太陽の恵み、光の恵 外伝
第1集 不良少女と呼ばれて〜詩織と公人〜
その29 エピローグ
Written by B
倒れていた詩織も体調が元に戻り、保健室から出た2人。
もうすっかり日も暮れてきた。
「奈津江、どうする?もうちょっと話があるけど」
「う〜ん、ファミレスでどう?」
「私の部屋は?」
「結構です!」
そういうわけで奈津江と詩織はファミレスに移動した。
ファミレスで2人ともコーヒーを頼んでおしゃべりが続く。
「そういえば2年になってから詩織もようやくクラスにとけ込んだよね」
「そうね、ああいう扱いされちゃったから、友達になるつもりはないけど、クラスで話をしたりするようになったわ」
「どんな話をするの?」
「色々。流行の話は嫌いだからしないし、まあ当たり障りのない話ぐらい」
「それって最初の時と変わってないんじゃないの?」
「そうかも。でも、無意識にやってたのと作って優等生キャラにしているのでは違うわよ。それに自分でも意識しているは分かっているし」
「でも私と話をしているときは優等生もへったくれもないじゃない」
「それは奈津江が私を優等生扱いしてくれないからじゃない」
「まあ、そうとも言うわね、あはははは」
「ところで部活はまじめに出てるんでしょうね?」
「もちろんよ」
「特例で吹奏楽部に戻してもらえたんだから、練習ぐらいまじめに出なさいよ」
「本当、公人があちこちに頭を下げてくれたから感謝しないと」
「詩織も一緒に頭を下げたんでしょ?」
「公人と一緒に何人に頭を下げたかわからないわ。同級生にも頭を下げたんだから」
「高見君とはどうなったの?」
「う〜ん、ようやくハードなプレイにも慣れて、夜は楽しいんだけど……」
「……けど?」
「公人ったら、入籍してくれないのよねぇ〜。『18にならないと無理だろ!』って言ってるの」
「そりゃ無理でしょ!」
「戸籍偽造で何とかならない?私は早く『高見詩織』になりたいのに!」
「同じ学年だから絶対にバレる!」
「う〜ん、公人は留年してるってことに……」
「学年トップクラスだから絶対嘘になる!」
「そっかぁ……残念だなぁ……」
詩織はテーブルに思い切りうつぶせになって残念がる。
それを可哀想とおもった奈津江がフォローの一言。
「でも結婚式ぐらいならできない?」
「えっ?」
「ほら、芸能……あっ、詩織は嫌いだったね……よく結婚式が先で入籍が後ってパターンもあるみたいだし」
「へぇ〜」
「どうせ入籍するのは確実なんだし、2人だけで結婚式っていうのもいいと思うけど」
「奈津江ちゃんは?」
「わ、私はたぶん籍だけ入れて、式は落ち着いてからってところかなぁ……」
詩織は起きあがり、腕を組んで考える。
「う〜ん、結婚式は別にしなくていい」
「はぁ?」
「だって、伝説の樹の前で永遠の愛を誓ったのよ?他に誰に愛を誓うのよ?伝説の樹に誓えばもう十分!」
「………」
「だから、披露宴がしたいの!」
「それだったら、すぐにでもできるんじゃ……」
「あっ、そういえばそうね!じゃあ、さっそく準備をしなくちゃ!」
詩織は突然立ち上がり、帰り支度を始める。
「あ、あの……」
「今日は長い話につきあってくれて本当にありがとう!嬉しかったわ!それじゃあ!」
「あっ……」
詩織はそういうとファミレスから飛び出してしまった。
「コーヒー代……」
1人の残された奈津江はそれしか言えなかった。
それから3日後。
「鞠川!」
「ぐへぇ……ぐるじぃ……」
普通に登校してきた鞠川の背後から突然スリーパーホールドが。
これまでの話で散々出てきた朝日奈夕子だ。
「あんたぁ……詩織ちゃんに何言った!」
「ぐへぇ……はなじでぇ……」
夕子は相当のおかんむりの様子。
奈津江は夕子がそれほど怒る理由がわからない。詩織がらみならなおさらだ。
奈津江は夕子から脱出する。
「ちょっと、なにするのよ!」
「それはあたしの台詞よ!」
「だから、詩織がどうしたのよ?」
「あのねぇ……おとといから詩織ちゃんがうるさいのよ!」
『ねぇ、夕子ちゃん』
『なに?』
『いつ早乙女君と入籍するの?』
『はぁ?』
『してないの?してないなら早くしなさいよ!』
『ちょ、ちょっと!確かにあたしは好雄以外に考えてないけど、なんでなの?』
『夕子ちゃんが入籍してくれないと仲人頼めないじゃない!』
『へ?』
「どういうこと?」
「詩織ちゃん。勝手にあたしと好雄を自分たちの仲人に決めちゃってるみたいなのよ」
「はぁ?」
「よくよく聞いてみたら『奈津江が披露宴ならすぐにできるって聞いたから』って言ってたのよ!」
「………」
奈津江は口をあんぐり。
夕子は怒ったまま。
「詩織ちゃん、勝手にあたし達の判子作って婚姻届偽造しようとしてたのよ!」
「はぁ、そんなの知らないわよ!」
「しょうがないから、仲人を引き受ける約束だけして引き下がってもらったけど!」
「けど?」
「まぁ〜ほぉ〜〜〜!どうしてくれるのよぉ〜〜!せっかくのシングルライフがぁ〜〜〜!」
「そんなこと言ったって、知らないわよ。いいじゃない仲人ぐらい」
「だって、『先に結婚しろ』ってことでしょ?」
「そんなの後でもいいでしょ!」
今回の打ち明け話、一番損をしたのは、なぜか夕子であった。
これはこれで詩織と夕子は大親友なのである。
奈津江は思わず詩織らしさに納得してしまうのであった。
(はぁ、詩織は本当に高見くんを愛してるのはわかっているだけど……性格はどうにかならないのかねぇ)
純粋さと奔放さを兼ね備えてしまった詩織の騒動は卒業まで続きそうな予感がした。
Happy End?
後書き 兼 言い訳
なんか、中途半端という感じもしますが、外伝1はこれで終了です。
話が終わる、というよりもこの2人はこれからまだまだ話が続きますからね、こんな感じでもいいのでは、と勝手に1人で納得しています。
いや、この詩織ちゃん、実に書きやすいんですよ。
思考の中心が「公人」なので、行動パターンがすぐに思いつくんですよ。
某所のサッカー企画の日記で暴れてもらってますが、本編でもちょこちょこと出せればいいかな、と思います。
最後まで読んで頂いてありがとうございました。