだけ。そこから先のことは考えてなかった。ううん、考える余裕もなかったわ」


「でも、いきなり吸えた?」
「全然、最初は部屋で吸う練習してたんだから」
「れ、練習……」
「煙を吐くタイミングがわからなくて、最初はずっとゲホゲホしてたわね」
「まあ、ありそうな話だけどね……」
「でも、練習の成果があって、煙で輪もつくれるようになったわね」
「だから、練習って……」


「学校で吸うのも大変なのよ」
「なにが?」
「火災報知器に関知されないように煙を吐かなくちゃいけないから」
「………」
「見せつけるように吸わなきゃだから、煙の色が見えやすい銘柄を選ぶのも大変だったわね」
「もう、いいわよ……」



詩織の服装も変わっていった。

スカートは地面に付くすれすれの長さになっていた。
スカートのひだの数も異様に多い。
明らかに校則違反の制服。

髪の毛も少しパーマが掛かっていた。
両耳には金色の飾りがちゃらちゃらしたピアスがついている。

濃いめの化粧をしたうえに口紅が妙に赤い。

最初はその容姿に嫌そうな顔を見せながら詩織の横を通り過ぎた人が多数いた。
しかし、今は詩織の姿を見ないようにして横を通り過ぎている。

段々と詩織の存在が学校の中で煙たい存在になっていった。



「ところで、あんな制服どこに売ってたの?」
「コスプレショップ」
「えっ?」
「誰かが売った物だと思うけど『きら高制服』って売ってあったのを思いだして急いで買ったわ」
「どうやってその店を?」
「メグの紹介。中学の時『怖いコスプレがたくさんあるの♪』と言って連れて行ってくれたの」
「………」



「化粧は下手なの?」
「違うわ。わざとやったのよ」
「どうして?」
「綺麗に見せたら不良でもなんでもないでしょ?わざと目立つように下手にやったのよ」
「そうだったんだ。納得」



詩織の豹変は両親を驚かせた。
文字通りの優等生から一変しての不良化。
両親には理由がさっぱりわからない。

両親は何度も説得したり、訳を聞こうとするが詩織は黙って一切答えようとしない。

怒鳴られようとも、撲たれようとも。

詩織はまったく口を開こうとしなかった。
ようやく口にした言葉も。


「お願いだから黙ってて。お母さん達には何もしないから」


と言っただけでまた沈黙してしまっていた。



「どうして黙ってたの?親にも相談できたのに」
「それができれば最初からそうしてたわよ」
「ああ、そうか」
「私、気が付いたら親の前でも優等生の仮面を被ってた。両親もよろこんでくれたから……」
「そうね。喜ぶ親の顔が思い浮かびそうだもん」

「それに小学校の5年生あたりかな……部屋に入れたことないの」
「思春期ならよくある話じゃないの?まあ、詩織はあの部屋だからねぇ」
「実は親も本当の私を知らなかったの。だからといって、今からそれを告白する度胸もなかった。私と両親の関係が壊れるのが怖かった……」

「じゃあ、誰にも相談せず自分で決めて自分で勝手に行動することになってたの?」
「そうなの。親にも相談できず。友達を巻き添えにしたくないから、友達にも相談できず。心の支えでもあった公人は遙か海の向こう。誰にも相談できなかった。だから、あの頃は、とにかく錯乱状態だった。」



「そんな状態が高見くんが帰ってくるまで」
「続いてたことになるわね」
To be continued
後書き 兼 言い訳
さて、詩織がグレはじめました。
まあ、所詮、詩織のやることですから、煙草というところから始めるかなと。
あとは、八方ふさがりなところがかいま見れたら嬉しいな、と。

次回は公人くんが帰ってくる予定です。
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