太陽の恵み、光の恵 外伝
第1集 不良少女と呼ばれて〜詩織と公人〜
その28 許され結ばれた訳
Written by B
そして卒業式の日。
冬から春へ暖かくなるころ、空は晴れており、卒業式には絶好の天気。
卒業式が滞りなく終わり、生徒達が教室に戻ってきて雑談している頃。
公人と詩織は伝説の樹の下にいた。
周りには誰もいない。
2人とも神妙な面持ちで樹の下に立っている。
「詩織、いいな?」
「ええ……」
公人がゆっくりと前に進み、樹の前に跪く。
「神様……お願いがあります。
詩織を許して頂けないでしょうか?
詩織はああいう人ですが本当は純粋なんです。
小さな事でも怒り、喜び、悲しみ、笑う人なんです。
デリケートで傷つきやすいんです。
詩織はずっと自分を見失ってさまよっていたんです。
今の詩織はそんなことはもうありません。
自分を取り戻しており、悩むことはもうありません。
傷のことは反省してます。
この日まで、俺と詩織はその反省の気持ちを態度で示してきたつもりです。
詩織は俺が全身全霊を掛けて守ります。
一生、詩織と添い遂げることを誓います。
だから……詩織を……お願いします……」
そして詩織が公人の右側に歩み寄り、跪く。
「神様……今までのご無礼申し訳ございませんでした。
あれから十分反省しました。
ただ、私には貝になるしか反省を示す方法が思いつきませんでした。
これだけは言えます。
もう自分は見失いません。
周りを傷つけることもしません。
だからお願いです。
許して欲しいとは言えません。
ただ……一生、公人を愛し続けることをお許しください」
すると伝説の樹が動いた。
「「えっ?」」
詩織と公人は目を疑った。
樹の葉と葉の隙間から太陽光線が一斉に輝き出す。
風はまったく吹いていないのに、かさかさと優しい音を立てる。
その動きはすべて2人に向けられているものと直感した。
「な、なぁ……もしかして……」
「本当に許してくれるの……?」
その瞬間、伝説の樹は再び光った。
もう間違いはなかった。
「許してくれた……」
「嬉しい……」
2人は体を起こし、立ち膝の状態で向かいあう。
もう2人とも泣いていた。
そしてゆっくりと抱きしめ合う。
「詩織……よかったな……」
「公人……嬉しい……」
「ねぇ、本当に伝説の樹が動いたの?」
「本当よ!あの日、風がほとんどなかったし、太陽もカンカン照りじゃなかったから」
「じゃあ、本当なんだね……ちょっと信じられないけど」
「公人と同時に直感できたのも、確信が持てる理由の一つなのよね」
しばらく抱きしめ合っていた2人。
少しだけ体を離す。
「詩織、改めて言うよ、俺は詩「待って!」」
「えっ?」
「せっかく卒業式の日に伝説の樹の前にいるんだから……私から言わせて?」
詩織がにっこりとほほえむ。
公人は最初意味がわからなったが、公人は詩織の意図に気付く。
「詩織、こういう伝説とかってたぐいは信じないんじゃなかったの?」
「もちろん信じないわよ!……でも伝説の樹だけは別♪」
「……わかったよ……」
詩織が立ち膝の状態から立ち上がる。
公人もつられて立ち上がる。
お互いじっと見つめ合う。
「私は世界で誰よりも公人の事を愛してます」
「俺も世界で誰よりも詩織の事を愛してる」
そして再びゆっくりと抱きしめ合う。
そして重なる唇。
2人にとって永遠の時間が流れていた。
「これが、全生徒に丸見えだったのよねぇ〜」
「そうみたいね。でも私たちはそんなのまったく気にしてなかったわ」
「でも、教室では大騒ぎだったのよ」
「なにが?」
「だって、伝説の樹のカップルが誕生したと思ったら、問題のあなたたちだったでしょ?みんなびっくりよ。それに片方はあの学校で人気絶頂の高見くんだから、大騒ぎ。『どうしてあんな女なの!』って叫んでた人もいたんだよ」
「ふ〜ん、でも私には関係ないわね」
「ま、まあそうだけど……ところで、その後はどうしたの?」
「決まってるでしょ!心の結びつきの後は、体の結びつきよ!」
「………」
その夜。
月の光が綺麗に輝く夜。
2人は詩織の部屋にいた。
「詩織……」
「公人……」
2人がお互いを傷つけあったその場所で、生まれたままの姿で抱き合い、今度は愛を確かめ合っていた。
「一生離さないからな……」
「うん、私も一緒に死ぬ日まで愛し続けるから……」
2人は日付も変わり、日が明るくなるまで揺るぎない愛を確かめ合っていた。
紆余曲折だったが、詩織と公人はようやく結ばれた。
悩み抜き、傷つけあった分、2人の絆は一生切れることがないぐらい固いものになっていた。
2人はようやく一緒に人生を歩み出したのだ。
「本当の初体験ってこと?」
「うん、でもみっともない初体験だったわ」
「えっ?」
「後で見たんだけど、人様に見せられるようなものじゃなかったわ。
だって、私も公人も大泣きしながらセックスしてたのよ。
いろいろあったからね……感動して泣いちゃってた。
『詩織、詩織……』『公人、公人……』ってお互いの名前を言いながら大泣き。
でも下半身は本能のままに激しく動いてた。
『上は洪水、下は大火事』っていう表現はまさにこういうことをいうのよね」
「………」
絶句する奈津江。
「なんで黙ってるの?」
「どこから突っ込んでいいのやら……」
To be continued
後書き 兼 言い訳
終盤、詩織がとんでもないことを言ってますが、ようやく一件落着ですね。
さて、2人が結ばれたところで、一応話は終わりです。
次回はエピローグってことになります。