第17話目次第19話

太陽の恵み、光の恵 外伝

第1集 不良少女と呼ばれて〜詩織と公人〜

Written by B
詩織は公人から離れようとした。
いや、公人が自分から離れてもらいたかった。巻き添えにしたくなかった。
しかし、公人は詩織に近づいてきた。


ある日のこと。
詩織が廊下でタバコを吸っていた。
そこに公人がやってきた。

「なんだよ。タバコはやめろって」
「私の勝手じゃない……」
「消せ」
「嫌よ」
「だったら、無理にでも消してやる」
「やれるもんならやってみなさいよ」

詩織はそう言ってその場から立ち去ろうとした。
しかし、公人が詩織の右腕をつかんだ。
そして自分の前に引っ張り込む。

「なにすんだよ!」
「さっき言ったことをやるだけだ」
「えっ?」

公人は詩織のタバコを取り上げる。

「うっ…」
「!!!」

そしてそれを自分の手の平に押しつけた。
公人は少し熱そうな顔をし、詩織は驚きで口がふさがらない



「それって、自分でヤキ入れちゃったってこと?」
「そうなの。もうびっくりで何も言えなかった」
「それからどうなったの?」
「その時は何もないんだけど、少なくとも公人の前でタバコが吸えなくなっちゃった」



ある日のこと。
詩織は部屋に閉じこもっていた。

「やだ!今日は行きたくない!」

詩織が登校拒否をしようとしていた。
扉には鍵を掛けている。
パジャマ姿でベッドの上で体育座りで固まっている。

母親の説得も無視していた。

しかし、突然階下から足音がどかどかと聞こえてきた。
そしてその足音は階段をあがり、自分の部屋の前でとまった。


バタン!


「な、公人……」

そこには公人が立っていた。
どうやら、公人が扉を蹴って無理矢理扉をこじ開けたらしい。


「詩織、学校に行け」
「………」
「嫌なら無理にでも連れて行く」


公人は詩織に近づき腕をつかむと無理矢理立たせた。


「触らないで!」


キュッ!


詩織は公人の顔を引っ掻いた。
公人の頬にひっかき傷が三本つく。血がすこしにじんでいる。
しかし公人は腕を放さない。それどころかそのまま部屋から連れ出そうとした。
これには詩織も慌てた。


「わかったわよ!行くわよ!だから着替えるから出て行って!」
「わかった。着替え終わったら言えよ」
「………」
「着替え終わるまで、俺は部屋の前で待ってるからな」


そういって公人は部屋を出て行った。



「結局、学校に一緒に来たってこと?」
「そう。ずっと私の腕をつかんで学校に来たわ」
「でも、それからでしょ?詩織が高見くんと一緒に学校に来るようになったの」
「正確には公人に連れてこさせられたの」
「なるほどね」
「あのとき公人は『首輪をつけさせてでも連れて行く』って言ったのよ」
「うわぁ……」
「あのときは『なに馬鹿な事を言ってるの!』と思ったわ。でも、今なら喜んで首輪つけられちゃう♪」
「………」



ある日の深夜

「………」

詩織は夜の町を制服姿で歩いていた。
どこかに寄るわけでもなく。
誰かに声を掛けるわけでもなく。

気に入らないガキを蹴り上げたり、落ちていた空き缶を近くの酔っぱらいに投げつけたり。
そんな程度の事をしていた。

「詩織!」

そんな詩織の前に突然現れた一人の男性。
公人だった。

「何やってるのよ!」
「詩織を捜しにきた……はぁ、はぁ……」

公人は息をぜいぜい吐いて立っていた。

「捜しに来たって……深夜の1時よ!」
「だから連れて来たんだ……はぁ、はぁ……」
「………」
「ま、待て!」

公人はゆっくりと近寄ってきた。
すぐに詩織は公人に背中を向けて逃げだした。

曲がり角があるたびに曲がって追っ手から逃れようとする。
しかし、公人も懸命に追いかける。


そして、駅前のデパートの裏口の前で公人は詩織に追いついた。
公人は後ろから詩織に抱きついた。

「お、追いついた……」
「は、離せ!」
「ぜ、絶対に離さない……はぁ、はぁ……」
「ううっ……」
「3時間かかったよ……」
「えっ……」
「疲れた……ちょっとこのままにさせてくれ……」

詩織は逃げることができずにそのまま立っていた。



「3時間!」
「まあ、全部じゃないけど、半分ぐらいは走り回って私を捜してたんだって」
「どうして、そんなことを」
「自分が心配になったからだって。私の両親に言われもしないのに捜しにいったみたい」
「その次の日、高見くん。大丈夫だったの?」
「さすがの公人も筋肉痛で部活休んだみたいね」
「詩織は?」
「夜遅くまで外に遊びに行けなくなっちゃった。また同じ事になりそうで……」



「ねぇ、結局、だんだんと高見くんに更正されてない?」
「そうなの、だんだん何もできなくなる……怖かったの……また元に戻されるんじゃないかって……」
「確かに……」
「それに、知ってるでしょ?私にべったりだったから、公人の評判が地に墜ちちゃって……先生たちにも問題児扱いされて……」
「そうだったよね」
「もう絶対に公人を私から離さないと公人がダメになる……でも、私が逃げても公人は追いかけてくる」
「確かにそんな感じだよね」
「だから、公人が私に近づけない事実を作らないといけない……そればかり考えて思考がおかしくなっちゃった」
「おかしくなった?」
To be continued
後書き 兼 言い訳
ぶつかりあう詩織と公人です。
公人が体を張って詩織を更正させているところがわかるでしょうか?

さて、次回はいよいよ大事件が発生します。
ある意味18禁レベルになるかと。
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