太陽の恵み、光の恵 外伝
第1集 不良少女と呼ばれて〜詩織と公人〜
その17 それでも寄ってきた訳
Written by B
詩織は公人を突き放した。
公人の胸に飛び込みたくなる心を必死に抑えての行動だった。
しかし、それでも公人は詩織の側に寄ってきた。
そしてまた事件は起きた。
それは昼休みが終わって最初の授業。
詩織は初めて授業をさぼった。
それまでは話は聞いてないものの出席だけはしていた。
しかし、別に大騒ぎになることはなかった。
クラスメイトのほとんどが「やっぱり」という反応でしかなかった。
その詩織は屋上にいた。
「ぷはぁ〜……はぁ……」
タバコの煙を思い切り吹かせた後にため息一つ。
階段への建物のコンクリートがむき出しの壁に背中を預け、どっかりと座っている。
そこに扉が開く音が聞こえてきた。
詩織はまったく気にせずにタバコを吸い続けた。
「やっぱりここか」
「………」
公人だった。
公人は詩織がびっくりして固まっているのを尻目に詩織の右にくっつくように座った。
「な、なんで……さぼってるのよ!」
「詩織を探しに来ただけだ」
「連れて行くの?」
「別に」
「えっ……」
詩織が強がっているが、公人は淡々と答える。
そして、公人の右手が詩織の右手にのびていく。
「よこせ」
「あっ……」
公人は詩織が右手に持っていたタバコの箱と百円ライターを奪い取った。
「タバコを屋上から投げ捨てたとか踏み消したとか?」
「まったく逆よ」
「逆?」
「公人、タバコ吸い出したのよ」
「ええ!」
公人がタバコの箱から1本取り出す。
そして、それを口にくわえた。
ここで、ようやく公人の意図が詩織にわかった。
「公人!」
「………」
「嘘……」
詩織が叫ぶのを無視して、公人はタバコを手で覆い風を避けると、百円ライターでタバコに火をつける。
そしてタバコを吸い始めた。
「ぷは……げほっ!げほっ!げほっ!」
「公人!無理しなくていいから!」
しかし公人は突然むせてしまった。
詩織は慌てて公人の背中をさすった
「げほっ……うるさい。俺が吸いたいから吸っただけだ。詩織には関係ない……」
「………」
詩織が呆然としている間に、むせて落としてしまったタバコを踏み消すと、新たにタバコを取り出し、火をつけた。
そしてまた吸い始めた。
「ぷは〜……げほっ……」
「………」
タバコをむせながらも吸っている公人をじっと見ていた詩織は突然立ち上がった。
「どうした?」
「教室に帰る……」
「じゃあ、俺も行く……」
こうして詩織は屋上から降りて、授業真っ最中に教室に堂々と戻っていくのであった。
「一件落着……なの?」
「全然、授業の後、大騒ぎだったわよ」
「どうして?あのとき、詩織は無視された存在でしょ?」
「そういうわけではなく、公人がヤニ臭かったのが問題だったのよ」
「えっ、えっ?……ああっ、そうか!」
「そうなの。優等生だった公人がタバコを吸っていたってことだから」
「なるほど……それで公人くんの周りは?」
「早乙女くんがその話題にふれさせないように振る舞ってたように見えたけど、実際はよくわからない」
「そうだったんだ。それで?」
「それが……『私が公人にタバコを無理矢理吸わせた』って噂が広まったのは知ってるでしょ?」
「そんなのがあったような……」
「私も公人も何も言わなかったから、すぐに噂は収まっちゃたけど、先生たちの私に対する印象がさらに悪くなったのは確かね」
「でも何で高見くんはタバコなんか突然吸い出したの?」
「後で聞いても『吸いたかっただけ』とか言うっきりで、本当のところはよくわからないの……」
「ふ〜ん。それで詩織さんはそれからどうしたの?」
「またさぼってタバコを吸ったら、また公人が来て吸い出す。って思ったらさぼれなくなっちゃった……だって、公人を巻き添えにしたくない、ってことで頭がいっぱいだったから。
「それが目的じゃないの?」
「そうかもしれないわね。でもそれからが大変だったわよ。私と公人の間の十日間戦争って感じで……」
To be continued
後書き 兼 言い訳
徹底的に詩織につきあうのかもしれません。
それを嫌がる詩織。
さて、次回は詩織と公人がぶつかるところが書きたいな。