太陽の恵み、光の恵 外伝
第1集 不良少女と呼ばれて〜詩織と公人〜
その3 キスした訳
Written by B
「詩織、昔から二人ともかなり仲良かったみたいだけど、そこから進展がなかったんでしょ?」
「そうね。でもやっぱり思春期なのかしらね……急に疎遠になっちゃって……」
「やっぱりそうなんだ。まあ私と勝馬も似たようなもんだけど」
「普通はだんだんと疎遠になるんだけど、私たちは急だったから……」
「急?なんか事件とかでもあったの?」
「もう大事件よ……まあ、私が原因なんだけど……」
「またかよ!」
「あれは小5のひな祭りのころだったわね……」
「雛飾りとか飾ってあったの?」
「うん。毎年公人を招待してお祝いなんかしてたんだけど……」
「ひなあられ食べたり、甘酒飲んだり?」
「去年まではそうだったんだけど、そのときはそれじゃ物足りなくて……」
「ん?……えっ?……ってことは」
「甘酒じゃなくて日本酒にしたの」
「やっぱり……」
相変わらずの平然とした詩織に対して、呆れ気味の奈津江。
「わ、私もそのころ正月でお屠蘇とか飲んだことあるけど、へろへろだったわよ」
「うふふ、私もそうだったの……でも、それがまずかったの……」
「どうまずかったの?」
『こらぁ!あたしのしゃけが飲めないっていうのぉ?』
『そ、そんなこと言ってもぉ〜』
『男でしょぉ〜〜?』
『もう飲めないよぉ〜』
「あんた昔からそんなこと言ってたの?」
「ほら、テレビのコントとかでやってたじゃない。それを真似てたと思うわ」
「いや、詩織だったら本気で言ってた気がするわ」
「う〜ん、そうなのかなぁ?」
「で、何杯飲ませたの?」
「公人がコップ3杯で、私が2杯」
「高見くんのほうが多いじゃない」
「私が無理矢理飲ませたの。それでも私は満足しなくて……」
『もう、こうなったら無理にでものませちゃるぅ〜』
『どうやっても、無理だよぉ〜』
『こうするの!……ごくごくごく……』
『し、しおりちゃん……うっ……』
「ど、どうやったの?」
「口移し」
「………」
「無理にでも飲ませようとして、舌で公人の口を開かせて……」
「………」
「公人が舌で防ぐので、私の舌で公人の舌を押しつけて……」
昔を思い出すように穏やかに話す詩織に対して、奈津江は顔を赤くしつつ呆れ顔。
どうやら思いきり想像してしまったらしい。
「ディープキスかよ!」
「結果的ね。でも、ふと我に返ったら、私も公人もいっぺんに酔いが覚めちゃったわよ」
「えっ?」
「一応小5だからね……今のがキスだってことぐらいわかるわよ」
「確かにね……」
「いくらなんでも、そのことの私はディープとかそんなの知らないわよ」
「それでどうなったの?」
「その翌日から、あまり話をしなくなって……」
「キスが恥ずかしくて?」
「そう……私らしくないけど、やっぱり好きな公人とだもん……」
「なるほどね……」
「今、思うと私も乙女らしさがあったんだなぁって、驚きだけどね」
「あたしもびっくりだ」
「これが高見くんとのファーストキスってこと?」
「ううん。今は公人とは『あれはノーカン』ってことにしてるわ」
「ノーカンにならないわよ!」
「うん、そんなこと決めている事自体、あれがファーストキスだって認めてるのと同じことなんだけどね」
「忘れたくても忘れられないわよ、そんな出来事」
「でも、これからなのよねぇ……私たちの歯車が狂いだしたのは……」
To be continued
後書き 兼 言い訳
小さい頃の詩織の話題のラストです。
今回はGB版のひな祭りの思い出をつかってみました。
しかし、さすがもとネタあまり知らないだけに滅茶苦茶(汗
さて、次は中学生の頃に突入します。
うまく2人のすれちがいが書ければなぁ。