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太陽の恵み、光の恵 外伝

第1集 不良少女と呼ばれて〜詩織と公人〜

Written by B
「高見くんとキスしてから、疎遠になったって言ってたけど」
「そうね。なんか気恥ずかしくて、さすがの私もね……」
「そのまま高校まで?」
「ううん、中学の時にまたあってね」
「………」
「ううん、奈津江の考えてることじゃないのよ」
「本当?」

奈津江は詩織の言うことがどうも信用できない。
彼女の基準は他人と違っていることはわかっているから。



「いやね、中学でも公人と同じクラスだったんだけどね」
「ふむふむ」
「入学したときにクラスメイトの女の子の話を聞いちゃったのよ」
「どんな会話?」


『ねぇねぇ、高見くんってどう?結構顔がいい感じだけど』
『でも、頭悪そうだしねぇ……』
『スポーツも得意そうに見えないしねぇ……』
『ほ〜んと、だからあまり興味ないよね』
『顔だけの男ってやだよねぇ〜』


「ひどいね。でもありがちな会話よね」
「ひどいでしょ?」
「そんなに高見くんってよくなかったの?」
「確かに勉強は下の上ぐらいだし、運動もそれほどじゃなかったけど……」
「聞くまでもないと思うけど詩織は?」
「一応学年で1位で、体育も5だった」


「でも詩織はそいつらのことが許せなかったでしょ?」
「ええ、今の私だったら紐緒さんに頼んで裏で制裁してもらうようにしたり、十一夜さんに呪ってもらうように頼んだりしてるわよ」
「今の言葉は聞かなかったことにする……それで、その時は何もしなかったんでしょ」
「うん……それで仲間はずれにされるのが嫌だったから……」
「やっぱりそうよね……」


とは言いつつ、さすがの詩織でも周りの目というのを気にしていたということに奈津江は内心びっくりしていたのは確かだ。



「でも、あれだけ言われて悔しくてね……」
「何したの?」
「勇気出して公人の部屋に怒鳴りこんじゃった」
「ど、怒鳴り込んだって……それに部屋って」
「あら言わなかった?私の部屋って公人の部屋と屋根をはさんで隣にあるのよ」
「あっ、確か隣同士なのはわかってたけど、部屋も?」
「うん隣のようなものね……それで屋根から公人の部屋に竹刀もって飛び込んじゃった」
「何で竹刀持ってるのよ!」
「修学旅行で買ってたの」


バシッ!


『うわぁ!』
『公人!あんた恥ずかしくないの?』
『な、なにが?』
『女の子達から「頭が悪そう」とか「運動下手そう」とか言われてるのよ!』
『……でも、そうなのは事実だけど……』


バシッ!


『痛っ!』
『そんなこと言ったらいつまでたっても女の子に馬鹿にされるわよ!』
『そ、そんなこと言っても……』
『家で勉強すればいいでしょ!運動だって、朝に運動するぐらいできるでしょ!』
『でも……』


バシッ!


『公人がそんなんじゃ、私も恥ずかしいのよ!』
『………』
『私にお似合いになるように頑張りなさいよ!』
『……わかったよ……』


「脅迫じゃない!」
「でも、公人はその次の日から変わったのよ」
「どう?」
「毎日夜遅くまで勉強するようになったし、毎朝ランニングをするようになったのよ」
「いくら脅迫でも何でもいきなりそこまでできないわよ」
「私もびっくりしたけど、頼もしいって思っちゃった」
「うんうん。私もそう思うけど……なんか腑に落ちないわね……」


「そのせいで、公人は勉強は学年トップクラスになったし、運動もかなり得意になったのよ」
「すごい、さすが高見くん」
「でもね」
「でも?」



「公人って勉強と運動に夢中になっちゃって……もっと私にかまってくれなくなっちゃったの……」



詩織の顔はとても寂しい顔だった。
To be continued
後書き 兼 言い訳
中学時代に突入しました。
今回はタイトルはタイトルですが、
実際は公人が運動も勉強もよくなった理由ですね。

さて、次も中学時代。
疎遠になる2人と、詩織の暴走ぶりが書ければと。
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