太陽の恵み、光の恵 外伝
第1集 不良少女と呼ばれて〜詩織と公人〜
その26 生還した訳
Written by B
公人が入院してから1週間後の朝。
いつもは寝ずに看病していた詩織が床にそのまま眠っていた。
「……はっ!!!」
詩織が突然がばっと起きた。
詩織は周りをきょろきょろと見渡す。
「……あれ?」
別に病室は何も変わっていない。
そして自分の格好を見る。
当然汚れた制服に何も変化ない。
「そうだ……公人!」
詩織は立ち上がり、公人の顔を見る。
「あれ?」
公人の顔を見て詩織はビックリした。
あれほど熱さで真っ赤だった公人の顔が普通の顔色になっていた。
「うそ……」
詩織は震える右手で公人の額に当ててみる。
少しだけ熱があるが、平熱の熱さだ。
「な、お、って、る……」
詩織の全身が震えている。
震える左手で自分の頬を強くつねってみる。
右手で自分の頬を強く叩いてみる。
「ゆ、ゆめじゃない……」
詩織の膝ががくっと崩れる。
そして倒れるように眠っている公人に抱きつく。
「公人!公人!公人!」
詩織は抱きつきながら公人の体を揺さぶった。
「……ん?」
公人がそれにより、ようやく目を覚ます。
「……あれ?……詩織?」
公人は抱きついている詩織に驚いた顔をする。
「公人!治ってるの!治ってるの!公人!公人!……」
詩織は泣きじゃくっていた。
それに驚きながらも、公人は右手で自分の額に手を当ててみる。
「本当だ!治ってる!やったぁ!」
「公人、公人、公人……」
治ったことに気づいた公人は嬉しそうな顔を見せる。
それをみた詩織は公人に抱きついたまま。
「詩織のおかげだよ、ありがとう」
「公人、ごめんね、ごめんね、ごめんね……」
「言っただろ?俺は死なないって。詩織の愛を受け止めて見せるって」
「………」
「詩織、もう大丈夫だから……もう過ぎたことだよ」
公人の名前を何度も言って離さない詩織に公人は困った顔を見せながらも軽く抱き返す。
看護婦が中の様子に気づいて部屋に飛び込んできたのはそれから1分もかからなかった。
熱が下がったが公人はすぐに退院しなかった。
42度近くの高熱が1週間も続いていたこともあり、体に悪影響を与えてないか検査を行っていたのだ。
「公人の熱病の原因ってわかったの?」
「結局、原因不明のまま退院しちゃった。実は病院でもお手上げだったみたい」
「じゃあ、やっぱり……」
「間違いないね」
熱が下がったが公人はすぐに退院しなかった。
42度近くの高熱が1週間も続いていたこともあり、体に悪影響を与えてないか検査を行っていたのだ。
「検査の結果は?」
「……な、なんにもなかったみたい……」
「ふ〜ん、それならよかったね」
「あ、ありがとう……」
結局、公人が治った後も詩織は病室に居座り続け、退院まで居続けた。
公人が倒れてから10日後。
公人はようやく退院した。
10日も寝たきりだったため、体力が激減している公人を詩織が寄り添って支えながら、病院のロビーを出た。
天気のいい午後のことだった。
「生きて……出られたんだよな」
「そうね……」
「日差しが気持ちいいな」
「うん……」
公人の親の車に2人は乗り込み、10日ぶりの家路へと向かった。
家へ向かう間、2人は後部座席で外を黙って眺めていた。
流れる風景に、2人は感慨深げな様子。
2人の手はぎゅっと握られていた。
そのうちに、ようやく2人も普段の2人に戻っていく。
「さて、家に帰ったら何するかな?」
「う〜ん、私はお風呂に入りたいな」
「あははは、俺もだな。10日も入ってないんだから」
「私も……もう汗だらだらで、制服もヘロヘロよ、見てよ!」
「本当だ!ひっどい格好だな」
「もう!正直に言うことないじゃない!」
詩織は少しふてくされてぷいっと公人と反対方向に顔を背ける。
でもすぐにそのままくすりとほほえんでしまう。
公人もそれを見て、くすりと笑った。
「詩織」
「何よ」
「今の詩織……今まで見てきた中で一番いい表情をしてる」
「えっ?」
「ひどい顔だし、ひどい格好だし、髪の毛もぐちゃぐちゃ……だけど、いい笑顔してる」
「………」
「俺がずっと見たかった笑顔……ようやく見ることができた……」
「………」
詩織はゆっくりと公人の胸に飛び込む。
公人はそれを優しく受け止める。
横向きに抱き合う格好の2人。
「元の私に戻るね……」
「ああ、それがいいよ……」
「私のこと、見守ってね……」
「誰がなんと言おうと、俺は詩織の味方だから……」
こうして、詩織の反乱劇は静かに幕を閉じた。
To be continued
後書き 兼 言い訳
闘病の結末ですが、たいした内容ではなかったですね(汗
次は、その後の2人の話ですね。
後、2〜3話ぐらいで終わりですね。